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【2‐2】見えない壁
きっとすべてが笑顔になる
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フィラノスの街に防衛線が張れた。まだ一部だけだ。安全とは言い切れない。沙蘭のように塀で囲い、要塞のように守りを固めることができればどんなに楽だろうか。
魔法都市という名前にふさわしく、知識はあっても魔法を使う者がほとんどで大人でも体力がない者も多い。騎士団こそ残っているが、街の治安を守る役人がほとんど逃げてしまっている。よく考えなくとも、この街は瀕死だ。
最低でも、野生動物が防げる程度にはなってもらいたい。今までよく大丈夫だったものだ。
魔法都市というブランドと、美しい景観ばかりで慢心だったフィラノス王のせいなのだろう。きちんとした整備をしていなかったのがいけない。
作業がひと段落し、竜次が取りまとめてその場にいたギルドハンターの人たちに通達をする。
「北と西はこんなものでしょう。人数を配備して徐々に壁の補強に着手すれば、守りやすくなると思います。友人にそういった専門家がいますので後で防衛策をお願いしておきますね」
専門ではないが、沙蘭がその方針で参考にはした。あとはローズにも案をお願いしてみよう。彼女は戦術アドバイザーなのだから専門である。
一行がギルドのハンターとしての働きは知れ渡っていた。皆、よく信頼してくれるものだ。聞いて質問はあったが、納得する説明が返せたため反発はなかった。
キッドとミティアは、少し離れた場所で話がまとまるのを待っていた。彼女たちは見張りと資材の運び、誘導などを行っていた。力仕事ではなくても、こういった細かい作業は手伝える。
「キッド、手は大丈夫?」
ミティアはキッドの右手を指している。腕の方ではない。手汗で少し傷口が開いたのか、包帯に血が滲んでいる。
「あぁ、これくらい平気よ。それより、ミティアは疲れてない?」
「わたしは大丈夫。たくさん動いたから、ご飯がおいしく食べられるかもしれないね」
ミティアは、えへへと可愛らしく笑っている。昼を前にしてご飯の話をしていた。キッドが呆れていると、竜次が二人のところへ戻った。
「さて、南は別の方々が行っているので、東に向かいましょうか。まだ手つかずと言っていましたが……」
「ジェフリーとマナカさんが先に行っている場所ですよね」
ミティアが確認をすると、竜次が頷いて先導する。キッドも続いた。
フィラノスの街中はゴーストタウン状態だ。空いているお店も少なく、活気もない。
竜次は街の地図を持っていた。先ほどの人たちからどこが通行規制をされているのかを教えてもらったらしく、赤ペンで印が付いている。
自分がミティアとキッドを連れている。そして、戦うのとは別に作業などをした。竜次は日が高いことにも気が付き、二人に言う。
「お二人とも、お腹は空いていませんか? 言っても、あまりアテがないのでこちらをどうぞ」
竜次は歩きながらカバンを探り、二人に手の平サイズの大判なクッキーを渡した。
「えっ、先生どうしたんですか?」
こんなに気が利く竜次がおかしいと、キッドが少し怪訝な顔をする。ビニールを開封していただこうとしている横で、ミティアはすでにごちそうさまでしたと両頬を手で覆っていた。
しゃれた紅茶のクッキーだ。急にどうしたのだろう。
ビニールのシールを見ると、『雑貨・キャラメルシィ』と判子が押されてあった。朝方に訪れた雑貨屋で買っておいたようだ。悪くない。
街外れに足を運んだ。人も少なく、もともと空き家が多かったが、墓地や崩れた家屋も視界に入って来るものだから、警戒してしまう。
「船着き場がこの先です。なので、範囲は狭いです。隙間を埋めるくらいしか私たちにはできませんけどね……」
視界に崩れた孤児院の跡が入った。
ミティアが立ち止まって茫然としてしまう。ケーシスはサテラとどうしているのだろうか。深く考え込む前に、かぶりを振った。今はやることがある。
