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「じゃあまたな。たまに連絡くれよ」
「はい。今日は同行させていただいてありがとうございました」
晴喜は運転席から手を振ると車を出発させた。
駅の階段を上り電光掲示板で次発の電車を確認すると、先ほど1本出たばかりで次の電車の到着まで10分ほどあった。
駅構内のコンビニへ向かい、何を買おうか考えているとポケットに入れていた携帯電話が震えた。
取り出して画面を確認すると、メッセージが来ていた。
その差出人の名を見て拓人の胸は一瞬強く鼓動した。
アカウント名は『SAKI』となっている。
画面をタップしメッセージを確認した。
早川です。
さっきはありがとうございました。
今度、ゆっくり会いませんか?
咲と公園で別れ際に連絡先を交換した。交換しようと言い出したのは咲だった。車に戻ったとき晴喜にそのことを話そうか迷ったのだが、休憩中とはいえ仕事の合間というのもあり言い出せなかった。
誘いの連絡が来たことに拓人は驚きながらもすぐに返信した。突然再会したことに加え、思ってもない展開に胸が高鳴っている。
メッセージでやり取りをして、今週の土曜に会う約束を交わした。デパートの清掃で子供服のフロアを通ると店内に咲を見かけた。接客をしたり商品の服を丁寧に畳む姿があったが、向こうが拓人に気が付くことはなかった。
一度、子供服売り場とは異なるフロアで咲を見かけた。仕事終わりだったのか私服を着ていた。
文房具売り場にある木枠のショーケースの前で立ち止まって何かを見ていたのだが、何気なくという感じではなく真剣な面持ちだった。拓人は咲が売り場を立ち去りエスカレーターへ向かったのを見ると、そのショーケースに何が置かれているのか遠くから目を凝らして見た。
万年筆、インクのボトルなどが並べられている。その隣に色とりどりの透き通ったペンのような物が置いてあるが、はっきりとした形が見えない。
約束の日が近づいて来るといよいよ緊張してきた。食事に行くだけのことだが、どんな会話をするのか想像ができない。何せ最後に言葉を交わしたのは小学生の頃だ。大人になった今、どのような口ぶりで話せばいいのかすらわからない。
過去をひとつ思い出すと、いろんな場面が次々と溢れかえってくる。それはいいことばかりではなく、思い出したくない多重子との日々、そして、父親が段々と壊れていったあの日々のこともだ。
拓人は毎晩ベッドで仰向けになりながら過去を遡った。そして、自分を保つために蓋をしてきた感情が目を覚ましてしまうことに恐れを抱いた。体は正直だ。汗、心音の上昇、呼吸の乱れ、そういったものが現れそうになると起き上がり、台所で水を飲んだ。
そこまでして思い出を振り返ろうとするのは他でもない、もう一度会いたいと思っていた人が目の前に再び現れたからである。
「はい。今日は同行させていただいてありがとうございました」
晴喜は運転席から手を振ると車を出発させた。
駅の階段を上り電光掲示板で次発の電車を確認すると、先ほど1本出たばかりで次の電車の到着まで10分ほどあった。
駅構内のコンビニへ向かい、何を買おうか考えているとポケットに入れていた携帯電話が震えた。
取り出して画面を確認すると、メッセージが来ていた。
その差出人の名を見て拓人の胸は一瞬強く鼓動した。
アカウント名は『SAKI』となっている。
画面をタップしメッセージを確認した。
早川です。
さっきはありがとうございました。
今度、ゆっくり会いませんか?
咲と公園で別れ際に連絡先を交換した。交換しようと言い出したのは咲だった。車に戻ったとき晴喜にそのことを話そうか迷ったのだが、休憩中とはいえ仕事の合間というのもあり言い出せなかった。
誘いの連絡が来たことに拓人は驚きながらもすぐに返信した。突然再会したことに加え、思ってもない展開に胸が高鳴っている。
メッセージでやり取りをして、今週の土曜に会う約束を交わした。デパートの清掃で子供服のフロアを通ると店内に咲を見かけた。接客をしたり商品の服を丁寧に畳む姿があったが、向こうが拓人に気が付くことはなかった。
一度、子供服売り場とは異なるフロアで咲を見かけた。仕事終わりだったのか私服を着ていた。
文房具売り場にある木枠のショーケースの前で立ち止まって何かを見ていたのだが、何気なくという感じではなく真剣な面持ちだった。拓人は咲が売り場を立ち去りエスカレーターへ向かったのを見ると、そのショーケースに何が置かれているのか遠くから目を凝らして見た。
万年筆、インクのボトルなどが並べられている。その隣に色とりどりの透き通ったペンのような物が置いてあるが、はっきりとした形が見えない。
約束の日が近づいて来るといよいよ緊張してきた。食事に行くだけのことだが、どんな会話をするのか想像ができない。何せ最後に言葉を交わしたのは小学生の頃だ。大人になった今、どのような口ぶりで話せばいいのかすらわからない。
過去をひとつ思い出すと、いろんな場面が次々と溢れかえってくる。それはいいことばかりではなく、思い出したくない多重子との日々、そして、父親が段々と壊れていったあの日々のこともだ。
拓人は毎晩ベッドで仰向けになりながら過去を遡った。そして、自分を保つために蓋をしてきた感情が目を覚ましてしまうことに恐れを抱いた。体は正直だ。汗、心音の上昇、呼吸の乱れ、そういったものが現れそうになると起き上がり、台所で水を飲んだ。
そこまでして思い出を振り返ろうとするのは他でもない、もう一度会いたいと思っていた人が目の前に再び現れたからである。
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