【辺境のグルメ商人、異世界をたがやす】異世界が野菜嫌いのようなので、おいしい料理でわからせます。

猫手 まねき

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第一章 辺境の村~6歳~

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 高い山頂に万年雪を冠する霊峰アルヌ。
 魔の森はその麓から遥か南のクロベラ大渓谷まで続くという縦長広大な大森林だ。

 常闇の森には濃い魔力が渦巻き、凶悪な魔物が巣くっている。フィールド辺境伯領に暮らす人々は、そんな恐ろしい魔物と永きに渡って戦い続けてきた歴史があるそうだ。
 きっと母上も、ご先祖様たちも。

 ただ、悪いことばかりではない。
 良質な木材や山菜や薬草など、豊かな森の恵みは貧しい農村の暮らしを支えてきた。
 また、辺境伯領が西の大国クロストラ帝国の侵略を受けなかったのも、人間の侵入を許さないこの魔境の森があったお陰だろう。

 僕とボスは魔の森の外縁に着いた。
 ふぅ。ボスに乗っての中距離移動は初めてだから結構疲れたな、腕とお尻が痛いや。

「ボス、ありがとう。疲れてない?」
「うぉん!」
「そうか。ボスは狩りに来てるから、ここへ来るのは慣れてるよね」
「わふっ!」

 うん。ただし長居は無用だね。
 分解して積んできた箱罠をボスの背中から下ろして組み立てる。簡単に壊されないよう節約していた釘をしっかり打って頑強に仕上げた。

 箱罠の大きさは僕が入れるくらい。
 デスヒクイ鳥がエサを食べようと入り、奥の踏み板を踏むとフックが外れて入り口が閉まる仕掛けだ。これなら絶対捕まえられるはず。

 問題はエサを何にするか。
 鳥が食べるものといえば、穀物とか虫とかなんでもいけると思うんだけど。普段、魔鳥が魔の森で何を食べているのかわからないし。
 いくつか違うエサを置いてみようか。

 麦の代わりに用意してきたビスケットやコーンに加えて、やっぱり肉系もいるかなと思い、照り焼きチキンを出してみたけど。

「これ共食いみたいなものかな?」

 怒りを買うかもしれない、とか思ってチキンはボスにあげた。意外と食べたことないものに興味を示すかもしれないと、チョコレート菓子を置いてみることにする。
 まあ、ちょっと小腹が空いちゃって。
 たまに無性に食べたくなるんだよね。

「デスヒクイ鳥はチョコの味がしっかりしているきのこ派かな、それともクッキーがサクサクしているたけのこ派かな?」

 あ、やっぱりどっちも美味しいな。
 両方置いてみることにした。

「これでよし。ボス、じゃあ帰ろうか」
「わふっ!」

 魔の森に箱罠を仕掛けた僕は、再びボスに乗って無事に村へ戻ってきた。

 それからみんなの目を盗んでは、度々ボスに乗って魔の森へ通い、様子を見ながら箱罠の場所を変えたりしてみた。
 そしてついに待望の鳥がかかった!
 その姿は瑠璃色というよりは群青色だし、熊本地鶏の天草大王よりも大きく見えるけど、これがデスヒクイ鳥の雄に違いない。思った通り魔法で出したエサを食べて僕に懐いていた。

「クェークェー」
「あははは、やったやった成功だ!」

 デスヒクイ鳥は、きのこ派だったんだ。
 昨日、置く量を増やして正解だった。

「そうだ、ボスもこの子にチョコをあげて」
「わふっ?」

 首を傾げるボスの前足にチョコを置き、箱罠から頭を出したデスヒクイ鳥に食べさせる。これでボスに対して攻撃してこなくなるはず。

 実は動物と魔法の食べ物の関係について検証を重ね、わかったことがある。

 基本は僕が食べ物を与えると僕に懐く。
 このとき第三者には懐かない。
 元々優しい性格のボスは、村人への攻撃性がなくて気がつかなかったんだ。
 教会にいる猫たちのマリアやフィーネに対する態度と、僕への態度が明らかに違うのでわかった。そう、チャーシュー泥棒の猫たちだ。

 そこで僕が魔法で出した猫のおやつを、フィーネが代わりにその猫たちに与えてみると、彼らは明らかにフィーネにも懐いた。
 それでほぼ確証を得た。
 だからデスヒクイ鳥から攻撃されないために、このひと手間が必要になるというわけ。

「クェー!」
「わふっ!」

 よしよし、ボスとも仲良くなれたね。
 この子の名前はニワトリにしよう。というか、これからすべてニワトリと呼ぼう。固有名詞をつけると愛着が沸いちゃうから。
 これで安心して箱罠から出せる、と思ったら急にボスが低い声で唸り出した。

「グルルルル……」
「どうしたのボス? もう大丈夫だよ」

 振り向いてボスを見上げると視線は暗い森の中に。しきりに三角の耳を動かして、低い声で唸りながら白い牙を見せている。
 その時、暗闇で赤い光が無数に光った。
 やばい、魔物だ!

「「クェクェ……トーテンコウッ!」」
「「「クェーッ! クェクェクェ……」」」

 鳴きながら現れたのはデスヒクイ鳥の集団。
 群青色の雄二羽に、茶褐色の雌がたくさん。
 捕まった仲間を助けにきたのか!?
 足の鋭い爪で地面を引っ掻き、口を開け、翼を広げて体を大きく見せてくる。
 たぶん戦闘前の威嚇行動に違いない!

 ボスが前に出て僕を庇ってくれるが、向こうは三十羽以上いる、多勢に無勢だ。
 
「グルルル……ヴァウアァウッ!」
「「「クェーッ! クェーッ!」」」

 ボスとデスヒクイ鳥は一触即発の状況。
 僕はなんとかしなければと思考を巡らせた。
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