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第一章 辺境の村~6歳~
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屋敷の裏庭にて。
野菜の苗ポットの代わりに底面に穴を空けた木皿やカップを並べて土を入れる。
辺境農村ライフに休みなし。
「よーし、できたー! レンもフィーネも手伝ってくれてありがとう!」
ここに野菜の種を蒔いて苗まで育て、だいたい六十日前後で定植できるかな。
発芽の三要素は、水と温度と酸素。
光と土も必要には違いないけどね。
発芽も結実も積算温度でだいたい計算できるけど、ここでは体感しかないので。難しく考えず、目で見て感じるままに育てるだけだよ。
ナスやトマトなら本葉が七、八枚で、最初の花が咲き始めれば畑に植えよう。
ここは日本の夏より涼しく梅雨がないから。
まあ、なんとかなると思う。
村で作られている代表的な野菜は、もう種芋を植え付け終わっているポテト。
畑で生育中のオニオンとガーリック。
小麦やライ麦は冬越しをして夏の火の月に収穫する。春に種を蒔くのはキャベツ、カブ、ニンジン、ナス、トマト、セロリ、大麦など。
ネギは植え替え、大豆はもう少し後になる。
どれも日本の野菜より小ぶりで形も様々。
味は甘さが少なく香りは強く、野性味溢れてクセが強い。良いか悪いか一概には言えないけど、好き嫌いはわかれる味だと思う。
これらの品種は、もちろん村人たちの自家栽培により自然交雑したことで受け継がれてきた固定種。いわゆるご当地野菜だね。
それでふと思ったんだ。
食べ物召喚魔法で僕の知ってる日本のご当地野菜、つまり代々受け継がれてきた美味しい野菜を魔法で出したらいいんじゃないかって。
この土地に合うか合わないか、色々やってみる価値はあるだろう。ちょっと方針転換だ。
豆類はもちろん、トマトやスイカなど種があるもの、サトイモやレンコンなど種芋で増えるものは、育てられる可能性が高い。
ダイコンやニンジンなどは、とう立ちさせて花を咲かせることができれば種が取れるかも。ナスやキュウリは未熟果だから難しそう。
リンゴやモモのフルーツはどうだろう?
ただし、前世の日本で広く作付けされているF1品種だと、親子で同じものはできないから、できるだけ取材先で食べた自家栽培品種を魔法で出してみよう。
色々と考えつつ、野菜やフルーツをぽんぽん出していく。結構、魔力が増えたんだ。
「ハルト様ー、これなに?」
「それはダイコン、カブに近い根菜だね。おろし、サラダ、煮物と万能で美味しいんだ」
土に埋めればとう立ちして花が咲く。
レンに答えると続いてフィーネから。
「ハルト様、イチゴを作れるんですか?」
「親ができれば子株で増えていくから、露地栽培でも意外と作りやすいよ」
越冬のために防寒対策は必要だろうね。
「では、こちらはなんですか?」
「それはコーンだよ。可食部が種になるんだけど、どのくらい発芽してくれるかな」
粒を乾燥させて蒔いたら芽が出るかな。
「発芽が難しいのですか?」
「やってみないとわからないね」
ポットの土に蒔き穴を作って種を蒔き、種芋などは畑の端を耕して植えた。
「あの、ハルト様」
「うん? どうしたの?」
神妙な面持ちのフィーネ。
「私が、おまじないをしてもいいですか?」
「おまじない? 芽が出るようにってこと?」
「はい。ただ……今からするおまじないのことは秘密にして欲しいんです」
僕は思わずレンと顔を見合わせた。悲しいかな、お互い秘密を漏らす相手がいないんだ。僕とレンはフィーネにこくりと頷く。
「それでは、隣同士で手を繋いでください」
野菜のポットを囲んで三人で輪を作る。
「目を閉じて集中してくださいね」
「芽よ出ろーとか、考えた方がいいかな?」
「いえ、何も考えないようにしててください」
それ意外と難しいよね。
瞳を閉じたフィーネは静かに精神を統一して、聞き取れない魔法言語を口にする。
しだいに身体がぽかぽかしてきた。
薄目を開けると辺りを黄金色の光の粒子が舞い、並べたポットや畑に降り注ぐ。フィーネが詠唱を終えると光は土に溶けて消えた。
すると、僕の視界がぐにゃりと歪む。
「ごめんフィーネ、レン。マジックアウトだ」
「あ、ハルト様……すみま……」
僕はフィーネの謝る声を聞きつつ意識を失い、次に目が覚めると自室の天井が見えた。ベッドでフィーネに膝枕されているようだ。
「僕はどのくらい寝てた?」
「半日です。すみませんハルト様、おまじないは母に教わって以来、初めてやったので、ハルト様の魔力を限界までお借りしてしまいました」
「魔力を借りる……そういうことか。大丈夫大丈夫、マジックアウトは慣れっこだから」
そう言って体を起こすと、サイドテーブルにイチゴのポットが置いてあるのが見えた。見事にわっさーと芽が出てる。イチゴはあの粒々一つ一つが果実なんだよね。
「フィーネ、昼間のあれってどんな魔法?」
「おまじないですよ、ハルト様」
にっこりと、作り笑顔のフィーネ。
自分で魔力って口を滑らせたのに。
「本当はエルフの秘伝的な魔法だったり?」
「ふふふ、おまじないです」
張り付けたような笑顔からは、おまじないで押し通そうとする強い意思を感じる。
「さあ、もうおやすみください」
「いや、今起きたばっかりだって、力で強引に押さえ込むのはやめモゴモゴモゴ……」
「はーい。ハルト様はいい子ですねー」
「ちょっ、息が……モゴモゴモゴ……」
日々驚きや発見があるけど、これから植物の発芽に必要な要素はただ一つ、フィーネであると認識を改めようかなと思う。
また、異世界メイドは腕力にも優れている。薄れ行く意識の中で僕はそう学んだ。
野菜の苗ポットの代わりに底面に穴を空けた木皿やカップを並べて土を入れる。
辺境農村ライフに休みなし。
「よーし、できたー! レンもフィーネも手伝ってくれてありがとう!」
ここに野菜の種を蒔いて苗まで育て、だいたい六十日前後で定植できるかな。
発芽の三要素は、水と温度と酸素。
光と土も必要には違いないけどね。
発芽も結実も積算温度でだいたい計算できるけど、ここでは体感しかないので。難しく考えず、目で見て感じるままに育てるだけだよ。
ナスやトマトなら本葉が七、八枚で、最初の花が咲き始めれば畑に植えよう。
ここは日本の夏より涼しく梅雨がないから。
まあ、なんとかなると思う。
村で作られている代表的な野菜は、もう種芋を植え付け終わっているポテト。
畑で生育中のオニオンとガーリック。
小麦やライ麦は冬越しをして夏の火の月に収穫する。春に種を蒔くのはキャベツ、カブ、ニンジン、ナス、トマト、セロリ、大麦など。
ネギは植え替え、大豆はもう少し後になる。
どれも日本の野菜より小ぶりで形も様々。
味は甘さが少なく香りは強く、野性味溢れてクセが強い。良いか悪いか一概には言えないけど、好き嫌いはわかれる味だと思う。
これらの品種は、もちろん村人たちの自家栽培により自然交雑したことで受け継がれてきた固定種。いわゆるご当地野菜だね。
それでふと思ったんだ。
食べ物召喚魔法で僕の知ってる日本のご当地野菜、つまり代々受け継がれてきた美味しい野菜を魔法で出したらいいんじゃないかって。
この土地に合うか合わないか、色々やってみる価値はあるだろう。ちょっと方針転換だ。
豆類はもちろん、トマトやスイカなど種があるもの、サトイモやレンコンなど種芋で増えるものは、育てられる可能性が高い。
ダイコンやニンジンなどは、とう立ちさせて花を咲かせることができれば種が取れるかも。ナスやキュウリは未熟果だから難しそう。
リンゴやモモのフルーツはどうだろう?
ただし、前世の日本で広く作付けされているF1品種だと、親子で同じものはできないから、できるだけ取材先で食べた自家栽培品種を魔法で出してみよう。
色々と考えつつ、野菜やフルーツをぽんぽん出していく。結構、魔力が増えたんだ。
「ハルト様ー、これなに?」
「それはダイコン、カブに近い根菜だね。おろし、サラダ、煮物と万能で美味しいんだ」
土に埋めればとう立ちして花が咲く。
レンに答えると続いてフィーネから。
「ハルト様、イチゴを作れるんですか?」
「親ができれば子株で増えていくから、露地栽培でも意外と作りやすいよ」
越冬のために防寒対策は必要だろうね。
「では、こちらはなんですか?」
「それはコーンだよ。可食部が種になるんだけど、どのくらい発芽してくれるかな」
粒を乾燥させて蒔いたら芽が出るかな。
「発芽が難しいのですか?」
「やってみないとわからないね」
ポットの土に蒔き穴を作って種を蒔き、種芋などは畑の端を耕して植えた。
「あの、ハルト様」
「うん? どうしたの?」
神妙な面持ちのフィーネ。
「私が、おまじないをしてもいいですか?」
「おまじない? 芽が出るようにってこと?」
「はい。ただ……今からするおまじないのことは秘密にして欲しいんです」
僕は思わずレンと顔を見合わせた。悲しいかな、お互い秘密を漏らす相手がいないんだ。僕とレンはフィーネにこくりと頷く。
「それでは、隣同士で手を繋いでください」
野菜のポットを囲んで三人で輪を作る。
「目を閉じて集中してくださいね」
「芽よ出ろーとか、考えた方がいいかな?」
「いえ、何も考えないようにしててください」
それ意外と難しいよね。
瞳を閉じたフィーネは静かに精神を統一して、聞き取れない魔法言語を口にする。
しだいに身体がぽかぽかしてきた。
薄目を開けると辺りを黄金色の光の粒子が舞い、並べたポットや畑に降り注ぐ。フィーネが詠唱を終えると光は土に溶けて消えた。
すると、僕の視界がぐにゃりと歪む。
「ごめんフィーネ、レン。マジックアウトだ」
「あ、ハルト様……すみま……」
僕はフィーネの謝る声を聞きつつ意識を失い、次に目が覚めると自室の天井が見えた。ベッドでフィーネに膝枕されているようだ。
「僕はどのくらい寝てた?」
「半日です。すみませんハルト様、おまじないは母に教わって以来、初めてやったので、ハルト様の魔力を限界までお借りしてしまいました」
「魔力を借りる……そういうことか。大丈夫大丈夫、マジックアウトは慣れっこだから」
そう言って体を起こすと、サイドテーブルにイチゴのポットが置いてあるのが見えた。見事にわっさーと芽が出てる。イチゴはあの粒々一つ一つが果実なんだよね。
「フィーネ、昼間のあれってどんな魔法?」
「おまじないですよ、ハルト様」
にっこりと、作り笑顔のフィーネ。
自分で魔力って口を滑らせたのに。
「本当はエルフの秘伝的な魔法だったり?」
「ふふふ、おまじないです」
張り付けたような笑顔からは、おまじないで押し通そうとする強い意思を感じる。
「さあ、もうおやすみください」
「いや、今起きたばっかりだって、力で強引に押さえ込むのはやめモゴモゴモゴ……」
「はーい。ハルト様はいい子ですねー」
「ちょっ、息が……モゴモゴモゴ……」
日々驚きや発見があるけど、これから植物の発芽に必要な要素はただ一つ、フィーネであると認識を改めようかなと思う。
また、異世界メイドは腕力にも優れている。薄れ行く意識の中で僕はそう学んだ。
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