転生者ゲーム

魔茶来

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転生するならナビだ

俺死んだ

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「これが転生と言うものか」
 俺はその時これから起こることに胸が躍った。

 その少し前、歩きスマホしてたら事故に遭って俺はあっさり死んだらしい。 
 だが死んでからも体の感覚はそのままだった。
 もちろん死んだことは分かったので、直ぐにやり残したことや家族、友達のことなんかを思った。

 もっとも死んだ俺が生前の世界のことを考えてもしょうがないと思うと吹っ切れて周りを見渡した。
 そこは何もないところだった。

 その状況は笑うしかなかったが立っていてもしょうがないので座り込んだ。
 誰も居ない世界。
 頭に受かぶのは「どうなるんだろう?」と言うことだけだった。

 少しすると周りが明るくなって放送?
 いや放送のような声が聞こえて来た。

「審査を始めます」

 何のことか分からなかったが、俺は立ち上がった。

 そしてそこへ天国と地獄の審査官という者達が現れた。

 眼鏡を掛けた天国側という少しお惚け顔をした男が話かけて来た。
「遠藤公彦君だね」

 とりあえず返事する。
「はいそうです」

 そこに地獄側という怖い顔をしたマッチョな男が機嫌悪そうに話しかけて来た。
「ちょっと君、予定と違うんじゃない?」

「予定ってなんのこと?」
 何のことか分からず思わず口から出てしまった。

 地獄側の男は気に障ったのか少し怒ったようだった。
「神聖な審査を受けているのにずいぶん軽い受け答えだな」

 その言葉を聞いて天国側の男が諫める。
「まあまあ、そんなに怒らないでやれよ、転生前なんて覚えているわけないだろう」

 その後話をしてくれたが俺は今世を生きる前に色々と約束をさせられていたようだった。
 その内に三十歳まで生きるという約束があったのだが、結局俺は十八で死んでしまった。

 地獄側の男はあきれたように一言言った。
「約束が果たせていないなら審査にならんな、一度地獄で責め苦を受けろ」

 天国側の男も同じく審査にならないということで悩んだような顔をしていた。
「約束が果たされていないので条件はクリアされていない。
 そうじゃな再度生き返ってやり直してみるかな?
 ただし同じ世界には返せないので別の世界に行ってもらう。
 どうじゃ、なにか希望はあるか?
 出来る限り希望には答えるぞ」

 そのとき俺は「転生」だ、「チート能力」だと勝手に思った。

 でも良く考えれば、ラノベのようにうまく生きていけるかは保証がない。
 また事故や思いもよらないことで死ぬことになって此処に戻って来る状況を考えた。

(本当にそんな人生面白いのか?)

 転生は一回こっきりで終わりだろ、それで成功するも失敗するも自分次第。
 約束で寿命が決まっていても死んでしまうこともあるんだから、転生したって同じだろう。

 ゲームみたいにセーブポイントからということは出来ない。

 ゲームのように何度も異世界を楽しめる方法はないのだろうか?
 そう思った時あることが不意に頭をよぎった。

 そして「世界の案内者とでもいうのかな?それに転生したい」と言ってしまった。

「なんだそれ?」

「ほら、転生者にその世界の常識や色々なことや物を鑑定をして教えたりする役目の・・」
 とそこまで言うと天国側の男が理解したようだった。

「世界の解説者、ナビゲーションのことか?」

 地獄側の男は反対のようだった。
「ナビね、あんなものになりたいのか?でも寿命がな少し長くないか?」

「いいじゃねぇ?寿命何て俺達からすれば大したものじゃない」

「それはそうだが・・・評価はどうするんだ?」

「それなりに評価は出来るじゃねぇ、此奴にはそれが良さそうだぞ」

「此奴には?」

「そうだ、ゲームやりながら事故に遭ったような奴だから、天職なのではないじゃろか?」

「なるほど、命よりゲームが楽みたかったような奴だからな」

「よしそうしよう、世界はユリシーズでどうじゃな」

「ああ、ユリシーズか、ゲームとして見ると魔法とか剣とか面白いだろうな」

「では準備するとするかな」
 天国側の男が何かを取り出してなにかを始めた。

「ちなみに今回も約束がある『転生者をゲームクリアまで付き添うこと』だ。
 もっともお前のナビレベルが低いうちは途中での降板がある。
 そしてゲームクリア後も結果がが気に入らないというのであれば、気が済むまで別の者のナビをしても良い。」

 結局、俺のことは放っておいて話をどんどん進めて、最終的に変な約束を俺は約束させられた。

「まあ頑張って主人公にゲームクリアさせろ。その時まで待ってる」

 とりあえず、希望通りナビになることが出来そうなので返事しておく。

「分かりました、頑張ります」

 天国側の男は最後に教育を受けることを条件とした。
「それとナビ教育を受けてもらう。
 転生者や覚醒者は女の子もおるからな。
 その指導はナビらしくしてもらわねばな。
 それと約束を努々忘れるではないぞ」

「了解だ、早くやってくれ」
 気の早い審査官たちだった。
 そう答えた瞬間に俺は光に包まれてどこかに転送された。

 転送される間、言われた約束を考えていた。

「ゲームクリアしたら終わりだというが?
 ゲームクリアとは何だろう?
 少なくとも主人公が魔王やラスボスを倒して終わりではないだろう。
 それぞれの物語が完結するまでがゲームクリアのはずだ。
 そうだ魔王になるというのも物語のはずだ。

 本当にどこがゲームクリアなんだろうか?

 気に入らなかったら別の者という話もあったな。
 気が済むまでナビ出来るということかな?
 とりあえず気が済むまでリアルゲームで楽しめるということだな」

 転送空間に天国側の男が反応して来た。
「ゲームクリアとは天の声が決める。
 その後の終了をきめるのはナビが判断してよいということだ。
 お前はたぶん満足するまで主人公を育てたいのだろう?」

「そうです」

「良いだろう、良いナビとなって良い主人公を沢山育ててくれ、これはアイツには内緒だぞ」

「はい」

 なる程、地獄側の人間にとっては良い主人公が多くなるとあまり嬉しいことではないのだろうな。

 やがて光が薄れて見えてきた。
 
 機械的な声が聞こえて来た。
「ようこそ、ここはナビ教育機関です」

「へぇ~ここがそうか・・・」

 なんか感激したような声を出すと、案内の声が驚いたように答えた。
「あれ?あなたは感情があるのですね?
 ここには通常感情もない魂が来るのですが珍しいですね。
 でもこれからは感情は捨ててくださいね」

 感情は無くさなければならない、どんな状況でも冷静に判断し主人公をナビしなければならないのだそうだ。

 これからの出会う主人公たちのことを思いながらユリシーズという世界のことを勉強することから俺の転生は始まった。
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