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第二章 辺境の村~7歳~
82 それぞれのスタート
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アイラさんとミディナが住む予定の空き家は、牧場と教会の真ん中辺りにあった。
半木骨造の外見は綺麗だし、跳ねつるべ井戸や畑もある。ただ辺り一面背の高い雑草が生えていて、草取りや掃除が大変そうだ。
あ、跳ねつるべの井戸は、ボスが尻尾で支柱を叩いたら壊れた。新しく屋根と滑車付きのつるべ井戸にしてあげよう。
「ママー、ここに住むのー?」
「あれくらい修理すれば大丈夫よ」
不安げなミディナにアイラさんが笑顔で答える。そんな二人の前でゴロさんが家の扉を開けると、蝶番が壊れて扉がガタンと落ちた。
室内はホコリが積もって真っ白だ。
「これは修理を頼んで大掃除が必要だな……」
「では、私とハルト様で修理のお願いに行って参りますね。さ、ハルト様参りましょう」
「え、掃除なら……モゴモゴモゴ……畑だって僕のまほ……モゴモゴモゴ……」
ゴロさんが呟くと、なぜか急にフィーネが指示を出し始めて。家の掃除も畑を耕すのも僕の魔法で簡単にできるのに、後ろから口を塞がれた僕は、引きずられてその場を後にする。
「もう、フィーネどうしたの?」
「マリアお嬢様からのご指示です」
「え、どういうこと?」
尻尾を振るボスの上にいるマリアを見れば、グッジョブ的に胸の前で拳を作ってる。
「ゴロさんがアイラさんを意識していらっしゃるようなので、お二人がなるべく一緒にいられるようにしましょう、というお考えです」
「え!? そうなの?」
「そうなのです」
全然気づかなかったけど、言われてみれば確かにそうかも。マリアはすごいな。
「二人はいつから気づいてたの?」
「最初の挨拶をした際に」
「すごいな、名探偵みたい」
「めいたんてい?」
「うん、気にしないで」
アイラさんはマオさんとも気が合うみたいだし、僕は役に立たないだろうから、マリアとフィーネの意見に従ったほうがいいね。
言われた通り、レンたちに修理の依頼をして一足先に屋敷へ戻ってきた。マリアはボスやヒヨコたちと情報収集にあたるらしい。
わが妹が楽しそうで何より。
徹夜なんてしたからか、屋敷へ戻った僕は急に眠くなって仮眠を取った。
そして夕食時、アイラさんとミディナの姿が見えなかったのでフィーネに尋ねると、マオさんの提案で新居で暮らせるようになるまでは牧場で生活することになったそうだ。
まあ、そういうことだね。
みんなが幸せになれますようにと、僕は陰ながら応援することにした。というのも、兄上の話ではこちらも忙しくなりそうで。
「ハルト、糸車や脱穀機のことを知ったアルマンとサムトがまた興奮してな……」
「それは、お疲れ様でした」
「……紙に関しては絶句していた」
「すみません」
「いや、いいんだ。それで糸車や脱穀機などを領都の商工ギルドで商品登録して、ぜひ販売するべきだと言うんだが」
「え、売れるんですか? 料理レシピの時は難しいだろうと言われましたよ?」
正直考えてなかった。
糸車は手回し式がもうあるみたいだし。
去年レシピの販売を提案した際にアルマンさんに言われたけど、糸車も脱穀機も仕組みがわかれば模倣品が作れるし、領外なら罰することはできないよね。
「料理レシピなど無形の情報を広く販売することは難しいが、有形商品の場合は、設計書などで明確に権利者の証明や類似品との比較ができるから大丈夫らしい」
へぇー、稼げるのならやるべきかな。
じゃあ設計図とか書類を書く必要があるね。
「それと、ニワトリの件を使って国王陛下の信用と後ろ盾を得られれば、少なくとも王国内における模倣品の流通によって商品価値が損なわれることはないだろうと言っていた」
「では明朝までに書類が必要ですよね?」
「いや、アルマン商会は当面この件には関わらないから慌てなくていい。それと父上たちやギルドへ提出する書類の用紙は聖白紙にする」
聖白紙は教会が販売している植物紙のこと。
野良紙の使用はトラブルになるらしい。
一生懸命に書いたのになあ。
あ、そんなことより。
「兄上、アルマン商会が当面この件には関わらないとは、どういうことですか?」
「出入りの商会同士であまり差をつけるのは良くない感情を生むからな。今回はモラッド商会とマグレム商会に声をかけて、合同商会を立ち上げる方向で話を進めていくつもりだ」
共同で出資してもらうってことか。
モラッド商会は材木を、マグレム商会は魔物の素材を買い取ってもらっているけど、シュガー村との取引はあまり儲かっていないと思う。
村は彼らの善意に助けられている部分も多々あって、長年お世話になっている間柄。
お付き合いは大事にしようということだね。
「今回、領都へ行くにあたって両商会長とも話をしてくるから、詳しいことは戻ってから説明する。クラウスたちと留守を頼んだぞ」
「はい、わかりました」
翌朝、兄上は黒鹿毛の愛馬にまたがり、アルマン商会の隊商と一緒に領都へ旅立つ。
僕たちは、献上するニワトリとヒヨコたちが旅立っていくのを感慨深く見送った。
半木骨造の外見は綺麗だし、跳ねつるべ井戸や畑もある。ただ辺り一面背の高い雑草が生えていて、草取りや掃除が大変そうだ。
あ、跳ねつるべの井戸は、ボスが尻尾で支柱を叩いたら壊れた。新しく屋根と滑車付きのつるべ井戸にしてあげよう。
「ママー、ここに住むのー?」
「あれくらい修理すれば大丈夫よ」
不安げなミディナにアイラさんが笑顔で答える。そんな二人の前でゴロさんが家の扉を開けると、蝶番が壊れて扉がガタンと落ちた。
室内はホコリが積もって真っ白だ。
「これは修理を頼んで大掃除が必要だな……」
「では、私とハルト様で修理のお願いに行って参りますね。さ、ハルト様参りましょう」
「え、掃除なら……モゴモゴモゴ……畑だって僕のまほ……モゴモゴモゴ……」
ゴロさんが呟くと、なぜか急にフィーネが指示を出し始めて。家の掃除も畑を耕すのも僕の魔法で簡単にできるのに、後ろから口を塞がれた僕は、引きずられてその場を後にする。
「もう、フィーネどうしたの?」
「マリアお嬢様からのご指示です」
「え、どういうこと?」
尻尾を振るボスの上にいるマリアを見れば、グッジョブ的に胸の前で拳を作ってる。
「ゴロさんがアイラさんを意識していらっしゃるようなので、お二人がなるべく一緒にいられるようにしましょう、というお考えです」
「え!? そうなの?」
「そうなのです」
全然気づかなかったけど、言われてみれば確かにそうかも。マリアはすごいな。
「二人はいつから気づいてたの?」
「最初の挨拶をした際に」
「すごいな、名探偵みたい」
「めいたんてい?」
「うん、気にしないで」
アイラさんはマオさんとも気が合うみたいだし、僕は役に立たないだろうから、マリアとフィーネの意見に従ったほうがいいね。
言われた通り、レンたちに修理の依頼をして一足先に屋敷へ戻ってきた。マリアはボスやヒヨコたちと情報収集にあたるらしい。
わが妹が楽しそうで何より。
徹夜なんてしたからか、屋敷へ戻った僕は急に眠くなって仮眠を取った。
そして夕食時、アイラさんとミディナの姿が見えなかったのでフィーネに尋ねると、マオさんの提案で新居で暮らせるようになるまでは牧場で生活することになったそうだ。
まあ、そういうことだね。
みんなが幸せになれますようにと、僕は陰ながら応援することにした。というのも、兄上の話ではこちらも忙しくなりそうで。
「ハルト、糸車や脱穀機のことを知ったアルマンとサムトがまた興奮してな……」
「それは、お疲れ様でした」
「……紙に関しては絶句していた」
「すみません」
「いや、いいんだ。それで糸車や脱穀機などを領都の商工ギルドで商品登録して、ぜひ販売するべきだと言うんだが」
「え、売れるんですか? 料理レシピの時は難しいだろうと言われましたよ?」
正直考えてなかった。
糸車は手回し式がもうあるみたいだし。
去年レシピの販売を提案した際にアルマンさんに言われたけど、糸車も脱穀機も仕組みがわかれば模倣品が作れるし、領外なら罰することはできないよね。
「料理レシピなど無形の情報を広く販売することは難しいが、有形商品の場合は、設計書などで明確に権利者の証明や類似品との比較ができるから大丈夫らしい」
へぇー、稼げるのならやるべきかな。
じゃあ設計図とか書類を書く必要があるね。
「それと、ニワトリの件を使って国王陛下の信用と後ろ盾を得られれば、少なくとも王国内における模倣品の流通によって商品価値が損なわれることはないだろうと言っていた」
「では明朝までに書類が必要ですよね?」
「いや、アルマン商会は当面この件には関わらないから慌てなくていい。それと父上たちやギルドへ提出する書類の用紙は聖白紙にする」
聖白紙は教会が販売している植物紙のこと。
野良紙の使用はトラブルになるらしい。
一生懸命に書いたのになあ。
あ、そんなことより。
「兄上、アルマン商会が当面この件には関わらないとは、どういうことですか?」
「出入りの商会同士であまり差をつけるのは良くない感情を生むからな。今回はモラッド商会とマグレム商会に声をかけて、合同商会を立ち上げる方向で話を進めていくつもりだ」
共同で出資してもらうってことか。
モラッド商会は材木を、マグレム商会は魔物の素材を買い取ってもらっているけど、シュガー村との取引はあまり儲かっていないと思う。
村は彼らの善意に助けられている部分も多々あって、長年お世話になっている間柄。
お付き合いは大事にしようということだね。
「今回、領都へ行くにあたって両商会長とも話をしてくるから、詳しいことは戻ってから説明する。クラウスたちと留守を頼んだぞ」
「はい、わかりました」
翌朝、兄上は黒鹿毛の愛馬にまたがり、アルマン商会の隊商と一緒に領都へ旅立つ。
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