おもいでにかわるまで

名波美奈

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第四章

第二百二十七話

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やりたい事と言うものは、自然に見つかるのかと思っていたけれど、水樹に至っては約20年間の人生では当てはまらなく、進路を考える今いよいよ自分に失望させられていた。

その上水樹の一番大切な事は明人で、だから明人と同じ街で働き、一緒に暮らして、いずれは結婚する、それが水樹の夢だった。そして嬉しい事に明人もそれがいいと言ってくれたのだ。どうしてこんなに好きなのかわからないけれど、水樹は明人の全部が好きでどうしようもなく、もう二度とこんな人には出会えないとさえ思う。

例え若くても、お互いを想い合う気持ちは強く、そう、たまたま早い年齢で運命の人に出会っただけで、だから周りに結婚が早いと取られても仕方がないと思っている。それに遅くても早くても仕事と結婚は両立させるべきもので、そんな理由から明人の就職が決まるまではあまり行動的にはなれずにいた。と同時に自分のレベルで自分の進む道を自分の意思で決めていく友人達と、進路一つ満足に決められない普通の自分との比較で不安だった。

ところで水樹と担任の先生は友達だった。水樹はクラス代表の為に、先生の部屋に用事でいかなければならず、時折お茶をご馳走になって雑談もしていた。だから水樹の漠然とした不安を先生は優しく理解してくれ、先生の知人が働く場所でアシスタントのような手伝いを探しているから見学に行くかと声を掛けた。給与は少なかったが明人にだけ夢中な無知な水樹は給与の大事さもピンと来ていない。こんな子供が社会に出る危うさも、当の本人にはわからなかった。

数日後、水樹は学校を休み先生の紹介状と共に一人でその施設を訪れた。そこは自宅から電車で1時間半程の海も川も山も近くにある希少な場所にある施設で、しかも明人が面接を受け合否の返事を待っている企業とはかけ離れてはいなかった。

水樹は今日はただの見学だと聞かされていたが綺麗にスーツを身にまとい、言われた通りに他に汚れてもいい服を持参した。地図を見て、お客様用の入り口の受付の女性に挨拶をし、そして水樹を迎えに一人の男性がやってきた。

「館長の山中です。」

「本日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございます。立花水樹と申します。よろしくお願いしますっ。」

ここは自然博物館と言う名の公開施設で、お客様用の入り口には幾つか水槽があり、亀や蛇、小魚などが展示されていた。
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