【辺境のグルメ商人、異世界をたがやす】異世界が野菜嫌いのようなので、おいしい料理でわからせます。

猫手 まねき

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第二章 辺境の村~7歳~

81 引っ越しのご挨拶と

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 移住に関して正式な手続きを踏んだ場合、まず領主家か役所で住民登録をするらしい。
 意外とちゃんとしたルールがあるんだ。
 それから教会で神官様にお会いする。
 旅の間、女神様に守ってもらったことへの感謝と、新天地での生活が上手くいくように祝福を受けるそうだ。

 朝食後、アイラさんとミディナは教会へ出かける。二人が支度をしているうちに、僕は牧場へ走って村の人気者を連れてきた。
 マリアの話を聞いたミディナが、すごくボスに会いたいというので。今日の僕の仕事は、役所の移住者支援課みたいな感じかな。

「ボス、今日もよろしく」
「わふっ!」

 玄関の外で待っていると、扉を開けたフィーネの横からミディナが飛び出してきた。続いてアイラさんとマリアが歩いて出てくる。

「わあー! おっきなわんちゃん!」
「わふっ!」
「「「ピィー!」」」
「ママー、わふってお返事したー! ピィーって声がいっぱいしたー!」

 ボスのもふもふ背中にはヒヨコが潜っているからね。はしゃぐミディナに対して、ハンターのアイラさんは目を丸くして驚いてる。

「ホワイトウルフ……話には聞いてたけど、本当に一緒に暮らしているのね……」

 魔狼ってやっぱり珍しいんだ。
 ボスの背中にはミディナとマリアが乗って、僕とフィーネとアイラさんは横を歩く。
 山村はまさに春爛漫。
 若草色の草原には色とりどりの花が咲いて、小川のせせらぎの向こうからラクロスに興じるちびっ子たちの笑い声が聞こえてくる。

「ここは長閑で素敵なところですね」
「そうですねぇ~」

 アイラさんに返答しつつ、これが束の間のスローライフかと、しみじみ思う七歳の春。
 教会に着いたらジルオ様にご挨拶をして、アイラさんとミディナは揃って礼拝をした。

「ジルオ様、ありがとうございました」
「ありがとーございましたー」
「ありがとうございました」

 僕に続いて、ミディナとアイラさんがジルオ様に頭を下げた。

「うむ。困ったことがあればいつでも相談に乗るからの。遠慮せず教会へ来なさい」

 いつもより三割増しで真面目なジルオ様と、猫たちに見送られて教会を後にする。
 歩くボスの横からフィーネが見守る中、すっかり仲良くなったマリアとミディナは、ボスの背中の上でヒヨコと戯れてはしゃぐ。
 僕は歩きながらアイラさんを見上げた。

「次は村長さんがいる牧場へご案内しますね」
「はい、お願いします」

「この村では、四つの家が村で世話役を務めてくれていまして、アイラさんとミディナの新居や今後の生活については、村長さんのところが相談に乗ってくれるそうですから」

「そうですか、色々とありがとうございます。山越えの際は不安でしたが、レーヌの言う通り優しい人ばかりで安心しました」

 いやあ、まだ安心するのは早いと思います。
 牧場には村で最恐のマオさんがいるから。
 さっき話をしておいたので、村長さんとマオさんとゴロさんの三人で出迎えてくれた。
 アイラさんがミディナを連れて前に出る。

「初めまして、私はバホルムでハンターをしていたアイラといいます。皆さんお忙しい中、ありがとうございます。村での生活は初めてなので、色々とご迷惑をお掛けするかと思いますが、これから親子共々よろしくお願いします。さ、ミディナ」
「ミディナです、よろしくおねがいします」

 さすがハンターのアイラさん、マオさんの威圧感にも動じない。ミディナはアイラさんの脚に隠れながらだけど、ちゃんとご挨拶できた。
 村長さんたちも和やかに挨拶を返して、マオさんがミディナの前でしゃがみ込んだ。

「まあまあ、しっかりしたいい子じゃないか。ミディナちゃん歳はいくつだい?」
「えっと、四さい」
「じゃあ、フィーネちゃんが来た時と同じだ」

 ミディナは前に出した右手の親指を曲げて、四本指を立てて見せる。フィーネはマオさんの言葉に「そうです」と頷いた。

「うんうん、そうかい大変だったねぇ。まあここで立ち話もなんだし、うちで少し休んでから住む家を見に行けばいいさ。ついておいで」

 そんな感じで始まって、みんなで新鮮なミルクをいただきながらの歓談タイム。ほぼマオさんとアイラさん二人だけのトークで。
 大人の話が退屈になったミディナに付き添う形でマリアとフィーネが抜け、そろそろ仕事があるからと村長さんに連れられゴロさんが席を立つのに合わせて僕も席を外した。

 ゴロさんと一緒に馬に飼い葉をあげながら、改めてコミュりょくが高い女性同士は打ち解けるのが早いなあー、と感心した。
 あれ、なんでここで働いてるんだろ?
 牧場の仕事を身体が覚えちゃってるな。

「あのー、ところでゴロさん? そんなに飼い葉を積み上げてどうするんですか?」
「ああ……」

 いや、ああって、馬が困ってる。
 知らずにデカ盛り店に来て、普通盛りを頼んじゃった気弱な人くらい困ってる。
 仕方がないので僕が横へ広げてあげた。

「ぼーっとして寝不足ですか?」
「ああ……」
「大丈夫ですか?」
「ああ……」

 なんかダメそう、と思ったところにマオさんとアイラさんがやって来て、ゴロさんが空き家へ案内してあげるように言ってきた。
 アイラさんがゴロさんに会釈する。

「お仕事中にすみません」
「い、いや、大丈夫です。行きましょうか」

 ゴロさんは僕の方を見もせず、自分のピッチフォークをテキトーに押し付けると、アイラさんとマオさんと一緒に馬屋を出ていった。
 あの、ちょっと誰かー?
 誰か従業員はいませんかー?
 辺境伯令息の扱いがぞんざいですよー?
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