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契りの行末
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陽彩は二十八、朧は十八になった。
陽彩は私の通う高校で日本史の教師をしており、心通い合うふたりはさも仲睦まじく相引きでもしているのかと思いきや……
「信っじらんない! 私が同級生に告白されても笑ってスルーとか!? あのまま迫られでもしたらどうするつもりだったのよ!」
「だって、朧怪力じゃん。あの男子生徒くらいどうにでもできるでしょ?」
「そうだけど! そうなんだけどさぁ! そこはなんて言うか、陽彩の愛の力? を、見せてほしかったっていうかさぁ」
「いや、だって、バレたら困るでしょ? 特に朧なんて、先生と付き合ってるなんて知られたら学校居られなくなるし……」
「それでも! 私の不安も察してよばか!」
思春期の乙女心を舐めないでほしい。素直になれないくせに甘えたくて、でも先生と生徒だからって遠慮して……。陽彩は分かってない。優しくて穏やかでイケメンで、どれだけの生徒が陽彩に想いを寄せてることか。そんなのに揺らぐことはないって分かってても、不安なことに変わりはないわけで。
「それに……」
「ん?」
触れたい。
付き合い始めたのが二年前。陽彩とは家が隣で、互いの気持ちは痛いほど分かってはいたものの、一応体裁を気にして十六まではそういう関係には発展しなかった。
そして十六になって高校に入学したのち、陽彩から告白された。
嬉しかった。何度も魂の輪廻を重ねてようやく人間として巡り逢えて、気持ちが通じて、死ぬほど嬉しかった。
なのに。
「な、なんでもない!」
付き合う、とは名ばかりで、交際する男女がするような触れ合いが今まで一切ない。
触れたい。抱きしめたい。大きな胸に飛び込んで、大好きって伝えて。
キス、したい。
でもそんなこと言えない。言えるはずもない。だって私は生徒で、陽彩は先生。私が行動を起こしたことで陽彩の立場が悪くなるような真似は絶対にしたくなかったから。
「んで、喧嘩したと」
「……ん。ていうか、陽彩は喧嘩とも思ってないけど」
「お前が一方的に怒ってるわけね。つかぬことを聞くけど、この痴話喧嘩、入学して何度目よ?」
「……百十八回」
「数えてんのかよ。はぁ。ようやるわ、お前たち」
愚痴を聞く友人の名前は明(あきら)。本人も自覚しているので言ってしまうと、安倍晴明の生まれ変わりである。全員に前世の記憶がある上、私と陽彩の関係を知っているのは明くらいなので、愚痴を聞く係に徹しているらしいが、
「俺にしときゃいいのに」
「それ、陽彩に言っていい?」
「いや嘘。ごめんなさい言わないでください」
隙あらば告ってくるようなやつだ。しかし穏やかな陽彩が、空手、剣道、合気道の全国大会優勝者であることを知る明は、陽彩を敵に回したくはないらしい。
「早く仲直りしろよ~」
じゃあな、と、明は部活へ向かった。
……分かってる。全部私のわがままで、理不尽をぶつけてるのも分かってる。それでも不安にならずには居られない。
前世ではこんなに不安になることはなかった。
魂が繋がってると分かっていたから。
でも今は不安で仕方ない。
陽彩の態度は、私だけ特別だなんてことはなく。他の生徒と同じ。
魂の声も、今は聴こえない。
「陽彩は平気なのかな」
それとももう、私のことなんて一生徒にしか思ってないのかな。
◆
今年の夏は暑かった。残って勉強しているうちにうたた寝していたようで、しかし冷房があまり効いていない教室内は暑さが充満していて、深い眠りを妨げた。
「ん……あつ……、ってえぇぇ!」
「こんなところで寝てると熱中症になっちゃうよ。寝るなら準備室においでっていつも言ってるのに」
起きたらびっくり。目の前で陽彩が覗き込んでいた。心臓に悪い。
「な! だ、だって、さっき喧嘩したばっか……」
「朧が勝手に怒ったんでしょ?」
「それは! そうだけど。だって陽彩、私が誰に告られたって、全く気にしないんだもん……私のこと、どうでもいいのかなって」
つい、本人に言ってしまった。陽彩が驚いた顔をする。
「朧さ、本気でそう思ってるの?」
「え?」
「僕はさ、前世であったことも、前世で抱いた感情も、現世で朧に抱いている感情も、全部を大事にしているつもりだよ。朧には伝わってないの?」
陽彩の声色がいつもと違う。いつもより低くて、若干の怒りを帯びている。
それでも私は、陽彩に聞きたかった。私の存在の意味を。現世で抱いているという感情が、本当に恋愛感情なのかを。
「だって! 昔みたいに分からないんだもん。昔は陽彩の声がいつでも聴こえてた。だから安心できた。でも今は違う。聴こえないんだから、陽彩の態度見るしかないじゃない。 でも、私だけ特別なんてことなくて。ほんとに私のこと好きなのかなって、不安、なんだもん……」
「伝えてきた……つもりだったんだけどな」
「……っ、」
「朧が生まれて、すぐに朧の存在を感じた。だから朧の家の隣に引っ越してまで、僕は僕の気持ちを伝えてきたつもりだった。だから朧を不安にすることなんてないって、そう思ってきた。でも、伝わってなかったのかな」
「それは、分かってるけど……」
「……僕はさ、離れたくないと思ってるけど。でも今の時代って難しいものだね。恋愛は自由なはずなのに、僕たちはちっとも自由じゃない。こうやって目の前で不安になってる朧を抱きしめてあげることだってできない」
「陽彩……?」
「せめて僕が、朧の同級生だったら良かったのにね。せめて先生じゃなかったら。せめて違う学校だったら……そっか。僕は朧を苦しめることしかできないんだな」
違う。どうして。どうしてこうなるんだろう。
「そ、そんなことない! ごめん陽彩、謝るから、そんなこと言わないで」
どうしてうまくいかないんだろう。
「……明なら、朧にこんな思いさせないんだろうな」
「明……? 何、言ってるの? 私は明をそんな目で見たことない!」
どうしてここで、明が出てくるの?
「でも明は朧が好きでしょ?」
「あんなの冗談に決まってるじゃん! 前世で長い間一緒に居たから、それで……」
今は、私たちの話をしてるんじゃないの?
「僕は十三年しか居られなかったのに」
「ねえ陽彩、ねえってば、」
「朧。僕がさ、何も思ってないと思う?」
「……え?」
「そういう関係じゃなかったにしても、朧と明は六十年近く一緒に居たんだよ。僕がそのことを全く気にしてないと思う?」
「……そ、れは、」
そんな話、聞いたことない。
「さっきは安心してるって言ったけど。それでも僕だって明に嫉妬することだってあるんだよ。朧の知らない一面を知ってるのかなとか、今の明なら、僕より朧を幸せにできるんじゃないかなとか」
「やめてよ陽彩、ねえ」
陽彩の表情が曇る。
知らなかった。陽彩が明に対してそんなふうに思っていたことも、それで不安に思っていたことも。
私は言葉が出せなかった。
「まるで子どもだな、陽彩」
そこには、教室の入り口で佇む明の姿があった。
「あ、明っ、聞いて……! ぶ、部活は?」
「朧が不安定になってるから、気になって戻ってきた。そしたら俺に嫉妬して狂ってる陽彩がいたからさ」
「明! そんなふうに言わないでよ、陽彩は……」
「なあ陽彩。お前の気持ちってその程度だったわけ? 俺に朧を渡すって言うなら、本気で奪いに行くけど」
「……」
「陽彩? 陽彩ねえ、何とか言ってよ」
教室の空気が重い。暑さによる熱とは違った熱と汗で、かえって私の身体は冷えていた。
「陽彩、結局お前は朧を信じてないんだよ。朧の気持ち考えたことあるか? 生徒って立場で先生ってもんをずっと好きで居る苦しさが分かるか? それでも陽彩に着いていこうって朧の気持ちが分からないのかよっ」
いつもは穏やかな明の語尾が荒い。
このとき初めて、明の気持ちを知った気がする。私を励ますために冗談で告白しているものとばかり思っていたが、そんな軽い気持ちじゃないことを、今、知った。
「奪うぞ、陽彩。いいのか?」
「待ってよ明、陽彩も何とか言ってよ」
「……そのほうが、朧が幸せになれるなら……」
私は耳を疑った。
「……え、ちょっと待って……陽彩、本気で言ってる?」
否定してほしかった。
「僕は朧が大切だから、朧が幸せになれる道を行ってほしいと思ってる」
違う。聞きたいのはそんな言葉じゃない。
「随分と弱腰だな、陽彩。そうだな、今のお前じゃ朧を幸せにはできないだろうな」
「やめてよ明! 私、私の気持ちはどうなるの!? 勝手に話進めないでよ!」
「朧のためだ」
「違う! 私が好きなのはっ、」
言いかけたところで、明に抱きしめられた。
「あ、明!」
「俺ならお前を幸せにしてやれる。陽彩と別れて俺のとこに来いよ」
「やだ! 私は陽彩がっ……、陽彩、ねえ陽彩!」
「……それ以上何か言ったら、この口塞ぐよ?」
そう言って、明は私の顎をくいっと持ち上げた。
「っ! や、やめっ……!」
「やめろ」
そこでようやく陽彩が口を開いた。明の手首をぐっと抑え込んで。明を睨みつける目線は、見たことないほど鋭い。
「陽、彩……」
「やめろ」
「今のお前にそんなこと言う資格ないんだよ。頭冷やして来い」
明のこの言葉が止めとなった。
「……っ、」
言葉を詰まらせた陽彩の表情が、苦しみに歪んだ。明の手首を掴む腕が緩み、何も言わずその場を離れようとする。
「待って陽彩!」
「いいんだよ朧。行かせろ」
「やだ! だって私はっ、」
「いいんだ」
いくら私に力があっても、今の明の腕を解くほどの力がないことも、初めて知った。私は陽に頭を抱えられたまま、明の胸の中で、陽彩の足音が遠のいていくのを、何もできずに待つしかなかった。
「……泣けば?」
「やだ、泣かない」
「半泣きじゃん。泣けって」
「泣かないってばっ、……っ、んで、なんで陽彩にあんなこと……」
「別に。俺が許せなかっただけ。朧がこんなに不安になってることにも気づかないで恋人面してるあいつにムカついた」
「だからってここまでやらなくても!」
「朧、俺にしとけば?」
「……ひ、いろに言う、」
「今言ったでしょ。俺が。これがあいつの答えだ」
「やだ、やだっ! 信じない」
「朧。確かにお前たちは前世では心が通じ合ってたかもしれない。でも今と昔じゃ違うんだ。陽彩が恋人じゃ、お前がお前らしく居られない」
「やめて!」
「俺にしとけ。俺ならお前を幸せにできる」
「晴明はそんなこと言わなかったもん!」
「俺は晴明じゃないよ朧。今と昔を混在するなよ」
「っ……、ぅ……、」
「とりあえず泣いとけ。今のお前に必要なのは不安を吐き出す場所だ」
「……っ、うぅっ、うー……」
明の、私を抱きしめる力が強くなる。
陽彩が教室を出てしばらくしたのち、私は泣いた。思えば、泣いたのはいつぶりだろうか。陽彩に告白されて嬉しかったときに泣いて以来、二年ぶりかもしれない。
「明っ、ひ、陽彩が行っちゃったっ、」
「大丈夫。また戻ってくるよ」
「分かんないじゃんそんなの! 陽彩のあんな、顔、初めて、見たっ」
「あいつも普通の人間ってことだよ」
「普通の……人間?」
「朧が好きだから不安になる。朧、お前と同じだよ」
「明……」
「あいつはお前が好きすぎるんだよ」
「なんで明は分かるの」
「見てれば分かる」
私は陽彩を見ていても分からなかった。だから不安だった。なのに、明は分かると言う。なんで……
「だって俺は、お前が好きだから」
「……っ!」
「お前が大好きだから、お前の気持ちも、陽彩の気持ちも、痛いほど分かる」
「あ……」
こんなときでも、私は陽彩のことばかりで。
明の気持ちを知った今でも、陽彩のことばかりで。
なのに明は私を好きだと言ってくれて。
明の言う通りなのかもしれない。私は陽彩より、明と一緒に居るほうが私らしく居られるのかもしれない。でも。
「でも、ごめん」
私は。私が好きなのは、
「……陽彩なの。私が好きなのは、陽彩なの」
私の不安が、陽彩の想いを否定した。そう思ったら、涙が止まらなかった。
だって。
「好き、なの……。好きすぎるくらい好きなの……」
この感情を伝える術が、不安を訴えるほかに分からなかった。
「朧さ、それ、陽彩にちゃんと伝えてる?」
「……えっ……」
「陽彩が好きだって、陽彩に言えてるのか?」
「……っ、」
「言葉にしないと分からないのは、陽彩も同じかもしれないよ」
夜だと言うのに蝉の鳴き声が響く。ここは田舎で、すぐ近くに森林がある。たくさんの虫の音が聞こえる。私はそれをBGMに歴史の勉強をしていた。
ふと、シャープペンシルを動かす手が止まる。
陽彩も私も、歴史の教科書には載っていない。ふたりはこの世に存在しないものとされている(鬼を倒し太平の世を築いたのは安倍晴明という逸話として書かれている)。
でも、私たちは確かに存在した。だからこそ自分たちが覚えていなければならない。私は、式神の朧であった日々のことを、ひとつ残らず覚えている。そして陽彩のことも。初めて逢ったときのこと、名を与えたこと、寝食を共にしたこと、初めて笑った日のこと、看病に明け暮れたこと。そして、母上との決戦のこと。
「なんで……あんなこと言っちゃったんだろう」
握り締めた手が震える。手の甲に涙がポタポタと滴り落ちた。明にあれだけ泣かせてもらったのに、まだ涙が出てくる。私はこんなに泣き虫だっただろうか。
ふと、窓のほうを見た。窓を開ければ陽彩の部屋が見える。昔は窓越しによく話をしたものだが、最近は私の受験勉強もあってご無沙汰だった。
カーテンを開けてみた。陽彩の窓のカーテンは開いて、電気は消えている。
「陽彩……?」
帰って……ない?
「陽彩? いないの?」
そっと声をかけるが、返事がなかった。私はスマホのメッセージアプリから、陽彩にメッセージを送った。
『陽彩、今どこ?』
メッセージアプリは好まない陽彩だが、読むときはしっかり読んで、すぐに返事をくれる。でも。
「既読にもならない……」
嫌な予感がした。
私はスマホと鍵だけを持って、家を飛び出した。
「陽彩っ!」
私のせいだ。私が、陽彩を追い詰めたんだ。
思えば、付き合い始めた二年前から、私はいちばん大事な気持ちを誤魔化してきた気がする。一度でも面と向かって「大好き」と伝えたであろうか。それでも陽彩は笑ってくれたから、伝わっているものと思って過ごしてきた。
なんて傲慢だったのだろう。
そんな私に陽彩が愛想を尽かすのは当たり前で。
なんでちゃんと伝えなかったんだろう。
なんでいつも、後悔してから気づくんだろう。
私には、陽彩しか居ないのに。
陽彩しか愛せないって、分かってるのに。
陽彩の居場所には心当たりがあった。考え事をするとき、陽彩はいつもそこに居る。家から十分ほど歩いたところにある、広い向日葵畑。全速力で走って、五分ほどで到着したそこは、昼間とは打って変わって、街灯ひとつの仄暗い空間だった。
でも、陽彩の居る場所はすぐに分かった。向日葵畑に佇む、一本の大木の下。
「陽彩……?」
「朧、よく分かったね」
「……分かるに、決まってるじゃない」
分かるに決まってる。だってそこは、二年前に陽彩が私の手を引いて連れてきてくれて、告白してくれた場所だから。ここから見る向日葵畑がいちばんのお気に入りだと教えてくれたから。
「ちょっと、歩こうか」
「……うん」
二年前と違うのは、陽彩と私が今、手を繋いでいないということ。
(触れたい)
その想いも、陽彩に伝えるべきだった。陽彩は、私が生徒という立場を案じて、私を想って一教師として接するようにしていたって、今なら分かるのに。
もう、
「遅いのかな」
気づけば口にしていたその言葉。陽彩は驚いた眼で私を見つめた。そして、意を決したかのように、私の手を取った。
「朧……ごめんなさい」
聞いたのは、心からの謝罪だった。
「僕、朧が僕をずっと好きで居てくれるって思い上がってた。だから口にしなくても大丈夫だと思ってた。僕たちの関係は、そんな簡単に崩れるものじゃないって」
今すぐに伝えたい。私の気持ち、心から溢れ出そうな、この気持ちを。でも今は、陽彩の言葉に耳を傾けることにした。
「違うよね。言葉にしなければ分からない、そんな簡単なことを、明から教わったよ」
「明……?」
「うん。明は本当に朧が大事なんだなって、改めて思った」
「そ、れは……」
「いいよ。明が朧を想う気持ちを否定するつもりはない。でも、」
その続きを待っていたら、陽彩に抱きしめられた。
「ひ、いろ……?」
「僕のほうが、朧が好きだよ」
「……っ、陽彩……、」
陽彩から、好きという言葉を聞いたことがあっただろうか。告白の際は「結婚を前提に僕と付き合ってください」だった。「好き」という言葉が、陽彩の口から出たことがあっただろうか。
「当然、伝わってるものだと思ってた。でも違うんだよね。言葉にしなければ分からない。そんな簡単なことを、明から教わった」
「ねえ、なんでさっきからそんなに明の話……」
「明が来たんだ」
驚いた。
明と陽彩と私は幼馴染で、明はしっかり者の兄、陽彩は人懐っこい弟のような関係だった。明のほうが十歳下とはいえ、明の達観した生き方に、陽彩は見習うところがあったに違いない。そして私にとって明は、いつも陽彩と私を外から優しく見つめ、ときに私の話を聞いてくれる兄貴分で、私たちを守ってくれる、居なくてはならない存在だった。そんな明が招いた今回の騒動の根っこに、またしても明の存在があったとは。
「あの後、すぐに。朧への気持ちがその程度なら俺がもらう。でも、そうじゃないなら、態度で示せって」
「あ、明のやつ……」
「いいんだ。本当のことだから。あの場で僕は、明のほうが朧にふさわしいんじゃないかって一瞬でも思ってしまった。そんな自分に腹が立った。明もきっと同じなんだと思う。お前の気持ちはその程度だったのかって、何度も咎められた」
教師である陽彩に恋愛の説教を垂れるとは、さすが明というべきか。
「それで、気付かされた。僕は、どうしたって朧を手放したくないんだって」
その言葉に、明の思惑を感じ取れた気がした。
明はきっと、その言葉を陽彩から引き出そうとしたのだろう。
「陽彩……、私、私もっ、」
「うん。分かってる」
そう言って、私を一層強い力で抱きしめた。
「朧、ごめん。いっときでも迷ってしまった。僕は朧が好きなのに、大好きなのに、手放そうとした。ごめんなさい」
「そんなの、私だって……」
あのとき、明を振り解けさえすれば。
「いや。明とのあの一件がなかったら、僕は本当に諦めていたかもしれない。朧にふさわしいのは僕じゃなくて明だって、本当に思ったかもしれない。でも、」
そう言い、私の顎を掴む。
「朧の恋人は、僕しかいない」
「……その言葉がほしかったの」
お願いだから、明のほうが相応しいとか言わないで。自分を卑下しないで。
私の大好きな人を、そんなふうに言わないで。
すると突然、唇が触れた。
「……んっ、」
突然のキスに、私は驚きを隠せなかった。
「んは、はぁ、はぁっ、」
息を整える時間を与えてくれず、陽彩は次の言葉を紡いだ。
「朧が好きだ」
ずっと待ち続けていた言葉を。
「朧がこの世で、誰よりも、大好きだ」
愛しい目の前の人から紡がれるその言葉を、私は涙を流して聴いた。
ずっとずっと、好きと言ってほしかった。安心させてほしかった。私たちの気持ちは今でもひとつなんだって、思わせてほしかった。でもそれは、陽彩だけに求めるものではなかったと、今になって思う。
「私、もっ、」
流れる涙はそのままに、陽彩の首にしがみついて、キスをした。
「陽彩が好き。大好き。ずっと触れたかった。キスしたかった。陽彩が大好きだから、キスして、抱きしめて、甘えて、先生だからとかそんなしがらみ取っ払って、こうしたかった」
背が高く、細身の割に肉付きの良い身体は、朧の腕だけでは抱えきれないほど大きかった。この身体にずっと、ずっと触れたかった。
「ありがとう」
そう言って、陽彩はぎゅっと抱きしめてくれた。長い腕が私を包み込み、柔らかく猫っ毛な髪が私の左肩をくすぐる。
「僕もだよ。学校で先生と生徒でしか居られないなら、もっとこうやって触れ合うべきだったんだよね。触れて、抱きしめて、キスして、朧が大好きだって、伝えるべきだった」
