148 / 267
第三章
第百四十七話
しおりを挟む
色々な顔を持つんだね。としばらく明人は考え込んだ。
かっこいい所を見せようとしたのは俺の方だから。
「あのさ。俺立花さんがいたからソフトボール参加したんだよ・・・。えっと、傷、残らないといいね。」
水樹に振り向き直した明人じゃない明人が喋っていた。どうして明人じゃない明人は今まで明人が口にした事もないような恥ずかしい台詞を明人に断りもなく次々に思い付いては口に出してしまうのだろうか。
でも明人は気持ちが良かった。だからしばらく明人じゃない明人に明人を自由に任せて、これから何をしでかしてくるのか楽しみながら観察してやる事にした。
また背中を向けて、手をバイバイさせながら明人は歩いた。そしてもし明日、水樹から自分のレポート用紙が返ってきたら、今度は水樹について知らない事を一つずつ聞いてみようと思ったのだった。
それから残された水樹は放課後はいつも通りクラブへ行き、いつも通り瞬介とお喋りをして、楽しく今日のソフトボールの試合の話なんかもして、いつも通り帰宅した。
瞬介は水樹に、瞬ちゃんのバカバカバカと怒られ、でもかっこよかったよと言われて少し気持ちが和らいだ。そして、強がっていたけれども水樹はやっぱりほんとは悔やしかったんだな、と瞬介は水樹を可愛いと思った。
「ただいま。」
帰宅した瞬介の家には瞬介が1年生の時に貼った、ややくたびれたマスキングテープがある。瞬介がそのテープの高さでいつも通り背を比べると、自分とテープの差は後5ミリメートルもなさそうだった。そして背の高い水樹が、ずっと背は伸びていないと喜んでいるのを思い出す。
よしっ。水樹ちゃんまで後5ミリ・・・。と、それはくだらない瞬介の願掛けかもしれないけれど、瞬介が自信を手に入れる為には何年かかっても、その高さが必要なのだった。
かっこいい所を見せようとしたのは俺の方だから。
「あのさ。俺立花さんがいたからソフトボール参加したんだよ・・・。えっと、傷、残らないといいね。」
水樹に振り向き直した明人じゃない明人が喋っていた。どうして明人じゃない明人は今まで明人が口にした事もないような恥ずかしい台詞を明人に断りもなく次々に思い付いては口に出してしまうのだろうか。
でも明人は気持ちが良かった。だからしばらく明人じゃない明人に明人を自由に任せて、これから何をしでかしてくるのか楽しみながら観察してやる事にした。
また背中を向けて、手をバイバイさせながら明人は歩いた。そしてもし明日、水樹から自分のレポート用紙が返ってきたら、今度は水樹について知らない事を一つずつ聞いてみようと思ったのだった。
それから残された水樹は放課後はいつも通りクラブへ行き、いつも通り瞬介とお喋りをして、楽しく今日のソフトボールの試合の話なんかもして、いつも通り帰宅した。
瞬介は水樹に、瞬ちゃんのバカバカバカと怒られ、でもかっこよかったよと言われて少し気持ちが和らいだ。そして、強がっていたけれども水樹はやっぱりほんとは悔やしかったんだな、と瞬介は水樹を可愛いと思った。
「ただいま。」
帰宅した瞬介の家には瞬介が1年生の時に貼った、ややくたびれたマスキングテープがある。瞬介がそのテープの高さでいつも通り背を比べると、自分とテープの差は後5ミリメートルもなさそうだった。そして背の高い水樹が、ずっと背は伸びていないと喜んでいるのを思い出す。
よしっ。水樹ちゃんまで後5ミリ・・・。と、それはくだらない瞬介の願掛けかもしれないけれど、瞬介が自信を手に入れる為には何年かかっても、その高さが必要なのだった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる