異世界召喚されたが役立たずと言われ砂漠に捨てられたので、廃墟だった地下都市の王になり世界を征服することにした

魔茶来

文字の大きさ
15 / 68
1.もらってくれたら、命を捧げます

蟲毒①

しおりを挟む
 砂漠を一人魔獣に跨り走る男。
 元セグリエ王国の王都の警備を主に担当する近衛第三騎士団のシルクス・サーキッド団長である。

 セグリエ王都では王都警備の者は王都の民にとっては英雄だった。
 そしてこの男は団長であるので王都では彼の評判は高く人気者であった。

 そのシルクスは行方不明になっているロザリア・エス・セグリエ王女を探していた。 
 ただし不思議なことに彼の団の団員たちは一人も付いていなかった。

 この砂漠にまで微かな王女の臭いを魔獣に嗅ぎ分消させながらやって来たのだ。
 
「風に舞い散る砂で出来た砂漠と言えど、私の魔獣ゴーレズであれば臭いを嗅ぎ分けることが出来る。そうかゴーレズどうやら姫は近いようだな」

 彼はそう言うと魔獣に鞭を入れ急がせた。

  ◆    ◆

 その日の昼間、俺はサンクスがどうしても付いて行くというからサンクスを連れて狩りに来ていた。

「ジェイ見ていろよ俺の狩りの腕前を見せてやる」

 自信たっぷりなサンクス、剣は折れてしまったので棒を持っていた。

「ほう、お手並み拝見だな、じゃあ今日の夕飯のネタは頼んだぞ」

 期待半分で見ていた、だが小僧の狩りの腕は確かだった。

 彼は棒を体の一部のように扱っていた。
 そして持っていた棒を数回砂の中に叩きこむと、驚いて虫や小動物が飛び出してくるのだ。
 サンクスはその瞬間を逃すことなく、棒で一気に獲物に止めを刺していた。

「見事なものだな」

「こんなのは朝飯前さ、棒術は父さんに教えてもらったんだ」

「お父さんからは剣を貰ったんじゃないのか?」

「父さんからは棒術を最初に習った、俺の得意はやっぱり棒術なんだ。剣は騎士団に入るのに必要だからということで買って貰ったんだよ」

 実は棒はその辺りにあった棒を拾ったのだ。

「剣は無くても、そんな棒でも役に立つと言うことだな」

「そんな棒とは失礼だなちゃんと削ったんだぞ。本当はクルムシの木で作る長棒が一番手に馴染む武器なんだ」

「そうさ父さんはアクアのエレメントを使った魔法だけじゃなくクルムシの木で出来たこん棒二本をチェーンで結んだ形にしたものを振り回して敵を倒していたんだ、第一~第三騎士団の団長さんとも仲が良くて、よくその武器を使って模擬戦をやっていたんだ」

「その武器ってヌンチャクみたいだな」

「えっ、ヌンチャク知っているのか?それって父さんの世界の言葉なんだよ」
 
 はあ?ヌンチャクが異世界の言葉?
 もしかして前アクアのエレメントヒーローって地球人なのか?

 とは言え今は誤魔化すことにした。

「俺の田舎にも言い伝えによるとそう言う名の武器が伝えられているんだ。多分だが昔、そう昔だな、俺の田舎にもお前の父さんと同じ異世界の人が来ていたのかもしれないな?」

「へえ~、どんな武器なの教えて欲しいな、どんな武器なの?」

「ヌンチャクと三節棍さんせつこんとかサイという武器が残っていたよ」

三節棍さんせつこん?」

「チェインで三つの短棒を繋いで棒状にした多節棍の一種さ、ヌンチャクとはよく似ているな、言うなれば兄弟のような武器だな」

「父さんの世界の武器かもしれないのか、一度見て見たいなどんな武器だろう」

「しかしセグリエ王国には騎士団は三つもあったのか?」

「何にも知らないんだなセグリエ王国には役割に合わせて八騎士団あったんだ。その中でも第一騎士団は王族警護、第二騎士団は王城警備、そして第三騎士団は王都の警備をしていたんだ、俺の父さんは騎士団とは別に王直属だったんだけど、特にこの三つの騎士団とはよく連携していたのさ」

「なるほどな、小国だと言ってもそれなりの規模ではあったわけだな」

「特に第三騎士団のシルクス兄さんは父さんの親友だったんだ。王都では一番の人気者でお父さんの次に強かったんだ」

 小僧の遠くを見るように回想して話す顔は実に楽しそうだった。

「そのシルクスさんは、今はどうしてるの?」

「分からない、二つの大国に分断された者たちはそれぞれの国に所属させられているらしいが、俺たちにはそんな情報は知らされないからね。シルクス兄さん元気だと良いな」

 大国に滅ぼされた国は悲惨だろうな、捨て駒として戦の最前線に派遣されているのだろ。

「さてと狩りをするかな」

 俺はいつもの様に太陽を集め狩りを始めた、初めて太陽の威力を見た小僧は驚いていた。

「そんなことが出来るのか、でもエレメントを感じない。ジェイは本当に人間なの?」

 真顔まがおで人間じゃないと言われると悲しいものだ。
「人間だよ、俺の力も小僧と同じで魔力を使っているんだ」

 そう言っても何となく信じていない小僧。
「エレメントを感じないで魔力を魔法に変えられるなんておかしいよ、本当は魔人じゃないの?」

 なるほどそう言うことか魔人ね、魔人は魔石を体のどこかに着けているものだ。
 俺に葉何処にもそんなものは付いていないけどね。
「はははは魔人、俺の胸に魔石でも付いているか?」
 そう言って胸を見せた。

 説明だけは一度しておこうと思い少し説明口調で話してみた。
「エレメントの考え方は全てのものが五つエレメントで出来ているっていうことだが、それって無理があると思わないか?俺はもっと多くのモノで出来ているという理論を作り出して実践する者、言うなれば原子拡張者エクステンダーだよ」

 小僧は信じられないという顔をするとあきれ顔になった。
「子供に嘘を教えてはいけないよ、この世は五つのエレメントで出来ている。実際に五つ以外のエレメントは見たことが無いよ。やっぱジェイはおかしな奴だ」

 やっぱりね、根拠の説明に俺の居た異世界の話はしてもしょうがないのでアッサリ引き下がることにした。
「じゃあ、獲物も取れたので血抜き処理してら帰るとするか」

「そうだな、原子拡張者エクステンダーとかの戯言聞いても仕方が無いからな」

「その内信じるようになるさ、時代がその内追いついて来るのさ」

「そんな馬鹿なことは絶対に無いよ」

 本当に全く信用されていないな。
 当たり前だ、俺だってエレメントという話が信じられなくて魔法が使えなかったんだ。
 世界が変われば考え方も違うのは仕方が無いだろう。

 そして俺たちは狩りの獲物の処置をして帰途に就いた。

 その男が俺たちの前に現れたのは、俺たちが狩りから帰って夜食の準備をしている時だった。

 ピロロロロ~ロッ

 聞きなれない動物の鳴き声が響き渡った。

「ロザリア姫様」
 そう言うのが聞こえると小僧とロザリアは結界の外に飛び出して行った。

 ロザリアはその男の顔が見えると声を掛けた。
「シルクス団長、よくここが分かりましたね」

 小僧は涙すら浮かべていた。
「シルクス兄さん」

 だがラミアは二人と男の間に立ちはだかった。

「ダメ、危ないわ二人とも、中に入りなさい」

 そしてフェスリーも魔獣モードになって二人の前に立った。

「ラミア様、その人は仲間なんです。そう元第三騎士団の団長です安心してください」

 何やら喧騒な雰囲気の中どうなっているのか事情が分からない俺。
「ラミア一体どうしたんだ?」

「あれは蟲毒に侵された者、もう人ではありません」

 その言葉は二人の子供達には意味が分からなかった。
「ラミア様、そんなはずはありません、間違いなくシルクスです」
「そうだ、シルクス兄さんに間違いない」

 こちらの状況などどうでも良いように男はこちらに近付いて来た。
「ロザリア姫様、お迎えに上がりました」

 小僧たちの様子や話から、さっき小僧の話していたシルクスとういう男だと言うのは分かる。

 だがさっきの話の内容と違い、俺は好感を持てるというよりその男からは薄気味悪さを感じていた。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼
ファンタジー
 母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。  なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。  さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。  そこから俺の不思議な日々が始まる。  姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。    なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。  十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。

処理中です...