29 / 114
本編
28、ルカの暗躍2
しおりを挟む
十で一族が滅び、十一で魔導師になった。それから三年、青剣騎士団の第一騎士として、ファリーナ帝国に潜入している。
ルカはボナート公爵家に来ていた。もちろん、幻影魔法を使い、自分の姿を消しているため、誰にも知られていない。
ボナート公爵家では、シェリル経由で呼びつけておいた通り、ボナート公爵とバレージ伯爵、そして、メラーニア子爵が揃っていた。
三人の男が、召使も置かずに気まずそうに話し合っている。
「うちとボナート公爵が話しているのは、まずいんだが……」
ため息をつくのは、バレージ伯爵だ。小太りでたっぷりと髭を蓄えている豪快な男だ。
「仕方ない。応じない選択肢はないからね」
鋭い眼差しの割に口調が柔らかいボナート公爵は、お茶に手を伸ばしている。
「失礼ですが、なぜ私がこの場に?」
そして、緊張した面持ちの神経質そうな男が、メラーニア子爵である。妃たちの生家の集まりとしては、彼は浮いている。
「一応、儂が呼び出したことになってるが、儂も呼び出された口だ。娘に言われたら断れん」
バレージ伯爵は、あっさりシェリル経由であることを白状する。ボナート公爵はそれを予想していたのだろう。あまり驚いていなかった。
少しの間会話を盗み聞きながら、外の様子を伺う。人払いがされていて、三人以外に周囲に人がいないことをルカは確認した。
「第二皇子妃のことですか? なぜ妃殿下が?」
「その後ろにいる奴が呼んだんだ。儂とて会いたくないわ」
バレージ伯爵が肩をすくめたところで、ルカは彼の後ろから姿を現した。
「それは悪かったな。バレージ伯爵。利用し終えたらおまえは煮豚にでもしてやるよ」
「うわっ。いきなりでてくるな」
バレージ伯爵が飛び上がり、ボナート公爵がわずかに目を見開く。
そして、メラーニア子爵が立ち上がると、腰の剣に手をかけた。彼は若い頃は騎士として経験を積んでいたと記憶している。
「どうも。俺はルカ。カヴァニス公爵家の生き残りだ」
ルカは目を指差して、メラーニア子爵に言った。他の二人にはすでに姿を見せたことがある。
ルカは透き通った紫の瞳をしている。カヴァニス公爵家の血を引く者は、特徴的な紫眼とも言われる紫の瞳を持っていた。ただ、この体は借り物だが……。
「メラーニア子爵、妹に足を引っ張られたな」
「何を……。ボナート公爵、バレージ伯爵、彼が呼びつけたと?」
驚きはしても拒絶はしない二人を見て、メラーニア子爵はルカが呼び出し主であることを悟る。
「妹には、これから一切皇子宮に行くなと命じておけ。まぁ、そもそも皇子宮に呼びつけたのは、エヴァリストだがな」
くすくす笑ってみせると、メラーニア子爵は不可解そうな顔になる。
「おや、聞いてなかったか? エヴァリストの愛人候補をリュシアーナの侍女として潜り込ませるためにエステルを皇子宮に呼んだんだぞ?」
「証拠は……?」
エステルが何のためにエヴァリスト不在の皇子宮に向かったのか、それを聞く余裕はなかったらしい。
「エヴァリストにでも聞けば? 会ってくれないだろうけど」
エヴァリストとしては、メラーニア子爵が被った罰を肩代わりしろと言われたくはない。しばらくは避けるだろう。
メラーニア子爵がわずかに歯を食いしばったところを見るにすでに断られた後かもしれない。
「……先ほどから皇子殿下や妃殿下に無礼ではないのか」
若造に揶揄されて、メラーニア子爵は、苦し紛れに指摘する。
ルカがそれを鼻で笑うと、メラーニア子爵が気色ばむ。
「メラーニア子爵、この者は、ファリーナ帝国で唯一皇帝陛下に頭を下げなくても良い御方だ」
ボナート公爵が口を挟んだ。メラーニア子爵少し考え込んだ後、はっとした様子でルカを見た。
「…………まさか」
「おや? 忘れられていないようでなにより」
へらへら笑うとメラーニア子爵はもの言いたそうな顔ではあるものの、剣から手を離して席についた。
「あんまり揶揄わんでくれよ」
バレージ伯爵から小言が飛んでくる。無視した。
リュシアーナとシェリルは好きだが、その父親はどうでもいい。ルカに対する負い目があるから、利用しているだけだ。
「次の徴収分の税は、俺が出してやる。バレージ伯爵、俺の金を秘密裏にメラーニア子爵領に運べ」
「……わかっている」
メラーニア子爵が突拍子もない申し出に顔をあげた。そして、バレージ伯爵が苦い顔で頷く。
ルカの資産は、今、バレージ商会に預けているのだ。ルカには魔法使いの国で稼いだ莫大な資産がある。
「メラーニア子爵で何をするつもりだい?」
ボナート公爵が尋ねてきた。だが、ルカは答えるつもりはない。
「おまえは、ベルティ辺境伯と交流を持て。一度でいいから、メラーニア子爵とカリナ・ベルティ辺境伯夫人が話せる場を用意しろ」
代わりに命令すれば、ボナート公爵は諦めたように頷いた。物分かりが良い。
「何をするおつもりなのですか?」
堪らなくなったメラーニア子爵が、同じようにルカに問う。
メラーニア子爵領とベルティ辺境伯領は、隣り合っている。二人を繋いでおけば、好き勝手に帝都の目が届かない所で密談できる。
「あとはカリナに聞け」
「……いくらあなたでも何も知らずに手を貸すことなどできかねます」
メラーニア子爵は、ルカをまっすぐ見て言った。
「おまえに拒否権はない。大人しく言うことを聞くか、俺に殺されるかだ」
ルカは到底納得しないであろう答えを返して、魔法で姿を消した。そのまま音もなく移動する。
「ボナート公爵、バレージ伯爵……。あの方は本当に信じても良いのでしょうか?」
屋敷から出たところで、メラーニア子爵の震える声が聞こえた。
魔導師となったルカは、五感が常人離れしている。多少の距離なら、声も全て聞こえ、聞き分けるだけの頭も持っていた。
「わからない。だが、私は彼に従い、せめてもの罪滅ぼしをするつもりだ」
「メラーニア子爵、あいつは気をつけろ。儂らの命は軽い。邪魔だと思えば、息をするように殺してくるぞ」
ボナート公爵とバレージ伯爵が各々メラーニア子爵に声をかける。
「……はい。それは雰囲気でわかります。しかし、あの方の目指す先が何なのか。それを知らなければ取り返しのつかないことになりませんか?」
ルカがどうでもいいと思っていることは、三人には伝わったようだ。彼らが役に立たなければ、他の人間を使うだけ。
「完全には否定しきれないが、彼はうちの娘を気に入っている。だから、そう悪いことは起こらないよ」
「だろうな。うちもシェリルには甘えてたからな。カリナ・ベルティを含め、あいつが気に入っている女が何人かいる。女が生きてれば、今より悪くはならんだろうさ」
ルカは少し立ち止まった。
(そんな女好きみたいな言い方はなくない?)
だが、改めて彼らに対する態度を考えると、あながち間違いでもない。
「まぁ、どうでもいいことか」
ルカは考えることをやめて受け入れた。
そして、ルカは、第三皇子の皇子宮に戻ってくる。
官舎にある自室の隅は、ごちゃごちゃと物が積まれている。そして、そこをさらにかき回して目当てのものを取り出した。そろそろ片付けないと同居人に怒られそうだ。
「さて、どうするかなぁ」
ルカは一人、剣を手に取る。デュラハンが使っていた剣だ。その剣は特徴的で、鍔がなく、刃は細く薄い。
カヴァニス公爵家には、六本の特別製の剣が存在する。そのうちの一本が、これだ。
カヴァニス公爵家の壊滅に伴い、家に保管していた二本は、行方不明だ。また、一本は、亡きカヴァニス公爵が皇帝に献上していた。
そして、もともと紛失している剣が二本ある。カヴァニス公爵家はわりと杜撰だった。
「少し遊ぼうか」
何も楽しくないけれど……。
「おいで」
ルカが呼ぶと、すぐに二匹の白い狼が現れる。布に包んだ剣を差し出すと、それを咥えて消えた。
「――ルカ」
「おかえりー」
狼が去ったところで、同居人が帰ってくる。ルカは窓から外を眺めながら応えた。
「新しく入団する騎士についてだが」
真面目なアルトは、いつも仕事の話だ。だが、彼の落ち着いた声は聞いていて心地よい。
「なに? 好きなの入れていいぞ」
「違う。新人騎士がほとんどだろう。何か意図があるのか?」
「うん。既存の騎士は、若い俺らに反発するだろうから。馴染みのある奴らを入れたんだ」
「よく考えてるな」
彼の言葉には裏表がない。感心しているのが伝わってくる。
皆んなが彼のようなら面倒な世界ではなくなるのに。
脳裏によぎった言葉を打ち消して、ルカはにやりと笑む。本心を隠すには、笑顔が一番だ。先生たちから習ったことだ。
「おやおや、騎士団長の息子のおまえなら、誰でも御して当然だったか?」
「先輩を少しは敬え」
揶揄うと少しズレた説教が飛んでくる。ルカはそれに笑い声をあげた。
「明日は朝早いぞ。さぁ、一緒に寝よう!」
そして、靴を脱ぎ捨てて、アルトの寝台に入り、馬鹿みたいに彼を誘う。すぐさま枕が飛んできた。
「うぐっ」
「気色悪い」
顔に直撃し、呻いた隙に下にあった枕が引き抜かれて、彼は向かいの寝台に入っていた。寝台はよくても、枕は気にするらしい。
ルカは面白くなってきて、また笑う。アルトとは見習い時代から同室で、付き合いが長い。なのに、彼はルカの本名も本性も何もかも知らないままだ。
「うるさい。寝ろ」
笑っていたら、また小言が飛んできたのだった。
ルカはボナート公爵家に来ていた。もちろん、幻影魔法を使い、自分の姿を消しているため、誰にも知られていない。
ボナート公爵家では、シェリル経由で呼びつけておいた通り、ボナート公爵とバレージ伯爵、そして、メラーニア子爵が揃っていた。
三人の男が、召使も置かずに気まずそうに話し合っている。
「うちとボナート公爵が話しているのは、まずいんだが……」
ため息をつくのは、バレージ伯爵だ。小太りでたっぷりと髭を蓄えている豪快な男だ。
「仕方ない。応じない選択肢はないからね」
鋭い眼差しの割に口調が柔らかいボナート公爵は、お茶に手を伸ばしている。
「失礼ですが、なぜ私がこの場に?」
そして、緊張した面持ちの神経質そうな男が、メラーニア子爵である。妃たちの生家の集まりとしては、彼は浮いている。
「一応、儂が呼び出したことになってるが、儂も呼び出された口だ。娘に言われたら断れん」
バレージ伯爵は、あっさりシェリル経由であることを白状する。ボナート公爵はそれを予想していたのだろう。あまり驚いていなかった。
少しの間会話を盗み聞きながら、外の様子を伺う。人払いがされていて、三人以外に周囲に人がいないことをルカは確認した。
「第二皇子妃のことですか? なぜ妃殿下が?」
「その後ろにいる奴が呼んだんだ。儂とて会いたくないわ」
バレージ伯爵が肩をすくめたところで、ルカは彼の後ろから姿を現した。
「それは悪かったな。バレージ伯爵。利用し終えたらおまえは煮豚にでもしてやるよ」
「うわっ。いきなりでてくるな」
バレージ伯爵が飛び上がり、ボナート公爵がわずかに目を見開く。
そして、メラーニア子爵が立ち上がると、腰の剣に手をかけた。彼は若い頃は騎士として経験を積んでいたと記憶している。
「どうも。俺はルカ。カヴァニス公爵家の生き残りだ」
ルカは目を指差して、メラーニア子爵に言った。他の二人にはすでに姿を見せたことがある。
ルカは透き通った紫の瞳をしている。カヴァニス公爵家の血を引く者は、特徴的な紫眼とも言われる紫の瞳を持っていた。ただ、この体は借り物だが……。
「メラーニア子爵、妹に足を引っ張られたな」
「何を……。ボナート公爵、バレージ伯爵、彼が呼びつけたと?」
驚きはしても拒絶はしない二人を見て、メラーニア子爵はルカが呼び出し主であることを悟る。
「妹には、これから一切皇子宮に行くなと命じておけ。まぁ、そもそも皇子宮に呼びつけたのは、エヴァリストだがな」
くすくす笑ってみせると、メラーニア子爵は不可解そうな顔になる。
「おや、聞いてなかったか? エヴァリストの愛人候補をリュシアーナの侍女として潜り込ませるためにエステルを皇子宮に呼んだんだぞ?」
「証拠は……?」
エステルが何のためにエヴァリスト不在の皇子宮に向かったのか、それを聞く余裕はなかったらしい。
「エヴァリストにでも聞けば? 会ってくれないだろうけど」
エヴァリストとしては、メラーニア子爵が被った罰を肩代わりしろと言われたくはない。しばらくは避けるだろう。
メラーニア子爵がわずかに歯を食いしばったところを見るにすでに断られた後かもしれない。
「……先ほどから皇子殿下や妃殿下に無礼ではないのか」
若造に揶揄されて、メラーニア子爵は、苦し紛れに指摘する。
ルカがそれを鼻で笑うと、メラーニア子爵が気色ばむ。
「メラーニア子爵、この者は、ファリーナ帝国で唯一皇帝陛下に頭を下げなくても良い御方だ」
ボナート公爵が口を挟んだ。メラーニア子爵少し考え込んだ後、はっとした様子でルカを見た。
「…………まさか」
「おや? 忘れられていないようでなにより」
へらへら笑うとメラーニア子爵はもの言いたそうな顔ではあるものの、剣から手を離して席についた。
「あんまり揶揄わんでくれよ」
バレージ伯爵から小言が飛んでくる。無視した。
リュシアーナとシェリルは好きだが、その父親はどうでもいい。ルカに対する負い目があるから、利用しているだけだ。
「次の徴収分の税は、俺が出してやる。バレージ伯爵、俺の金を秘密裏にメラーニア子爵領に運べ」
「……わかっている」
メラーニア子爵が突拍子もない申し出に顔をあげた。そして、バレージ伯爵が苦い顔で頷く。
ルカの資産は、今、バレージ商会に預けているのだ。ルカには魔法使いの国で稼いだ莫大な資産がある。
「メラーニア子爵で何をするつもりだい?」
ボナート公爵が尋ねてきた。だが、ルカは答えるつもりはない。
「おまえは、ベルティ辺境伯と交流を持て。一度でいいから、メラーニア子爵とカリナ・ベルティ辺境伯夫人が話せる場を用意しろ」
代わりに命令すれば、ボナート公爵は諦めたように頷いた。物分かりが良い。
「何をするおつもりなのですか?」
堪らなくなったメラーニア子爵が、同じようにルカに問う。
メラーニア子爵領とベルティ辺境伯領は、隣り合っている。二人を繋いでおけば、好き勝手に帝都の目が届かない所で密談できる。
「あとはカリナに聞け」
「……いくらあなたでも何も知らずに手を貸すことなどできかねます」
メラーニア子爵は、ルカをまっすぐ見て言った。
「おまえに拒否権はない。大人しく言うことを聞くか、俺に殺されるかだ」
ルカは到底納得しないであろう答えを返して、魔法で姿を消した。そのまま音もなく移動する。
「ボナート公爵、バレージ伯爵……。あの方は本当に信じても良いのでしょうか?」
屋敷から出たところで、メラーニア子爵の震える声が聞こえた。
魔導師となったルカは、五感が常人離れしている。多少の距離なら、声も全て聞こえ、聞き分けるだけの頭も持っていた。
「わからない。だが、私は彼に従い、せめてもの罪滅ぼしをするつもりだ」
「メラーニア子爵、あいつは気をつけろ。儂らの命は軽い。邪魔だと思えば、息をするように殺してくるぞ」
ボナート公爵とバレージ伯爵が各々メラーニア子爵に声をかける。
「……はい。それは雰囲気でわかります。しかし、あの方の目指す先が何なのか。それを知らなければ取り返しのつかないことになりませんか?」
ルカがどうでもいいと思っていることは、三人には伝わったようだ。彼らが役に立たなければ、他の人間を使うだけ。
「完全には否定しきれないが、彼はうちの娘を気に入っている。だから、そう悪いことは起こらないよ」
「だろうな。うちもシェリルには甘えてたからな。カリナ・ベルティを含め、あいつが気に入っている女が何人かいる。女が生きてれば、今より悪くはならんだろうさ」
ルカは少し立ち止まった。
(そんな女好きみたいな言い方はなくない?)
