【辺境のグルメ商人、異世界をたがやす】異世界が野菜嫌いのようなので、おいしい料理でわからせます。

猫手 まねき

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第一章 辺境の村~6歳~

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 ツインテールのお姉さんから顔を覗き込まれてちょっと驚いた。

「コラッ、失礼だろ!」
「申し訳ございません、ハルト様」
「ごめんね」

 ボルドさんがお姉さんを引き離して、レーヌさんとクロエさんが僕に謝ってくれる。

「ああ、大丈夫ですよ。僕は気にしてませんから。そちらのお姉さんは新しいメンバーの方ですか?」

「「「違います」」」

 すごい、三人息ぴったり。

「なんでですかー! あれは遠く王都の地、パティは魔物に襲われ危ないところをクロエ先輩に助けてもらったんです。運命の出会いを感じた四人は仲間になることを決めたのですよ」

 一人どこか遠くの空を見てる。

「俺たちは引退間近なので」
「なかなかいい人材がいなくて」
「仕方なく」
「みんな、なんでですかー!」

 とりあえず仲は良さそう。
 パティさんたちがわちゃわちゃしている隙に予備のカップを四つ手に取り、浄化してエールを注ぐ。
 クロエさんとパティさんは小柄で童顔だけど、たぶん十六歳は超えているだろう。ボルドさんは三十代、レーヌさんは二十代かな。

「とりあえず、皆さんエールをどうぞ。クロエさんもパティさんも飲めますよね? 焼き芋もちょうど焼けたので食べてみてください」

 だいたいみんなにちょうど焼けますから。
 レーヌさんとボルドさんへ差し出す。

「そんな、私たちまで悪いわ」
「ご挨拶に寄らせてもらっただけなので」
「まあ、そう遠慮なさらずに。年に一度のお祭りですからね、減るもんじゃありませんし」

「あはは、それは減るでしょー」
「うん、減ると思う」

 パティさんとクロエさんにツッコまれた。
 まあ、逆に増やせるので。

「これからは同じ目標に向かって頑張る仲間になるわけですから、この村の新しいお野菜の味をぜひ確かめていってください」

 顔を見合わせたボルドさんとレーヌさんは頷いて、湯気の立つ焼き芋を口にした。

「はふはふ、うん! うまい!」
「ええ、驚いたわ。想像していたよりすごく甘くて美味しい。これがお野菜?」
「これ好き」
「なにこれー!? あまーい!」

 そうでしょう、そうでしょう。
 サツマイモの品種改良にご尽力された関係者の皆さん、ありがとうございます。

「茹でたポテトもどうですか? 材料は岩塩とガーリックとパセリとオリーブオイルだけ。右からバロン、春の女王、ノーザンライトと、あえてポテトの種類を変えて作ってみました」

 ポテトを茹でて粗めに潰したフランス料理エクラゼ。ポテトとハーブを一緒に茹でるのがポイントかな、ハーブの種類はお好みで。

「これもうまい……ポテトがうまい!」
「美味しい。本当にこういったお料理を私たちに教えていただけるんですか?」
「もちろんです。お店が評判になればシュガー村のお野菜も売れて、村も豊かになりますからね。お二人のお店の成功に向けて、これから一緒に頑張っていきましょう」
「「はい、よろしくお願いします」」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ボルドさんとレーヌさんと和やかに話していると、クロエさんがじっと見つめてくる。

「あの、クロエさん? どうかしましたか?」
「前にお屋敷で会った時と雰囲気が違う……」
「ああ、僕は貴族の令息といっても訳ありの五男坊ですからね。本当は『様』なんて付けて呼ばれるのも苦手なんです。えへへ」
「そうなんだ、可愛い」

 ボソッと可愛いって。
 やっぱり表情から感情が読みにくい人だ。

「私はソフィア様のことを思い出しましたわ」
「レーヌさんは、母上をご存じなんですか?」
「はい。私とは年が近かったので、ソフィア様は気軽に接してくださったんです。私はハルト様を抱っこしたことがあるんですよ。ふふ」
「そ、そうでしたか……あはは」

 またか。こういうのは気恥ずかしい。
 母上のことを聞きたい気持ちはあるけど、僕のダメダメな五年間も知ってるだろうし。

「では、これから僕にも気軽にお願いします」
「うん、わかった。ハルト」

 身を屈めたクロエさんが、さっそく気軽に僕の頭を撫でてきた。あれ、これ合ってるかな?
 なんか距離感がわからなくなるけど。
 ボルドさんとレーヌさんは固まってる。
 全然、大丈夫ですよー。
 するとパティさんが無言で僕の横へ並び、クロエさんに頭を向ける。それなに待ち? このお姉さんは一体なにがしたいんだろう? クロエさんとパティさんは個性的な人みたいだ。

 飲んで歌って踊って、辺境の村の収穫祭は日が暮れるまで賑やかに続く。
 日暮れが近づくと山から吹く風が涼しいからか、なんだか背中がゾクゾクした。
 あれ? 今の殺気……!?
 そんなわけないか。

 そして翌朝。
 クロエさんがまた僕の頭を撫でてくる。

「ハルト、元気でね」
「ああ、はい……道中お気をつけて……」

 これ距離感合ってるかな?
 まあいいか。
 村人たちに見送られて、アルマンさん率いる隊商は領都へ向けて旅立つ。僕はアルマンさんに金貨五枚を預けて、また来春に魔鋼鉄のインゴットを届けてもらえるようにお願いした。
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