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第一章 辺境の村~6歳~
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教会に通いジルオ様の授業を受け始めてから、あっという間に十日が過ぎた。
どうやらジルオ様は、僕に合わせて一般常識のおさらいをしてくれていたらしい。
大変ありがたいです。
まずミテラス教が定めた六神暦について。
これは神々による大地の創世神話に基づいているそうで、月と曜日は風から始まり、水、光、火、土、闇の順番になっている。
(1年 = 366日、1週間 = 6日)
前世の記憶があるから逆に混乱するよ。
風の月は年始から六十六日あり、続けて水、光、火、土、闇の順番で六十日ごと月が変わり、一年のサイクルになっている。
日曜日にあたる安息日は、風の月では風の日が、水の月では水の日で、基本的には週に一日だけ。収穫祭や建国祭の祝日もある。
多忙な農村の民には、収穫祭ぐらいしか実際の休みなんてないけどね。
なお、六十六日ある風の月は、年始からの六日間が女神様たちの安息日らしい。
年に六日しか休みがない女神様たちの超絶ブラック労働環境には頭が下がる思いだよ。
ぼーっとして生きてきた僕なんか、去年行った領都で初めて時計を見て、一日が二十四時間らしいことを知ったくらいだもの。
女神様には日々感謝してお祈りしよう。
他には、東から昇り西へ沈む太陽と月や、夜に動く星空を見る限り、この惑星は自転しながら太陽の周りを公転しているのだと思う。
ただし、ここは魔法があるまったくの異世界だから、僕の記憶にある地球の自然科学の知識が必ずしも当てはまるとは限らない。
実際に、満天の星空は記憶の中の夜空とはまるで違うものだから。あまり固定観念を持たない方がいいね。
次に、算術に関しては十進法で四則計算も前世と同じだから助かった。これでも前世で母さんにそろばんを習ったから暗算は得意なんだ。
まさか転生しても役に立つとはね。
母さんにも感謝したい、母は偉大だよ。
次にセントリス王国の通貨について。
魔法金属を鋳造した硬貨で単位はリペ。
鉄貨 1
大鉄貨 10
銅貨 100
大銅貨 500
銀貨 1,000
大銀貨 5,000
金貨 10,000
大金貨 50,000
棒金貨 1,000,000
板金貨 10,000,000 (リペ)
鉄貸より下にローカル通貨の賤貨、板金貨より上に白金貨とやらがあるらしい。
シュガー村でごく稀に見かけても、鉄貨から大銅貨くらいかな。行商人と取引する時以外は、だいたいがローカル通貨、つまり物々交換や労働力の貸し借りで生活できてしまうから。
実にシンプルな生き方で、みんな細かいことは気にせずおおらかなんだ。
最後に魔法について。
風、水、光、火、土、闇の六つの魔法属性の中から、基本的に与えられた女神様の加護によって使える魔法が決まるそうだ。
専門の魔導書を読んで深く理解することによって、個人に潜在している魔法の力が開花、高度な魔法を具現化できるようになるらしい。
また中には、ダブルやトリプルと呼ばれる複数の属性魔法を扱える非凡な者もいる。身近なところではエルフ族のフィーネがそうだね。
凡人にできることは、理解できるまで魔導書を何度も何度も読み込むしかないらしい。さすれば道は開かれんとかなんとか。
つまりは才能と努力なんだろう。あと、魔導書を読むことができる環境。
信じてコツコツやっていくしかない。
人間関係も似たようなものかなぁと思いつつ、今日もまた僕を無視して礼拝堂から出ていくミユカとレダン姉弟の後ろ姿を見送った。
そう簡単には許してくれないらしい。
後ろからジルオ様の声がかかる。
「ハルト様。ほれ」
「なんですか?」
白い革表紙の分厚い古書を手渡された。
「光の魔導書じゃ」
「え? もう貸していただけるんですか?」
「うむ。わからんところはその都度わしに聞きに来ればいいじゃろ。頑張ったご褒美じゃな」
「ありがとうございます、ジルオ様。これからもなるべく礼拝堂の掃除に来ます」
「ほっほっほ。まあそんなに真面目に頑張らんでもいいわい。マリアンヌ様も寂しがるからの。子供のうちは子供らしく遊んで悪戯することも忘れんことじゃ」
「はい、ありがとうございます」
お礼を言って礼拝堂を出ると、いつものようにマリアとフィーネが待っていた。授業の途中でも入ってくればいいのに。
「お待たせマリア、フィーネ。二人とも外で待っててくれるけど、寒くないのかな?」
「はい、ハルトお兄さま。マリアは早くボスにもふもふさせてもらいたいのです!」
「ははは、わかったよ。じゃあ行こう」
マリアはすっかりボスがお気に入り。
口には出さないけどフィーネも。もふもふでしか得られない幸福感があるからね。
僕とマリアとフィーネで手を繋ぎ、三人で牧場へ行ってボスと戯れる。帰りはボスの背中に乗せてもらい、屋敷へ戻るのが日課になった。
この間、魔法で出したビスケットが牧場の馬や牛たちに効くことも確かめられたし、こうして光の魔導書もお借りすることができた。
いよいよ本格的に動き始めよう。
雪山から小川に冷たい雪解け水が流れ出すと、山村の春はもうすぐそこだ。
どうやらジルオ様は、僕に合わせて一般常識のおさらいをしてくれていたらしい。
大変ありがたいです。
まずミテラス教が定めた六神暦について。
これは神々による大地の創世神話に基づいているそうで、月と曜日は風から始まり、水、光、火、土、闇の順番になっている。
(1年 = 366日、1週間 = 6日)
前世の記憶があるから逆に混乱するよ。
風の月は年始から六十六日あり、続けて水、光、火、土、闇の順番で六十日ごと月が変わり、一年のサイクルになっている。
日曜日にあたる安息日は、風の月では風の日が、水の月では水の日で、基本的には週に一日だけ。収穫祭や建国祭の祝日もある。
多忙な農村の民には、収穫祭ぐらいしか実際の休みなんてないけどね。
なお、六十六日ある風の月は、年始からの六日間が女神様たちの安息日らしい。
年に六日しか休みがない女神様たちの超絶ブラック労働環境には頭が下がる思いだよ。
ぼーっとして生きてきた僕なんか、去年行った領都で初めて時計を見て、一日が二十四時間らしいことを知ったくらいだもの。
女神様には日々感謝してお祈りしよう。
他には、東から昇り西へ沈む太陽と月や、夜に動く星空を見る限り、この惑星は自転しながら太陽の周りを公転しているのだと思う。
ただし、ここは魔法があるまったくの異世界だから、僕の記憶にある地球の自然科学の知識が必ずしも当てはまるとは限らない。
実際に、満天の星空は記憶の中の夜空とはまるで違うものだから。あまり固定観念を持たない方がいいね。
次に、算術に関しては十進法で四則計算も前世と同じだから助かった。これでも前世で母さんにそろばんを習ったから暗算は得意なんだ。
まさか転生しても役に立つとはね。
母さんにも感謝したい、母は偉大だよ。
次にセントリス王国の通貨について。
魔法金属を鋳造した硬貨で単位はリペ。
鉄貨 1
大鉄貨 10
銅貨 100
大銅貨 500
銀貨 1,000
大銀貨 5,000
金貨 10,000
大金貨 50,000
棒金貨 1,000,000
板金貨 10,000,000 (リペ)
鉄貸より下にローカル通貨の賤貨、板金貨より上に白金貨とやらがあるらしい。
シュガー村でごく稀に見かけても、鉄貨から大銅貨くらいかな。行商人と取引する時以外は、だいたいがローカル通貨、つまり物々交換や労働力の貸し借りで生活できてしまうから。
実にシンプルな生き方で、みんな細かいことは気にせずおおらかなんだ。
最後に魔法について。
風、水、光、火、土、闇の六つの魔法属性の中から、基本的に与えられた女神様の加護によって使える魔法が決まるそうだ。
専門の魔導書を読んで深く理解することによって、個人に潜在している魔法の力が開花、高度な魔法を具現化できるようになるらしい。
また中には、ダブルやトリプルと呼ばれる複数の属性魔法を扱える非凡な者もいる。身近なところではエルフ族のフィーネがそうだね。
凡人にできることは、理解できるまで魔導書を何度も何度も読み込むしかないらしい。さすれば道は開かれんとかなんとか。
つまりは才能と努力なんだろう。あと、魔導書を読むことができる環境。
信じてコツコツやっていくしかない。
人間関係も似たようなものかなぁと思いつつ、今日もまた僕を無視して礼拝堂から出ていくミユカとレダン姉弟の後ろ姿を見送った。
そう簡単には許してくれないらしい。
後ろからジルオ様の声がかかる。
「ハルト様。ほれ」
「なんですか?」
白い革表紙の分厚い古書を手渡された。
「光の魔導書じゃ」
「え? もう貸していただけるんですか?」
「うむ。わからんところはその都度わしに聞きに来ればいいじゃろ。頑張ったご褒美じゃな」
「ありがとうございます、ジルオ様。これからもなるべく礼拝堂の掃除に来ます」
「ほっほっほ。まあそんなに真面目に頑張らんでもいいわい。マリアンヌ様も寂しがるからの。子供のうちは子供らしく遊んで悪戯することも忘れんことじゃ」
「はい、ありがとうございます」
お礼を言って礼拝堂を出ると、いつものようにマリアとフィーネが待っていた。授業の途中でも入ってくればいいのに。
「お待たせマリア、フィーネ。二人とも外で待っててくれるけど、寒くないのかな?」
「はい、ハルトお兄さま。マリアは早くボスにもふもふさせてもらいたいのです!」
「ははは、わかったよ。じゃあ行こう」
マリアはすっかりボスがお気に入り。
口には出さないけどフィーネも。もふもふでしか得られない幸福感があるからね。
僕とマリアとフィーネで手を繋ぎ、三人で牧場へ行ってボスと戯れる。帰りはボスの背中に乗せてもらい、屋敷へ戻るのが日課になった。
この間、魔法で出したビスケットが牧場の馬や牛たちに効くことも確かめられたし、こうして光の魔導書もお借りすることができた。
いよいよ本格的に動き始めよう。
雪山から小川に冷たい雪解け水が流れ出すと、山村の春はもうすぐそこだ。
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