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RPG(4)
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時計を見ると、一時を過ぎていた。真純、どうしてるかな……ちょっと遅くなったし、電話してみようかな。
「真純? 今から帰るよ。変わりない?」
返事はなくて、その代わり、真純のすすり泣きが聞こえてきた。
「おい、真純! どうしたんだ? 何かあったのか?」
「……違うの……なんかね……急に……」
「急に? どうしたの?」
「さ、さびしくなって……」
「どうして電話しないんだよ」
「……お仕事の邪魔になるから……」
「そんなこといいんだよ! とにかく、今から帰るから。……車だから、切るけど、大丈夫?」
「……慶太……早く帰ってきて……」
弱々しい真純の声に、俺はもういてもたってもいられない。
逸る気持ちを抑えられず、久々にムリな運転で、マンションの駐車場につっこんで、エレベーターのボタンを連打をして、ドアまでダッシュ!
「真純!」
でも、リビングに、真純はいなかった。
テーブルには真純がいつも買ってる、食べかけの菓子パンと、冷めたコーヒーがあって、テレビもついて、携帯も、置きっぱなし。
「真純? ただいま」
寝室と、真純の部屋を覗いたけど、やっぱり真純はいなかった。
俺の部屋かな? そう思って覗いたけど、やっぱり真純はいない。
どこに行ったんだろう……まさか……
絶対にそんなはずはない。絶対にありえない。
恐る恐る、ベランダの下を見下ろした。
もちろん、ベランダの下には何もなくて、膝がガクガクして、その場にへたり込む。
「そんなわけないよな……」
一人で呟いて、外に探しに行こうと、玄関に出ると、エレベーターホールからから真純の声が聞こえた。
「真純! どこに……」
「あら、慶太、おかえりなさい」
そう、笑顔で言った真純の後ろには、なぜか山内と藤木が立っていた。
「なんだよ、お前ら!」
「もう、慶太の車、届けにきてくれたんだよ。駐車場の場所、教えてあげたの。さあ、あがって」
いつものタオル地のワンピースにスッピンの真純に、部下二人はにやけ気味で、おじゃまします、と遠慮なく、ずかずかと入っていく。
「わあ、セレブですね! オシャレだなぁ!」
藤木がキョロキョロと見回す。確かに、インテリアのプロだからな、真純は。
山内が、ちらりと藤木と俺を見て、大きなバラとかすみ草と、ランの花束を真純に差し出した。
「真純さん、これ」
ま、真純さん? 馴れ馴れしいな!
「わあ、キレイなお花! でもどうして?」
「お怪我をなされたそうで。僕からのお見舞いです。真純さんのイメージに合わせたんですけど、気に入っていただけましたか?」
キ、キザ……山内って、こんな奴だったのか!
「うん、とっても! 私ね、バラとラン、とっても好きなの! ありがとう、うれしいわ」
山内に続いて、藤木が焦り気味に、小洒落た店で買ったらしきケーキを出した。
「こ、これは僕と、一応、相田からです」
なんだ、こいつら。真純にのぼせてんのか?
「まあ、ありがとう! ここのケーキ、おいしんだよね。みんなで食べようよ。お茶、淹れるね」
「僕がやりましょう。真純さんはケガ人なんですから、座っててください」
山内……お前、マジで真純を狙ってんじゃないだろうな……
「コーヒー淹れるの、結構得意なんですよ」
はあ? 事務所だとそんなことやったことねえだろ!
「ほんと? じゃあ、お願いしちゃおっかな」
「おまかせください。所長、コーヒーどこですか」
「ああ? こっちだよ」
「慶太、花瓶あったよね。これ、生けたいの」
「はいはい」
なんだよ……真純と仲良くしようと思ってたのに。
「あの、真純さん」
藤木、お前まで真純さんとか呼ぶな! 減給するぞ!
「ネットとか、つないでおきましたので」
「え? もう? 早いね! ありがとう。私、パソコンは使えるけど、ああいうのがほんとに苦手なの」
「簡単ですよ。今度、お教えします。それと、これ、僕が会計の勉強始めたころに使ってた本です。よければ読んでみてください」
「わ、ありがとう! ネットでね、いろいろ探したんだけど、どれがいいかわかんなくて……慶太の本は難しいし。遠慮なく借りるね」
藤木は明らかに、本を広げる真純の胸元を凝視している。
おい、人の嫁さんを、エロい目で見るんじゃねえよ!
「藤木! 手伝えよ!」
「え? はあ……」
藤木は渋々立ち上がって、ケーキやら皿を運び始めた。
「これ、いい豆ですね」
うん? おお、山内。お前はわかるのか!
「そうなんだよ。これさ、あんまり日本では売ってなくて」
「へえ。店教えてください」
「うーん、あんまり教えたくないんだけどなあ」
「じゃあいいです」
な、なんだよ……つまんねえ奴!
