【辺境のグルメ商人、異世界をたがやす】異世界が野菜嫌いのようなので、おいしい料理でわからせます。

猫手 まねき

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第一章 辺境の村~6歳~

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「兄上」
「どうした?」
「裏庭に生き物を飼うための小屋を作りたいのですが、よろしいでしょうか?」
「……ああ」

 えっと、今のオッケーってことかな?

「ありがとうございます!」

 お粥ぐらいあっさり許可が下りた。
 なんていうか、兄上はそれでいいの?
 まあ、いいのなら良しとしよう。

 屋敷の西に広がる裏庭、というにはちょっと離れた草地にモミの木がある。その木の元へ、ボスとレンと力を合わせて材木を運んだ。
 だいたいボスがいてくれたおかげ。

 六歳児二人で身長の倍近い高さの鳥小屋を効率よく作るには、まず小さな構造物を組み立てて、大きな構造物にするのがいいだろう。
 子供でも運びやすい細くて軽い部材で、頑丈な構造物を作り上げる設計にした。
 参考にしたのはモンゴル遊牧民の移動式住居ゲル。布はないので屋根は茅葺きにする。木の下だから雨の心配はそれほどないしね。

 まずはモミの木の周りの草を取り、シャベルで地面を平らに整地。続けて距離を測るために使う測量紐を使って、鳥小屋の外枠がくる位置を測って十二本の基準となる杭を打った。

 次は必要な部材を地面の上に置いていく。
 二等辺三角形の三角柱を十二個作り、外側はすのこを作っておいて最後に壁にする。

 正確な図面はないし、部材を工場で加工してきて現場で組み立てればできるわけでもない。釘も貴重なので、木組みと縄でなんとかする。

 お手軽な便利魔法が欲しいなあ。
 田舎でスローライフを送りたいなら、十分な生活資金かチートな魔法でもないと無理だよ。あと、体力と人脈とコミュニケーション能力。
 今の僕が頼れるのはレンとボスだけだ。

「ねえ、ハルト様」
「ん? どうしたレン? 怖い顔して」
「ここからは、ボクに任せてくれるよね?」
「うん? もちろん任せるところは任せるけど、一緒に協力しようって言ったよね?」

 レンはいつになく真剣な表情だ。
 いつも、にぱーって笑ってるのに。

「ドワーフとしての初仕事だから、ボクは命がけでこの鳥小屋作りを頑張りたいんだ」

 いやいや、将来のある六歳児が鳥小屋作りに命までかけなくていいから。

「安全第一で、肩の力を抜いて作ろう?」
 
「ダメだよ! ボクはドワーフとしてハルト様に認めてもらいたいから手を抜きたくないんだ! 絶対にいいものを作るからね!」

 ああ、そうか。
 前世の記憶を思い出したことで忘れてたけど、これが六歳男児のノリなんだ。
 ちょっと羞恥心を感じつつ、僕は息子を持つ父親になったらこんな気持ちなのかなあーと、想像しながらレンに合わせることにした。

「よーし、レン! 任せたぜ!」
「ハルト様!」
「はい?」
「ちゃんと親方って呼んで」
「うん?」
「親方」

 上目遣いで訴えてくるし。
 レンにとって大事なことらしい。

「はい。お願いします、レン親方」
「えへへ~、うん! 頑張ろうね!」

 こんなんで大丈夫だろうか?
 そんな不安の中スタートした鳥小屋作りは、思いの外順調に進んだ。いやホントに。
 僕が知らないところで、レンはロンさんから色々な技術を学んでいたらしい。

 ノコギリとノミを使って、ほぞとほぞ穴を作る手際の良さは見ていて感心した。
 僕の知らないうちに成長してるんだなあ。
 参観日に我が子を見守る父親の気分だ。

 これがドワーフの血のせいなのか、レン個人の性格なのかはわからないけど、職人として大工仕事が好きなのが伝わってきたよ。

 これなら前世の記憶頼りでしかない僕は、サポートに回った方がいいなと考えて。
 レン親方の指示で道具を手渡し、額を流れる汗を拭い、「あーん」と食事の介助をして、愛弟子のように心を込めて肩を揉んだ。
 そして雨の日には、光の魔導書に悪戦苦闘しながら勉強も進めた。晴雨読かな。

 村のみんなが畑を耕しポテトの種芋を植えつける中、鳥小屋作りをコツコツと進めて、二十日目には完成の目処が立った。
 そこで箱罠製作に取りかかって先に完成。
 ようやく計画通り、魔の森へ箱罠を仕掛けに出かける日を迎えた。
 兄上たち大人は朝から外出している。
 マリアとフィーネには、工事中は危ないので近づかないように言ってあるから心配ない。

「それじゃあ、レン。ボスと一緒に魔の森へ行ってくるから。もし誰か来たら、牧場かどっかへ行ったとでも言っておいて」
「うん……。でも本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ、ボスがいるんだから」
「わふっ!」

 どんと来いって言ってる。
 どんと魔物が来たら困るけどね。

 防壁を支えるモミの木に設置してある魔除けの魔導具。そのスイッチを切ってから、お手製の梯子と縄を使って防壁を乗り越える。
 見張り台にいる村人の目を盗んで素早く。
 背中に箱罠を乗せたボスは、モミの木を蹴って易々と防壁を飛び越えた。
 僕は丸太の壁の向こうに話しかける。

「レン。はしごを外して魔導具のスイッチを入れておいて。僕たちが戻ってきたら指笛を吹くから、また魔導具のスイッチを切って、はしごと縄をよろしく」
「うん、わかった」

 そしてボスの背中によじ登った。

「よし、ボス頼んだぞ!」
「うぉん!」
「しーっ! 静かに」
「わふっ」
 
 生まれて初めて魔物の領域へ足を踏み入れる緊張感と高揚感、恐怖心と好奇心がせめぎ合う。僕とボスは、西の森を抜け魔の森へと向かった。
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