。ねこじょんねめき

風枝ちよ

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第1章 夏

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週明け。

「今日は川島さん来んったいね」

創太くんと2人でご飯を食べるのは意外に久しぶりで、ちょっと嬉しい。

「うん……」
「何かしたと?」
「したっていうか……」
「されたと?!」

口下手な僕の下手すぎる説明。

「要は、川島さんにキスられそうになったけど、それ拒んだてきな?」

創太くんがうまくまとめてくれた。キスるなんていう動詞は初耳。

「うん、そう」

創太くんの顔が浮かんだことは秘密。
あれ、でもなんで……。

「とりあえず卵焼きくれん?」
「あ、いいよ」

卵焼き人気事件。
不思議。

「てかなんで来んっちゃろ」
「んー……」
「他、なんかしたっちゃない?」
「何もしてないよ」

なんで来ないんだろ。
創太くんが言うように、僕は何かしたんだろうか。気づいてないだけで。
不安。
先輩に訊きに行こうかな。

「直接訊いてきたら?」
「そうする!」

僕は、空の弁当箱を片付けて席を立つ。
と。

「村瀬っ!」

息が乱れた先輩が、ドアを開ける。声大きいですよ。

「すまん!」
「どうしたんですか?」

ドアに歩く。このままだとクラス全員の注目が。

「今日委員会あってな。それで来れなかった」

廊下に出て、ドアを閉める。

「そうなんですか」
「ほんと、すまん!!」
「いえ、全然……」
「そうか、ありがとな!」

明日は来るから、と言って先輩は帰っていく。
僕も教室に入る。

「先輩、
「委員会やったらしいね」
「え?」
「聞こえとった。声ばりでかいし」

創太くんはふわりと笑う。
落ち着く。
創太くんは好きな人とかいるのかな。
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