竜次が言っていた隙間とは孤児院のあった場所よりも奥だった。街との境目が何となくしかない。地面は乾燥していたら土埃の立ちそうな場所だ。長らく手入れがされていない。そんな場所に、柵を立てようとしているのだ。
ガラガラと荷車を引く音がした。ジェフリーとマナカが汗だくになりながら到着した。
「馬が使えないとしんどいものだな……」
「馬の気持ちがわかりましたね、ジェフ兄さん……」
息を切らせ、座り込む二人。木材と鉄材が混ざっている点から、本当に間に合わせな感じがするが、やらないよりはずっといい。
合流を果たしたが、作業をするのが自分たちしかいないことに気が付いた。気を遣う必要がないのなら、早めに終わらせてしまいたい。
竜次が積み荷からハンマーを引っ張り出した。
「よっと、働きますよ。二人はもう少し休んでていいですからね」
休みもしないで働くと言う。ジェフリーは慌てて止めに入った。
「待て待て、兄貴は怪我をしてるだろ」
「えっ、竜兄さん、怪我をしてるのですか?」
ジェフリーが余計なことを口走ったばかりに、マナカが心配の声を上げた。
「竜兄さん、せめて軽い作業にするべきですよ」
心配はミティアにも伝染した。
「わたしがいない間に怪我をしていたなんて」
竜次は空回りの元気に拍車がかかり、ハンマーを振り回している。元気だと主張しているようだ。
怪我の話になり、キッドは俯き、視線を落とした。
「あ、あの、あたしが、えっと……」
「最近、櫛を通すとかさぶたが落ちるんです。そろそろローズさんに抜糸してもらわないといけませんね!!」
キッドはもごもごと何かを言いかけている。
竜次はわざとらしく大きな声で遮った。やることを見失わないようにしている必死さが、本当にわざとらしい。そそくさと数本の資材とハンマーを持って予定地に赴く。
ミティアが慌てながら追い駆けた。
「せ、先生、わたしも手伝います!!」
休み切れていないジェフリーも重たい腰を上げた。
「……ったく、見ちゃいられない」
疲労の色が出ている。それでも怪我をしている竜次やミティアに重い仕事をさせたくはなかった。一行の様子にマナカが疑問を抱く。
「兄さんたちは、どれだけ危険な旅をしているのですか?」
「さぁな……」
大きく深呼吸をして、ジェフリーが背筋を伸ばす。おとなしくしていてほしい人ほど、動きたがるとは困ったものだ。
ジェフリーはマナカに何と戦っているのかを話しても、信じてはくれないだろうと思っていた。あまりにも現実的ではない。
「俺たちは非現実な旅をしている。少なくとも、遊んでいるわけじゃない。でなかったら、とっくに沙蘭にでも腰を下ろしているさ」
マナカが兄二人の背中を見て、複雑と化した人間関係にため息をついた。ジェフリーだけではない、竜次にも変化を感じていた。適当なことを言っているが、沙蘭に腰を下ろして落ち着こうと言う気配はない。あくまでも、たまに『帰って来る』程度なのだろう。前々から何となくはわかっていたが、マナカの中に野心が芽生えた。
ならば、落ち着いた頃にここで暮らすと言わせるほど、沙蘭をいい国にしようと。
「他国につき合っている場合ではありませんね。さっさと片づけなくては」
フィラノスが壊滅寸前であるが、頑張っている人たちがいる。
まだ、こうした人たちがいる限り、この世界は捨てたものじゃない。とマナカも腰を上げた。
作業は夕暮れを過ぎ、夜にまで及んだ。そう、夜まで作業をしていてすっかり忘れていた。
実は宿を取っていない。
「わたくしは夜行便で沙蘭へ帰って報告なので、これで失礼いたします」
忙しいはずのマナカですら、きちんと予定を立てて行動していたというのに。
資材は間に合わせだったが、立派な柵が組み上がり、街と外との境界線がはっきりとわかるようになった。飛び地が多いのが難点だったが、埋め合わせもしたのでここは完了だ。動物に荒らされることも減るだろう。もしかしたら、人が住みやすくなるかもしれない。
マナカは船着き場に軽くなった荷車を返却し、そのまま乗船すると告げた。別れになり、四人は見送った。マナカにはたびたび会うが、ゆっくりお茶の席を設けたこともない。
よく働いた。ミティアとキッドはきつめに柵を結び繋いでいたので、手が痛そうだ。
ジェフリーが次なる選択肢を用意する。
「さて、先に宿の確保か、サキたちを迎えに行くか」
気持ち的には少し休みたいところだが、ゆっくりしている時間も惜しい。
「兄貴は外面がいいから、交渉しやすいだろう? 宿を頼む。俺はサキたちを迎えに行くから……」
説明するのも面倒なのか、ジェフリーは一方的に言う。竜次の返事も待たずに、魔法学校の方角へ歩き出した。竜次はあまりにも突然なので、呆気に取られていた。
残されるのが嫌なのか、あるいは竜次とキッドに気を遣ったのだろうか。ミティアはジェフリーを追い駆けて腕に飛びついた。彼女は、ただジェフリーと一緒にいたいだけのようだ。
この街はもう外部からの侵入は少ないはず。安全だろうし、まぁいいだろう。竜次はそう思いながら街の方へ向き直る。二人の背中をじっと見ているキッドの顔を覗き込んだ。
「まねをして、腕……組みます?」
「は、はぁっ!?」
「それとも、ジェフと一緒がよかった、とか?」
「そ、それは絶対にないです!!」
漫才のようなやりとりだ。キレのある反応を見て、キッドが元気だと証明された。竜次は笑いながら言う。
「クレアにその気がないのなら安心しました。最近、ジェフとよく話をしているようでしたので、ね」
腹の内を探るような発言だ。キッドは怪訝な表情を浮かべながらため息をついた。
「先生、なんか気味が悪いですね」
竜次は顔を覗かせたまま不満を言った。
「先生って呼ばれたくないなぁ?」
「な、何ですか!? 急に……」
歩み寄ったら離れていく気持ち。難しすぎて、竜次のが距離を置いた。
「さっき、気にしていましたよね? 私が怪我をしたのはあなたのせいじゃないです。それは前にも言いましたよね? もうその件は気にしないで」
キッドは気にしないでくれと言われても、ずっと気になって仕方がなかった。いまだに自分のせいだと責任を感じている。きっと、これはずっと気にし続ける。
「気づいてしまいました。私が笑うと、あなたはなぜか悲しい顔をする。どうしてですか? 一緒に笑ってほしいのに」
「そんなのできません。あたしなんて、本当は隣に立つ資格すらなのに……」
どうもキッドの気持ちが落ちている。竜次は手を握って引いた。
「宿探し、少し遠回りもしましょうか」
手をつなぐのは抵抗しなかった。それでもキッドの表情は変わらない。少し歩いて、規制区域の手前で一件目。この宿は開いていない。
竜次は手をつないだまま、ポケットからフィラノスの地図を取り出した。
「あ、あの、先生?」
キッドの態度がよそよそしい。竜次は子どものようにむくれている。
「あぁもぉっ……寂しい呼び方をしないで!!」
明らかにむきになっている。竜次はキッドの手を引き、歩いた。三軒隣も宿らしいが、明かりはついていない。
繁華街への道が封鎖されているせいもあってあまり街灯も点いていない。道はどんどん暗くなる。
三軒目も開いていない。この先は封鎖区間のため、来た道を戻ることになった。そのときだった。暗い裏路地から「ゴトッ!!」と音がした。
「わわっ」
暗がりでの音に驚き、キッドは竜次の腕どころか、体にしがみついた。
二人の足元を黒い動物が駆け抜けた。危険に満ちた街の外なら常に警戒をしているため、こんなに驚くことはない。
キッドは涙目になりながら気を落ち着かせようとしている。実際は、簡単に落ち着きを取り戻せなかった。
「ねねね……ネズミかな? だ、大丈夫ですよ、ね?」
「ライトライト……電池が切れてるんだった。え、えっと」
竜次はカバンの中を探ろうとして身動きが取れないのに気が付いた。キッドにしがみつかれている。
「あの……」
「あぁーっ!! ご、ごめんなさい!!」
ラッキーだったのかもしれない。暗がりのラブコメ。少し乗ってみようかと悪い心が、いつも引け腰な竜次の背中を押した。
「わわわわわ……先生、離してぇ」
「先生って言うから離しません」
抱き着いて来たのだから、抱き着き返しても問題ないという解釈だ。
キッドは軽く抵抗していた。やがておとなしくなり、すすり泣いている。
さすがに泣かれるとは思わず、竜次はキッドを解放した。
「えっ、そ、そんなつもりは……」
キッドはすすり泣いたまま震えている。しかしその表情は怒っていた。
「そ、そんなつもりもない人にこういう破廉恥なことをするんですか?」
「ち、違いますって、泣かれちゃうとは思わなかったので。その、ごめんなさい」
いつもの解釈違いが始まる。どうしてこうも噛み合わないのか、勘違いの漫才みたいになってしまっている。
あまりにキッドが取り乱すため、竜次も勢いで言ってしまった。
「す、好きじゃない人に、こんなことしませんっ!!」
聞いたキッドは、大きく息を吸って泣くのをやめた。
竜次にいつもの余裕がない。ついに吐いてしまったからだ。
「ごめんなさい、忘れて……」
カバンの中から買ってあった電池を入れ替え、ペンライトを捻って明かりを点けた。本当に申し訳ないと、物悲しい表情が見える。
キッドは真面目に返事をした。
「あたし、どうやって答えたらいいのかわかんないです。頭、悪くて馬鹿なんで……」
「教養があるかないかなんて、関係ない。そこに気持ちがあるかの問題だと思います。ですが、私が行き過ぎたことをしてしまったのは謝ります。嫌でしたよね」
軽くカバンを整理し、すっかり暗くなってしまった街中をペンライトで照らす。まだ何か動物でも出て来るのかと思ったら、軒先に出て行った飼い主を待つように猫が丸くなって寝ている程度だった。
「さて、あとは噴水広場の近く、お世話になった宿くらいしかアテがないですね。繁華街は封鎖されていますし」
道を戻ろうとすると、キッドが小走りになって手をつないだ。
「どうして言ったことに責任を持てないんですか?」
「?」
「一度口から出てしまったことですよ?」
キッドは頬を赤らめながら声を震わせる。
「あ、あたしの気持ち、全然わかってくれないんですね。さっきはうれしかったです。でも、まだ『友人』でいいですか?」
悲しそうな声だ。そう簡単に気持ちを切り替えることはできない。
一般的には『残念』な返事だ。キッドの中にまだ自分はいないらしい。だが、気持ちを聞いても嫌がらなかった。それだけが救いだった。関係がこれ以上崩れない。逆に考えれば、進展するのも難しいのかもしれない。竜次は今は納得することにした。
しつこく気持ちの押しつけはしたくない。
「友人……そうですね。よき友人です」
竜次は笑って凌いだ。だが、『責任』とは何だろうかと考え込んでいた。キッドが出す宿題はいつも難しい。いつまでも先回りができない。『二回目の恋愛』の難しさを身に染みている。
ジェフリーとミティアは、フィラノスの大図書館へ向かっていた。
本来なら、街中でも警戒するべきだろう。だが、今のジェフリーには警戒するよりも気になっていることがあった。
「ねぇ、ジェフリー? わざと、だよね?」
左腕にしっとりと暖かい肌と体温、ほんのりと柔らかい胸を受けて、返事が上の空になってしまう。
ジェフリーはミティアに密着されていた。これではまるで、『本当の恋人』のようだ。
「聞いてる?」
ミティアにグイッと腕を引っ張られ、ようやくジェフリーは視線を向ける。
「ん? どうかしたのか?」
ジェフリーの反応を見て、ミティアは脱力した。話を聞いていなかったのかと頬を膨らませている。
「わたし、朝通ったときにやっていたの、見てたよ。二人にわざと遠いお使いさせたんでしょって話してるのに!」
「あぁ、宿の話か。よくわかったな?」
やっと話が通じ、ミティアの反応はうれしそうだ。
普通の若者のデートのようだ。ミティアとなら、さぞ楽しいだろう。だがそれは、何も縛られるものがなかったらの話だ。ジェフリーはぼんやりと『普通』とは何かを考えていた。きっとこれは考え込むと、哲学的なものになるからだ。