左肩から頭が離れ、至近距離に緋色の瞳が映る。
ずっと、前世から恋焦がれた陽彩の彩。そのときは左眼が瑠璃色だったが、今はその瑠璃色が髪の色になっている。髪にそっと触れた。ふわふわで柔らかい感触が心地良い。
開かれた両眼に、私の緋色が映る。そして、互いの緋色がまぶたの裏に隠れ、また、唇が触れ合った。何度も何度も、角度を変えて、深くなって。
「陽彩、熱いよ」
「うん。緊張してるからね。こうして真正面から朧と向き合うことって、今までになかったから。たぶん無意識のうちに遠慮してたというか、後ろめたかったんだと思う」
「私が生徒だから?」
「それもあるけど、たぶん、前世で家族だったから、かな。朧は僕の母親で、たったひとりの大切な家族だったから」
前世の、陽彩の気持ちには気づいていた。私の気持ちも知っていたはず。でも、だからこそ、
「そんな朧にこういう気持ちを抱くことに、後ろめたさがあったから」
うん。
「私も、そうだった」
私たちはずっと昔から家族だったから。大切で、唯一の家族だったから。
でも。
「でも、大切なら、もっと大切にする方法があったんだって、今なら分かるよ」
「……そうだね」
だから、言葉が必要だった。もっと触れ合うことが必要だった。昔と違って、すぐに家族にはなれない時代。お互いにひとりの人間で、ふたりの気持ちが通じて恋人になって、そしてふたりは家族になる。
ふわっと吹いた風が、陽彩の長い前髪を一瞬攫う。そこから覗く眼が、弧を描いた。
「朧、もう一度言わせてほしい。あのときの言葉」
あのとき。陽彩が消える間際に残した言葉。
「……うん」
「朧」
熱い手のひらが肩に乗る。
「生まれ変わった今でも、愛してる」
泣いてばかりで私は伝えられなかった言葉。
今後は、私も。
「私も、昔も今も、陽彩だけを愛してる」
やっと言えた。
私の涙を拭った大きな手が頬を包む。互いの瞳に互いを映し、そっと閉じたとき。陽彩の熱い唇が私の唇に、もう一度触れた。
汗が滲む中、私たちは同じ体温で抱きしめあった。全身から、陽彩の想いが流れ込んでくる気がした。たとえ魂の声が聴こえなくても、私はこんなにも愛されていたんだと、素直に受け入れられた。
「朧」
「……ん?」
「朧の受験が終わったらの話になるんだけど」
「うん?」
「最後の約束、覚えてる?」
その言葉に、目を見開いた。
もちろん。
忘れた日などあるわけがない。
最上級の、愛の言葉を。
陽彩が再び口を開いた。
「僕は決して良い恋人とは言えなかったと思う。でも朧は一緒に居てくれたね。すごく幸せだよ」
「私もだよ、陽彩」
昔も、生まれ変わってからも、そして今も。
「ありがとう。だから、だからさ、その、これから先、朧を不安にさせないように、僕もっと頑張るから。だから、」
私の手を取って。
「結婚して、家族になって、この先ずっと一緒に生きてください」
今度は両眼とも開いていて、陽彩のまっすぐな瞳が私を写す。
私の眼にはしっかりと陽彩が写っているはずなのに、視界がぼやける。
あの頃には遠い夢のような言葉だった。
でもこれは現実。今目の前で、陽彩が一緒に生きようと言ってくれているのだ。
なんて応えたら喜んでくれるかとか、どう言えば伝わるかとか、考える必要はないと思った。だから、ひと言だけ。
「……はい」
それで、十分に伝わるはずだから。
陽彩に出逢って、私の人生は変わった。出逢った瞬間に魂が揺さぶられ、私は陽彩と出逢うべくして出逢ったと分かった。それは陽彩も同じだった。互いの想いは痛いほど伝わっていたが、あの頃は出逢ってすぐ家族という形になった。だからこそ言えなかった。私は陽彩の母で、陽彩は私の子ども。家族だったから。
でも今度は。生まれたときから互いに想い合い、十六年の年月を経て恋人という関係が始まり、その先がある。
結婚して家族になる。
そんな、夢のような日々が待っている。
契りを交わしたその先が。
「ほんと、世話が焼けるんだから」
向日葵畑の入り口に佇み、ふたりが抱きしめあう様子を、微笑み見つめる人物。
「これでやっと、俺も前を向ける」
そして、向日葵畑に背を向けて、元来た道を歩み出した。
陽彩にも朧にも言っていたなかったことだけが、ひとつだけある。
「やっと決着がつけられる。数千年、長かったな」
式神として召喚した朧が自分の前に現れたとき、朧は瀕死の状態だった。後先考えず左眼を差し出し助けたのは、それが朧だったから。そこに損得勘定などは一切なく、ただ朧を助けたいという一心だった。
その想いに付く名前には、前世では蓋をした。しかし、人間に生まれ変わって出会ったときには、自分が死した後の記憶、朧の記憶も植え付けられていたから。現世ではまた蓋をしようと決めていたのに。
「このヘタレが」
陽彩の想いがあそこまで強くなければ、自分はとっくに朧を奪っていただろう。自分に惚れさせる自信もあった。しかし朧は現世でも陽彩を選んだ。もっと言うならば、互いに互いしか映していなかった。入る隙がなかった。何の因果か、自分はふたりのいちばん近くに居たのに、幼馴染というポジションから抜け出せなかったのだ。
「せいぜい他の男に取られないよう頑張るんだな」
そして去っていく明の背中を、陽彩は見つめていた。
「陽彩?」
「ん? ううん。何でもないよ」
「ねえ陽彩。私、明に謝りたい。気持ちに応えられないの分かってて、たくさん振り回しちゃったから……」
「いや、きっと大丈夫。明は全部分かってるよ。こうなることも分かってたはず。それに、朧から聞きたい言葉は謝罪じゃなくて、幸せ、のひと言じゃないかな」
「そう、かな」
「うん。僕たちが幸せになることが、明への恩返しになると思おうよ。ね?」
「私、今まで通りでいいのかな」
「うん。明も、それを望んでると思う」
「……うん。そうだね。うん」
これまでの距離を縮めるかのように、ふたりは抱きしめあった。
朧には言わないでくれと言われていた、明の進路。明は高校を卒業したら、福井県へ行く。そして陰陽道の勉強をするという。前世に囚われているなら考え直すように言ったが、それが自分の使命であって、進むべき道だと考えているらしい。朧はきっと応援してくれるが、同時に深く悲しむに違いない。
しかし、二度と会えないわけではないのだから、三人が笑える道を、それぞれが幸せだと思う道を進むのが、現世での自分たちの在り方だと、陽彩は思った。
前世ではふたりきりだった。しかし現世では明も入れて三人。
「もう暗いね。帰ろうか」
「うん」
そう言い、ふたりは手を繋いだ。前は人目を気にして手を繋ぐことさえ叶わなかったが、今はこうしていたい、というふたりの想いが自然と手を繋がせた。
「卒業式の日に迎えに行く」
「……! 陽彩……」
「学校ではまた先生と生徒だけど、僕は朧が大好きだってこと、忘れないで」
「……うん。私も、陽彩が大好きだよ」
「うん、ありがとう」
卒業まであと半年。
陽彩は私の通う高校で日本史の教師をしており、心通い合うふたりはさも仲睦まじく相引きでもしているのかと思いきや……
「信っじらんない! 私が同級生に告白されても笑ってスルーとか!? あのまま迫られでもしたらどうするつもりだったのよ!」
「だって、朧怪力じゃん。あの男子生徒くらいどうにでもできるでしょ?」
「そうだけど! そうなんだけどさぁ! そこはなんて言うか、陽彩の愛の力? を、見せてほしかったっていうかさぁ」
「いや、だって、バレたら困るでしょ? 特に朧なんて、先生と付き合ってるなんて知られたら学校居られなくなるし……」
「それでも! 私の不安も察してよばか!」
思春期の乙女心を舐めないでほしい。素直になれないくせに甘えたくて、でも先生と生徒だからって遠慮して……。陽彩は分かってない。優しくて穏やかでイケメンで、どれだけの生徒が陽彩に想いを寄せてることか。そんなのに揺らぐことはないって分かってても、不安なことに変わりはないわけで。
「それに……」
「ん?」
触れたい。
付き合い始めたのが二年前。陽彩とは家が隣で、互いの気持ちは痛いほど分かってはいたものの、一応体裁を気にして十六まではそういう関係には発展しなかった。
そして十六になって高校に入学したのち、陽彩から告白された。
嬉しかった。何度も魂の輪廻を重ねてようやく人間として巡り逢えて、気持ちが通じて、死ぬほど嬉しかった。
なのに。
「な、なんでもない!」
付き合う、とは名ばかりで、交際する男女がするような触れ合いが今まで一切ない。
触れたい。抱きしめたい。大きな胸に飛び込んで、大好きって伝えて。
キス、したい。
でもそんなこと言えない。言えるはずもない。だって私は生徒で、陽彩は先生。私が行動を起こしたことで陽彩の立場が悪くなるような真似は絶対にしたくなかったから。
「んで、喧嘩したと」
「……ん。ていうか、陽彩は喧嘩とも思ってないけど」
「お前が一方的に怒ってるわけね。つかぬことを聞くけど、この痴話喧嘩、入学して何度目よ?」
「……百十八回」
「数えてんのかよ。はぁ。ようやるわ、お前たち」
愚痴を聞く友人の名前は明(あきら)。本人も自覚しているので言ってしまうと、安倍晴明の生まれ変わりである。全員に前世の記憶がある上、私と陽彩の関係を知っているのは明くらいなので、愚痴を聞く係に徹しているらしいが、
「俺にしときゃいいのに」
「それ、陽彩に言っていい?」
「いや嘘。ごめんなさい言わないでください」
隙あらば告ってくるようなやつだ。しかし穏やかな陽彩が、空手、剣道、合気道の全国大会優勝者であることを知る明は、陽彩を敵に回したくはないらしい。
「早く仲直りしろよ~」
じゃあな、と、明は部活へ向かった。
……分かってる。全部私のわがままで、理不尽をぶつけてるのも分かってる。それでも不安にならずには居られない。
前世ではこんなに不安になることはなかった。
魂が繋がってると分かっていたから。
でも今は不安で仕方ない。
陽彩の態度は、私だけ特別だなんてことはなく。他の生徒と同じ。
魂の声も、今は聴こえない。
「陽彩は平気なのかな」
それとももう、私のことなんて一生徒にしか思ってないのかな。
◆
今年の夏は暑かった。残って勉強しているうちにうたた寝していたようで、しかし冷房があまり効いていない教室内は暑さが充満していて、深い眠りを妨げた。
「ん……あつ……、ってえぇぇ!」
「こんなところで寝てると熱中症になっちゃうよ。寝るなら準備室においでっていつも言ってるのに」
起きたらびっくり。目の前で陽彩が覗き込んでいた。心臓に悪い。
「な! だ、だって、さっき喧嘩したばっか……」
「朧が勝手に怒ったんでしょ?」
「それは! そうだけど。だって陽彩、私が誰に告られたって、全く気にしないんだもん……私のこと、どうでもいいのかなって」
つい、本人に言ってしまった。陽彩が驚いた顔をする。
「朧さ、本気でそう思ってるの?」
「え?」
「僕はさ、前世であったことも、前世で抱いた感情も、現世で朧に抱いている感情も、全部を大事にしているつもりだよ。朧には伝わってないの?」
陽彩の声色がいつもと違う。いつもより低くて、若干の怒りを帯びている。
それでも私は、陽彩に聞きたかった。私の存在の意味を。現世で抱いているという感情が、本当に恋愛感情なのかを。
「だって! 昔みたいに分からないんだもん。昔は陽彩の声がいつでも聴こえてた。だから安心できた。でも今は違う。聴こえないんだから、陽彩の態度見るしかないじゃない。 でも、私だけ特別なんてことなくて。ほんとに私のこと好きなのかなって、不安、なんだもん……」
「伝えてきた……つもりだったんだけどな」
「……っ、」
「朧が生まれて、すぐに朧の存在を感じた。だから朧の家の隣に引っ越してまで、僕は僕の気持ちを伝えてきたつもりだった。だから朧を不安にすることなんてないって、そう思ってきた。でも、伝わってなかったのかな」
「それは、分かってるけど……」
「……僕はさ、離れたくないと思ってるけど。でも今の時代って難しいものだね。恋愛は自由なはずなのに、僕たちはちっとも自由じゃない。こうやって目の前で不安になってる朧を抱きしめてあげることだってできない」
「陽彩……?」
「せめて僕が、朧の同級生だったら良かったのにね。せめて先生じゃなかったら。せめて違う学校だったら……そっか。僕は朧を苦しめることしかできないんだな」
違う。どうして。どうしてこうなるんだろう。
「そ、そんなことない! ごめん陽彩、謝るから、そんなこと言わないで」
どうしてうまくいかないんだろう。
「……明なら、朧にこんな思いさせないんだろうな」
「明……? 何、言ってるの? 私は明をそんな目で見たことない!」
どうしてここで、明が出てくるの?
「でも明は朧が好きでしょ?」
「あんなの冗談に決まってるじゃん! 前世で長い間一緒に居たから、それで……」
今は、私たちの話をしてるんじゃないの?
「僕は十三年しか居られなかったのに」
「ねえ陽彩、ねえってば、」
「朧。僕がさ、何も思ってないと思う?」
「……え?」
「そういう関係じゃなかったにしても、朧と明は六十年近く一緒に居たんだよ。僕がそのことを全く気にしてないと思う?」
「……そ、れは、」
そんな話、聞いたことない。
「さっきは安心してるって言ったけど。それでも僕だって明に嫉妬することだってあるんだよ。朧の知らない一面を知ってるのかなとか、今の明なら、僕より朧を幸せにできるんじゃないかなとか」
「やめてよ陽彩、ねえ」
陽彩の表情が曇る。
知らなかった。陽彩が明に対してそんなふうに思っていたことも、それで不安に思っていたことも。
私は言葉が出せなかった。
「まるで子どもだな、陽彩」
そこには、教室の入り口で佇む明の姿があった。
「あ、明っ、聞いて……! ぶ、部活は?」
「朧が不安定になってるから、気になって戻ってきた。そしたら俺に嫉妬して狂ってる陽彩がいたからさ」
「明! そんなふうに言わないでよ、陽彩は……」
「なあ陽彩。お前の気持ちってその程度だったわけ? 俺に朧を渡すって言うなら、本気で奪いに行くけど」
「……」
「陽彩? 陽彩ねえ、何とか言ってよ」
教室の空気が重い。暑さによる熱とは違った熱と汗で、かえって私の身体は冷えていた。
「陽彩、結局お前は朧を信じてないんだよ。朧の気持ち考えたことあるか? 生徒って立場で先生ってもんをずっと好きで居る苦しさが分かるか? それでも陽彩に着いていこうって朧の気持ちが分からないのかよっ」
いつもは穏やかな明の語尾が荒い。
このとき初めて、明の気持ちを知った気がする。私を励ますために冗談で告白しているものとばかり思っていたが、そんな軽い気持ちじゃないことを、今、知った。
「奪うぞ、陽彩。いいのか?」
「待ってよ明、陽彩も何とか言ってよ」
「……そのほうが、朧が幸せになれるなら……」
私は耳を疑った。
「……え、ちょっと待って……陽彩、本気で言ってる?」
否定してほしかった。
「僕は朧が大切だから、朧が幸せになれる道を行ってほしいと思ってる」
違う。聞きたいのはそんな言葉じゃない。
「随分と弱腰だな、陽彩。そうだな、今のお前じゃ朧を幸せにはできないだろうな」
「やめてよ明! 私、私の気持ちはどうなるの!? 勝手に話進めないでよ!」
「朧のためだ」
「違う! 私が好きなのはっ、」
言いかけたところで、明に抱きしめられた。
「あ、明!」
「俺ならお前を幸せにしてやれる。陽彩と別れて俺のとこに来いよ」
「やだ! 私は陽彩がっ……、陽彩、ねえ陽彩!」
「……それ以上何か言ったら、この口塞ぐよ?」
そう言って、明は私の顎をくいっと持ち上げた。
「っ! や、やめっ……!」
「やめろ」
そこでようやく陽彩が口を開いた。明の手首をぐっと抑え込んで。明を睨みつける目線は、見たことないほど鋭い。
「陽、彩……」
「やめろ」
「今のお前にそんなこと言う資格ないんだよ。頭冷やして来い」
明のこの言葉が止めとなった。
「……っ、」
言葉を詰まらせた陽彩の表情が、苦しみに歪んだ。明の手首を掴む腕が緩み、何も言わずその場を離れようとする。
「待って陽彩!」
「いいんだよ朧。行かせろ」
「やだ! だって私はっ、」
「いいんだ」
いくら私に力があっても、今の明の腕を解くほどの力がないことも、初めて知った。私は陽に頭を抱えられたまま、明の胸の中で、陽彩の足音が遠のいていくのを、何もできずに待つしかなかった。
「……泣けば?」
「やだ、泣かない」
「半泣きじゃん。泣けって」
「泣かないってばっ、……っ、んで、なんで陽彩にあんなこと……」
「別に。俺が許せなかっただけ。朧がこんなに不安になってることにも気づかないで恋人面してるあいつにムカついた」
「だからってここまでやらなくても!」
「朧、俺にしとけば?」
「……ひ、いろに言う、」
「今言ったでしょ。俺が。これがあいつの答えだ」
「やだ、やだっ! 信じない」
「朧。確かにお前たちは前世では心が通じ合ってたかもしれない。でも今と昔じゃ違うんだ。陽彩が恋人じゃ、お前がお前らしく居られない」
「やめて!」
「俺にしとけ。俺ならお前を幸せにできる」
「晴明はそんなこと言わなかったもん!」
「俺は晴明じゃないよ朧。今と昔を混在するなよ」
「っ……、ぅ……、」
「とりあえず泣いとけ。今のお前に必要なのは不安を吐き出す場所だ」
「……っ、うぅっ、うー……」
明の、私を抱きしめる力が強くなる。
陽彩が教室を出てしばらくしたのち、私は泣いた。思えば、泣いたのはいつぶりだろうか。陽彩に告白されて嬉しかったときに泣いて以来、二年ぶりかもしれない。
「明っ、ひ、陽彩が行っちゃったっ、」
「大丈夫。また戻ってくるよ」
「分かんないじゃんそんなの! 陽彩のあんな、顔、初めて、見たっ」
「あいつも普通の人間ってことだよ」
「普通の……人間?」
「朧が好きだから不安になる。朧、お前と同じだよ」
「明……」
「あいつはお前が好きすぎるんだよ」
「なんで明は分かるの」
「見てれば分かる」
私は陽彩を見ていても分からなかった。だから不安だった。なのに、明は分かると言う。なんで……
「だって俺は、お前が好きだから」
「……っ!」
「お前が大好きだから、お前の気持ちも、陽彩の気持ちも、痛いほど分かる」
「あ……」
こんなときでも、私は陽彩のことばかりで。
明の気持ちを知った今でも、陽彩のことばかりで。
なのに明は私を好きだと言ってくれて。
明の言う通りなのかもしれない。私は陽彩より、明と一緒に居るほうが私らしく居られるのかもしれない。でも。
「でも、ごめん」
私は。私が好きなのは、
「……陽彩なの。私が好きなのは、陽彩なの」
私の不安が、陽彩の想いを否定した。そう思ったら、涙が止まらなかった。
だって。
「好き、なの……。好きすぎるくらい好きなの……」
この感情を伝える術が、不安を訴えるほかに分からなかった。
「朧さ、それ、陽彩にちゃんと伝えてる?」
「……えっ……」
「陽彩が好きだって、陽彩に言えてるのか?」
「……っ、」
「言葉にしないと分からないのは、陽彩も同じかもしれないよ」
夜だと言うのに蝉の鳴き声が響く。ここは田舎で、すぐ近くに森林がある。たくさんの虫の音が聞こえる。私はそれをBGMに歴史の勉強をしていた。
ふと、シャープペンシルを動かす手が止まる。
陽彩も私も、歴史の教科書には載っていない。ふたりはこの世に存在しないものとされている(鬼を倒し太平の世を築いたのは安倍晴明という逸話として書かれている)。
でも、私たちは確かに存在した。だからこそ自分たちが覚えていなければならない。私は、式神の朧であった日々のことを、ひとつ残らず覚えている。そして陽彩のことも。初めて逢ったときのこと、名を与えたこと、寝食を共にしたこと、初めて笑った日のこと、看病に明け暮れたこと。そして、母上との決戦のこと。
「なんで……あんなこと言っちゃったんだろう」
握り締めた手が震える。手の甲に涙がポタポタと滴り落ちた。明にあれだけ泣かせてもらったのに、まだ涙が出てくる。私はこんなに泣き虫だっただろうか。
ふと、窓のほうを見た。窓を開ければ陽彩の部屋が見える。昔は窓越しによく話をしたものだが、最近は私の受験勉強もあってご無沙汰だった。
カーテンを開けてみた。陽彩の窓のカーテンは開いて、電気は消えている。
「陽彩……?」
帰って……ない?
「陽彩? いないの?」
そっと声をかけるが、返事がなかった。私はスマホのメッセージアプリから、陽彩にメッセージを送った。
『陽彩、今どこ?』
メッセージアプリは好まない陽彩だが、読むときはしっかり読んで、すぐに返事をくれる。でも。
「既読にもならない……」
嫌な予感がした。
私はスマホと鍵だけを持って、家を飛び出した。
「陽彩っ!」
私のせいだ。私が、陽彩を追い詰めたんだ。
思えば、付き合い始めた二年前から、私はいちばん大事な気持ちを誤魔化してきた気がする。一度でも面と向かって「大好き」と伝えたであろうか。それでも陽彩は笑ってくれたから、伝わっているものと思って過ごしてきた。
なんて傲慢だったのだろう。
そんな私に陽彩が愛想を尽かすのは当たり前で。
なんでちゃんと伝えなかったんだろう。
なんでいつも、後悔してから気づくんだろう。
私には、陽彩しか居ないのに。
陽彩しか愛せないって、分かってるのに。
陽彩の居場所には心当たりがあった。考え事をするとき、陽彩はいつもそこに居る。家から十分ほど歩いたところにある、広い向日葵畑。全速力で走って、五分ほどで到着したそこは、昼間とは打って変わって、街灯ひとつの仄暗い空間だった。
でも、陽彩の居る場所はすぐに分かった。向日葵畑に佇む、一本の大木の下。
「陽彩……?」
「朧、よく分かったね」
「……分かるに、決まってるじゃない」
分かるに決まってる。だってそこは、二年前に陽彩が私の手を引いて連れてきてくれて、告白してくれた場所だから。ここから見る向日葵畑がいちばんのお気に入りだと教えてくれたから。
「ちょっと、歩こうか」
「……うん」
二年前と違うのは、陽彩と私が今、手を繋いでいないということ。
(触れたい)
その想いも、陽彩に伝えるべきだった。陽彩は、私が生徒という立場を案じて、私を想って一教師として接するようにしていたって、今なら分かるのに。
もう、
「遅いのかな」
気づけば口にしていたその言葉。陽彩は驚いた眼で私を見つめた。そして、意を決したかのように、私の手を取った。
「朧……ごめんなさい」
聞いたのは、心からの謝罪だった。
「僕、朧が僕をずっと好きで居てくれるって思い上がってた。だから口にしなくても大丈夫だと思ってた。僕たちの関係は、そんな簡単に崩れるものじゃないって」
今すぐに伝えたい。私の気持ち、心から溢れ出そうな、この気持ちを。でも今は、陽彩の言葉に耳を傾けることにした。
「違うよね。言葉にしなければ分からない、そんな簡単なことを、明から教わったよ」
「明……?」
「うん。明は本当に朧が大事なんだなって、改めて思った」
「そ、れは……」
「いいよ。明が朧を想う気持ちを否定するつもりはない。でも、」
その続きを待っていたら、陽彩に抱きしめられた。
「ひ、いろ……?」
「僕のほうが、朧が好きだよ」
「……っ、陽彩……、」
陽彩から、好きという言葉を聞いたことがあっただろうか。告白の際は「結婚を前提に僕と付き合ってください」だった。「好き」という言葉が、陽彩の口から出たことがあっただろうか。
「当然、伝わってるものだと思ってた。でも違うんだよね。言葉にしなければ分からない。そんな簡単なことを、明から教わった」
「ねえ、なんでさっきからそんなに明の話……」
「明が来たんだ」
驚いた。
明と陽彩と私は幼馴染で、明はしっかり者の兄、陽彩は人懐っこい弟のような関係だった。明のほうが十歳下とはいえ、明の達観した生き方に、陽彩は見習うところがあったに違いない。そして私にとって明は、いつも陽彩と私を外から優しく見つめ、ときに私の話を聞いてくれる兄貴分で、私たちを守ってくれる、居なくてはならない存在だった。そんな明が招いた今回の騒動の根っこに、またしても明の存在があったとは。
「あの後、すぐに。朧への気持ちがその程度なら俺がもらう。でも、そうじゃないなら、態度で示せって」
「あ、明のやつ……」
「いいんだ。本当のことだから。あの場で僕は、明のほうが朧にふさわしいんじゃないかって一瞬でも思ってしまった。そんな自分に腹が立った。明もきっと同じなんだと思う。お前の気持ちはその程度だったのかって、何度も咎められた」
教師である陽彩に恋愛の説教を垂れるとは、さすが明というべきか。
「それで、気付かされた。僕は、どうしたって朧を手放したくないんだって」
その言葉に、明の思惑を感じ取れた気がした。
明はきっと、その言葉を陽彩から引き出そうとしたのだろう。
「陽彩……、私、私もっ、」
「うん。分かってる」
そう言って、私を一層強い力で抱きしめた。
「朧、ごめん。いっときでも迷ってしまった。僕は朧が好きなのに、大好きなのに、手放そうとした。ごめんなさい」
「そんなの、私だって……」
あのとき、明を振り解けさえすれば。
「いや。明とのあの一件がなかったら、僕は本当に諦めていたかもしれない。朧にふさわしいのは僕じゃなくて明だって、本当に思ったかもしれない。でも、」
そう言い、私の顎を掴む。
「朧の恋人は、僕しかいない」
「……その言葉がほしかったの」
お願いだから、明のほうが相応しいとか言わないで。自分を卑下しないで。
私の大好きな人を、そんなふうに言わないで。
すると突然、唇が触れた。
「……んっ、」
突然のキスに、私は驚きを隠せなかった。
「んは、はぁ、はぁっ、」
息を整える時間を与えてくれず、陽彩は次の言葉を紡いだ。
「朧が好きだ」
ずっと待ち続けていた言葉を。
「朧がこの世で、誰よりも、大好きだ」
愛しい目の前の人から紡がれるその言葉を、私は涙を流して聴いた。
ずっとずっと、好きと言ってほしかった。安心させてほしかった。私たちの気持ちは今でもひとつなんだって、思わせてほしかった。でもそれは、陽彩だけに求めるものではなかったと、今になって思う。
「私、もっ、」
流れる涙はそのままに、陽彩の首にしがみついて、キスをした。
「陽彩が好き。大好き。ずっと触れたかった。キスしたかった。陽彩が大好きだから、キスして、抱きしめて、甘えて、先生だからとかそんなしがらみ取っ払って、こうしたかった」
背が高く、細身の割に肉付きの良い身体は、朧の腕だけでは抱えきれないほど大きかった。この身体にずっと、ずっと触れたかった。
「ありがとう」
そう言って、陽彩はぎゅっと抱きしめてくれた。長い腕が私を包み込み、柔らかく猫っ毛な髪が私の左肩をくすぐる。
「僕もだよ。学校で先生と生徒でしか居られないなら、もっとこうやって触れ合うべきだったんだよね。触れて、抱きしめて、キスして、朧が大好きだって、伝えるべきだった」
左肩から頭が離れ、至近距離に緋色の瞳が映る。
ずっと、前世から恋焦がれた陽彩の彩。そのときは左眼が瑠璃色だったが、今はその瑠璃色が髪の色になっている。髪にそっと触れた。ふわふわで柔らかい感触が心地良い。
開かれた両眼に、私の緋色が映る。そして、互いの緋色がまぶたの裏に隠れ、また、唇が触れ合った。何度も何度も、角度を変えて、深くなって。
「陽彩、熱いよ」
「うん。緊張してるからね。こうして真正面から朧と向き合うことって、今までになかったから。たぶん無意識のうちに遠慮してたというか、後ろめたかったんだと思う」
「私が生徒だから?」
「それもあるけど、たぶん、前世で家族だったから、かな。朧は僕の母親で、たったひとりの大切な家族だったから」
前世の、陽彩の気持ちには気づいていた。私の気持ちも知っていたはず。でも、だからこそ、
「そんな朧にこういう気持ちを抱くことに、後ろめたさがあったから」
うん。
「私も、そうだった」
私たちはずっと昔から家族だったから。大切で、唯一の家族だったから。
でも。
「でも、大切なら、もっと大切にする方法があったんだって、今なら分かるよ」
「……そうだね」
だから、言葉が必要だった。もっと触れ合うことが必要だった。昔と違って、すぐに家族にはなれない時代。お互いにひとりの人間で、ふたりの気持ちが通じて恋人になって、そしてふたりは家族になる。
ふわっと吹いた風が、陽彩の長い前髪を一瞬攫う。そこから覗く眼が、弧を描いた。
「朧、もう一度言わせてほしい。あのときの言葉」
あのとき。陽彩が消える間際に残した言葉。
「……うん」
「朧」
熱い手のひらが肩に乗る。
「生まれ変わった今でも、愛してる」
泣いてばかりで私は伝えられなかった言葉。
今後は、私も。
「私も、昔も今も、陽彩だけを愛してる」
やっと言えた。
私の涙を拭った大きな手が頬を包む。互いの瞳に互いを映し、そっと閉じたとき。陽彩の熱い唇が私の唇に、もう一度触れた。
汗が滲む中、私たちは同じ体温で抱きしめあった。全身から、陽彩の想いが流れ込んでくる気がした。たとえ魂の声が聴こえなくても、私はこんなにも愛されていたんだと、素直に受け入れられた。
「朧」
「……ん?」
「朧の受験が終わったらの話になるんだけど」
「うん?」
「最後の約束、覚えてる?」
その言葉に、目を見開いた。
もちろん。
忘れた日などあるわけがない。
最上級の、愛の言葉を。
陽彩が再び口を開いた。
「僕は決して良い恋人とは言えなかったと思う。でも朧は一緒に居てくれたね。すごく幸せだよ」
「私もだよ、陽彩」
昔も、生まれ変わってからも、そして今も。
「ありがとう。だから、だからさ、その、これから先、朧を不安にさせないように、僕もっと頑張るから。だから、」
私の手を取って。
「結婚して、家族になって、この先ずっと一緒に生きてください」
今度は両眼とも開いていて、陽彩のまっすぐな瞳が私を写す。
私の眼にはしっかりと陽彩が写っているはずなのに、視界がぼやける。
あの頃には遠い夢のような言葉だった。
でもこれは現実。今目の前で、陽彩が一緒に生きようと言ってくれているのだ。
なんて応えたら喜んでくれるかとか、どう言えば伝わるかとか、考える必要はないと思った。だから、ひと言だけ。
「……はい」
それで、十分に伝わるはずだから。
陽彩に出逢って、私の人生は変わった。出逢った瞬間に魂が揺さぶられ、私は陽彩と出逢うべくして出逢ったと分かった。それは陽彩も同じだった。互いの想いは痛いほど伝わっていたが、あの頃は出逢ってすぐ家族という形になった。だからこそ言えなかった。私は陽彩の母で、陽彩は私の子ども。家族だったから。
でも今度は。生まれたときから互いに想い合い、十六年の年月を経て恋人という関係が始まり、その先がある。
結婚して家族になる。
そんな、夢のような日々が待っている。
契りを交わしたその先が。
「ほんと、世話が焼けるんだから」
向日葵畑の入り口に佇み、ふたりが抱きしめあう様子を、微笑み見つめる人物。
「これでやっと、俺も前を向ける」
そして、向日葵畑に背を向けて、元来た道を歩み出した。
陽彩にも朧にも言っていたなかったことだけが、ひとつだけある。
「やっと決着がつけられる。数千年、長かったな」
式神として召喚した朧が自分の前に現れたとき、朧は瀕死の状態だった。後先考えず左眼を差し出し助けたのは、それが朧だったから。そこに損得勘定などは一切なく、ただ朧を助けたいという一心だった。
その想いに付く名前には、前世では蓋をした。しかし、人間に生まれ変わって出会ったときには、自分が死した後の記憶、朧の記憶も植え付けられていたから。現世ではまた蓋をしようと決めていたのに。
「このヘタレが」
陽彩の想いがあそこまで強くなければ、自分はとっくに朧を奪っていただろう。自分に惚れさせる自信もあった。しかし朧は現世でも陽彩を選んだ。もっと言うならば、互いに互いしか映していなかった。入る隙がなかった。何の因果か、自分はふたりのいちばん近くに居たのに、幼馴染というポジションから抜け出せなかったのだ。
「せいぜい他の男に取られないよう頑張るんだな」
そして去っていく明の背中を、陽彩は見つめていた。
「陽彩?」
「ん? ううん。何でもないよ」
「ねえ陽彩。私、明に謝りたい。気持ちに応えられないの分かってて、たくさん振り回しちゃったから……」
「いや、きっと大丈夫。明は全部分かってるよ。こうなることも分かってたはず。それに、朧から聞きたい言葉は謝罪じゃなくて、幸せ、のひと言じゃないかな」
「そう、かな」
「うん。僕たちが幸せになることが、明への恩返しになると思おうよ。ね?」
「私、今まで通りでいいのかな」
「うん。明も、それを望んでると思う」
「……うん。そうだね。うん」
これまでの距離を縮めるかのように、ふたりは抱きしめあった。
朧には言わないでくれと言われていた、明の進路。明は高校を卒業したら、福井県へ行く。そして陰陽道の勉強をするという。前世に囚われているなら考え直すように言ったが、それが自分の使命であって、進むべき道だと考えているらしい。朧はきっと応援してくれるが、同時に深く悲しむに違いない。
しかし、二度と会えないわけではないのだから、三人が笑える道を、それぞれが幸せだと思う道を進むのが、現世での自分たちの在り方だと、陽彩は思った。
前世ではふたりきりだった。しかし現世では明も入れて三人。
「もう暗いね。帰ろうか」
「うん」
そう言い、ふたりは手を繋いだ。前は人目を気にして手を繋ぐことさえ叶わなかったが、今はこうしていたい、というふたりの想いが自然と手を繋がせた。
「卒業式の日に迎えに行く」
「……! 陽彩……」
「学校ではまた先生と生徒だけど、僕は朧が大好きだってこと、忘れないで」
「……うん。私も、陽彩が大好きだよ」
「うん、ありがとう」
卒業まであと半年。
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