82 / 95
恭也
恭也⑨
しおりを挟む
「はい」
『夕夏、荷物届いた?』
「届いたよ」
『開けたの?』
「うん」
『手紙、入ってたでしょ?』
「入ってたけど…」
『びっくりしたでしょ?その湯浅って人ね、獣医さんなのよ』
母は勝手に話を続ける。
『花絵ちゃんずっと獣医さんに憧れてたでしょ?もうほんっと良かったわ。おめでたいじゃない?』
「そうだね。じゃ、また」
電話を切ろうとすると母は叫んだ。
『ちょっと待ちなさい!』
テレビを観ていたタケルがこっちを向いた。気を遣ったのかタケルはテレビの電源を切った。
『これは大事な話なの。あんた、いつまでそうやって花絵ちゃんの事避けるつもり?』
部屋の中に端末から漏れる母の声が響く。
「ずっと会ってないんだから、別に行く必要ないじゃん」
『どうしてそう強がるのよ、幼馴染でしょ?』
「もうほっといてよ!」
幼馴染、という言葉に強く反応してしまった。母は少し間を空けてから言った。
『花絵ちゃんのママ、この間会った時に言ってたわよ。結婚式で再会出来たら花絵ちゃんにとって一番幸せな事だって。よく考えてからハガキ出しなさい』
どう返せばいいのかわからず俯いた。
『じゃあこの話は終わり。あと、夕夏来週誕生日でしょ?荷物にプレゼント入れようと思ったんだけど無理だったから次の便で送っとくわね』
「いいのに。もう大人なんだし」
『知らない土地で頑張ってるんだから、受け取りなさい』
「…ありがとう」
『じゃあね』
電話を切った。リモコンを手に取りテレビの電源を入れた。
「電話、ごめんね」
「いいよ。ご飯ご馳走様でした」
タケルは食器をもって台所に行った。戻って来るとテレビに向き合った。
「あれから何も変わってないから」
「え?」
タケルはそれだけ言ってテレビを観ている。私が食べ終わるとタケルは私の分の食器まで運んで洗い始めた。
「これ食べてから行かない?」
冷蔵庫からプリンを出して見せた。
「いいね、ありがとう」
洗い物が終わり、タケルはプリンをあっという間に食べて一息つくと、帰るね、と言って立ち上がった。
「また寄ってね」
玄関を出たタケルは振り向いて笑った。
「そうだ、ここの鍵、返そうと思って」
タケルがズボンのポケットから鍵を取り出した。
「あー、いいよ。持ってて」
「でも」
「なんかあった時の為に一応持っててくれたらいいから」
「なんかって?」
「… とにかく、本当に要らなくなってから返してくれたらいいよ」
「わかった」
手を振って見送るとタケルはエレベーターに乗って見えなくなった。
部屋に戻って暫くテレビを見た。お風呂を沸かそうと立ち上がったとき、ベッドの横に置いてある大きな紙袋に目がいった。
『夕夏、荷物届いた?』
「届いたよ」
『開けたの?』
「うん」
『手紙、入ってたでしょ?』
「入ってたけど…」
『びっくりしたでしょ?その湯浅って人ね、獣医さんなのよ』
母は勝手に話を続ける。
『花絵ちゃんずっと獣医さんに憧れてたでしょ?もうほんっと良かったわ。おめでたいじゃない?』
「そうだね。じゃ、また」
電話を切ろうとすると母は叫んだ。
『ちょっと待ちなさい!』
テレビを観ていたタケルがこっちを向いた。気を遣ったのかタケルはテレビの電源を切った。
『これは大事な話なの。あんた、いつまでそうやって花絵ちゃんの事避けるつもり?』
部屋の中に端末から漏れる母の声が響く。
「ずっと会ってないんだから、別に行く必要ないじゃん」
『どうしてそう強がるのよ、幼馴染でしょ?』
「もうほっといてよ!」
幼馴染、という言葉に強く反応してしまった。母は少し間を空けてから言った。
『花絵ちゃんのママ、この間会った時に言ってたわよ。結婚式で再会出来たら花絵ちゃんにとって一番幸せな事だって。よく考えてからハガキ出しなさい』
どう返せばいいのかわからず俯いた。
『じゃあこの話は終わり。あと、夕夏来週誕生日でしょ?荷物にプレゼント入れようと思ったんだけど無理だったから次の便で送っとくわね』
「いいのに。もう大人なんだし」
『知らない土地で頑張ってるんだから、受け取りなさい』
「…ありがとう」
『じゃあね』
電話を切った。リモコンを手に取りテレビの電源を入れた。
「電話、ごめんね」
「いいよ。ご飯ご馳走様でした」
タケルは食器をもって台所に行った。戻って来るとテレビに向き合った。
「あれから何も変わってないから」
「え?」
タケルはそれだけ言ってテレビを観ている。私が食べ終わるとタケルは私の分の食器まで運んで洗い始めた。
「これ食べてから行かない?」
冷蔵庫からプリンを出して見せた。
「いいね、ありがとう」
洗い物が終わり、タケルはプリンをあっという間に食べて一息つくと、帰るね、と言って立ち上がった。
「また寄ってね」
玄関を出たタケルは振り向いて笑った。
「そうだ、ここの鍵、返そうと思って」
タケルがズボンのポケットから鍵を取り出した。
「あー、いいよ。持ってて」
「でも」
「なんかあった時の為に一応持っててくれたらいいから」
「なんかって?」
「… とにかく、本当に要らなくなってから返してくれたらいいよ」
「わかった」
手を振って見送るとタケルはエレベーターに乗って見えなくなった。
部屋に戻って暫くテレビを見た。お風呂を沸かそうと立ち上がったとき、ベッドの横に置いてある大きな紙袋に目がいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜
まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。
出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。
互いに意識しながらも、
数年間、距離を保ち続けた。
ただ見つめるだけの関係。
けれど――
ある夏の夜。
納涼会の帰り道。
僕が彼女の手を握った瞬間、
すべてが変わった。
これは恋でも、友情でもない。
けれど理性では止められない、
名前のない関係。
13年続いた秘密。
誓約書。
そして、5年の沈黙。
これは――
実際にあった「夜」の記録。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる