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四がんばり目~惚れたあの娘は男のコ~
第39話 折戸の過去4
しおりを挟むシャワーを浴びるとベッドに移動して森本の怪我の手当てをしていた。
「痛む?」
「しみるけど全然平気。
…ところで、折戸くんが部活作るのあんなに否定したのってあの三人と関係あるの?」
切られたところはすでに血が止まっていて、傷口が開かないようフロントでもらった包帯を軽く巻いて処置した。
森本は前回男の格好で会ったときのことを思い出し、過去にどんなことがあったのか知りたがった。
「あー…。
去年俺もバスケ部復活させようと色々やってたんだけど、当時三年だったあいつらに目つけられて嫌がらせされててさ。
ムカついたから喧嘩売ったらあいつら三人がかりで負けてやんの。
ただ、それでキレた一人が今日みたいに刃物で俺の腕ざっくり!
ひでー話だろ?」
ソラの時と違い折戸は少し砕けた口調で話していた。
「そうだったんだ…。怪我はもう大丈夫なの?」
「入院とかはしなかったけどしばらく握力戻らなくて、完治した頃には中学のダチがインターハイ出てるわ一緒に部活作ろうって言ってたやつは別の運動部入ってるわで諦めたってわけ。」
「…もったいないよ!!
せっかく治ったのに、身長のことは正直腹立ったけど折戸くん俺より高いし、それなのにバスケやらないなんてズルい。」
「ズルいって、そんなこと言われたってなあ。」
「バスケ部、折戸くんが入ってくれたらメンバー揃うんだよ!
あとは顧問になってくれる先生見つければ、またバスケ出来るんだよ…!」
森本はバスケがしたかったのに諦めてしまった折戸のことを考えるとより胸が熱くなった。
それを聞いていた折戸もだんだん引き込まれていき、最初に否定していた手前大きく頷くことは出来なかったが少し照れながら言った。
「っ…、仕方ない。
入ってやるよ、惚れた子のお願いだしな。」
「やっった!!!」
これでバスケが出来る、その嬉しさで森本は折戸に抱きついていた。
「杉野先生!」
登校早々職員室で森本は部員の欄が埋まった申請書を見せて息巻いていた。
「あと顧問だけなんですけど、どの先生だったら顧問してもらえるんですか!?」
入学当初から森本の勢いにうんざりしている担任は、書類に目を通しながら淡々と答えた。
「山本先生、林先生、松城先生あたりがいいんじゃないか?」
「松城先生…。」
以前職員室に忍び込んだときのことを思い出し、松城に対して苦手意識をもっている森本。
「あ、ちょうどいるじゃないか。
松城先生!」
「え!ちょ、待って!」
タイミングが良いのか悪いのか、松城が付近を通ると杉野が声をかけ笑顔でこちらにやってきた。
「なんですか?」
「担任してるクラスの森本なんですけど、バスケ部を設立のため顧問を探してるみたいなんです。話だけでも聞いてやってくれませんか?」
「そうなんですか、良いですよ。
森本くん、放課後に詳しい話聞かせてくれるかな?」
あわあわしているうちに話が進み松城と二人で会うことになってしまった。
しかしこの際贅沢を言ってる場合ではないと森本は腹をくくり頭を下げるのだった。
「…よろしくお願いします!」
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