マネー・ドール - 人生の午後 -

葉月零

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RPG(2)

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 ハンドブレーキを解除して、ヘッドライトをつけた。
 ギアを入れると、エンジンが回って、ブレーキペダルから、足を……はずせない……はずれない……

『受けとめてやってくれ。過去も、今も、未来も、全部』
 どこからか、杉本の声が聞こえた。

 そして、耳の奥で、真純の声が聞こえる。
 
『私のこと、好き?』

 真純……真純……好きだよ……好きなんだよ……

「好きなんだよ! 真純! 愛してるんだよ!」

 置いていけるわけがない。
 一人にできる、わけがない。
 俺にはそんな選択、できるわけがない。

「慶太……どこに行ってたの?」
「ごめんごめん。銀行に、お金をおろしにね」

 真純は子供みたいに背中を丸めて、下を向いて、泣いていた。
雑にまとめた髪は乱れていて、化粧ももう落ちてしまってる。

 こんな真純は、初めて見た。
いや……これが本当の真純なのかもしれない。
虐待され、虐められ、荒んだ少女時代の真純は、こうだったんだろう。
もし、その時代に真純と出会っていたら、俺は好きになっただろうか。

 いや、きっと、眉を顰めて、せせら笑っていた。周りと一緒になって、虐めていたかもしれない。俺は、そんな、人間だった。

 俺を変えてくれたのは……真純……真純なんだよ……

「すみません。手持ちがなかったもので」
 支払いを済ませ、俺達は駐車場へ向かった。
真純はずっと泣いていて、俺はその手を握ることくらいしか、できない。
だって、気を抜いたら、俺も、泣いてしまうから。

 ふと携帯を見ると、中村からの着信があった。あ、そうか……車か。
「ごめん、中村。病院だったんだよ」
「ケガ、どう?」
「ああ、もう大丈夫みたいだ」
「車、どうしよう、遅くなるけど、いいか?」
「いや、迷惑じゃなかったら、置いといてくれ。明日、俺が取りに行くから」
「それは構わないけど……じゃあ、都合のいい時に取りに来てくれ」
「……中村、本当に迷惑かけたな……」
「友達だろ? 気にすんなって。じゃ、お大事な」
 中村は笑って電話をきった。なんていい奴なんだ、中村は……心底、感謝するよ。

 中村のおかげで、少し落ち着いた俺は、現実を取り戻していた。

 ああ、そういえば、山内。どうしたかな。電話してみるか。
「山内、どうだ?」
「まあ、形はなんとか。奥さん、大丈夫なんですか?」
「ああ……まだかかりそうなのか」
「もう少しってとこです」
「行こうか?」
「……来ていただけると、ありがたいです」
 山内がそんなことを言うのは滅多にない。よほど、手こずっているんだろう。

 助手席では、薬が効いたのか、真純が眠っている。しばらくは寝ているかもしれない。
「わかった。今から戻るから待ってろ」

 俺は真純を乗せたまま、神谷の事務所へ向かった。車を止めても、真純は眠っている。
「真純?」
声をかけても起きない。大丈夫かな……
 真純を残して、車を降りた。
 エアコンをかけておけば、暑くはないだろう。あの窓から、車は見えるはずだ。

「所長、すみません……」
「いや、悪かったな。さ、やってしまおうぜ」
 山内は、外のアイドリングしたままの車を見て言った。
「奥さん、乗ってるんですか?」
「いいんだ」
 一秒でも、時間がもったいない。できる限り、早く終わらせたい。
俺達は無言で、データの修正を続ける。時折、秘書がウロウロと見に来て、鬱陶しいこと、限りない。

 一時間程で、データの修正が終わり、書類も整った。
「よし、これでいいだろう」
「先生に説明してきます」
「頼む。俺、挨拶だけして、帰るわ」
 もう、どうでもいい。適当に挨拶をして、急いで車に戻ったけど……
「真純!」
 助手席に、真純の姿はなかった。
 嘘だろ……真純……
 いつだろう。ずっと車は見ていたのに……挨拶している間なら、そんなに遠くには行ってないよな……

「所長、どうしたんですか?」
「や、山内……真純が……真純がいないんだよ……」
「えっ? トイレとかじゃ……」
「真純、ちょっとおかしいんだよ……探してくる。お前、ここで待っててくれ」
「わかりました」
 
 辺りを探したけど、真純の姿はない。
 どこに行ったんだよ……真純……まさか、事故とか……自殺とか……
 嫌な考えが頭の中をグルグル回って、吐き気がする。
 
 一瞬でも、真純を捨てようとしてしまったことが、俺を追い詰める。
 あんなことするんじゃなかった。
 どうしよう、真純、そんなつもりじゃなかったんだ……

「所長、通報しますか?」
「そうだな……こんな時間だしな……」
 車に乗ろうとした時、携帯が鳴った。知らない番号。誰からだろう。
「佐倉慶太さんで間違いありませんか」
「は、はい……」
「こちら、駐在所です」
 駐在所……まさか、事故にあったとか?
「奥様なんですが、道に迷われたみたいで、こちらで保護してます」
「妻がそこに、いるんですか! 無事なんですか!」
「はい。ご主人に連絡してほしいと言われたので、ご連絡しました」
「すぐ行きます。場所はどこですか」

 駐在所は、すぐ近くで、フラフラと泣ながら歩く真純を、警官が保護してくれたらしい。
「真純……ダメじゃないか! 心配するだろ!」
「ご、ごめんなさい……目が覚めたら、知らない所で、慶太もいないからびっくりしたの……」
「ケガはない? 大丈夫?」
「うん……おまわりさんに、助けてもらったの……」
 パイプ椅子に、身を屈めて座る真純。
 サンダルをひっかけた素足は汚れていて、膝は擦りむけている。
「ころんじゃったの」
「そうか。家に帰って、消毒しょうか」
 手を差し出すと、真純は、小さな子供のように、俺の手をぎゅっと握って、身を寄せた。
「お世話になりました」
「いえ、お気をつけて」

 家に着いたのは、もう十二時前になっていた。

 玄関で、汚れた足を拭いてやると、風呂に入りたいと言い出した。
「シャワーだけでガマンして。また出血したらダメだから」
「うん」
「髪、洗ってあげるよ」
 汚れた服の下の体は真っ白で、なぜか、いつもより、艶かしい。
 左手を濡れないようにビニールで包むと、不自由そうにする。
その姿が、また俺の、あのおかしな感情を呼び起こした。

 バスチェアに座る真純は、少し俯いて、シャワーを浴びる。
 髪が濡れて、白い首に巻きついて、そして、俺の手も……

 鏡に映った俺達は、まるで映画のワンシーンのよう。
「真純……」
  Tシャツとパンツ姿の俺は、シャワーの湯を浴びながら、無抵抗な女の首を、しめている。

「……け……い……た……」

 水音に混じって、掠れた声が聞こえた。

「ご……め……ん……な……さ……」

 できないよ……
 やっぱり、そんなこと……

 手が離れると、真純はぐったりと、俺の胸に、体を凭れさせた。

「電話がね、かかってきたの」
 掠れた声で、呟いた。譫言のように、空を見つめて、ぼんやりと、呟く。

「凛ちゃんから、電話が……お菓子をね、買ってきてって……だから、私ね、クッキーをあげたの。ほら、もらったのに、ずっと食べずにおいてたクッキー、あれをね、娘ちゃんたちにって、渡したの」
「そうか」
「よかった?」
「構わないよ」
「将吾ね、パパって言ってた。自分のこと……」
「パパ、だからな」
「聡子さんのことはね、ママって言ってた……宿題しとけってね、優しくね……」

 シャンプーをつけて、髪を洗う。
泡がたって、真純の肩や背中が、ふわふわと、染まっていく。

 なんていうか、まるで、小さな娘の髪を洗っているような気持ち。

「俺達にも、子供がいたら、少しは違った生活だったかな」
「子供、欲しかった?」
「結婚したころはね、欲しかったかな」
 こんな話をするのは、初めてだね。
 子供なんて……考えることも、なかった。
「私ね……あんな嘘ついて……後悔したわ……」
「もう、昔のことだよ」
 
 真純は、あの嘘をずっと背負ってたんだ……この十六年、真純はずっと、自分のついた嘘に苦しんで……

「離婚して欲しかった……ずっとね、別れようって、言って欲しかったの……」
 そうだったんだ……俺はてっきり……この生活さえできれば、真純はいいと思ってた……
 それがずっと、俺の唯一の方法だったのに……
「今は?」
「今は……今はね……幸せなの……なのに、私……」
 うなじに長い髪が流れて、白いおっぱいが少し紅く染まり始めていた。
「そろそろあがろうか」
「……子供は、裏切れないって……」
 そう言って、真純は、ふらふらと立ち上がった。
「嫌いにならないで……」
「ならないよ」
 抱きしめた真純の体は、柔らかくて、痩せていて、シャワーのせいか、熱かった。

「俺もシャワー浴びるね。先にあがってて」
「ここで待ってる」
「すぐだから」
「ここで待ってる」
「じゃあ、待ってて」
 バスタブの淵に座った真純は、俺の体をじっと見ている。
何を、考えてるんだろう。杉本の体を思い出してるんだろうか。それとも、比べてるのか?
「お腹、出てないね」
「そうか?」
「中村くん、お腹出てた」
「そうだなあ。あいつも、おっさん化が進んでるよなあ」
 俺達は思わずちょっと笑ってしまって、少し、緊張が解けた。やっぱり、中村のおかげで。

 バスルームから出て、真純の髪にドライヤーをあてる。長い髪は、なかなか乾かない。
「なかなか、乾かないもんだね」
「切ろうかな。短く」
「俺は長い髪の方が、好きだけどなぁ」
 その言葉に、真純は、俺に抱きついて、胸に顔を埋めた。
「慶太、かっこいいね」
「なんだよ、急に」
「ずっとね、慶太の隣にいて、恥ずかしくない子になりたかった」
「恥ずかしくないよ」
「ううん、恥ずかしかったの」
「真純は、最高だよ。美人だし、色っぽいし、可愛いし」
「おばさんなのに?」
「俺もおっさんじゃん」
 バスローブの胸元からのぞくタニマに、手を入れると、真純は、恥ずかしそうに笑った。
その顔が最高に可愛くて、俺は、もう、完全に欲情……しちゃうじゃん。
「私のこと、好き?」
「好きだよ……ほら、こんな感じだよ、もう……」
 押し付けた俺を、ちょっとだけ触って、クスクス笑う。
可愛いなあ。やっぱり、俺、真純と離れることなんて、できないや。
「ガマンできなくなっちゃうよ。前、向いて」
 しかしまあ、昼間、他の男と会っていた嫁さんに欲情するなんて……異常かな、俺も……
「さ、乾いたよ」
ドライヤーをあてた後の髪はまだ温かくて、うなじに汗で、はり付いている。

 真純は、いつものタオル地のワンピースに着替えて、ベッドに寝転んで、少し手が痛いと言った。
「痛み止め、飲む?」
「うん」
「取ってくるから、待ってて」
 もう随分落ち着いたのか、ついてくるとは言わず、ベッドに寝転んだまま、素直に頷いた。

 薬を飲み終えると、痛くなくなったって、真面目な顔で言った。
 そんなすぐに効くわけないだろ。
 心の中でつっこんで、改めて、そんな真純が可愛くて仕方がない。
 可愛いから、俺は……
「真純……杉本と……その……」
 情けないけど、もう聞かずにはいられない。
真純は俯いて、首を横に振った。
「して……ないんだよね?」
少し間があって、真純は、微かに頷いた。
「杉本の所に行きたいの?」
 もうそれは、一世一代の質問で、心臓が飛び出そうなくらいドキドキして、真純の返事を待った。
 だけど、真純は答えず、天井を見上げたまま、ぼんやりと言った。
「……慶太、私の背中、きれい?」
「背中? ああ、きれいだよ。白くて、艶っぽい」
「聡子さんのね、背中ね……火傷の痕があるの……大きな痣……昔、家が火事にあって、その時に、火傷したんだって……」
「そうなんだ……」
「将吾だけなんだって……その痣を見ても、変わらなかった人……私もね、子供の頃からずっと、将吾に助けてもらってた。みんなね、私のこと、汚ないとかね、クサイとかね……でも、将吾だけは、そんなこと言わなかった。ボロボロの、本当に汚ない子だったの、私。それでも、将吾だけはね……優しくしてくれたの……こんな私をね、好きだって……将吾は友達も多くて、女の子にももててたのに……なんで私だったのかなって……」

 今では、そんなこと考えられないくらい、綺麗になった真純を、杉本はどう思ってるんだろう。

「きれいになりたかったの。変わりたかった。広島での私を、全部捨てたかった」
 そして真純は、初めて、俺の知らない真純を、話し始める。

「将吾と東京に来て、一緒に暮らして……貧乏だったけど、幸せだった。でも、将吾は……いつまでもね、変わらないの。昔のまま、方言も、見た目も、中身も、全然変わらない。だから私、将吾がだんだん……イヤになってた。この人といたら、私はずっと、広島の、あの惨めな自分のまま、変われないんじゃないかって……それに……お金も欲しかった。東京の女の子達みたいに、ブランドのバッグとか服とか、オシャレな美容院にも行きたかった。でも、将吾は、そんなことしなくていいって言うの。東京のね、華やかな女の子たちに憧れる私を……引き止めるの……お前はそのままでええって、そう言うの。私を抱きながらね、いつも、お前が一番キレイやって……そんなわけないのに……きっといつか、将吾も東京の女の子の方がいいって、私を捨てるんだと思ってた。垢抜けた、オシャレな女の子の方がいいに決まってるって……」
「だから……俺だったの?」
「いけてる女になれって、言ったでしょ? あの時、私、本当に全部捨てる覚悟をしたの。もう、全部変えてやるって。バイトして、お金貯めて、洋服や化粧品を買って、雑誌のモデルさんと同じ格好をして……そしたらね、男の人が私に寄ってくるの。今まで知らん顔してた大学の子たちもね、私の周りに集まり始めて、なんだ、簡単なんだって思った。結局、見た目だけなんだって。それさえよければ、こうやってチヤホヤされるんだって……最後はね、慶太だったの。リッチでイケメンの彼氏を連れて歩くこと。それで、私は完璧になれた……なれると思った……」

 そうか……俺はずっと、真純の金蔓だと思ってたけど、違ったんだ。
俺は、真純のブランドのアクセサリーの一つにしか、すぎなかったんだ。

「ずっと自分が許せなかった……今も、許せない。こんな自分勝手に、人を傷つけて……あの、嘘でね、慶太が泣いた時、もう死にたいくらい、後悔した。一生、子供は……うんじゃいけないって、思った……」

 本当の真純。今、隣で、涙を流しながら話すのは、本当の真純。
 本当の真純は、優しくて、弱くて、臆病で、純粋で……寂しがり屋。

「将吾のことなんて、忘れてたの。でも、あの夜ね、将吾と偶然タクシーで会って……将吾、変わってなかった……でも、家族がいて、幸せなんだって、本当に安心して……心のそこからよかったって思えたのに……聡子さんを見てね……彼女、まるで昔の私で……悔しかった。将吾が派手な東京の女の子と結婚してくれてたら、こんな風にはならなかったのに……今の私は、外側だけなのかなって……私は、何を求めてたのかなって……わからなくなって……情けなくて……」

 もう、それだけで、充分だった。
 真純が心を揺らす理由。
それはきっと、未練とか、そんなんじゃない。
真純は、杉本のことを、追いかけてるわけじゃない。
 
 真純が追いかけているのは、きっと、真純自身。

「初めてだね」
「え?」
「こんなに、真純が自分のこと話してくれたの」
「そう、ね……」
「やり直そうって、約束したじゃん。ずっと夫婦でいようって、約束しただろ?」
「……いいの? 私……」
「待つから」
「待つ?」
「そ、待つから」
「つらくないの? こんな私……裏切ったんだよ、慶太のこと……」
「真純を失う方が、もっと辛い」
 それは、本心だった。
 やっぱり俺は、真純が好きだ。真純のそばにいたい。理由なんてない。ただ、好きなんだ。愛してる。惚れてる。恋、してる。

「俺のこと、嫌い?」
「ううん、好きなの。とってもね、慶太のこと好きなの」
「アクセサリーとして?」
冗談のつもりだったけど、真純が悲しそうな顔をしたから、慌てて取り繕う。
ああ、こういうところ、俺、バカだなあ。
「冗談だよ。そんな顔しないで」

 俺も真純を、アクセサリーとして扱ってた。
……変わらないよ、俺も。お前だけが、罪を感じることないんだよ。

「これからさ、本当の夫婦になろうよ」
「今日、中村くんに言われた。夫婦なんだから、ちゃんと話し合えって。……私達、話し合うって、したことないね」
「そうだな……そうだよね。俺達、夫婦として、何も話し合ってこなかったよな……」

 真純の横顔は、すっかりキャリアウーマンの、凛とした顔に戻っていて、でも、どこか、少女のように可憐で、なんだか、真純が真純でないように見える。
 初めて見る、真純の顔。
これが、本当の真純の顔なのかな……綺麗、可愛い、そんな単純な単語では表せない、不思議なオーラ。

「眠い?」
真純が目をこすってる。かわいいなあ。
「うん……」
「手は? 痛くない?」
「うん。今は痛くない」
「もう寝ようか。今日はいろんなことがあって、疲れただろ?」
「慶太は?」
「俺も寝るよ」
「疲れたよね?」
「疲れてないって言ったらウソになるな」
「ごめんね……」
「もういいんだよ」
 横になると、急に睡魔が襲って来た。俺も結構、ヘトヘトだ。
「キスしよう」
「うん」
 真純はちょっと笑って、目を閉じた。
 俺達は軽いキスをして、でも、それだけでやっぱり終わらなくて、長いキスをした。
「おやすみ」
「おや……すみ……」
 もう半分寝てるじゃん。これ以上は、今夜は、ガマン、だよな。
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