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序章
6.狼と羊は走りだす ◆
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立とうにも脚に力が入らなかった。
美詠は座布団に手をついて畳に足を置き、恐るおそる腰を上げた。
笑いそうになる膝をおさえてようやく立てた。
背中に手を回す。
しかし今度はファスナーが下ろせない。指がスライダーをうまく拾ってくれない。
「待ってね……」
拓斗が見ている。気持ちが焦る。
脱いでと言われた時から続いている手の震えがおさまらない。
「ワンピって脱ぐの大変そうだ」
そんなことないと美詠は首を振りかけて、やめた。手が動かないのは確かだった。拓斗の視線がまるでクモの糸のように手指にからみついている感じがする。また指からスライダーが逃げた。
「チャックおろせなくなっちゃった」
「手伝おうか」
「えっ」
脱がされる――。
残りわずかな力まで手から抜けた。
「これか」
背後で拓斗がファスナーを下ろす。背中に指が当たっている。
美詠が立ち尽くしていると、続けて肩にも手がかかった。ぎくりとした拍子にワンピースが足元までするりと下ろされた。
「きゃあ」
美詠は心の準備が追い付かないまま、白のキャミソールとショーツだけの姿にさせられた。
おへそはぎりぎり隠れているが、お腹の肌は見えている。ショーツは縦割れの食い込みがそのままだ。
美詠は身体を手で隠す。最初に股を、それから胸を。
「足どけて」と拓斗が言っている。美詠は畳に落ちたワンピースから足を抜いた。よろけそうになった。
拓斗は回収したワンピースを畳の上に丁寧に広げている。
「たっくん、それ何してるの?」
「いや、シワとかついたら悪い気がして」
「へぇ?」
タイヤから空気がもれるような声が出た。
自分のそれも含めて美詠は「えへっ」と笑ってしまった。パンツにはシワつけたくせにと言いかけて、やめる。
肩を震わせていたら拓斗が横目で見た。
「嬉しそうじゃん」
「えー……うん」
「脱がされたのが嬉しい?」
「違うーーっ」
「はははは。みよみちゃん、その手だめだよ」
「え?」
「手で隠してるのダメだから。隠すの禁止」
「ひどーい」
美詠は手をどけた。全身から緊張がいくらか抜けている。
しかし拓斗が立って面と向かい合うと、笑った今でも緊張感はやはり高い。
遠慮のない視線を正面から美詠はまた浴びた。身体中にからみついた。
「みよみちゃん」
「ん」
「手を横につけて、気をつけっ」
号令だ。美詠は反射的に姿勢を正す。体育の号令よりも命令的。まだ続く。
「胸を張って」
「う、うん」
「返事は“はい”」
「はい」
胸を張る。
「胸をもっと前へ。ぎゅっと!」
「はい!」
ぎゅーっと張る。
まだ膨らみのない、ブラジャーをつけていない胸が前に押し出された。
キャミソールに小さな突起が二つ浮き出る。
「いい格好だ」
「恥ずかしい……」
拓斗が笑う。やはりクモの糸のような視線だ。編み目模様に広がって、胸を覆うようにからんでくる。
「恥ずかしいよぉ」
美詠はもう一度訴えた。
逆効果だった。拓斗は一歩進んで距離を詰め、じっとしててと言うなり少しずつ体を下げはじめた。
拓斗の目線の位置が下がっていく。
美詠の首へ、そして胸へ。
まだ下がる。みぞおち……お腹……下腹部……股。
股の前で顔が止まった。拓斗は自分が作った「作品」を、お尻まで貫くような視線で鑑賞している。
美詠は思わず太ももをすり合わせた。
ショーツの股の部分が、きゅっと締まった。白の逆三角形が鋭角にすぼまった。食い込まされた縦スジが斜めにゆがむ。
拓斗の目が美味しそうな獲物を見る目に変化した。
肉食の、野性的で狡知に長けた狼の目だ。前にいる美詠はまるで羊だ。
狼は羊のすり合わせた太ももを両手でかかえた。すべすべとなでて羊を震わせる。
「気をつけっ」
パシンと太ももが叩かれた。
美詠はビクッと姿勢を正す。
「動いちゃダメだよね」
「はいっ」
「フフフフフ」
笑っている。
拓斗は美詠が座っていた座布団に座って片膝を立てた。そこに肘をのせ、頬杖をついた。
頬杖から見上げる顔が満足そうに微笑んでいる。
美詠は顔をそむけたが、目はどうしても拓斗の顔へいってしまう。
「本当にいい格好だなー」
つやのある黒い瞳が上から下までまんべんなく動いている。
けれども瞳が長い時間とどまるところは女の子ならではの部分だ。男女の身体で最も違いのある箇所が、最も視線の餌食になる箇所だ。
視線を濃密にからめた一点に拓斗が人差し指を近づける。
美詠の目の中で、最初に触られそうになった時の記憶が今と重なった。
しかし今回の指は止まらない。小動物を愛でるかのようにスジをつついた。美詠は一瞬、目をつぶった。
「恥ずかしそう」
拓斗がまた笑っている。
恥辱に耐えながら気をつけの姿勢を維持する少女の身体が彼の瞳に映っている。
つんつん。
拓斗は指先でスジを二回ノックした。ずぶりと指をねじ込んだ。
「やんっ」
美詠は耐えられなかった。
膝が折れて、カクンと体が下がった。挿しこまれた指が、下がる体に抵抗し、より深くスジに食い込んだ。
「やぁん、もう」
「また動いた」
「だってぇ」
人差し指はまだ入っている。ねじり込まれたせいで指の腹が中で上を向き、当たっている。
「ほら、立って。みよみちゃん、気をつけっ」
拓斗が人差し指をぐっと上に押した。美詠はその指に身体を押し上げられる格好になった。号令と指の両方で、再び真っすぐ立たされた。
「ううーっ」
感情を奥歯でかみつぶすうめき声。
直立不動の少女は今や少年の玩具だ。操り人形だ。服を脱がして好きに遊べる魂の入ったマリオネットだ。
「すぐ動いちゃうから、俺がみよみちゃんを押さえておいてあげるよ」
スジに指を突っ込んだまま、拓斗は美詠の後ろにも手をまわした。お尻を下から抱える。
「えええっ。たっくん~~」
「これで頑張れるよね」
「頑張れないよ~~」
聞く耳持たず。拓斗はお尻を手で圧迫しながら人差し指を出し入れしだした。指の腹でシュコシュコとショーツのスジをこする。
歯磨きでもするかのように、狭い秘唇の隙間を割り裂いて、ずぶりと入り、すうっと抜け出る動きが繰り返される。
「ひゃああああ」
「あはははは」
笑いながら揺れる指がスジの中で指先を立てた。起き上がった指先が美詠の体から引き抜かれようとしている。
美詠は口をぐにゃりとゆがめた。しかし指は途中で立ち止まった。やわらかい秘唇の中に隠れた、かすかな硬い感触を違和感として察知したのだ。立ち止まった指先が違和感の元をカリカリ引っかく。
「あーーーっ!」
美詠の腰が落ちた。拓斗の腕をすり抜けて身体がぺたんと畳に座った。
「なにいまの。すごい声だったけど」
「なんでもない……」
畳に手をついて、打ちひしがれたような格好で美詠は言う。
「痛かった?」
「ううん……」
「くすぐったかった?」
「もう立ってるの無理ー」
美詠の声には元気があり、問いかけを無視する気力もあった。
拓斗の顔から心配の表情が抜ける。
「じゃあ正座して。ほら、座布団」
あらかじめ考えていたのかと思うくらい指示が早い。
「うう……」
美詠は座布団に正座させられた。
膝は開くように拓斗は指示する。要するに股を開けということだ。
「もっと開いて。俺の手が入るくらい」
拓斗は美詠の横に陣取って言った。
美詠が太ももの間隔を広げると、すかさず手を股の下へ潜りこませた。
横で次の指示をささやく。
「手を背中で組んで」
「はい……」
美詠は両手を後ろで組んだ。訴えずにはいられない格好。訴えた。
「こんな格好恥ずかしいよぉ」
「みよみちゃんはお仕置きされるんだから、恥ずかしい格好でいいんだよ」
「あう……」
敵に捕まった女の子が受ける辱め。
美詠は自身の置かれた状況に、そんなアニメチックな連想をした。
「捕まっちゃったみたいだね、みよみちゃん」
美詠はぎくりと横を見る。口に出てしまったのかと思ったが、どうやら拓斗も似たようなことをイメージしたらしかった。
「私、捕まっちゃったの?」
「敵に捕まったらさ、女の子はエロい目にあうじゃん。マンガとかでよくあるじゃん」
やっぱりよくあるんだ――。
美詠の中で拓斗の言葉が何度も胸に当たって跳ね返る。
「じゃあ、たっくんは悪い人なの?」
「どう思う?」
「えー……」
答えられない。
しかし少年のほうは自身を知っている。
女子の性を踏みにじりたい欲望を知っている。
今まで触れたくても触れることのできなかった女子の聖域に踏み込み、そこを荒らす快感を、もっともっとむさぼりたい。
もし美詠には聖域の存在を許さないと言ったらどんな反応をみせるだろう。自分に対してそこを隠すことなど許さないと言ったらどうするだろう。
抵抗するか、受け入れるか。
受け入れるなら自分にどこまで付いてこられるか見てみたい。
抵抗するなら屈服させたい。征服して服従させたい。
なんでもいい。むさぼり尽くしてやりたい。
――心の中で悶々とした欲情が渦巻いている。
「悪いヤツかもよ」
少年は覗かせた白い歯を半月型に吊り上げた。
口調は真逆で穏やかで、少女を諭すように優しく言う。
「今度はもう動いちゃダメだよ」
「これじゃ動けないもん……」
「手がまだ動くかもしれないから押さえておいてあげるよ」
美詠は背中で合わせた手首をつかまれた。
拓斗は片手で手首をつかみながら、もう片方の手を股の下に忍ばせている。
「ええ、こんなの恥ずかしい」
「手錠かけちゃった」
「言わないでぇ」
「みよみちゃんの女の子の部分にお仕置き開始」
「やああああ」
指が下からショーツに食い込んだ。
移動する指はお尻の穴の近くから、割れ目のラインを外さずに、刺さった指先を少しずつ前へ引きずっていく。
スジから指を引き抜かれて美詠は背筋が伸びあがった。すぐに手首をぎゅっと握られた。動くなと拓斗の手が言っている。
「みよみちゃんがさっきビクッてしたのどこだっけ。ここだっけ」
トンッ。
指が割れ目を突いた。
さっきと同じく、お尻の穴のすぐ近く。わざとらしく遠い位置。
指先から小さな衝撃が広がって、美詠の身体に浸透する。
トンッ。
また突いた。今度は乙女の蜜穴の位置。ショーツの食い込みにすっぽり入った。
美詠はぎゅっと目をつぶる。拓斗が少しずつ指を前へずらしていくつもりなのがもうわかる。
トンッ……トンッ……。
小さな衝撃が予想通りに移動していく。
もはやカウントダウンだ。三手先に王手がみえる。
トンッ……トンッ……。
次の場所だ。心なしか指が動きを止めている。
間があって、
トンッ!
「はあんっ」
わかってはいても身体が跳ねた。指の力も強かった。手首はあらかじめガッチリつかまれていた。
「ここらへんすごいよね」
含み笑う声。耳のそば。
美詠は背中が猫背になる。
拓斗は秒の速度で反応した。
「胸を張って」
きゅっと手首を握られる。
「はい……」
美詠は指示に従った。胸の突起がキャミソールに浮き出た。
「ひどいよう」
「どうして?」
にやけた声を出しながら、拓斗は探り当てた美詠の弱点部分の秘唇をタプタプと揺すった。
指を押しつけて揉みほぐしにかかる。
ああ……。
火照った呼気が美詠の唇からもれた。身体の底で灯った淫火の熱の立ち昇り。
揉みほすぐ手の動きは、ほどよい力加減で、丁寧で、だがネチネチと粘着質なうえに、いやらしい。
「たっくん、ダメ、ダメ、もう」
「なんでダメなの」
「ダメだからぁ」
「お仕置きなんだからじっとしてて」
「あああ……」
ぴしゃりと放たれた一言が乙女の胸を貫いた。
ぐにゅり……ぐにゅり……。
ゆがみ続ける秘唇。
身を寄せ合う二枚の淫肉が幼い蕾を圧迫しながら動き続けている。
圧に対して小さな肉の蕾はその身を硬くして抵抗の構えをとっている。
しかし、あまりにも弱い抵抗だ。あわれな蕾は淫肉のうねりに呑みこまれ、前後左右から揉まれている。なまじ抵抗するぶんだけ余計に圧を受けている。
「う、うう、う……あっ……う……」
美詠はうめく。
うめきの間にこぼれる喘ぎは小さなドロップのように愛らしい。
小粒の甘さと、ほどよい温もりが癖になる蜜の味。少年はそれを耳に含んで味わっている。
気持ちいいんだろ?