ミティアは世間話をするように自然に話す。
「キッドは先生が嫌いなのかな?」
しっかり親友の心配をしている。ミティアも二人が気になるようだ。その点ならジェフリーも気になっていた。
「嫌い……までは行かないだろうけど、キッドはまだミティアの兄貴が好きなんじゃないか?」
ジェフリーは沙蘭での出来事を思い出す。一緒に話をしてわかったのは、必死で振り切ろうとしていた。前を向こうと、嫌なことは忘れようとしていた。キッドらしくないほど、過去を引きずっている。竜次の相談だってされた。
ミティアは自分のことのようにキッドの心配をしていた。
「兄さん……そうだよね。すごく仲がよかったもん」
「どれくらいだったんだ?」
「んー……お泊りするくらい、かな?」
何の抵抗もなく、ミティアの口から『お泊り』と吐かれた。ジェフリーは察した。これは、思っていたより厄介だ。
「あー…………」
簡単に忘れ、断ち切れるはずがない。つまりは『男女の仲』だ。
ミティアはその意味を理解しているのだろうか。今度はジェフリーの心配をする。
「どうしたの? どこか痛い?」
ジェフリーは意識しないうちに、つながれていない手で顔を覆っていた。これでは本当にどこか具合が悪い人だ。
「いや、どこか痛いわけじゃない。何と言うか、男女関係のこじれって面倒だと思った……」
聞いてミティアがぴたりと足を止めた。何も言わず、訴える目を向ける。
殺気にも似たその気配、ジェフリーは激しく首を振った。
「違う、ミティアが面倒ってわけじゃない!!」
このしょげた子犬のような可愛らしさは、どうやったらできるのか。世の中の女性には悪いが、今のジェフリーにはミティアが世界一、可愛く見えて仕方がない。
「だから、そういう顔をしないでくれ」
「むーっ……」
魔法学校の方角へ歩みを再開する。
歩けば話題も変わる。ジェフリーはそう思っていた。だが、そんな考えはミティアには通用しなかった。
「ジェフリーもわたしと『お泊り』する?」
予想しなかったミティアの言葉に、ジェフリーは手をつないだままずっこけそうになった。
天然なのか、狙っているのか、本当にこういうところが読めない。誰もがミティアの発言に翻弄されるだろう。
「あのなぁ……」
「一緒のお布団で一晩中お話してみたいね!」
本当に無邪気なものだ。そんなことをしたら、間違いなく理性が崩壊する。ジェフリーは想像しただけで顔が真っ赤になった。大袈裟なほど首を横に振る。話は完全にミティアのペースだ。
「一晩中話すのは賛成だが、別に布団でする必要はないだろ」
「寒くない? 温め合おうとか、抱きたいとか思わない?」
ミティアの身体的な負担を考えたら、望ましくはない。迂闊に変なことはしたくない。少しでも、一日でも長く彼女が生きていられるなら、そんな行為は望まない。
「いつか、俺がちゃんとした『大人』になれたら、だな……」
口約束だ。旅の道中ではしない。保証はないが。
意味深な発言に、ミティアは再び足を止めた。
「おと、な……? 今は子どもって言いたいの? わ、わたしは大人だよ!」
言葉だけではなく、目でも訴えている。
いくら言い寄られても、これだけは譲れない正義だ。ジェフリーは真剣なまなざしを向ける。
「前にも言ったが、今の俺に将来性はない。将来、自分のやりたいことも定まっていない。そんな俺が、無責任なことをしてもミティアが悲しむ。死ぬかもしれないって命のやり取りが多くなったせいか、焦っているのか?」
「わたしは、自分に魅力がないのかと思った」
恋人同士らしいぶつかり合いだ。こういった問題を解決し、乗り越えて関係を築く。面倒な行いだ。お互いを想い合っているからこその問題。お互いの譲れないものだ。人によってはこの関係を築くのを嫌になるかもしれない。
自分の利点を考える思想だったジェフリーは、半分だけの事実を言った。もう半分は、その思想に沿う形で、自分で稼ぎがなくては社会的に困るからという理由だ。心苦しいが、それだけ真剣に考えている。その時間がミティアに不安を与えてしまった。
「ミティアは魅力的だと思う。あんまり言わせないでくれ。俺も恥ずかしい……」
ジェフリーは顔から火が出そうになった。気持ちを言葉にあらわすのは簡単なようで難しい。
ミティアは違う不安も抱えているようだ。どうせなら勢いついでに解決させてしまいたい。
「まだ何かあるのか?」
「……」
ミティアは俯き、腕を抱え込んだ。言えない悩みでもあるのだろうか。ジェフリーは話してくれない理由が、社会的に地盤の整わない自分にあると思った。
「すまないと思ってる」
「ど、どうして?」
「俺がしっかりした人間じゃないから、こうやって不安にさせるんだろうな」
「ち、違うよ!!」
ミティアはむきになり否定した。声に力が入り、明らかに様子がおかしい。話したいことがある。だが勇気がないといったところか。ジェフリーはもどかしい気持ちを抑え、今は落ち着かせようと手を握った。
その頃合いで揺れを感じた。
ドスンと大きな音がした。そのあと、地鳴りに似た不気味な音がする。地下で何かが動いたような不自然な音だ。二人が立っている足元でも感じた。
ミティアは地面を見て、この道がフィラノスの魔法学校に続いているのを確認した。
「もしかして、学校かな?」
「まさか……」
二人は小走りになりながら周囲を気にしていた。妙な音がしたのだから、街に変化があってもおかしくはない。しかし、あたりは暗い。魔法学校も大図書館も閉鎖されている話は聞いていた。街灯を期待していたのにまばらだった。
魔法学校に到着した。立派な地下への階段も見えるが明かりはない。
封鎖されているはずの大図書館からかすかに明かりが漏れている。ベロア調の分厚いカーテンからふわふわと揺れていた。
硝子扉に耳を当て、ミティアは言う。
「誰かいるみたいだね?」
「あぁ、サキたちだろうけど……」
まだ中で探索中だろうか。もしくは出られなくなっている可能性もある。
ミティアが馬鹿正直にノックをした。だがこれが正解だったようだ。
分厚いカーテンが大きく揺れ、メルシィが顔を見せた。バンバンとガラス扉を叩く。慌てているようだ。激しく首を横に振って、完全に取り乱している。
「まずい状況らしいな」
大図書館は大きな硝子扉だ。しかも硝子は分厚い。剣や体当たりなどでは壊せないだろう。ならばと、ジェフリーは扉から離れ、ポーチから本と黄色い魔石を取り出した。
「こういう手荒なことはしたくないけどな……」
「えっ、何するの?」
「ミティアは下がってないと、硝子で怪我をするぞ」
硝子越しのメルシィにも下がれとサインをする。ミティアも下がってジェフリーの動向をうかがった。
ジェフリーは懐から簡易魔導書を取り出し、ぱらぱらと本を適当にめくって指を挟んだ。入り口の光で何となくの文字は読める。
ここが真っ暗ではなくてよかった。本を見ながら詠唱し、精神を集中させる。
「走り抜ける稲妻の如く……ライトニングキャノンッ!!」
ジェフリーは黄色い魔石を前に弾いた。
走る稲妻、大砲から放たれたように強く勢いのある魔法だ。分厚い硝子の扉を数枚ぶち破った。破片が大きく散り、向こう側へ抜けられるようになった。
ミティアは足元に黒く焦げた金属を確認した。扉の枠か、カーテンレールの一部だろう。ものすごい破壊力に息を飲んだ。
「わっ、ジェフリーすごいね……」
そのすごさは、砕けた硝子の量でわかる。三センチから五センチくらいだろうか、強化硝子らしく、粉々にはなっていないが、ブロック状の破片が散っている。
これは修理が大変だろうが、今は緊急事態だ。仕方ないと、都合よく解釈する。
ジェフリーたちが駆けつけたことにより、メルシィは緊急性を訴える。
「あ、あの、たす、けて……先輩が、先輩が大変なんです!!」
ジェフリーは残って引っかけそうな硝子を剣で押し抜けた。大図書館の中に入る。メルシィが慌てているがどうしたのだろうか。