「今度、買ってきてやるよ」
「ありがとうございます」
考えてみると、こんな風にこいつらと仕事以外のこと、話したの……初めてだなあ。
山内なんて、ずっと一緒に仕事してるのに、コーヒーが好きだとか、キザ野郎だとか、全然知らなかった。
ケーキを食ってる間も、藤木はエロい顔で真純の機嫌をとって、山内はキザに口説きモードに入っている。
なんなんだ、こいつら……これじゃあ、田山が増えただけじゃないか! もう帰れ!
「今、相田一人かよ」
「ええ」
「大丈夫か? あいつ一人で」
「大丈夫でしょう」
ヤロウ二人は俺の話など聞かず、真純にデレデレデレデレしている。
「真純さん、今、素顔ですよね?」
「あっ、そうなの。忘れてた……どうしよう……」
「いえ、とってもおキレイだから、ビックリしました」
「やだあ、山内くん!」
「ほんとにキレイですよねえ。スーツもいいけど、そういうワンピースも……カワイイです」
藤木、お前は、おっぱいしかみてねえだろ。
「山内くんも、藤木くんも、お上手ね」
「お世辞なんかじゃないですよ。僕はお世辞を言わない主義ですから」
「ぼ、僕もです!」
はあ……お前ら、早く帰れよ……
「おい、お前らさ、一応、まだ仕事中だろ」
「まあ、そうですね。じゃあ、真純さん、そろそろ失礼します」
「うん、来てくれてありがとう」
「来月から、会社に行くのが楽しみです」
今は楽しくねえのかよ!
「うん。私も、楽しみ。よろしくお願いします」
二人を見送り、真純はテーブルを片付け始めたけど、片手だからガチャガチャいうだけで、なかなか進まない。
「俺がやるから」
「うん」
真純はソファに座って、残っていた菓子パンを食べ始めた。
「薬、飲んだ?」
「まだ」
「痛みは?」
「ちょっと痛い」
水と薬をテーブルに運んで、俺も隣に座る。
「寂しくなくなったの?」
「うん」
なんだよ……急いで帰って来たのに……
「山内くんも、藤木くんも、いい子だね」
「そうか?」
「来月から、頑張らないと」
「仕事、できそう? 無理しなくていいんだよ」
「家に一人でいると……また寂しくなるから……それに、慶太と一緒にいたいし」
一緒に……思わずにやけてしまう。
「フルでなくてもいいから、真純のペースで来くれたらいいよ。ちょっと、着替えてくるね」
ああ、やっと真純と二人きりになれた。
午後の部屋は暑くて、汗だくになりながら着替えて、エアコンの効いたリビングへ。真純はまだ菓子パンをかじっていて、テレビを見て笑っている。
「何、食べてるの?」
「これ? 高級ジャムパン」
ふん、確かに、袋には高級ジャムパンってかいてある。
「今度、おいしいジャムパン、買ってきてあげるよ。自家製のジャムを使ってるらしいんだ。材料は全部国産で、おいしんだよ、ほんとに」
「へえ、すごいんだ」
真純は興味なさそうに頷いた。
どうやら、真純はあまり食べ物にはこだわりがないらしい。
自分で買って食べてるのは、だいたいコンビニとかスーパーで売ってる菓子パンで、さっきの藤木の持ってきたケーキも、おいしいと喜んでたけど、たぶん、あんまりわかってない。
そもそも、スイーツなんてものを食べてるところを見たことない。
「ほら、ジャムついてる」
「どこ?」
「ここ」
口端についたジャムを指で拭って、舐めてみた。うん、普通の、安いイチゴジャムだ。
「ありがと」
そう呟いた唇に、もうガマンできなくて、キスをすると、さっきの甘ったるいジャムの味がした。
「甘い味がする」
「ジャム?」
「うん」
「パンの中だと、ジャムパンが一番好きなの」
へえ、知らなかった。
「俺はメロンパンかな」
「あ、メロンパンも好き! あとね、チョココルネとか」
「パン、好きなんだ」
「好きって言うか……子供のころ、それしか食べてなかったから、あんまり他のものがわかんないの」
そういうことか……子供の真純にとって、菓子パンが食事だったんだ……
「夜は、何か食べに行こうか」
「うーん、おうちで食べたい」
「じゃあ、寿司でもとろうか」
「うん」
隣でテレビを観て笑う真純の胸元は、相変わらずはちきれそうで、藤木がガン見してたみたいに、俺も横から、ガン見してしまう。
「……胸、見てる?」
「えっ? いや……」
「イヤだったの。年頃のころは…ろくに食べてなかったのに、胸ばっかり大きくなって……中学の頃からね、母親が連れてくる男の人が、私のこと見てニヤニヤ笑うの。それがすごく嫌で……」
「ごめん……」
「別に、あやまんなくていいよ。母親もね、こんな体つきで……自分でもわかってた。男の人が好きな体で、男の人は、そういう目でしか見てないって」
確かに……最初は俺もそうだったよな。
「将吾も、そうだと思ってた」
「え? でも、あいつは……」
「東京に来て、一緒に暮らし始めて、一週間くらいした時かな。今でも、覚えてる。三月なのに、すごく寒い日で、布団がね、一組しかなくて……暖房もないし、くっついて寝るしかなくって……うまくね、できなかったの」
真純は窓の外を見て、ちょっと思い出し笑いをしたけど、俺は、そんな話……
「……あんまり、聞きたくないんだけど」
「あっ! ごめんなさい……なんか、昨日から、昔のこと話したくなっちゃって……今までは、昔の私のこと、慶太には絶対知られたくなかったのに、なんか……ごめんね……」
真純は不安な目で、俺の顔を覗き込んだ。その目が……
「俺って、結構、ヤキモチなんだよ」
真純を抱きしめて、真純の匂いを嗅いだ。昨日のシャンプーの匂い。さっきのジャムの匂い。洗濯物の柔軟剤の匂い。そして、真純の、ちょっと汗ばんだ、首筋の匂い。
「どこにも行くな」
真純は、うん、って頷いた。
「俺しか、見ないでくれよ」
きっと、いろんなことを、乗り越えてこなきゃ、いけなかった。
だけど、俺達は、お互いの気持ちとか、中身とか、過去とか、人生とか、そんなもの関係なしに、いや、知るのが怖くて、お互いにお互いから逃げ続けていた。
お互いを、直視せずに、面倒なこと、嫌なことは見ずに、その時だけの、ただ、二十年を過ごしてしまった。
真純は、過去を背負っている。
俺には想像もできない、過酷で、残酷な過去。
受けとめるって、簡単な言葉。好きなら、そうできると思ってた。今の俺は、真純のことが本当に好きだから、全部、受けとめられると、思っていた。
でも、そんな簡単なことじゃない。
今日、一日の間にも、真純は泣いたり、笑ったり、動揺したり、俺は振り回されっぱなし。
昨日のことだって、俺がもっと、もっと真純に向き合って、ちゃんと受けとめてやっていれば、きっと、起きなかった。
俺は、何もわかっていなかった。
杉本の言葉の意味。過去も、今も、未来も全部、受けとめるって意味。
昨日の真純。病院で、震える真純。駐在所で、俺を待つ真純。ボロボロの、真純。
本当の、真純。
俺が受けとめてやらなきゃ、誰が真純を受けとめるんだよ。俺しかいないじゃないか。俺しか……俺が一番、世界で一番、真純を愛してる。
「……昨日の将吾は、そうだった」
「そう、だった?」
「バカね、私……将吾は、私のことなんて、もう好きじゃないのに」
「どうして?」
「キレイになったって、私のこと見たの。あれはきっと、もう、昔の私じゃないって、ことなんだよね……」
何も言えなかった。
真純は、わかってたんだ……やっぱり、真純は、わかってるんだ。
もう戻れないこと、現実は、もう過去とは違うってこと、杉本は、もう自分のものじゃないってこと。
真純はもう、昔の真純じゃないってこと。
杉本、お前、誤解してるよ。
真純がお前と別れたのは、捨てたんじゃなくて、杉本、お前が真純を縛り付けたから、逃げたんだよ。
昔の自分を捨てたがる真純に、それを禁じた。それはお前の罪なのかもしれないな。
もし、お前が真純が望む通りに、都会に馴染んで、真純が都会の女になっていくことを受け入れてやれれば、真純はお前と一緒にいたんだよ。
なあ、杉本。真純は、欲しがるだけの女じゃない。真純は、自由に生きたいんだよ。暗黒の十八年を、東京で捨てたかった。
でも、お前はそれを許さなかった。
そんな真純を、俺が都会に引き込んだ。東京で生きる真純だけを、俺は見ていた。真純の過去など、関係なく、俺は、真純を、都会の女になった真純だけを、見た。
それが、真純の望み、だった。間違った望みだったかもしれないけど、真純は、そうしたかった。
真純が、俺を選んだのは……いや、その人生を選んだのは……必然、だったのかもしれない。
「俺との、二十年……後悔してる?」
「してるわ」
「……そうか」
「もっと早く、こうやって話せばよかった。そしたら……私達、普通の家族になれてたのに……」
「真純……」
「慶太を選んだこと、一度も後悔したことないの。でも、自分のついた嘘が、どうしても許せなかった。それに、慶太にね、ずっと……コンプレックス、感じてた」
「コンプレックス? そんなもの、ないよ」
「私、キレイになった? 都会の、東京の、オシャレで、いけてる女になった?」
キャビネットのガラスにうつる真純は、飾り気のない、普通の、女。
でも、俺は……そうだな。今の、お前のほうが……好きかも。
「もう、そんなこといいんだよ。もう、そんなことどうでもいいんだ。いけてなくても、俺は真純を愛してる。もう、見た目なんか、どうでもいいんだよ」
真純は、ぼんやりと俺を見た。
「そっか……」
何かが抜け落ちたような顔で、窓の外を眺めて、俺の肩にもたれかかった。
「そうだよね。夫婦だもんね」
「ああ、そうだよ。俺たちは、夫婦なんだよ」
「やっぱり、髪切りたい」
自由に。自由に、真純、自由に、していいんだよ。
「うん。ショートの真純も見てみたいかなって、ちょっと思った……俺も、髪切ろうかな」
「坊主にする?」
「罰ゲームかよ!」
俺達は、二人で笑った。こんな風に笑える日が来るなんて、半年前までは思わなかったよ。
「あ、お薬飲むの、忘れてた」
「ダメだよ、ちゃんと飲まないと。化膿するかもしれないし……それにさ」
「何?」
「こんなパンばっかりじゃ、ダメだよ。ちゃんと食べないと。真純、一人だとご飯、ちゃんと食べてないだろ?」
「……面倒なの」
「料理は上手いのに」
「食べてくれる人がいればね、作るんだけど」
「じゃあ、これからは弁当作ってよ。夜も、できるだけ家で食べるから」
「どうしたの、急に」
「真純の体が心配なんだよ。今まで、結構ムリしてだろ?」
「慶太も、ね」
そうだな……俺たち、結構ムリしてきたよなぁ。肉体的にも、精神的にも。
「でも、あんまり食べると太っちゃうし」
「そんなの気にするなよ。痩せすぎだよ、今は」
と、いいながら、豊満なおっぱいをまた見てしまって……
「また見てる」
「いいじゃん! 夫の特権!」
ちょっと汗ばんだタニマに顔をうずめて……ああ、幸せ! 藤木、どうだ、羨ましいか!
「もう! 暑い!」
「もっと暑くしようよ」
「まだ明るいよ」
「いいじゃん……」
真純、やっぱり俺は、お前が好きだ。お前の過去とか、そんなのさ、もうどうでもいいんだ。昨日のことすら、どうでもいい。
「好きだよ……」
もしかしたら、このソファで、杉本も同じことをしたのかもしれない。
俺も、過去には女を連れ込んだ。あのベッドで、真純を裏切ったこともある。
いろんなことが頭の中をぐるぐる回って、もうどうでもよくなって、腕の中の真純を愛して、幸せだな、俺って。
「カワイイよ」
「明るいと、やっぱり恥ずかしいね」
「事務所でもしちゃいそう」
「ダメだよ! そんなの……」
「いいの。俺の会社だから」
クスクス笑う真純。シクシク泣く真純。一生懸命話す真純。怒ってる真純。冷静な真純。俺に感じてくれる真純。
どの真純も、本当の真純で、どの真純も好きだ。
でも、一番好きなのは、やっぱり……
「私のこと、好き?」
これを聞く時の、真純かな。
「好きだよ」
「私もね、慶太のこと、好き」
「両想いだね」
「うん」
たぶん、これからも、いろんなことがある。いろんなことを、乗り越えていく。二人で、一緒に、乗り越えていく。
この不安な真純を、俺は守って、いつか、真純が本当に安心できるようになる日まで、俺は闘い続けなきゃいけない。
病院に通わせようとか、いろいろ考えたけど、それは最終手段で、少しでも俺の手で、真純を守ってやりたい。
いや、そうしないと、今まで傷つけてきた人たちに、もうしわけが立たない。俺も、中村や聡子さんのように、ただ、受けとめられる人間に、ならないと。
あの夜、俺たちはやり直そうって約束して、やっと両想いを確認して、つきあい始めたのかもしれない。
結婚にたどり着くのは、いつの頃かな。まあ、死ぬまでには……いや、別にいいか。もし、その時がきたら、今度はちゃんと、給料三ヶ月分のエンゲージリングを買って、プロポーズしないとな。
俺はまるで、RPGの主人公だ。時々、中村の宿屋に泊まって回復しねえと、全滅する。
真純と本当の夫婦になれた時に流れるエンドロール、いつの日か……
「愛してるよ、真純」
「私も、愛してる。慶太」
新しい生活。
ソファで俺達は、素肌のままで、これからの新しい生活に、これからの俺達に、想いを馳せた。
だけど、神様ってやつは、どうやら、俺達をまだ、許してくれないらしい。俺達の罪は、俺達に、ずっと重く、償いを求めている。
〈第一部 完〉
「真純? 今から帰るよ。変わりない?」
返事はなくて、その代わり、真純のすすり泣きが聞こえてきた。
「おい、真純! どうしたんだ? 何かあったのか?」
「……違うの……なんかね……急に……」
「急に? どうしたの?」
「さ、さびしくなって……」
「どうして電話しないんだよ」
「……お仕事の邪魔になるから……」
「そんなこといいんだよ! とにかく、今から帰るから。……車だから、切るけど、大丈夫?」
「……慶太……早く帰ってきて……」
弱々しい真純の声に、俺はもういてもたってもいられない。
逸る気持ちを抑えられず、久々にムリな運転で、マンションの駐車場につっこんで、エレベーターのボタンを連打をして、ドアまでダッシュ!
「真純!」
でも、リビングに、真純はいなかった。
テーブルには真純がいつも買ってる、食べかけの菓子パンと、冷めたコーヒーがあって、テレビもついて、携帯も、置きっぱなし。
「真純? ただいま」
寝室と、真純の部屋を覗いたけど、やっぱり真純はいなかった。
俺の部屋かな? そう思って覗いたけど、やっぱり真純はいない。
どこに行ったんだろう……まさか……
絶対にそんなはずはない。絶対にありえない。
恐る恐る、ベランダの下を見下ろした。
もちろん、ベランダの下には何もなくて、膝がガクガクして、その場にへたり込む。
「そんなわけないよな……」
一人で呟いて、外に探しに行こうと、玄関に出ると、エレベーターホールからから真純の声が聞こえた。
「真純! どこに……」
「あら、慶太、おかえりなさい」
そう、笑顔で言った真純の後ろには、なぜか山内と藤木が立っていた。
「なんだよ、お前ら!」
「もう、慶太の車、届けにきてくれたんだよ。駐車場の場所、教えてあげたの。さあ、あがって」
いつものタオル地のワンピースにスッピンの真純に、部下二人はにやけ気味で、おじゃまします、と遠慮なく、ずかずかと入っていく。
「わあ、セレブですね! オシャレだなぁ!」
藤木がキョロキョロと見回す。確かに、インテリアのプロだからな、真純は。
山内が、ちらりと藤木と俺を見て、大きなバラとかすみ草と、ランの花束を真純に差し出した。
「真純さん、これ」
ま、真純さん? 馴れ馴れしいな!
「わあ、キレイなお花! でもどうして?」
「お怪我をなされたそうで。僕からのお見舞いです。真純さんのイメージに合わせたんですけど、気に入っていただけましたか?」
キ、キザ……山内って、こんな奴だったのか!
「うん、とっても! 私ね、バラとラン、とっても好きなの! ありがとう、うれしいわ」
山内に続いて、藤木が焦り気味に、小洒落た店で買ったらしきケーキを出した。
「こ、これは僕と、一応、相田からです」
なんだ、こいつら。真純にのぼせてんのか?
「まあ、ありがとう! ここのケーキ、おいしんだよね。みんなで食べようよ。お茶、淹れるね」
「僕がやりましょう。真純さんはケガ人なんですから、座っててください」
山内……お前、マジで真純を狙ってんじゃないだろうな……
「コーヒー淹れるの、結構得意なんですよ」
はあ? 事務所だとそんなことやったことねえだろ!
「ほんと? じゃあ、お願いしちゃおっかな」
「おまかせください。所長、コーヒーどこですか」
「ああ? こっちだよ」
「慶太、花瓶あったよね。これ、生けたいの」
「はいはい」
なんだよ……真純と仲良くしようと思ってたのに。
「あの、真純さん」
藤木、お前まで真純さんとか呼ぶな! 減給するぞ!
「ネットとか、つないでおきましたので」
「え? もう? 早いね! ありがとう。私、パソコンは使えるけど、ああいうのがほんとに苦手なの」
「簡単ですよ。今度、お教えします。それと、これ、僕が会計の勉強始めたころに使ってた本です。よければ読んでみてください」
「わ、ありがとう! ネットでね、いろいろ探したんだけど、どれがいいかわかんなくて……慶太の本は難しいし。遠慮なく借りるね」
藤木は明らかに、本を広げる真純の胸元を凝視している。
おい、人の嫁さんを、エロい目で見るんじゃねえよ!
「藤木! 手伝えよ!」
「え? はあ……」
藤木は渋々立ち上がって、ケーキやら皿を運び始めた。
「これ、いい豆ですね」
うん? おお、山内。お前はわかるのか!
「そうなんだよ。これさ、あんまり日本では売ってなくて」
「へえ。店教えてください」
「うーん、あんまり教えたくないんだけどなあ」
「じゃあいいです」
な、なんだよ……つまんねえ奴!
「今度、買ってきてやるよ」
「ありがとうございます」
考えてみると、こんな風にこいつらと仕事以外のこと、話したの……初めてだなあ。
山内なんて、ずっと一緒に仕事してるのに、コーヒーが好きだとか、キザ野郎だとか、全然知らなかった。
ケーキを食ってる間も、藤木はエロい顔で真純の機嫌をとって、山内はキザに口説きモードに入っている。
なんなんだ、こいつら……これじゃあ、田山が増えただけじゃないか! もう帰れ!
「今、相田一人かよ」
「ええ」
「大丈夫か? あいつ一人で」
「大丈夫でしょう」
ヤロウ二人は俺の話など聞かず、真純にデレデレデレデレしている。
「真純さん、今、素顔ですよね?」
「あっ、そうなの。忘れてた……どうしよう……」
「いえ、とってもおキレイだから、ビックリしました」
「やだあ、山内くん!」
「ほんとにキレイですよねえ。スーツもいいけど、そういうワンピースも……カワイイです」
藤木、お前は、おっぱいしかみてねえだろ。
「山内くんも、藤木くんも、お上手ね」
「お世辞なんかじゃないですよ。僕はお世辞を言わない主義ですから」
「ぼ、僕もです!」
はあ……お前ら、早く帰れよ……
「おい、お前らさ、一応、まだ仕事中だろ」
「まあ、そうですね。じゃあ、真純さん、そろそろ失礼します」
「うん、来てくれてありがとう」
「来月から、会社に行くのが楽しみです」
今は楽しくねえのかよ!
「うん。私も、楽しみ。よろしくお願いします」
二人を見送り、真純はテーブルを片付け始めたけど、片手だからガチャガチャいうだけで、なかなか進まない。
「俺がやるから」
「うん」
真純はソファに座って、残っていた菓子パンを食べ始めた。
「薬、飲んだ?」
「まだ」
「痛みは?」
「ちょっと痛い」
水と薬をテーブルに運んで、俺も隣に座る。
「寂しくなくなったの?」
「うん」
なんだよ……急いで帰って来たのに……
「山内くんも、藤木くんも、いい子だね」
「そうか?」
「来月から、頑張らないと」
「仕事、できそう? 無理しなくていいんだよ」
「家に一人でいると……また寂しくなるから……それに、慶太と一緒にいたいし」
一緒に……思わずにやけてしまう。
「フルでなくてもいいから、真純のペースで来くれたらいいよ。ちょっと、着替えてくるね」
ああ、やっと真純と二人きりになれた。
午後の部屋は暑くて、汗だくになりながら着替えて、エアコンの効いたリビングへ。真純はまだ菓子パンをかじっていて、テレビを見て笑っている。
「何、食べてるの?」
「これ? 高級ジャムパン」
ふん、確かに、袋には高級ジャムパンってかいてある。
「今度、おいしいジャムパン、買ってきてあげるよ。自家製のジャムを使ってるらしいんだ。材料は全部国産で、おいしんだよ、ほんとに」
「へえ、すごいんだ」
真純は興味なさそうに頷いた。
どうやら、真純はあまり食べ物にはこだわりがないらしい。
自分で買って食べてるのは、だいたいコンビニとかスーパーで売ってる菓子パンで、さっきの藤木の持ってきたケーキも、おいしいと喜んでたけど、たぶん、あんまりわかってない。
そもそも、スイーツなんてものを食べてるところを見たことない。
「ほら、ジャムついてる」
「どこ?」
「ここ」
口端についたジャムを指で拭って、舐めてみた。うん、普通の、安いイチゴジャムだ。
「ありがと」
そう呟いた唇に、もうガマンできなくて、キスをすると、さっきの甘ったるいジャムの味がした。
「甘い味がする」
「ジャム?」
「うん」
「パンの中だと、ジャムパンが一番好きなの」
へえ、知らなかった。
「俺はメロンパンかな」
「あ、メロンパンも好き! あとね、チョココルネとか」
「パン、好きなんだ」
「好きって言うか……子供のころ、それしか食べてなかったから、あんまり他のものがわかんないの」
そういうことか……子供の真純にとって、菓子パンが食事だったんだ……
「夜は、何か食べに行こうか」
「うーん、おうちで食べたい」
「じゃあ、寿司でもとろうか」
「うん」
隣でテレビを観て笑う真純の胸元は、相変わらずはちきれそうで、藤木がガン見してたみたいに、俺も横から、ガン見してしまう。
「……胸、見てる?」
「えっ? いや……」
「イヤだったの。年頃のころは…ろくに食べてなかったのに、胸ばっかり大きくなって……中学の頃からね、母親が連れてくる男の人が、私のこと見てニヤニヤ笑うの。それがすごく嫌で……」
「ごめん……」
「別に、あやまんなくていいよ。母親もね、こんな体つきで……自分でもわかってた。男の人が好きな体で、男の人は、そういう目でしか見てないって」
確かに……最初は俺もそうだったよな。
「将吾も、そうだと思ってた」
「え? でも、あいつは……」
「東京に来て、一緒に暮らし始めて、一週間くらいした時かな。今でも、覚えてる。三月なのに、すごく寒い日で、布団がね、一組しかなくて……暖房もないし、くっついて寝るしかなくって……うまくね、できなかったの」
真純は窓の外を見て、ちょっと思い出し笑いをしたけど、俺は、そんな話……
「……あんまり、聞きたくないんだけど」
「あっ! ごめんなさい……なんか、昨日から、昔のこと話したくなっちゃって……今までは、昔の私のこと、慶太には絶対知られたくなかったのに、なんか……ごめんね……」
真純は不安な目で、俺の顔を覗き込んだ。その目が……
「俺って、結構、ヤキモチなんだよ」
真純を抱きしめて、真純の匂いを嗅いだ。昨日のシャンプーの匂い。さっきのジャムの匂い。洗濯物の柔軟剤の匂い。そして、真純の、ちょっと汗ばんだ、首筋の匂い。
「どこにも行くな」
真純は、うん、って頷いた。
「俺しか、見ないでくれよ」
きっと、いろんなことを、乗り越えてこなきゃ、いけなかった。
だけど、俺達は、お互いの気持ちとか、中身とか、過去とか、人生とか、そんなもの関係なしに、いや、知るのが怖くて、お互いにお互いから逃げ続けていた。
お互いを、直視せずに、面倒なこと、嫌なことは見ずに、その時だけの、ただ、二十年を過ごしてしまった。
真純は、過去を背負っている。
俺には想像もできない、過酷で、残酷な過去。
受けとめるって、簡単な言葉。好きなら、そうできると思ってた。今の俺は、真純のことが本当に好きだから、全部、受けとめられると、思っていた。
でも、そんな簡単なことじゃない。
今日、一日の間にも、真純は泣いたり、笑ったり、動揺したり、俺は振り回されっぱなし。
昨日のことだって、俺がもっと、もっと真純に向き合って、ちゃんと受けとめてやっていれば、きっと、起きなかった。
俺は、何もわかっていなかった。
杉本の言葉の意味。過去も、今も、未来も全部、受けとめるって意味。
昨日の真純。病院で、震える真純。駐在所で、俺を待つ真純。ボロボロの、真純。
本当の、真純。
俺が受けとめてやらなきゃ、誰が真純を受けとめるんだよ。俺しかいないじゃないか。俺しか……俺が一番、世界で一番、真純を愛してる。
「……昨日の将吾は、そうだった」
「そう、だった?」
「バカね、私……将吾は、私のことなんて、もう好きじゃないのに」
「どうして?」
「キレイになったって、私のこと見たの。あれはきっと、もう、昔の私じゃないって、ことなんだよね……」
何も言えなかった。
真純は、わかってたんだ……やっぱり、真純は、わかってるんだ。
もう戻れないこと、現実は、もう過去とは違うってこと、杉本は、もう自分のものじゃないってこと。
真純はもう、昔の真純じゃないってこと。
杉本、お前、誤解してるよ。
真純がお前と別れたのは、捨てたんじゃなくて、杉本、お前が真純を縛り付けたから、逃げたんだよ。
昔の自分を捨てたがる真純に、それを禁じた。それはお前の罪なのかもしれないな。
もし、お前が真純が望む通りに、都会に馴染んで、真純が都会の女になっていくことを受け入れてやれれば、真純はお前と一緒にいたんだよ。
なあ、杉本。真純は、欲しがるだけの女じゃない。真純は、自由に生きたいんだよ。暗黒の十八年を、東京で捨てたかった。
でも、お前はそれを許さなかった。
そんな真純を、俺が都会に引き込んだ。東京で生きる真純だけを、俺は見ていた。真純の過去など、関係なく、俺は、真純を、都会の女になった真純だけを、見た。
それが、真純の望み、だった。間違った望みだったかもしれないけど、真純は、そうしたかった。
真純が、俺を選んだのは……いや、その人生を選んだのは……必然、だったのかもしれない。
「俺との、二十年……後悔してる?」
「してるわ」
「……そうか」
「もっと早く、こうやって話せばよかった。そしたら……私達、普通の家族になれてたのに……」
「真純……」
「慶太を選んだこと、一度も後悔したことないの。でも、自分のついた嘘が、どうしても許せなかった。それに、慶太にね、ずっと……コンプレックス、感じてた」
「コンプレックス? そんなもの、ないよ」
「私、キレイになった? 都会の、東京の、オシャレで、いけてる女になった?」
キャビネットのガラスにうつる真純は、飾り気のない、普通の、女。
でも、俺は……そうだな。今の、お前のほうが……好きかも。
「もう、そんなこといいんだよ。もう、そんなことどうでもいいんだ。いけてなくても、俺は真純を愛してる。もう、見た目なんか、どうでもいいんだよ」
真純は、ぼんやりと俺を見た。
「そっか……」
何かが抜け落ちたような顔で、窓の外を眺めて、俺の肩にもたれかかった。
「そうだよね。夫婦だもんね」
「ああ、そうだよ。俺たちは、夫婦なんだよ」
「やっぱり、髪切りたい」
自由に。自由に、真純、自由に、していいんだよ。
「うん。ショートの真純も見てみたいかなって、ちょっと思った……俺も、髪切ろうかな」
「坊主にする?」
「罰ゲームかよ!」
俺達は、二人で笑った。こんな風に笑える日が来るなんて、半年前までは思わなかったよ。
「あ、お薬飲むの、忘れてた」
「ダメだよ、ちゃんと飲まないと。化膿するかもしれないし……それにさ」
「何?」
「こんなパンばっかりじゃ、ダメだよ。ちゃんと食べないと。真純、一人だとご飯、ちゃんと食べてないだろ?」
「……面倒なの」
「料理は上手いのに」
「食べてくれる人がいればね、作るんだけど」
「じゃあ、これからは弁当作ってよ。夜も、できるだけ家で食べるから」
「どうしたの、急に」
「真純の体が心配なんだよ。今まで、結構ムリしてだろ?」
「慶太も、ね」
そうだな……俺たち、結構ムリしてきたよなぁ。肉体的にも、精神的にも。
「でも、あんまり食べると太っちゃうし」
「そんなの気にするなよ。痩せすぎだよ、今は」
と、いいながら、豊満なおっぱいをまた見てしまって……
「また見てる」
「いいじゃん! 夫の特権!」
ちょっと汗ばんだタニマに顔をうずめて……ああ、幸せ! 藤木、どうだ、羨ましいか!
「もう! 暑い!」
「もっと暑くしようよ」
「まだ明るいよ」
「いいじゃん……」
真純、やっぱり俺は、お前が好きだ。お前の過去とか、そんなのさ、もうどうでもいいんだ。昨日のことすら、どうでもいい。
「好きだよ……」
もしかしたら、このソファで、杉本も同じことをしたのかもしれない。
俺も、過去には女を連れ込んだ。あのベッドで、真純を裏切ったこともある。
いろんなことが頭の中をぐるぐる回って、もうどうでもよくなって、腕の中の真純を愛して、幸せだな、俺って。
「カワイイよ」
「明るいと、やっぱり恥ずかしいね」
「事務所でもしちゃいそう」
「ダメだよ! そんなの……」
「いいの。俺の会社だから」
クスクス笑う真純。シクシク泣く真純。一生懸命話す真純。怒ってる真純。冷静な真純。俺に感じてくれる真純。
どの真純も、本当の真純で、どの真純も好きだ。
でも、一番好きなのは、やっぱり……
「私のこと、好き?」
これを聞く時の、真純かな。
「好きだよ」
「私もね、慶太のこと、好き」
「両想いだね」
「うん」
たぶん、これからも、いろんなことがある。いろんなことを、乗り越えていく。二人で、一緒に、乗り越えていく。
この不安な真純を、俺は守って、いつか、真純が本当に安心できるようになる日まで、俺は闘い続けなきゃいけない。
病院に通わせようとか、いろいろ考えたけど、それは最終手段で、少しでも俺の手で、真純を守ってやりたい。
いや、そうしないと、今まで傷つけてきた人たちに、もうしわけが立たない。俺も、中村や聡子さんのように、ただ、受けとめられる人間に、ならないと。
あの夜、俺たちはやり直そうって約束して、やっと両想いを確認して、つきあい始めたのかもしれない。
結婚にたどり着くのは、いつの頃かな。まあ、死ぬまでには……いや、別にいいか。もし、その時がきたら、今度はちゃんと、給料三ヶ月分のエンゲージリングを買って、プロポーズしないとな。
俺はまるで、RPGの主人公だ。時々、中村の宿屋に泊まって回復しねえと、全滅する。
真純と本当の夫婦になれた時に流れるエンドロール、いつの日か……
「愛してるよ、真純」
「私も、愛してる。慶太」
新しい生活。
ソファで俺達は、素肌のままで、これからの新しい生活に、これからの俺達に、想いを馳せた。
だけど、神様ってやつは、どうやら、俺達をまだ、許してくれないらしい。俺達の罪は、俺達に、ずっと重く、償いを求めている。
〈第一部 完〉
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