76 / 150
第76話 うつりにけりな
しおりを挟む
森の中はうす暗く、明かりはすぐに届かなくなる。
暗くなるにつれ、それに合わせて走る速度を緩めていく。
秋葉が呼吸を整えつつ、周囲も見渡し現在地を確認する。
私も同じようにあたりを見渡し位置を確認しようとする。
枝打ちされた木々の割合とわずかに差し込む明かり、それを目安にして広場からの距離を推し量る。
もちろん、下草の量と地面の固さ、乾き具合によってもある程度それらを推察することが可能だ。
「で、エシュリンはどこにいるんだ、ナビー?」
秋葉蒼が尋ねてくる。
「うーん、わかんない……、たぶん、このあたりだと思うけど……」
周囲を見渡しながら質問に答える。
「これ以上奥には行ってないと思う」
この先は下草だらけ、尖った枝だらけ、しかも踏み固めてないからぬかるんでいて歩きにくい。
さらに下草や枝のせいで広場の明かりも届かず暗闇に包まれている。
なので、エシュリンがひとりで奥のほうまで行くことは考えづらい。
「うーん……」
「少し探してみるか……」
と、秋葉が注意深くあたりを警戒しながら歩きだす。
「というか、ナビー、いい加減シャツの中から出てくれないか?」
「いや」
シャツの中に首をひっこめて彼の背中にしがみ付く。
「い、いやって、ナビーもいやだろ、いつもまでも俺の背中にいるの?」
「やだ!」
と、力強く否定する。
「ナビーがいいなら、いいけど、俺もいやじゃないし……」
「うん」
出たくても出られないんだよね、水着がすけすけだから。
そして、しばらく歩くと、
「本当はこういうの危ないんだけどな……、道に迷う原因になる……」
と、秋葉が足を止めてつぶやく。
「うん?」
もぞもぞと彼の背中をよじ登って前方を見る。
「ああ……」
そこは少しひらけた場所だった。
でも、完全に木を伐採したわけではなく、何本かの木はそのまま生い茂り、また、伐採したばかりであろう木材も無造作に置かれていた。
「星明かり、月明かりに照らされて、遠くから見るとラグナロク広場のように明るく見える……」
確かに危ないね。
勘違いから方向感覚も狂う。
「もしかして、エシュリン、方向を見失って森の奥のほうに行っちゃったのかな……?」
「どうだろうな……」
彼女に限ってそんなわけないか……。
なにしろエシュリンは現地の人間、こういった深い森には慣れているはず。
私たちはひらけた場所に足を踏み入れる。
「お?」
なんか木の枝にひらひらとした被服のようなものがかけてあるぞ。
その被服のようなものの柄は白地に水玉模様……。
「あれは!」
私の浴衣だ!
さらに、よく見ると浴衣の下にはちゃんとピンクの鼻緒の下駄まで置いてある!
おお、やっと着替えられる。
塗れた水着を脱いで浴衣に着替えたい。
「よし、蒼、あそこに向かって!」
と、腕を出して浴衣の方角を指し示す。
「しっ!」
でも、秋葉に制止される。
「うん……?」
「誰か来た、隠れろ」
秋葉は数歩下がって下草の裏に身を隠す。
しゃがんであたりを警戒していると、ザッザッ、と云う足音が聞えてきた。
「本当に来た」
いつも思うけど、こいつの索敵能力って凄まじいよね……。
「それで、誰、追手?」
「おそらく……」
私は目を細めてその相手を確かめようとする。
森の奥、暗がりの中からランタンを携えてその人物は出てきた。
星明りに照らされたその姿は……。
綺麗に整えた黒い髪と銀縁のメガネ、その奥の鋭い目と聡明そうな瞳。
身長はそれほど高くないが、細身でバランスの取れた肢体を持つ男性。
「人見か……」
そう、それは参謀班の人見彰吾だった。
「彰吾……、金の斧の池にはいなかったよね、見回りかな?」
「こんなところを……? 俺たちを探しに来たんじゃないのか?」
「うーん、どっちだろ、彰吾なら、みんなが迷子にならないように見回り役を買って出そうな気もするんだけど……」
「ええ? あの人見が? そんなイメージじゃないな……」
と、私たちはひそひそと話し合う。
そして、人見が広場の中央に進み出て手にしたランタンをかざしてあたりを見渡す。
明かりがこちらに向けられたので、私たちは茂みに身を隠す。
「誰もいないか……」
人見が小さくつぶやく。
やっぱり見回りだね。
私たちは、そっと茂みから顔を出して、人見の行動を見守りつつ、彼が立ち去るのを待つ……、けど……、
「うん? なんだ、これは?」
人見が何かを発見したみたい。
彼がランタンをかざして見上げる先には……。
「服……?」
そう、私の浴衣だ。
人見が近くの切り株にランタンを置き、そして、私の浴衣に手を伸ばす。
「こ、これは……、浴衣か……、帯もある……」
私の浴衣を手に取り、まじまじと見つめる。
そして、そのまま私の浴衣を口元に持っていく……。
「くん、くんくん……」
と、匂いを嗅ぎ始める……。
「こ、これは……」
少し離して、再度、私の浴衣をまじまじと見つめる。
「くんくん、くんくん……」
そして、また匂いを嗅ぐ。
な、なんていうか、親の顔よりよく見た光景だよね……。
「何をやっているんだ、あいつ……?」
秋葉が怪訝そうに眉間に皺を寄せる。
「くんくん、くんくん……」
と、人見は夢中で私の浴衣の匂いを嗅いでいる……。
「くんくん、くんくん、くんくん……」
……。
これは、ひどいわ……。
「くんくん、くんくん……」
許せん、こらしめてやる。
「蒼、チャンスよ、立って」
と、小声で耳打ちする。
「チャンス?」
「そう、チャンス、彼を倒す大チャンスよ」
「ナビー、本気か? やつは強いぞ」
「物理的に戦うのならね……、でも、これから行うのは心理戦、彰吾の心を折る戦いよ、蒼、私の指示に従って」
「わかった、どうすればいい?」
「まずは、彼が私の浴衣に夢中になっている隙を付いてうしろから気付かれないように近づいて、その先の指示は追って出すから」
「わかった」
と、静かに立ち上がり、茂みから出で広場の中に入っていく。
「そーっとね」
「おうさ」
私たちはそっと、彼の背後から忍び寄る。
「くんくん、くんくん……」
彼は夢中で私の浴衣の匂いを嗅ぎ続けている……。
「そっと、そっとね……」
「お、おう……」
慎重に、音を立てずに歩いていく……。
「くんくん、くんくん……」
くんくんは私の浴衣に顔をうずめて匂いを嗅いでいる……。
「くんくん、くんくん……」
匂いを嗅ぐのに夢中で全くの無防備に見える……。
「じゃぁ、蒼、彼の後ろから手で目隠ししてみて」
「え、目隠し……?」
「そう、目隠しよ、私じゃ届かないから」
私は秋葉の背中、シャツの中にいるので手を伸ばしても届かない。
「目隠ししたら、あとは何もしなくていいから、交渉は私がする」
「わ、わかった……」
そーっと、近づき、秋葉が人見の前に腕をまわして、その目元を両手で押さえる。
「くん……?」
くんくんが動きを止める。
そして、私は身を乗りだし、彼の耳元に顔を近づけて言ってやる、
「めぇ……」
と。
おっと、間違った、それはシウスだ。
「ねぇ……、彰吾……、私、誰だと思う……?」
と、言ってやる。
「く、くん……、い、いや……」
匂いを嗅いでいた私の浴衣をゆっくりと下ろす。
「わかるよね、彰吾……?」
「ふっ……、さぁな、誰だろうなぁ……」
人見がかすかに笑うと、目隠ししている秋葉の手に自分の手を上から重ねる。
「わからないなぁ……」
と、おもむろに秋葉の手を掴む。
「この手は誰のかなぁ……」
秋葉の手を掴み、そのまま口元に持って行き、唇をつける。
「うーん、誰のかわからないなぁ……、味はどうなんだろうなぁ……」
とか、言い出して秋葉の手の甲をぺろぺろとなめだした。
「ちょっと酸味があるかなぁ……、どれ、こっちは……」
今度は秋葉の指をしゃぶりだす……。
「おお、酸味に加えて塩気もあるな、あと少しだけとろみも……」
こ、これ、どうすればいいんだろ……?
「でも、この味には覚えがある……、そう、この味は……、ナビー、キミだね……?」
と、秋葉の手を口から離して、ゆっくりと振り返る。
そして、秋葉と人見、二人の目が合う。
「い、いや、それ、俺の手だぜ、人見……」
「いっぎゃあああああああ!?」
よっぽど驚いたのか、人見がぴょーんと飛び跳ねて、そのまま腰を抜かして地面にへたり込む。
「ああああ、ああ、ああき、あき、秋葉かぁああああ!?」
驚愕の表情で秋葉を見上げる。
「ああ、残念だけどな……」
「なな、な、なんで、秋葉が、ナビーはどうした、ナビーの声だっただろ!?」
「いや、それがな、なんか、ごめんな……」
「そ、それに、なんだ、その服は、伸びきっているじゃないか、何か入っているのか、その腹に!?」
と、秋葉の腹のあたりを指差して叫ぶ。
「いや、なんでもないぜ、ナビーなんていない」
秋葉が少し笑いを含んだ声で答える。
「じゃぁ、なんなんだ、それはぁあ!?」
「いや、気にするなよ、人見……」
と、秋葉が人見のもとに歩いていく。
「それよりさぁ、あの人見彰吾さんにこんな趣味があるとは思わなかったなぁ……、あ、思い出したぜ、前の露天風呂攻防戦の時、その時もナビーの風呂を覗きたいとか言ってたよな? みんなは冗談としか受け取ってなかったけど、まさか、本気だったとはなぁ、いやぁ、まいった……」
そして、人見がへたり込んでいる前にしゃがみ視線を合わせる。
「う、うぐ、そ、それは……」
「そこでさ……、ちょっと相談なんだが、取引しないか、人見……?」
秋葉が人見の肩に手を置き、ニヤリと笑う。
「取引?」
「ああ、そうさ、ちょっともみ消して欲しい案件があるんだ、実は……」
なんか、秋葉が人見を脅迫してるんだけど……。
暗くなるにつれ、それに合わせて走る速度を緩めていく。
秋葉が呼吸を整えつつ、周囲も見渡し現在地を確認する。
私も同じようにあたりを見渡し位置を確認しようとする。
枝打ちされた木々の割合とわずかに差し込む明かり、それを目安にして広場からの距離を推し量る。
もちろん、下草の量と地面の固さ、乾き具合によってもある程度それらを推察することが可能だ。
「で、エシュリンはどこにいるんだ、ナビー?」
秋葉蒼が尋ねてくる。
「うーん、わかんない……、たぶん、このあたりだと思うけど……」
周囲を見渡しながら質問に答える。
「これ以上奥には行ってないと思う」
この先は下草だらけ、尖った枝だらけ、しかも踏み固めてないからぬかるんでいて歩きにくい。
さらに下草や枝のせいで広場の明かりも届かず暗闇に包まれている。
なので、エシュリンがひとりで奥のほうまで行くことは考えづらい。
「うーん……」
「少し探してみるか……」
と、秋葉が注意深くあたりを警戒しながら歩きだす。
「というか、ナビー、いい加減シャツの中から出てくれないか?」
「いや」
シャツの中に首をひっこめて彼の背中にしがみ付く。
「い、いやって、ナビーもいやだろ、いつもまでも俺の背中にいるの?」
「やだ!」
と、力強く否定する。
「ナビーがいいなら、いいけど、俺もいやじゃないし……」
「うん」
出たくても出られないんだよね、水着がすけすけだから。
そして、しばらく歩くと、
「本当はこういうの危ないんだけどな……、道に迷う原因になる……」
と、秋葉が足を止めてつぶやく。
「うん?」
もぞもぞと彼の背中をよじ登って前方を見る。
「ああ……」
そこは少しひらけた場所だった。
でも、完全に木を伐採したわけではなく、何本かの木はそのまま生い茂り、また、伐採したばかりであろう木材も無造作に置かれていた。
「星明かり、月明かりに照らされて、遠くから見るとラグナロク広場のように明るく見える……」
確かに危ないね。
勘違いから方向感覚も狂う。
「もしかして、エシュリン、方向を見失って森の奥のほうに行っちゃったのかな……?」
「どうだろうな……」
彼女に限ってそんなわけないか……。
なにしろエシュリンは現地の人間、こういった深い森には慣れているはず。
私たちはひらけた場所に足を踏み入れる。
「お?」
なんか木の枝にひらひらとした被服のようなものがかけてあるぞ。
その被服のようなものの柄は白地に水玉模様……。
「あれは!」
私の浴衣だ!
さらに、よく見ると浴衣の下にはちゃんとピンクの鼻緒の下駄まで置いてある!
おお、やっと着替えられる。
塗れた水着を脱いで浴衣に着替えたい。
「よし、蒼、あそこに向かって!」
と、腕を出して浴衣の方角を指し示す。
「しっ!」
でも、秋葉に制止される。
「うん……?」
「誰か来た、隠れろ」
秋葉は数歩下がって下草の裏に身を隠す。
しゃがんであたりを警戒していると、ザッザッ、と云う足音が聞えてきた。
「本当に来た」
いつも思うけど、こいつの索敵能力って凄まじいよね……。
「それで、誰、追手?」
「おそらく……」
私は目を細めてその相手を確かめようとする。
森の奥、暗がりの中からランタンを携えてその人物は出てきた。
星明りに照らされたその姿は……。
綺麗に整えた黒い髪と銀縁のメガネ、その奥の鋭い目と聡明そうな瞳。
身長はそれほど高くないが、細身でバランスの取れた肢体を持つ男性。
「人見か……」
そう、それは参謀班の人見彰吾だった。
「彰吾……、金の斧の池にはいなかったよね、見回りかな?」
「こんなところを……? 俺たちを探しに来たんじゃないのか?」
「うーん、どっちだろ、彰吾なら、みんなが迷子にならないように見回り役を買って出そうな気もするんだけど……」
「ええ? あの人見が? そんなイメージじゃないな……」
と、私たちはひそひそと話し合う。
そして、人見が広場の中央に進み出て手にしたランタンをかざしてあたりを見渡す。
明かりがこちらに向けられたので、私たちは茂みに身を隠す。
「誰もいないか……」
人見が小さくつぶやく。
やっぱり見回りだね。
私たちは、そっと茂みから顔を出して、人見の行動を見守りつつ、彼が立ち去るのを待つ……、けど……、
「うん? なんだ、これは?」
人見が何かを発見したみたい。
彼がランタンをかざして見上げる先には……。
「服……?」
そう、私の浴衣だ。
人見が近くの切り株にランタンを置き、そして、私の浴衣に手を伸ばす。
「こ、これは……、浴衣か……、帯もある……」
私の浴衣を手に取り、まじまじと見つめる。
そして、そのまま私の浴衣を口元に持っていく……。
「くん、くんくん……」
と、匂いを嗅ぎ始める……。
「こ、これは……」
少し離して、再度、私の浴衣をまじまじと見つめる。
「くんくん、くんくん……」
そして、また匂いを嗅ぐ。
な、なんていうか、親の顔よりよく見た光景だよね……。
「何をやっているんだ、あいつ……?」
秋葉が怪訝そうに眉間に皺を寄せる。
「くんくん、くんくん……」
と、人見は夢中で私の浴衣の匂いを嗅いでいる……。
「くんくん、くんくん、くんくん……」
……。
これは、ひどいわ……。
「くんくん、くんくん……」
許せん、こらしめてやる。
「蒼、チャンスよ、立って」
と、小声で耳打ちする。
「チャンス?」
「そう、チャンス、彼を倒す大チャンスよ」
「ナビー、本気か? やつは強いぞ」
「物理的に戦うのならね……、でも、これから行うのは心理戦、彰吾の心を折る戦いよ、蒼、私の指示に従って」
「わかった、どうすればいい?」
「まずは、彼が私の浴衣に夢中になっている隙を付いてうしろから気付かれないように近づいて、その先の指示は追って出すから」
「わかった」
と、静かに立ち上がり、茂みから出で広場の中に入っていく。
「そーっとね」
「おうさ」
私たちはそっと、彼の背後から忍び寄る。
「くんくん、くんくん……」
彼は夢中で私の浴衣の匂いを嗅ぎ続けている……。
「そっと、そっとね……」
「お、おう……」
慎重に、音を立てずに歩いていく……。
「くんくん、くんくん……」
くんくんは私の浴衣に顔をうずめて匂いを嗅いでいる……。
「くんくん、くんくん……」
匂いを嗅ぐのに夢中で全くの無防備に見える……。
「じゃぁ、蒼、彼の後ろから手で目隠ししてみて」
「え、目隠し……?」
「そう、目隠しよ、私じゃ届かないから」
私は秋葉の背中、シャツの中にいるので手を伸ばしても届かない。
「目隠ししたら、あとは何もしなくていいから、交渉は私がする」
「わ、わかった……」
そーっと、近づき、秋葉が人見の前に腕をまわして、その目元を両手で押さえる。
「くん……?」
くんくんが動きを止める。
そして、私は身を乗りだし、彼の耳元に顔を近づけて言ってやる、
「めぇ……」
と。
おっと、間違った、それはシウスだ。
「ねぇ……、彰吾……、私、誰だと思う……?」
と、言ってやる。
「く、くん……、い、いや……」
匂いを嗅いでいた私の浴衣をゆっくりと下ろす。
「わかるよね、彰吾……?」
「ふっ……、さぁな、誰だろうなぁ……」
人見がかすかに笑うと、目隠ししている秋葉の手に自分の手を上から重ねる。
「わからないなぁ……」
と、おもむろに秋葉の手を掴む。
「この手は誰のかなぁ……」
秋葉の手を掴み、そのまま口元に持って行き、唇をつける。
「うーん、誰のかわからないなぁ……、味はどうなんだろうなぁ……」
とか、言い出して秋葉の手の甲をぺろぺろとなめだした。
「ちょっと酸味があるかなぁ……、どれ、こっちは……」
今度は秋葉の指をしゃぶりだす……。
「おお、酸味に加えて塩気もあるな、あと少しだけとろみも……」
こ、これ、どうすればいいんだろ……?
「でも、この味には覚えがある……、そう、この味は……、ナビー、キミだね……?」
と、秋葉の手を口から離して、ゆっくりと振り返る。
そして、秋葉と人見、二人の目が合う。
「い、いや、それ、俺の手だぜ、人見……」
「いっぎゃあああああああ!?」
よっぽど驚いたのか、人見がぴょーんと飛び跳ねて、そのまま腰を抜かして地面にへたり込む。
「ああああ、ああ、ああき、あき、秋葉かぁああああ!?」
驚愕の表情で秋葉を見上げる。
「ああ、残念だけどな……」
「なな、な、なんで、秋葉が、ナビーはどうした、ナビーの声だっただろ!?」
「いや、それがな、なんか、ごめんな……」
「そ、それに、なんだ、その服は、伸びきっているじゃないか、何か入っているのか、その腹に!?」
と、秋葉の腹のあたりを指差して叫ぶ。
「いや、なんでもないぜ、ナビーなんていない」
秋葉が少し笑いを含んだ声で答える。
「じゃぁ、なんなんだ、それはぁあ!?」
「いや、気にするなよ、人見……」
と、秋葉が人見のもとに歩いていく。
「それよりさぁ、あの人見彰吾さんにこんな趣味があるとは思わなかったなぁ……、あ、思い出したぜ、前の露天風呂攻防戦の時、その時もナビーの風呂を覗きたいとか言ってたよな? みんなは冗談としか受け取ってなかったけど、まさか、本気だったとはなぁ、いやぁ、まいった……」
そして、人見がへたり込んでいる前にしゃがみ視線を合わせる。
「う、うぐ、そ、それは……」
「そこでさ……、ちょっと相談なんだが、取引しないか、人見……?」
秋葉が人見の肩に手を置き、ニヤリと笑う。
「取引?」
「ああ、そうさ、ちょっともみ消して欲しい案件があるんだ、実は……」
なんか、秋葉が人見を脅迫してるんだけど……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜
Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。
目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。
だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、
神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。
そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、
挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。
そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、
さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。
妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。
笑い、シリアス、涙、そして家族愛。
騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。
※小説家になろう様でも掲載しております。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる