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最初で最後の
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「最後なんだからなー」
担任が最後を強調する。俺たちは受験生。そう。卒業する。
だから今年は色々なことに最後がついてくる。
帰宅部の俺は放課後窓際で日々テキストと向き合っていた。
ここがこうなるから…。
ある時は化学の。ある時は数学の。
休憩がてら窓の外の世界を見るのが楽しみだった。
部活生たちが各々練習する姿。頑張っている人達をみて自分に喝を入れていた。
五月の終わり。高体連を終えた生徒たちが続々と引退する。
最後の外周。
最後のノック。
最後のシュート。
最後のドリブル。
最後の素振り。
それぞれ違う表情を浮かべながら、少しじめっとしたこの夏。部室を後にした
最高学年だから。
たったそれだけの理由でクオリティが求められる世界。
話の構成も、ダンスの上手さも。他学年より上でなければならない。
「練習するよー」
クラスの中心人物が声をかける。
エアコンもない初夏の教室。生ぬるい空気だけが滞っている。
汗と制汗剤の匂いが混じり合った。青春の匂いを表すのならばこんな匂いなのかもしれない。
そして本番。
これまでの練習を。練習以上のものを出し切る。
「ありがとうございました!」
三十七人。みなの声が揃ったこの瞬間。
最後の文化祭が幕を閉じた。
大掃除。その言葉だけで年の終わりを感じさせる。
いつもは掃除しない。
教壇の下。窓の右上。机の裏。
一年間の汚れを綺麗に洗い流す。
こんなにここ汚かったんだ。
普段何気なく使っているもの達の裏の顔を知る。ありがとう。自然と感謝が出た。
最後のお弁当。
血糖値が上がって。
最後の六時間目の眠気。
「気をつけ。さようなら」
最後のさようなら。
入学したてはおぼつかない足で通ったこの道。
最後の定期券をかざして改札を出る。
「卒業生が退場します」
教頭の発した合図に従い卒業生が赤と白で彩られた体育館を後にする。
「写真撮ろうぜー」
式が終わったあとの廊下ではみながこの瞬間を小さな箱の中に収めていた。
俺はそんな同級生を横目に教室へ向かった。
最後のこの席。
「とうあ!こんなところにいた!探したんだよ」
「ごめんね、最後のこの席堪能したくて」
「ほんと好きだよねー」
「うん、すき」
「みんなもう集まってるよ。はやくいこ!」
「わかったよ」
鼻根まで伸びた前髪が風で揺れる。
あぁ。この時間も最後か。
最後に浸りながら彼女の手首を掴み、引き止める。
そして最初の…
頬を桜色に染めた彼女が呟く。
「ばか」
最初で最後のこの瞬間。
照れくささと甘酸っぱい匂いを残した教室に桜の花びらが舞い降りる。
担任が最後を強調する。俺たちは受験生。そう。卒業する。
だから今年は色々なことに最後がついてくる。
帰宅部の俺は放課後窓際で日々テキストと向き合っていた。
ここがこうなるから…。
ある時は化学の。ある時は数学の。
休憩がてら窓の外の世界を見るのが楽しみだった。
部活生たちが各々練習する姿。頑張っている人達をみて自分に喝を入れていた。
五月の終わり。高体連を終えた生徒たちが続々と引退する。
最後の外周。
最後のノック。
最後のシュート。
最後のドリブル。
最後の素振り。
それぞれ違う表情を浮かべながら、少しじめっとしたこの夏。部室を後にした
最高学年だから。
たったそれだけの理由でクオリティが求められる世界。
話の構成も、ダンスの上手さも。他学年より上でなければならない。
「練習するよー」
クラスの中心人物が声をかける。
エアコンもない初夏の教室。生ぬるい空気だけが滞っている。
汗と制汗剤の匂いが混じり合った。青春の匂いを表すのならばこんな匂いなのかもしれない。
そして本番。
これまでの練習を。練習以上のものを出し切る。
「ありがとうございました!」
三十七人。みなの声が揃ったこの瞬間。
最後の文化祭が幕を閉じた。
大掃除。その言葉だけで年の終わりを感じさせる。
いつもは掃除しない。
教壇の下。窓の右上。机の裏。
一年間の汚れを綺麗に洗い流す。
こんなにここ汚かったんだ。
普段何気なく使っているもの達の裏の顔を知る。ありがとう。自然と感謝が出た。
最後のお弁当。
血糖値が上がって。
最後の六時間目の眠気。
「気をつけ。さようなら」
最後のさようなら。
入学したてはおぼつかない足で通ったこの道。
最後の定期券をかざして改札を出る。
「卒業生が退場します」
教頭の発した合図に従い卒業生が赤と白で彩られた体育館を後にする。
「写真撮ろうぜー」
式が終わったあとの廊下ではみながこの瞬間を小さな箱の中に収めていた。
俺はそんな同級生を横目に教室へ向かった。
最後のこの席。
「とうあ!こんなところにいた!探したんだよ」
「ごめんね、最後のこの席堪能したくて」
「ほんと好きだよねー」
「うん、すき」
「みんなもう集まってるよ。はやくいこ!」
「わかったよ」
鼻根まで伸びた前髪が風で揺れる。
あぁ。この時間も最後か。
最後に浸りながら彼女の手首を掴み、引き止める。
そして最初の…
頬を桜色に染めた彼女が呟く。
「ばか」
最初で最後のこの瞬間。
照れくささと甘酸っぱい匂いを残した教室に桜の花びらが舞い降りる。
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