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しとしとと降り続く雨の音。この時期が過ぎれば今度は蝉の音の大合唱となるだろう。部屋の中は雨音のみで、俺はベッドに横たわりながらただ湿っぽい空気を吸っていた。最近夜明け前には目が覚めてしまう。二度寝すると痛い目にあうので、この時間に覚醒したのならそのまま寝ずに起床時間到達を待つ。
ぼーっとしながらも考え出すのはいつも彼のことで。今何をしてるだろう。…まあ、絶対寝てるよな。
恐ろしいくらいのスピードで彼と付き合うことになった。別にそうなるよう仕向けた訳でもないし何かを期待していた訳でもない。それなのにいつのまにか、しかも彼の方から告白してくれた。
驚いて喜んだ。嬉しかった。俺の恋愛は一生実らないものだと決めつけていたから。誰かを好きにならなければ苦しまずにすむのにそれも無理な話で、だからといってすぐ誰かに惹かれることもなく。時たま訪れる恋ってものに俺はいつも翻弄され、その度に自分のおかしさを自覚せずにいられなくて、そういった日々が辛かった。
今でも思っている。何で俺は違うんだろう。何で体と心がちぐはぐなんだろう。人々が恋愛をして行き着く最終目的地は子孫繁栄なはずだ。つまり俺の恋愛は無駄で。これにはなんも意味がなくて、なんの未来もない。
そこに春也が現れた。それじゃあ彼の恋愛だって無駄だというのか?俺と同じ立場だとして、世界の目的が未来の赤ん坊だとして。それなら俺達のこの感情って一体何なんだろう。
春也はいつも笑ってる。少なくとも俺の前では。彼もこんなこと考えたり悩んだりするのだろうか。どうしようもないことを考えたり、苦しんだりするのだろうか。俺はいつもぶっきらぼうで無愛想で気が利くことひとつも言えないけど、今春也も苦しんでるのなら。俺との関係で苦しんでいるのなら?俺が苦しませてるなら、もういっそのことやっぱり、最初からなかったことにした方がいいんじゃないかって。無駄な感情には蓋をして、感情を押し殺して、皆の中に紛れて生きていった方がいいんじゃないかってそう思ったりもし「ブーーーーーブーーーーーブーーーーー
……?
ブーーーーーブーーーーーブーーーーー
……電話。今まだ4時前なんだけど?
ブーーーーーブーーーーーブーーーーー
スマホのディスプレイには春也の文字が浮かんでいた。
なんだこのタイミング。俺のこと監視してるのかよ。普通なら寝てるだろこの時間。
「早えよ、何時だと思ってんだよ」
「……おはよう」
「……うん、まあ、おはよう」
「ごめん寝てる時間に。なんか話したくなっちゃって。あの、昨日は俺んち来てくれて、ありがと」
「うん?あ、いや、こちらこそお邪魔しました」
多分、昨日二人で初めてくっつきあったからかもしれない。離れてみて、改めてあの体温を思い出してこんな気分になっているんだと思う。多分春也も。
好きなのに違和感がある。この違和感を気にしないという風には俺はまだなれなくて。でも、迷いの中思い出すのは春也の猫っ毛の柔らかさだった。昨日、すごい幸せだった。怖いくらい。春也はどうだっただろうか。
「なんか、昨日のこと思い出してたらあんま眠れなくて」
「うん、まあ、俺もそんな感じ」
「秋、ときたまふと不安そうな顔するしさ」
「…俺?」
「うん」
「ごめん、別に不安だったりそんなのは…」
「そりゃあると思うよ。だって俺ら同じだもん」
「………」
「でもさ、昨日沢山秋の顔触っちゃったの思い出してさあ。幸せだった。またくっつきたいとか思ってたらつい電話しちゃった。起こしてごめんね」
喜んで落ち込んで、幸せで不幸せでってそんな毎日。歪なものは歪だし、違和感だって付き纏う。だけどこんなにも愛しい。不安の中でだってこんなにも愛しい。今はそれでいいのかもしれない。迷いながらも想い続けることはできる。俺は春也が好きだ。
「俺も色々思い出してた。早く会いたい。」
それから数十分ぽつりぽつりと話をした。どうってことない話。たまに笑う春也の声がくすぐったくて、さっきの不安はひとまず消え去った。
悩んで考え込んで、葛藤はこれからもずっと続いていくんだろう。でもその度に拭い合っていけばいい。怖くても辛くても、今はきっとそれでいい。大丈夫。
春也に再び眠気がやってきたのを見計らい電話を切った。
彼におやすみと言えるってことが、今、とても嬉しい。
ぼーっとしながらも考え出すのはいつも彼のことで。今何をしてるだろう。…まあ、絶対寝てるよな。
恐ろしいくらいのスピードで彼と付き合うことになった。別にそうなるよう仕向けた訳でもないし何かを期待していた訳でもない。それなのにいつのまにか、しかも彼の方から告白してくれた。
驚いて喜んだ。嬉しかった。俺の恋愛は一生実らないものだと決めつけていたから。誰かを好きにならなければ苦しまずにすむのにそれも無理な話で、だからといってすぐ誰かに惹かれることもなく。時たま訪れる恋ってものに俺はいつも翻弄され、その度に自分のおかしさを自覚せずにいられなくて、そういった日々が辛かった。
今でも思っている。何で俺は違うんだろう。何で体と心がちぐはぐなんだろう。人々が恋愛をして行き着く最終目的地は子孫繁栄なはずだ。つまり俺の恋愛は無駄で。これにはなんも意味がなくて、なんの未来もない。
そこに春也が現れた。それじゃあ彼の恋愛だって無駄だというのか?俺と同じ立場だとして、世界の目的が未来の赤ん坊だとして。それなら俺達のこの感情って一体何なんだろう。
春也はいつも笑ってる。少なくとも俺の前では。彼もこんなこと考えたり悩んだりするのだろうか。どうしようもないことを考えたり、苦しんだりするのだろうか。俺はいつもぶっきらぼうで無愛想で気が利くことひとつも言えないけど、今春也も苦しんでるのなら。俺との関係で苦しんでいるのなら?俺が苦しませてるなら、もういっそのことやっぱり、最初からなかったことにした方がいいんじゃないかって。無駄な感情には蓋をして、感情を押し殺して、皆の中に紛れて生きていった方がいいんじゃないかってそう思ったりもし「ブーーーーーブーーーーーブーーーーー
……?
ブーーーーーブーーーーーブーーーーー
……電話。今まだ4時前なんだけど?
ブーーーーーブーーーーーブーーーーー
スマホのディスプレイには春也の文字が浮かんでいた。
なんだこのタイミング。俺のこと監視してるのかよ。普通なら寝てるだろこの時間。
「早えよ、何時だと思ってんだよ」
「……おはよう」
「……うん、まあ、おはよう」
「ごめん寝てる時間に。なんか話したくなっちゃって。あの、昨日は俺んち来てくれて、ありがと」
「うん?あ、いや、こちらこそお邪魔しました」
多分、昨日二人で初めてくっつきあったからかもしれない。離れてみて、改めてあの体温を思い出してこんな気分になっているんだと思う。多分春也も。
好きなのに違和感がある。この違和感を気にしないという風には俺はまだなれなくて。でも、迷いの中思い出すのは春也の猫っ毛の柔らかさだった。昨日、すごい幸せだった。怖いくらい。春也はどうだっただろうか。
「なんか、昨日のこと思い出してたらあんま眠れなくて」
「うん、まあ、俺もそんな感じ」
「秋、ときたまふと不安そうな顔するしさ」
「…俺?」
「うん」
「ごめん、別に不安だったりそんなのは…」
「そりゃあると思うよ。だって俺ら同じだもん」
「………」
「でもさ、昨日沢山秋の顔触っちゃったの思い出してさあ。幸せだった。またくっつきたいとか思ってたらつい電話しちゃった。起こしてごめんね」
喜んで落ち込んで、幸せで不幸せでってそんな毎日。歪なものは歪だし、違和感だって付き纏う。だけどこんなにも愛しい。不安の中でだってこんなにも愛しい。今はそれでいいのかもしれない。迷いながらも想い続けることはできる。俺は春也が好きだ。
「俺も色々思い出してた。早く会いたい。」
それから数十分ぽつりぽつりと話をした。どうってことない話。たまに笑う春也の声がくすぐったくて、さっきの不安はひとまず消え去った。
悩んで考え込んで、葛藤はこれからもずっと続いていくんだろう。でもその度に拭い合っていけばいい。怖くても辛くても、今はきっとそれでいい。大丈夫。
春也に再び眠気がやってきたのを見計らい電話を切った。
彼におやすみと言えるってことが、今、とても嬉しい。
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