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封筒
封筒26
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時計の針が10時を回って柳瀬さんは事務所のドアを開いた。少しして私は財布を持って平然と外へ出た。帰って誰かに言われたら、近くの自販機に飲み物を買いに行ったという気まずい言い訳をするつもりだ。
駐車場の手前で水色シャツの背中を見つけ、急いで追いかけ声を掛けた。
「柳瀬さん!」
柳瀬さんは驚いた顔をした。
「ちょっといいですか」
「うん?」
「安西さんとの事、私に協力させて下さい」
柳瀬さんの顔が一瞬固まった。照り付ける日差しが額に汗を滲ませている。
「話したい事があるのでとりあえずメール下さい」
メモを渡すと柳瀬さんは「わかった」と返事をした。何も聞いては来なかった。私は飲み物を買うために自動販売機に向かった。
事務所に入っても誰もこっちを見ることはなかった。横山さんが私の前を通り何か言われるかと身構えた、けれど棚からファイルを取り出すと席に戻っていった。
昼休憩の時間になって冷蔵庫からお弁当を出した。安西さんと昼食を共にする事はめっきり無くなった。昼休憩になると安西さんはふらりと1人静かにどこかへ出掛けてしまう。狭い休憩室でお弁当を食べながらタケルがどうしているか気になった。携帯電話はメールを受信した。ナオさんからだった。
この間はありがとう。かなり急いでるみたいだったけど、友達は大丈夫だった?
誰か頼れる人にタケルの事を相談したい。でも、ナオさんに言ったら見知らぬ男を家に泊めるなんて軽い女だと思われるかもしれない。話したとして、警察に行った方がいいと言われるのが落ちだ。
タケルをどうしてあげるのが一番いいのか、本人がどういうつもりなのか、考えてみてもずっと同じ繰り返しだ。
ところでタケルはあの日神社で何をしていたのか、手ぶらでいたという事は近くに住んでいたと思う。あれから1ヶ月経つ、家族や知人からの捜索願いは出ていないのだろうか。卵焼きを口に入れて、壁を見つめた。今日はどこにも寄らずに帰ろう。
玄関の鍵を開け、擦りガラス越しに部屋の明かりがついているのが見えて安心した。ドアを開けるとテレビの電源が入ったまま、無人だった。一瞬胸が騒いだ。カーテンが揺れてベランダを覗くとタケルがいた。
「ただいま」
「おかえり」
タケルは部屋に入るとテレビの前に座った。簡単に作った夕飯を済ませて流しに洗い物を運ぶとタケルはスポンジを持って不器用にも洗ってくれた。家に来た頃はスポンジを使う事すら忘れていた。
昨日遥人君がお店の手伝いが終わってからタケル用にTシャツとジャージを持ってきてくれた。普段から大きめのサイズを着ている遥人君のシャツはタケルにぴったりだった。外に出る時、顔を隠せるようにとキャップ帽まで貸してくれた。その配慮が純粋に思えて少し笑ってしまった。
「今から散歩しに行かない?」
あの神社の周辺を散策すれば何か記憶が戻るかもしれないと考えた私はタケルにキャップ帽を被らせて外へ連れ出した。タケルは感情の読めない顔でただ私の隣を歩いた。
駐車場の手前で水色シャツの背中を見つけ、急いで追いかけ声を掛けた。
「柳瀬さん!」
柳瀬さんは驚いた顔をした。
「ちょっといいですか」
「うん?」
「安西さんとの事、私に協力させて下さい」
柳瀬さんの顔が一瞬固まった。照り付ける日差しが額に汗を滲ませている。
「話したい事があるのでとりあえずメール下さい」
メモを渡すと柳瀬さんは「わかった」と返事をした。何も聞いては来なかった。私は飲み物を買うために自動販売機に向かった。
事務所に入っても誰もこっちを見ることはなかった。横山さんが私の前を通り何か言われるかと身構えた、けれど棚からファイルを取り出すと席に戻っていった。
昼休憩の時間になって冷蔵庫からお弁当を出した。安西さんと昼食を共にする事はめっきり無くなった。昼休憩になると安西さんはふらりと1人静かにどこかへ出掛けてしまう。狭い休憩室でお弁当を食べながらタケルがどうしているか気になった。携帯電話はメールを受信した。ナオさんからだった。
この間はありがとう。かなり急いでるみたいだったけど、友達は大丈夫だった?
誰か頼れる人にタケルの事を相談したい。でも、ナオさんに言ったら見知らぬ男を家に泊めるなんて軽い女だと思われるかもしれない。話したとして、警察に行った方がいいと言われるのが落ちだ。
タケルをどうしてあげるのが一番いいのか、本人がどういうつもりなのか、考えてみてもずっと同じ繰り返しだ。
ところでタケルはあの日神社で何をしていたのか、手ぶらでいたという事は近くに住んでいたと思う。あれから1ヶ月経つ、家族や知人からの捜索願いは出ていないのだろうか。卵焼きを口に入れて、壁を見つめた。今日はどこにも寄らずに帰ろう。
玄関の鍵を開け、擦りガラス越しに部屋の明かりがついているのが見えて安心した。ドアを開けるとテレビの電源が入ったまま、無人だった。一瞬胸が騒いだ。カーテンが揺れてベランダを覗くとタケルがいた。
「ただいま」
「おかえり」
タケルは部屋に入るとテレビの前に座った。簡単に作った夕飯を済ませて流しに洗い物を運ぶとタケルはスポンジを持って不器用にも洗ってくれた。家に来た頃はスポンジを使う事すら忘れていた。
昨日遥人君がお店の手伝いが終わってからタケル用にTシャツとジャージを持ってきてくれた。普段から大きめのサイズを着ている遥人君のシャツはタケルにぴったりだった。外に出る時、顔を隠せるようにとキャップ帽まで貸してくれた。その配慮が純粋に思えて少し笑ってしまった。
「今から散歩しに行かない?」
あの神社の周辺を散策すれば何か記憶が戻るかもしれないと考えた私はタケルにキャップ帽を被らせて外へ連れ出した。タケルは感情の読めない顔でただ私の隣を歩いた。
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