拓斗の目はそう言っている。夢を見るような、とらえどころのない美詠の顔に向けて。
こねくりまわされる秘唇の奥で、にちゃりにちゃりと粘度の高い音が立っている。
耳には届かないかすかなその音を、拓斗の鋭敏な指先は拾って聴いている。
この動きが最適だと手が理解している。
だから、終わらない。
「もう……だめ……」
小さな唇から少女の哀しい声があふれた。
なにがダメなんだ。もっと蜜をこぼしてみせろ。
少年は手の圧を少し強める。
中指が少女の体内により深く入った。幼い蕾を布でこすった。
「んーーーーっ」
美詠の身体が固まった。
時間ごと凍りついたような突然の停止。
――たっくん。
呼びかけだ。拓斗はハッと我に返った。手を離した。
芸術的な女の子の像を彼は見た。
弓のように反った華奢な身体。縛られたように整った姿勢。光の柱で下から貫かれたかのように上がった顎。
内巻きの髪が肩からほどけて落ちている。何本かは毛先を鎖骨に残して垂れている。
やがて女の子の像は長い息をはきながら肩をさげた。凍った時間が動きだした。
「なに? みよみちゃん」
「…………え?」
「俺を呼んだから」
「呼んでない……よ?」
「あれ、おかしいな。まあいいか」
拓斗は背中で組んだ美詠の手首にもう一度手を置いた。
「みよみちゃん」
「は、はいっ」
美詠はガラにもない返事のしかたをした。
生まれてこのかた誰に対してもしたことのない返事だ。
自分でそれに気がついて、目と胸の奥が困惑した。
拓斗の指がショーツを指している。
「それ、みよみちゃんのパンツ脱がしていい?」
「えっ」
「あそこ見たいからさ」
体温のこもった穏やかな声を横顔に浴びて、美詠は理性を押し倒されそうになった。
「それもお仕置き……?」
「お仕置きはおしまい。楽しかったよ。今のは頼み」
「そうなんだあ」
返事が喉元から出かかっている。
それは狼にかじられたい羊の欲。
けれども、やられっぱなしの羊は何だかちょっぴり悔しくて、ちょっとだけ狼に抵抗してみせた。
「あそこって? なにが見たいの?」
いじわるな気持ちを込めて彼に聞いた。
恥ずかしくて口には出せないあの言葉。彼もそれを今まで一度も言っていないから、きっと恥ずかしくて言えないに違いない。
――そんなふうに考えて。
「おまんこ。みよみちゃんのおまんこ見せてよ。見たい」
「あうう……」
かーっと耳が熱くなった。耳元で、拓斗の声で、“みよみちゃんの”と名前付きで、なんのためらいもなくささやかれた。
「た、たっくん」
「ん?」
「いいけど、おトイレに行ってきてからでもいい……?」
「やったぜ。俺も行こうかな」
「あ、じゃあ先に……どうぞ」
「トイレってどこにあるの」
「教えるね。服着ていい?」
客間の前の廊下は片側全面がガラス張りになっている。障子を開ければこの場所も外から丸見えだ。
「そうか。せっかく脱がしたのになー」
名残惜しそうに顔がしぶっている。
「また脱がしていいから。ねっ?」
「なんだ。じゃあ、いいよ」
美詠はほっとため息をついた。
ワンピースを着ていると、拓斗が扇風機のボタンを押した。いまや無意味に空気をかき混ぜるだけの存在と化していた夏の風物詩は、透明なグリーンの四枚羽根を静かに休めた。
美詠は座布団に手をついて畳に足を置き、恐るおそる腰を上げた。
笑いそうになる膝をおさえてようやく立てた。
背中に手を回す。
しかし今度はファスナーが下ろせない。指がスライダーをうまく拾ってくれない。
「待ってね……」
拓斗が見ている。気持ちが焦る。
脱いでと言われた時から続いている手の震えがおさまらない。
「ワンピって脱ぐの大変そうだ」
そんなことないと美詠は首を振りかけて、やめた。手が動かないのは確かだった。拓斗の視線がまるでクモの糸のように手指にからみついている感じがする。また指からスライダーが逃げた。