だが、改めて彼らに対する態度を考えると、あながち間違いでもない。
「まぁ、どうでもいいことか」
ルカは考えることをやめて受け入れた。
そして、ルカは、第三皇子の皇子宮に戻ってくる。
官舎にある自室の隅は、ごちゃごちゃと物が積まれている。そして、そこをさらにかき回して目当てのものを取り出した。そろそろ片付けないと同居人に怒られそうだ。
「さて、どうするかなぁ」
ルカは一人、剣を手に取る。デュラハンが使っていた剣だ。その剣は特徴的で、鍔がなく、刃は細く薄い。
カヴァニス公爵家には、六本の特別製の剣が存在する。そのうちの一本が、これだ。
カヴァニス公爵家の壊滅に伴い、家に保管していた二本は、行方不明だ。また、一本は、亡きカヴァニス公爵が皇帝に献上していた。
そして、もともと紛失している剣が二本ある。カヴァニス公爵家はわりと杜撰だった。
「少し遊ぼうか」
何も楽しくないけれど……。
「おいで」
ルカが呼ぶと、すぐに二匹の白い狼が現れる。布に包んだ剣を差し出すと、それを咥えて消えた。
「――ルカ」
「おかえりー」
狼が去ったところで、同居人が帰ってくる。ルカは窓から外を眺めながら応えた。
「新しく入団する騎士についてだが」
真面目なアルトは、いつも仕事の話だ。だが、彼の落ち着いた声は聞いていて心地よい。
「なに? 好きなの入れていいぞ」
「違う。新人騎士がほとんどだろう。何か意図があるのか?」
「うん。既存の騎士は、若い俺らに反発するだろうから。馴染みのある奴らを入れたんだ」
「よく考えてるな」
彼の言葉には裏表がない。感心しているのが伝わってくる。
皆んなが彼のようなら面倒な世界ではなくなるのに。
脳裏によぎった言葉を打ち消して、ルカはにやりと笑む。本心を隠すには、笑顔が一番だ。先生たちから習ったことだ。
「おやおや、騎士団長の息子のおまえなら、誰でも御して当然だったか?」
「先輩を少しは敬え」
揶揄うと少しズレた説教が飛んでくる。ルカはそれに笑い声をあげた。
「明日は朝早いぞ。さぁ、一緒に寝よう!」
そして、靴を脱ぎ捨てて、アルトの寝台に入り、馬鹿みたいに彼を誘う。すぐさま枕が飛んできた。
「うぐっ」
「気色悪い」
顔に直撃し、呻いた隙に下にあった枕が引き抜かれて、彼は向かいの寝台に入っていた。寝台はよくても、枕は気にするらしい。
ルカは面白くなってきて、また笑う。アルトとは見習い時代から同室で、付き合いが長い。なのに、彼はルカの本名も本性も何もかも知らないままだ。
「うるさい。寝ろ」
笑っていたら、また小言が飛んできたのだった。
3
あなたにおすすめの小説
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
手放したのは、貴方の方です
空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。
侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。
隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。
一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。
彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。
手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。
私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?
みこと。
恋愛
鉛色の髪と目を持つクローディアは"鉱石姫"と呼ばれ、婚約者ランバートからおざなりに扱われていた。
「俺には"宝石姫"であるタバサのほうが相応しい」そう言ってランバートは、新年祭のパートナーに、クローディアではなくタバサを伴う。
(あんなヤツ、こっちから婚約破棄してやりたいのに!)
現代日本にはなかった身分差のせいで、伯爵令嬢クローディアは、侯爵家のランバートに逆らえない。
そう、クローディアは転生者だった。現代知識で鉱石を扱い、カイロはじめ防寒具をドレス下に仕込む彼女は、冷えに苦しむ他国の王女リアナを助けるが──。
なんとリアナ王女の正体は、王子リアンで?
この出会いが、クローディアに新しい道を拓く!
※小説家になろう様でも「私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね? 〜不実な婚約者を見限って。冷え性令嬢は、熱愛を希望します」というタイトルで掲載しています。
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる