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第二章 辺境の村~7歳~
105 収穫祭
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シュガー村の収穫祭は、領主家が主催者を務め、用意したエールや簡単な料理を村の人たちに振る舞う。
今年はシュガー男爵になったアベル兄様が挨拶をして祭りが始まる、と思ったらニヤニヤする村のみんな。壇上の席へ僕も座るように言われたから、変だなーとは思っていたんだ。
どうやらサプライズがあるらしい。
緊張した様子で村長さんが歩み出た。
「ごほん! えー本日は収穫祭でありますが、この場をお借りしまして、村人一同シュガー男爵様のご誕生をおよろび、およ、および」
噛みまくる村長さん。
みんなからくすくす笑い声が漏れると、最前列のサブさんからヤジが飛んだ。
「おい、村長しっかりしろー!」
「「「わははは!」」」
「わかっとる! えー、村人一同、シュガー男爵様のご誕生をお喜び、申し上げます。アベル様、おめでとうございます!」
「「アベル様おめでとうございまーす!」」
「「「シュガー男爵ばんざーい!」」」
歓声を上げるみんなから兄上へ拍手が送られる。集まった村人たちはみんな笑顔で、テーブルが並ぶ広場は温かい雰囲気に包まれた。
少し驚いた様子の兄上は立ち上がり、壇上から軽く右手を上げて歓声に応える。
他の村のことは知らないけど、ここはとてもいい村だと思う。これが領主貴族として、ご先祖様たちが受け継いできた財産なんだろう。
祭りは食事会、いや酒盛りに移行。特別なお祝いということで、村長さんのお家が伝統的な山羊料理を振る舞ってくれるそうだ。
塩と数種類のハーブで味付けした山羊肉と野菜を、熱した石と一緒に山羊の皮袋へ入れて、焚き火に放り込むというワイルドな料理。
前世の記憶ではモンゴル料理のボードグに似ているが、沖縄のヒージャー(山羊料理)は少し苦手だった。
この料理はクセ強なのか、ドキドキする。
「どうぞ召し上がってください」
ゴロさんが運んでくれた皿には、一口大にカットした山羊肉やポテト、オニオンなどが湯気を上げて、脂とハーブの香りが食欲を誘う。
匂いから嫌な感じはしない。
ではさっそく、いただきます。
「おお、美味しい!」
老山羊だから、肉は硬くてクセが強いだろうと思って食べてみたら見事に裏切られた。
野菜の水分で蒸し焼きになった肉は、噛み応えのある赤身肉だけどジューシーで、とろとろのオニオンと肉の脂を吸ったポテトやガーリックがホクホクとして実に美味しい。
これは塩加減がちょうどいいんだ。
「ゴロさん、ゴロさん、老山羊のお肉って、もっと硬くてパサパサしているものじゃないんですか?」
「ヨーグルトを作る時に出てくる汁を使うと、肉が美味しくなるんですよ」
そうか、乳清を使ったのか。
酵素のプロテアーゼだ。硬い肉のタンパク質を分解してやわらかくする上に、乳清は高い保水力があるから肉がジューシーになる。
確か、飲む美容液って言われてた。
肉の臭みを抑える働きもあるね。
僕も料理にもっとヨーグルトや乳清を使えるようになりたいなあーとか思いつつ、初めての料理に舌鼓を打っていると。
「ハルトさま、お飲みものをどうぞ」
緊張した様子のミディナの声がした。横を見れば、ぷるぷる震える両手でカップが乗ったトレーを持ち上げている。
僕はゆらゆら揺れるミルクが乗ったトレーを支えて受け取った。甘い香りでわかる、これはハチミツ入りのシナモンミルクだ。
「ありがとう、ミディナ。ミディナはみんなのお手伝いをしてるの? 偉いね」
「うん」
小さく返事をしてくれたが、タタタと駆けて隣に座るマリアの後ろに隠れられた。
うーん、嫌われてるのかな?
「ふふふ。ミディナちゃんは、お優しいハルトお兄さまが好きなので照れているのです」
「え、そうなの?」
ミディナが恥ずかしそうにマリアに抱きつくと、不意に僕の視界が誰かの体で遮られた。
「そうなんです。なぜでしょうかハルト様? 僕の方が結構一緒にいるんですが?」
ゴロさんだ、目に光がない。
意中の人の娘さんだから仲良くしたいのはわかるよ。でも僕になぜと訊かれても困る。
「えーと、ミディナは僕のどの辺がお気に召したのでしょうか?」
「オムレツが美味しかったそうです」
ゴロさんの体の横から顔を出して訊いたら、ミディナに代わってマリアが即答してくれた。お嬢様は色々と詳しいんだね。
でも理由がオムレツかあ。四歳だからね、もう二年もしたら「そんなこと言ったの知らない、覚えてない」って言われるだろう。
「僕もミディナが好きなオムレツを作れるようになりたいんです。結構一緒にいるんです」
「あ、はい。ゴロさんに教えますから、もう少し顔を離して欲しいです」
たまに見かけるゴロさんとアイラさんは、上手くいってるのかな、と思うけど。
ミディナの気持ちが大事だからね。
その辺はゴロさんも結婚したら父親になるわけだし、ミディナのために色々と頑張りたいんだろう。僕で力になれるならと、オムレツの作り方を教える約束をした。
それから、午後を前に空の酒樽がかなり積み上がったので、去年と同じエール係りに着任する。ここからエールを増やしていかないと。
「「こんにちは、ハルト様」」
村の財政を防衛する局地戦の決意をしていると、聞き覚えのある男女の声がした。
今年はシュガー男爵になったアベル兄様が挨拶をして祭りが始まる、と思ったらニヤニヤする村のみんな。壇上の席へ僕も座るように言われたから、変だなーとは思っていたんだ。
どうやらサプライズがあるらしい。
緊張した様子で村長さんが歩み出た。
「ごほん! えー本日は収穫祭でありますが、この場をお借りしまして、村人一同シュガー男爵様のご誕生をおよろび、およ、および」
噛みまくる村長さん。
みんなからくすくす笑い声が漏れると、最前列のサブさんからヤジが飛んだ。
「おい、村長しっかりしろー!」
「「「わははは!」」」
「わかっとる! えー、村人一同、シュガー男爵様のご誕生をお喜び、申し上げます。アベル様、おめでとうございます!」
「「アベル様おめでとうございまーす!」」
「「「シュガー男爵ばんざーい!」」」
歓声を上げるみんなから兄上へ拍手が送られる。集まった村人たちはみんな笑顔で、テーブルが並ぶ広場は温かい雰囲気に包まれた。
少し驚いた様子の兄上は立ち上がり、壇上から軽く右手を上げて歓声に応える。
他の村のことは知らないけど、ここはとてもいい村だと思う。これが領主貴族として、ご先祖様たちが受け継いできた財産なんだろう。
祭りは食事会、いや酒盛りに移行。特別なお祝いということで、村長さんのお家が伝統的な山羊料理を振る舞ってくれるそうだ。
塩と数種類のハーブで味付けした山羊肉と野菜を、熱した石と一緒に山羊の皮袋へ入れて、焚き火に放り込むというワイルドな料理。
前世の記憶ではモンゴル料理のボードグに似ているが、沖縄のヒージャー(山羊料理)は少し苦手だった。
この料理はクセ強なのか、ドキドキする。
「どうぞ召し上がってください」
ゴロさんが運んでくれた皿には、一口大にカットした山羊肉やポテト、オニオンなどが湯気を上げて、脂とハーブの香りが食欲を誘う。
匂いから嫌な感じはしない。
ではさっそく、いただきます。
「おお、美味しい!」
老山羊だから、肉は硬くてクセが強いだろうと思って食べてみたら見事に裏切られた。
野菜の水分で蒸し焼きになった肉は、噛み応えのある赤身肉だけどジューシーで、とろとろのオニオンと肉の脂を吸ったポテトやガーリックがホクホクとして実に美味しい。
これは塩加減がちょうどいいんだ。
「ゴロさん、ゴロさん、老山羊のお肉って、もっと硬くてパサパサしているものじゃないんですか?」
「ヨーグルトを作る時に出てくる汁を使うと、肉が美味しくなるんですよ」
そうか、乳清を使ったのか。
酵素のプロテアーゼだ。硬い肉のタンパク質を分解してやわらかくする上に、乳清は高い保水力があるから肉がジューシーになる。
確か、飲む美容液って言われてた。
肉の臭みを抑える働きもあるね。
僕も料理にもっとヨーグルトや乳清を使えるようになりたいなあーとか思いつつ、初めての料理に舌鼓を打っていると。
「ハルトさま、お飲みものをどうぞ」
緊張した様子のミディナの声がした。横を見れば、ぷるぷる震える両手でカップが乗ったトレーを持ち上げている。
僕はゆらゆら揺れるミルクが乗ったトレーを支えて受け取った。甘い香りでわかる、これはハチミツ入りのシナモンミルクだ。
「ありがとう、ミディナ。ミディナはみんなのお手伝いをしてるの? 偉いね」
「うん」
小さく返事をしてくれたが、タタタと駆けて隣に座るマリアの後ろに隠れられた。
うーん、嫌われてるのかな?
「ふふふ。ミディナちゃんは、お優しいハルトお兄さまが好きなので照れているのです」
「え、そうなの?」
ミディナが恥ずかしそうにマリアに抱きつくと、不意に僕の視界が誰かの体で遮られた。
「そうなんです。なぜでしょうかハルト様? 僕の方が結構一緒にいるんですが?」
ゴロさんだ、目に光がない。
意中の人の娘さんだから仲良くしたいのはわかるよ。でも僕になぜと訊かれても困る。
「えーと、ミディナは僕のどの辺がお気に召したのでしょうか?」
「オムレツが美味しかったそうです」
ゴロさんの体の横から顔を出して訊いたら、ミディナに代わってマリアが即答してくれた。お嬢様は色々と詳しいんだね。
でも理由がオムレツかあ。四歳だからね、もう二年もしたら「そんなこと言ったの知らない、覚えてない」って言われるだろう。
「僕もミディナが好きなオムレツを作れるようになりたいんです。結構一緒にいるんです」
「あ、はい。ゴロさんに教えますから、もう少し顔を離して欲しいです」
たまに見かけるゴロさんとアイラさんは、上手くいってるのかな、と思うけど。
ミディナの気持ちが大事だからね。
その辺はゴロさんも結婚したら父親になるわけだし、ミディナのために色々と頑張りたいんだろう。僕で力になれるならと、オムレツの作り方を教える約束をした。
それから、午後を前に空の酒樽がかなり積み上がったので、去年と同じエール係りに着任する。ここからエールを増やしていかないと。
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村の財政を防衛する局地戦の決意をしていると、聞き覚えのある男女の声がした。
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