「チャックおろせなくなっちゃった」
「手伝おうか」
「えっ」
脱がされる――。
残りわずかな力まで手から抜けた。
「これか」
背後で拓斗がファスナーを下ろす。背中に指が当たっている。
美詠が立ち尽くしていると、続けて肩にも手がかかった。ぎくりとした拍子にワンピースが足元までするりと下ろされた。
「きゃあ」
美詠は心の準備が追い付かないまま、白のキャミソールとショーツだけの姿にさせられた。
おへそはぎりぎり隠れているが、お腹の肌は見えている。ショーツは縦割れの食い込みがそのままだ。
美詠は身体を手で隠す。最初に股を、それから胸を。
「足どけて」と拓斗が言っている。美詠は畳に落ちたワンピースから足を抜いた。よろけそうになった。
拓斗は回収したワンピースを畳の上に丁寧に広げている。
「たっくん、それ何してるの?」
「いや、シワとかついたら悪い気がして」
「へぇ?」
タイヤから空気がもれるような声が出た。
自分のそれも含めて美詠は「えへっ」と笑ってしまった。パンツにはシワつけたくせにと言いかけて、やめる。
肩を震わせていたら拓斗が横目で見た。
「嬉しそうじゃん」
「えー……うん」
「脱がされたのが嬉しい?」
「違うーーっ」
「はははは。みよみちゃん、その手だめだよ」
「え?」
「手で隠してるのダメだから。隠すの禁止」
「ひどーい」
美詠は手をどけた。全身から緊張がいくらか抜けている。
しかし拓斗が立って面と向かい合うと、笑った今でも緊張感はやはり高い。
遠慮のない視線を正面から美詠はまた浴びた。身体中にからみついた。
「みよみちゃん」
「ん」
「手を横につけて、気をつけっ」
号令だ。美詠は反射的に姿勢を正す。体育の号令よりも命令的。まだ続く。
「胸を張って」
「う、うん」
「返事は“はい”」
「はい」
胸を張る。
「胸をもっと前へ。ぎゅっと!」
「はい!」
ぎゅーっと張る。
まだ膨らみのない、ブラジャーをつけていない胸が前に押し出された。
キャミソールに小さな突起が二つ浮き出る。
「いい格好だ」
「恥ずかしい……」
拓斗が笑う。やはりクモの糸のような視線だ。編み目模様に広がって、胸を覆うようにからんでくる。
「恥ずかしいよぉ」
美詠はもう一度訴えた。
逆効果だった。拓斗は一歩進んで距離を詰め、じっとしててと言うなり少しずつ体を下げはじめた。
拓斗の目線の位置が下がっていく。
美詠の首へ、そして胸へ。
まだ下がる。みぞおち……お腹……下腹部……股。
股の前で顔が止まった。拓斗は自分が作った「作品」を、お尻まで貫くような視線で鑑賞している。
美詠は思わず太ももをすり合わせた。
ショーツの股の部分が、きゅっと締まった。白の逆三角形が鋭角にすぼまった。食い込まされた縦スジが斜めにゆがむ。
拓斗の目が美味しそうな獲物を見る目に変化した。
肉食の、野性的で狡知に長けた狼の目だ。前にいる美詠はまるで羊だ。
狼は羊のすり合わせた太ももを両手でかかえた。すべすべとなでて羊を震わせる。
「気をつけっ」
パシンと太ももが叩かれた。
美詠はビクッと姿勢を正す。
「動いちゃダメだよね」
「はいっ」
「フフフフフ」
笑っている。
拓斗は美詠が座っていた座布団に座って片膝を立てた。そこに肘をのせ、頬杖をついた。
頬杖から見上げる顔が満足そうに微笑んでいる。
美詠は顔をそむけたが、目はどうしても拓斗の顔へいってしまう。
「本当にいい格好だなー」
つやのある黒い瞳が上から下までまんべんなく動いている。
けれども瞳が長い時間とどまるところは女の子ならではの部分だ。男女の身体で最も違いのある箇所が、最も視線の餌食になる箇所だ。
視線を濃密にからめた一点に拓斗が人差し指を近づける。
