おもいでにかわるまで

名波美奈

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第四章

第二百十一話

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「どうしたの?大丈夫?」

「え?何か順番変だった?ごめん・・・。あのね、あんまり他人ひとに言う事じゃないけど、こういうの初めてで、だから、その、何か間違ってたらごめんね・・・。」

え?と疑問が湧き思い出した。

「彼氏・・・。」

「あは。それは覚えてたんだ。食堂で間宮さんと喧嘩した時に皆いたもんね。でも付き合っていたのは少しだったしまだ子供で、だからその、さっき言った事はほんと・・・。気持ち悪い、かな・・・?」

「えっ・・・。」

そんな事知りたくもないし知る必要もないけれど、明人はそう知ると水樹をもっと大切にしないといけないという使命感に襲われた。

そうか。

そうか。

色々まずいな。

ふう。何回目なのかわからない深呼吸をし、明人は部屋の照明を薄明かりに変えてからベッドに座り直した。見つめ合う余裕はないまま軽く唇を押し当て、そして徐々に、あまりした事のない深くて温かいキスへと落ちていく。

水樹には初めて味わう濃い感情で、明人は優しかったが呼吸をする暇もなく、少しずつ進んでいく行為に心の中だけで息と声を漏らした。明人に聞かれるのは恥ずかしい。でもこれ以上は止めてと思ったりはない。でもこれは自分であり自分じゃないと思いたかった。

明人はキスはしたまま浴衣の上から右手で水樹の胸に手を添え、しばらくしてから包み込むように愛を伝えた。掌に全神経が集合してくる。焦るな。ゆっくり。抑えろ。と水樹の嫌がる事はしたくはない。でも明人は水樹とこうなりたくて、隠していたけど今日の最初からほとんど理性を失っていたのだった。

そして次第に浴衣に手を伸ばし、水樹の浴衣を丁寧に脱がすとこの時初めて二人の動作が止まった。水樹は浴衣の下にTシャツと短いズボンを着込んでいて、明人は、ふはっ。着すぎっ。となんだか笑ってしまい、でもそのおかげで束の間の落ち着きを取り戻す事が出来た。

それからわずかの沈黙の後、明人は柔らかく水樹を見つめてTシャツとインナーと下着を脱がし、つまり水樹は明人に上半身を裸にされたのだった。
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