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偽り
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「電話しない?」
数十キロメートル離れた彼。距離と共に2人の心も離れてしまった。
「電話」
心が近かった頃は私からばかり発していたこの言葉。彼から聞いたのは初めてかもしれない。
少し考えてから私は。
「いいよ」
了承の意を彼に伝えた。
「もしもし」
「もしもし」
彼の言葉を繰り返す。久し振りに聞いた彼の声。
「彼氏…出来た?」
探るように。ようにというか、探っているのだけれど。
「まだだよ」
息を吐くように嘘をつく。
『彼と別れて六日が経った頃、あの人に告られた。恋人がいるわけでもないし、顔が悪いわけでもない。
「いいよ」
私は軽い言葉を返した。』
「彼氏いないんだ。俺も最近別れちゃってさ」
穴埋めかな。まあなんでもいいや。好意さえ向けてくれれば。
「そうなんだ。つらいね」
意味もなく同情する。
「じゃあさ、じゃあさ!」
「ん?」
「楽しい話しよっか!」
最近あったことをただひたすら、一方的に話し続けた。どんどん彼の声色が明るくなっていく。
「さとちゃんさぁ、」
何度も呼ばれたその名。
「かわいいね」
前はかわいいなんか全然言ってくれなかったのに。
どこで身につけたのだろうか。その甘い言葉。
「楽しそうに話してるのかわいい」
「えへへ。言われ慣れないから照れる」
私もどこで身につけちゃったんだろう。こんな嘘。
私がかわいいのなんて知っている。かわいいって思われるように言葉を紡いでいるのだから。
電気も付けず遮光カーテンだけ閉めた昼の部屋。
沈みゆくベッドの中で私は。
彼との危ない関係へ引きづり込まれていく。
数十キロメートル離れた彼。距離と共に2人の心も離れてしまった。
「電話」
心が近かった頃は私からばかり発していたこの言葉。彼から聞いたのは初めてかもしれない。
少し考えてから私は。
「いいよ」
了承の意を彼に伝えた。
「もしもし」
「もしもし」
彼の言葉を繰り返す。久し振りに聞いた彼の声。
「彼氏…出来た?」
探るように。ようにというか、探っているのだけれど。
「まだだよ」
息を吐くように嘘をつく。
『彼と別れて六日が経った頃、あの人に告られた。恋人がいるわけでもないし、顔が悪いわけでもない。
「いいよ」
私は軽い言葉を返した。』
「彼氏いないんだ。俺も最近別れちゃってさ」
穴埋めかな。まあなんでもいいや。好意さえ向けてくれれば。
「そうなんだ。つらいね」
意味もなく同情する。
「じゃあさ、じゃあさ!」
「ん?」
「楽しい話しよっか!」
最近あったことをただひたすら、一方的に話し続けた。どんどん彼の声色が明るくなっていく。
「さとちゃんさぁ、」
何度も呼ばれたその名。
「かわいいね」
前はかわいいなんか全然言ってくれなかったのに。
どこで身につけたのだろうか。その甘い言葉。
「楽しそうに話してるのかわいい」
「えへへ。言われ慣れないから照れる」
私もどこで身につけちゃったんだろう。こんな嘘。
私がかわいいのなんて知っている。かわいいって思われるように言葉を紡いでいるのだから。
電気も付けず遮光カーテンだけ閉めた昼の部屋。
沈みゆくベッドの中で私は。
彼との危ない関係へ引きづり込まれていく。
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