美詠の目の中で、最初に触られそうになった時の記憶が今と重なった。
しかし今回の指は止まらない。小動物を愛でるかのようにスジをつついた。美詠は一瞬、目をつぶった。
「恥ずかしそう」
拓斗がまた笑っている。
恥辱に耐えながら気をつけの姿勢を維持する少女の身体が彼の瞳に映っている。
つんつん。
拓斗は指先でスジを二回ノックした。ずぶりと指をねじ込んだ。
「やんっ」
美詠は耐えられなかった。
膝が折れて、カクンと体が下がった。挿しこまれた指が、下がる体に抵抗し、より深くスジに食い込んだ。
「やぁん、もう」
「また動いた」
「だってぇ」
人差し指はまだ入っている。ねじり込まれたせいで指の腹が中で上を向き、当たっている。
「ほら、立って。みよみちゃん、気をつけっ」
拓斗が人差し指をぐっと上に押した。美詠はその指に身体を押し上げられる格好になった。号令と指の両方で、再び真っすぐ立たされた。
「ううーっ」
感情を奥歯でかみつぶすうめき声。
直立不動の少女は今や少年の玩具だ。操り人形だ。服を脱がして好きに遊べる魂の入ったマリオネットだ。
「すぐ動いちゃうから、俺がみよみちゃんを押さえておいてあげるよ」
スジに指を突っ込んだまま、拓斗は美詠の後ろにも手をまわした。お尻を下から抱える。
「えええっ。たっくん~~」
「これで頑張れるよね」
「頑張れないよ~~」
聞く耳持たず。拓斗はお尻を手で圧迫しながら人差し指を出し入れしだした。指の腹でシュコシュコとショーツのスジをこする。
歯磨きでもするかのように、狭い秘唇の隙間を割り裂いて、ずぶりと入り、すうっと抜け出る動きが繰り返される。
「ひゃああああ」
「あはははは」
笑いながら揺れる指がスジの中で指先を立てた。起き上がった指先が美詠の体から引き抜かれようとしている。
美詠は口をぐにゃりとゆがめた。しかし指は途中で立ち止まった。やわらかい秘唇の中に隠れた、かすかな硬い感触を違和感として察知したのだ。立ち止まった指先が違和感の元をカリカリ引っかく。
「あーーーっ!」
美詠の腰が落ちた。拓斗の腕をすり抜けて身体がぺたんと畳に座った。
「なにいまの。すごい声だったけど」
「なんでもない……」
畳に手をついて、打ちひしがれたような格好で美詠は言う。
「痛かった?」
「ううん……」
「くすぐったかった?」
「もう立ってるの無理ー」
美詠の声には元気があり、問いかけを無視する気力もあった。
拓斗の顔から心配の表情が抜ける。
「じゃあ正座して。ほら、座布団」
あらかじめ考えていたのかと思うくらい指示が早い。
「うう……」
美詠は座布団に正座させられた。
膝は開くように拓斗は指示する。要するに股を開けということだ。
「もっと開いて。俺の手が入るくらい」
拓斗は美詠の横に陣取って言った。
美詠が太ももの間隔を広げると、すかさず手を股の下へ潜りこませた。
横で次の指示をささやく。
「手を背中で組んで」
「はい……」
美詠は両手を後ろで組んだ。訴えずにはいられない格好。訴えた。
「こんな格好恥ずかしいよぉ」
「みよみちゃんはお仕置きされるんだから、恥ずかしい格好でいいんだよ」
「あう……」
敵に捕まった女の子が受ける辱め。
美詠は自身の置かれた状況に、そんなアニメチックな連想をした。
「捕まっちゃったみたいだね、みよみちゃん」
美詠はぎくりと横を見る。口に出てしまったのかと思ったが、どうやら拓斗も似たようなことをイメージしたらしかった。
「私、捕まっちゃったの?」
「敵に捕まったらさ、女の子はエロい目にあうじゃん。マンガとかでよくあるじゃん」
やっぱりよくあるんだ――。
美詠の中で拓斗の言葉が何度も胸に当たって跳ね返る。
「じゃあ、たっくんは悪い人なの?」
「どう思う?」
「えー……」
答えられない。
しかし少年のほうは自身を知っている。
女子の性を踏みにじりたい欲望を知っている。
今まで触れたくても触れることのできなかった女子の聖域に踏み込み、そこを荒らす快感を、もっともっとむさぼりたい。
もし美詠には聖域の存在を許さないと言ったらどんな反応をみせるだろう。自分に対してそこを隠すことなど許さないと言ったらどうするだろう。
抵抗するか、受け入れるか。
受け入れるなら自分にどこまで付いてこられるか見てみたい。
抵抗するなら屈服させたい。征服して服従させたい。
なんでもいい。むさぼり尽くしてやりたい。
――心の中で悶々とした欲情が渦巻いている。
「悪いヤツかもよ」
少年は覗かせた白い歯を半月型に吊り上げた。
口調は真逆で穏やかで、少女を諭すように優しく言う。
「今度はもう動いちゃダメだよ」
「これじゃ動けないもん……」
「手がまだ動くかもしれないから押さえておいてあげるよ」
美詠は背中で合わせた手首をつかまれた。
拓斗は片手で手首をつかみながら、もう片方の手を股の下に忍ばせている。
「ええ、こんなの恥ずかしい」
「手錠かけちゃった」
「言わないでぇ」
「みよみちゃんの女の子の部分にお仕置き開始」
「やああああ」
指が下からショーツに食い込んだ。
移動する指はお尻の穴の近くから、割れ目のラインを外さずに、刺さった指先を少しずつ前へ引きずっていく。
スジから指を引き抜かれて美詠は背筋が伸びあがった。すぐに手首をぎゅっと握られた。動くなと拓斗の手が言っている。
「みよみちゃんがさっきビクッてしたのどこだっけ。ここだっけ」
トンッ。
指が割れ目を突いた。
さっきと同じく、お尻の穴のすぐ近く。わざとらしく遠い位置。
指先から小さな衝撃が広がって、美詠の身体に浸透する。
トンッ。
また突いた。今度は乙女の蜜穴の位置。ショーツの食い込みにすっぽり入った。
美詠はぎゅっと目をつぶる。拓斗が少しずつ指を前へずらしていくつもりなのがもうわかる。
トンッ……トンッ……。
小さな衝撃が予想通りに移動していく。
もはやカウントダウンだ。三手先に王手がみえる。
トンッ……トンッ……。
次の場所だ。心なしか指が動きを止めている。
間があって、
トンッ!
「はあんっ」
わかってはいても身体が跳ねた。指の力も強かった。手首はあらかじめガッチリつかまれていた。
「ここらへんすごいよね」
含み笑う声。耳のそば。
美詠は背中が猫背になる。
拓斗は秒の速度で反応した。
「胸を張って」
きゅっと手首を握られる。
「はい……」
美詠は指示に従った。胸の突起がキャミソールに浮き出た。
「ひどいよう」
「どうして?」
にやけた声を出しながら、拓斗は探り当てた美詠の弱点部分の秘唇をタプタプと揺すった。
指を押しつけて揉みほぐしにかかる。
ああ……。
火照った呼気が美詠の唇からもれた。身体の底で灯った淫火の熱の立ち昇り。
揉みほすぐ手の動きは、ほどよい力加減で、丁寧で、だがネチネチと粘着質なうえに、いやらしい。
「たっくん、ダメ、ダメ、もう」
「なんでダメなの」
「ダメだからぁ」
「お仕置きなんだからじっとしてて」
「あああ……」
ぴしゃりと放たれた一言が乙女の胸を貫いた。
ぐにゅり……ぐにゅり……。
ゆがみ続ける秘唇。
身を寄せ合う二枚の淫肉が幼い蕾を圧迫しながら動き続けている。
圧に対して小さな肉の蕾はその身を硬くして抵抗の構えをとっている。
しかし、あまりにも弱い抵抗だ。あわれな蕾は淫肉のうねりに呑みこまれ、前後左右から揉まれている。なまじ抵抗するぶんだけ余計に圧を受けている。
「う、うう、う……あっ……う……」
美詠はうめく。
うめきの間にこぼれる喘ぎは小さなドロップのように愛らしい。
小粒の甘さと、ほどよい温もりが癖になる蜜の味。少年はそれを耳に含んで味わっている。
気持ちいいんだろ?
