超人気乙女ゲームの悪役令嬢に転生した事務方OLが~この世界を平和に導きます~

山美ハル

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騎士の正体

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外で優雅に食事をすることは素晴らしいですわ

高級なワインに豪華な食事、まさに上級階級の私たちにふさわしこと・・

一部のことがらを覗けば・・・

「お父様、そのような事は初耳ですわ」

「そうだったかな?」

父親のアックから騎士のハッカスとの婚約話を聞かされたノエルは怒りを覚える、もちろん過去の記憶があるからである、ノエルの記憶だけなら喜んで婚約しただろう・・

「ハッカス様の婚約者には私より美しく、上品な女性がお似合いと思いますわ」

「ノエル・・」

「ノエル様・・」

ノエルは少し寂しそうに顔をして食事をステーキを一口大に切り口にいれる

自分なんて騎士団長候補の男性とは釣り合わない・・でも心はハッカスの事を慕っているそのような雰囲気をだしてはいるが、心の中では

「(絶対結婚なんてしない!!)」

「私はノエル様の事を愛しています!!!」

ハッカスは椅子から立ち上がると大きな声を上げる

「ノエルとハッカスはお似合いだと思うよ」

釣られてアックもノエルに声をかける

「ですが・・(くどい、くどいぞハッカス)」

「私はノエル様を一生守ります」

「さすがハッカスだ よく言った」

「ハッカス様(裏切るから!!お前裏切るだろうがよ)」

「ノエル ハッカスなら君を幸せにしてくれると私は信じているんだ」

「お父様(お前の目は節穴か?)

「お待たせいたしました食後のデザートです」

ラーマはケーキを持ちながら歩いてくる

歩いてくるラーマの足がもつれる

「キャア!!」

ラーマの右手に持っているケーキがハッカスの顔面に直撃する、いくら騎士でも不意打ちには弱いようだ

「うぶ」

ハッカスは後ろに倒れる

「ハッカス!!!」

「ハッカス様!!!(ざま―)

「も 申し訳ありません!!」

ハッカスはメイドたちに運ばれていく様子をアックとノエルはその姿を眺めていた

屋敷の部屋でハッカスは横になっている

「あ 頭が痛い」

受け身をとれずに後頭部を打ってしまったのだから痛みはあるが庭の地面が柔らかい事が幸いし少しの間気を失うだけで済んだようだ

「なんだか変な気分だ」

ベッドの上で寝ているハッカスは非現実的な夢を見る

「ここはどこだ」

この世界とまったく違う建物・場所・人その光景を見たハッカスの頭の中に変化が生じた

「俺はハッカス?」

「俺は・・・」

ハッカスにもう一の記憶がよみがえる!!!!!

「俺は平田康夫」

「この世界は・・乙女爽快夢・・想恋物語・・か」

なぜ平田康夫が乙女ゲームについて知っているのかは簡単であった、彼の娘が乙女爽快夢想恋物語に大ファンだからである

「なんでこうなっているんだよ」

平田はベッドから立ち上がり大きな声をあげ、周りを見渡す、突然自分がゲームの世界に入り込んでしまったら誰しも冷静に対応なのできはしない

「何も悪い事なんてしてねーぞ」

平田はベッドに座り頭を抱える

「由美・・千賀子・・」

ふたりの 女性の名前を声にした瞬間、平田は落ち着き、亡き妻との記憶を思い出す


「ただいま」

「おかえいなさい あなた」

「ごはん用意しますね」

「うん」

古いアパートの一室に住む若い二人、親の反対を押し切り、千賀子と結婚した二人は身よりはなく夫婦二人で生活している

「今日も仕事忙しかったんですか?」

時刻は夜の21時を少し回っている

「大事な会議があってな」

「身体を大事にしてくださいね」

「そうだな」

「一人の身体じゃないんですよ・・」

「え」

「3か月です・・」

千賀子は照れながら康夫の目を見る

「本当か・・」

「はい」

康夫は千賀子に近づき千賀子のお腹に耳を当てる

「まだ分かりませんよ」

「そ そっか」

康夫は照れ臭そうに笑い千賀子に話しかける

「俺も 父親か」

「はい」



「先生 千賀子は?」

分娩室から出てきた医師に康夫は近づき声をかけた

「大丈夫です 母子ともに健康ですよ」

「よかった・・・」

「元気な女の子ですよ」

「ありがとうございます」

医師の言葉にその場で康夫は涙を流す



「パパ 行ってきます」

「気をつけてな」

「はーい」

二人の間に生まれた由美を康夫は大事に育て自分の持っている愛をすべて注いでいた

「早いもんですね」

「そうだな」

「この前まで幼稚園だったのに」

「なあ」

「あなた仕事に送れますよ」

「いけない 行ってくる」

康夫は少しでもお金を稼ぐためにパワハラ株式会社から過労死株式会社に転職をしていた、給料は上がったが、仕事が忙しいために由美と遊ぶ時間が少なくなってしまったのが辛い所だったが家族のために康夫は一生懸命働いた



「行ってきまーす」

「気を付けてな」

「うん」

由美は部活の早練に行くためにいつもより早く家をでる

「由美も中学生ですね ゴホゴホ」

「そうだな どうした?」

「ただの風邪ですよ・・」

「そうか」

何時ものように残業をしている康夫の携帯に自宅からの着信がくる

「もしもし どうした?」

「お父さん お母さんが お母さんが」

「母さんがどうしたんだ」

由美は泣きながら電話で告げた千賀子が意識を失い倒れたのを

康夫は残っている仕事を放り投げ千賀子が運ばれた病院に向かった・・

「お父さん・・」

由美は泣きながら病室で涙を流していた

「母さんは?」

千賀子は病院のベッドに寝ていた、もしかしたら大した事はないと康夫は信じていた

診察室に呼ばれた康夫は一人診察室に入る

「末期がんですね」

「うそですよね?」

「・・・」

「我慢していたんでしょう」

千賀子は体調を崩すことが昔に比べて多くなったのは知っているし、すぐに元気になり家の事をしてくれていたから・・

「どうして」

「何回も診察に来ていたんですよ・・」

「そんな・・どうして」

「旦那さんに心配をかけたくなかったんですよ」

「・・・」

「妻は・・・千賀子はどうなるんですか?」

「もって3か月ですね」

「・・・」

二人しかいないこの部屋が途方もない大きな場所に見えてきた、砂漠の中を歩いているかのように

由美を先に帰らせ、康夫は千賀子のいる病室に戻った

「あなた すみませんね 仕事大丈夫ですか?」

千賀子は申し訳ない様子と同時に康夫が来てくれた事をうれしそうにしていた

「・・・」

言葉が出てこなかった

「ごめんね あなた」

「あなたより 先にいきそうかも」

「そんな こと 言うな・・」

涙を浮かべる千賀子の顔を見て出てくる言葉はそれだけだった



千賀子の様態は悪くなる一方だった

「あら あなた今日も・きてくれたんです・・か」

康夫は声を出すのもしんどそうな千賀子の手を握る

康夫は上司に頭を下げ比較的業務の忙しくない部署に異動させてもらった、上司からは

「出世はあきらめろ」

その言葉を言われただけだった

「由美は?」

「部活を頑張っているよ」

由美は家の家事を手伝うと言ってくれたが、部活や勉強を犠牲にしてまで家の事をさせたくはなかった

「来週の日曜日は一緒に来れそうだよ」

「はい」

康夫は日に日にやつれていく妻を見て自分の無力さを感じていた、「千賀子の夫は俺だけなのに」「俺は何もしてやれていない」

「来てくれるだけで幸せですよ」

康夫の心が分かるように千賀子は康夫に優しく声をかける


日曜日に由美と一緒に見舞いに行く予定だったが、千賀子の様態が悪化した為 康夫と由美は夜遅くに千賀子のいる病院に行く、医師からは今夜が山だと説明を受けた

病室の千賀子は酸素マスクをつけ由美と康夫が来るのを待っているようにドアの方を見つめていた

「お母さん」

「千賀子」

「二人とも ありがとう 来てくれて 母さんうれしいわ」

「しっかりしろ千賀子」

「お母さんやだよ」

「由美ごめんね 今度の大会見に行けなくて・・」

「いいよ 別に だから元気になってよ お願い」

由美は袖で涙をはらう

「由美の高校の入学式に行きたかった・・」

「二人で行くって約束しただろう千賀子」

「そうね」

「いやだよお母さん」

「いや いや 絶対いや」

千賀子は涙を流しながら由美の頭をなでる

「由美の結婚式にも行きたかったな・・」

「千賀子 お前がいなくなって由美はどうするんだ」

「あなたがいるから大丈夫」

「大丈夫な訳が・・・ないだろ」

「私 幸せだったよ・・ あなたに出会って 由美が生まれて」

「お前がいなくちゃ 俺はダメなんだよ 頼む お願いだから」

康夫は千賀子の手を強く握り何度も千賀子の名前を呼ぶ

「二人とも 母さん ずっと見守ってるからね 」

千賀子は二人に見守られながら目を閉じた

「お母さーん」

「千賀子」

「目を開けてよ お母さん お母さん」

「千賀子 千賀子・・・ ちか こ」

「21時39分 ご臨 終です・・」

由美は母親のことを呼び続け 康夫は由美の横を離れなかった




ハッカスは涙を拭きベッドの横に立てかけられている剣を持ち鞘から剣を抜く

「千賀子 由美 お父さん必ず生きて帰るからな」

ハッカスの騎士道物語は始まる

その剣には亡き妻との約束を果たすために

ハッカスは部屋のドアを開け ノエルたちのいる庭へと向かった




屋敷の庭にて

「大丈夫ですわ」

「ハッカスは納得するだろうか・・」

「任せてくださいお父様」

「ハッカス様の持っている剣は素晴らしいものですわ(財政再建の為に売らせていただきます)」


続く

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