拓斗の目はそう言っている。夢を見るような、とらえどころのない美詠の顔に向けて。
こねくりまわされる秘唇の奥で、にちゃりにちゃりと粘度の高い音が立っている。
耳には届かないかすかなその音を、拓斗の鋭敏な指先は拾って聴いている。
この動きが最適だと手が理解している。
だから、終わらない。
「もう……だめ……」
小さな唇から少女の哀しい声があふれた。
なにがダメなんだ。もっと蜜をこぼしてみせろ。
少年は手の圧を少し強める。
中指が少女の体内により深く入った。幼い蕾を布でこすった。
「んーーーーっ」
美詠の身体が固まった。
時間ごと凍りついたような突然の停止。
――たっくん。
呼びかけだ。拓斗はハッと我に返った。手を離した。
芸術的な女の子の像を彼は見た。
弓のように反った華奢な身体。縛られたように整った姿勢。光の柱で下から貫かれたかのように上がった顎。
内巻きの髪が肩からほどけて落ちている。何本かは毛先を鎖骨に残して垂れている。
やがて女の子の像は長い息をはきながら肩をさげた。凍った時間が動きだした。
「なに? みよみちゃん」
「…………え?」
「俺を呼んだから」
「呼んでない……よ?」
「あれ、おかしいな。まあいいか」
拓斗は背中で組んだ美詠の手首にもう一度手を置いた。
「みよみちゃん」
「は、はいっ」
美詠はガラにもない返事のしかたをした。
生まれてこのかた誰に対してもしたことのない返事だ。
自分でそれに気がついて、目と胸の奥が困惑した。
拓斗の指がショーツを指している。
「それ、みよみちゃんのパンツ脱がしていい?」
「えっ」
「あそこ見たいからさ」
体温のこもった穏やかな声を横顔に浴びて、美詠は理性を押し倒されそうになった。
「それもお仕置き……?」
「お仕置きはおしまい。楽しかったよ。今のは頼み」
「そうなんだあ」
返事が喉元から出かかっている。
それは狼にかじられたい羊の欲。
けれども、やられっぱなしの羊は何だかちょっぴり悔しくて、ちょっとだけ狼に抵抗してみせた。
「あそこって? なにが見たいの?」
いじわるな気持ちを込めて彼に聞いた。
恥ずかしくて口には出せないあの言葉。彼もそれを今まで一度も言っていないから、きっと恥ずかしくて言えないに違いない。
――そんなふうに考えて。
「おまんこ。みよみちゃんのおまんこ見せてよ。見たい」
「あうう……」
かーっと耳が熱くなった。耳元で、拓斗の声で、“みよみちゃんの”と名前付きで、なんのためらいもなくささやかれた。
「た、たっくん」
「ん?」
「いいけど、おトイレに行ってきてからでもいい……?」
「やったぜ。俺も行こうかな」
「あ、じゃあ先に……どうぞ」
「トイレってどこにあるの」
「教えるね。服着ていい?」
客間の前の廊下は片側全面がガラス張りになっている。障子を開ければこの場所も外から丸見えだ。
「そうか。せっかく脱がしたのになー」
名残惜しそうに顔がしぶっている。
「また脱がしていいから。ねっ?」
「なんだ。じゃあ、いいよ」
美詠はほっとため息をついた。
ワンピースを着ていると、拓斗が扇風機のボタンを押した。いまや無意味に空気をかき混ぜるだけの存在と化していた夏の風物詩は、透明なグリーンの四枚羽根を静かに休めた。
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