さらに中に入ると、ローズとコーディが茫然と立ち尽くしている。
「どうした?」
ジェフリーは先に確認した。床に大穴が開いている。床が抜けたと考えていいのかもしれない。
ミティアも駆けつけて口を覆った。
「な、何が……まさか、さっきの大きな地鳴りみたいなのって、もしかして!」
ジェフリーがコーディのろうそくを頼りに周囲を見渡す。わざわざランタンを持っていないところを見ると、いろいろとあったのだろう。ローズもコーディも服が汚れている。そしてサキの姿がない。
「サキはどうした? 一緒じゃないのか?!」
ジェフリーは説明を求めた。だが、コーディもローズもアイサインをおくりながら、どう説明したものかと困っている様子だ。
代わりに説明をしようと飛び出したのは使い魔たちだ。圭馬の訴えが具体的だった。
「ジェフリーお兄ちゃん!! 大変だ、あの子が突然開いた大穴に落っこちたんだよ!!」
「大穴って、まさか、これじゃないだろうな」
「そのまさかだよ。突然だったんだ。ホントにもう帰ろうってときだったんだ!!」
聞いたジェフリーは、茫然としているローズとコーディに理解を示した。自分が地鳴りを聞いてからさほど時間は経っていない。本当に何が起こったのかわからないのだろう。そこへ乱暴な形でジェフリーたちが駆けつけた。突然の出来事を目の前にし、急に説明を求められても無理な話だ。
ショコラもジェフリーに助けを求めた。
「お願いですのぉ、主を助けてくださいぃ!!」
ローズがレポート用紙の束を持ったまま、床にぺたりと座り込んだ。ショックのようだ。
コーディも表情を強張らせている。
「サキお兄ちゃんが、せっかく……たくさんの情報を探してくれたのに」
ジェフリーがこの場の誰かが答えないかと問う。
「何かに襲われたのか? 何が起きたのかさっぱりなんだが?!」
メルシィが言葉を詰まらせながら説明し出した。
「その……入ってから変なのに遭遇して。でもそれは、それは皆さんが撃破しました。奥の貴重な書物のあるフロアで情報収集をしたんです。情報の収集自体は問題ありませんでした。でも、ここまで戻ってきたときに、急に激しい揺れが起こって。先輩の明かりがいきなり消えたと思ったら……」
部屋が荒れていると思ったが、何かと戦ったようだ。鉄の扉が曲がっている。正面からは入れなかった。と、すれば裏口から出るつもりだったのだろう。ジェフリーはメルシィの説明と部屋を見て状況を把握した。
ぽっかりと空いた穴に向かって呼びかける。
「サキッ!!」
予想はしていたが返事はない。完全に落ちてしまったのだろう。穴の形状は不規則ではあるが大柄の人でもすっぽり入ってしまう大きさだ。何らかのキッカケで床が抜けてしまったと見ていいだろう。本棚があるわけでもなく、むしろ何もない空間だった。カーペットが破れ、床板もコンクリも巻き込んで抜けている。
かなり深そうだが、絶対的に明かりが足りていない。
ミティアが嫌な予感を口にした。
「サキ、大丈夫かな? 大怪我をしていたら……」
圭馬がその予感の先を説明した。
「死んでないよ。死んでたらボクたちの契約は強制解除される。ババァはまだしも、ボクは魔界強制送還か、幻獣の森から出られないほど、弱っちゃうと思う」
とりあえずそれを聞いて安心した。問題はこれからだ。
ジェフリーは、この中でもっとも詳しそうなメルシィに向けて質問をする。
「床が抜けたなら、この下には何があるんだ? 魔法学校の地下じゃないだろう?」
「わ、わかりません。ただ、大図書館はフィラノス城の地下に通じているって聞いたことがあります。でも、一般の人はお城に入れないし、本当かどうか、わからないです」
ジェフリーの中で、ある疑惑が持ち上がった。マナカから亡くなった王の側近が地下牢に監禁されたと聞いたのを思い出したからだ。
もう少し推理が必要だ。ジェフリーは別の質問をする。
「その、変なのが出たって、何が出たんだ?」
この質問にはローズが答えた。
「変異した人食いスライムデス。普通ならありえない大きさでしたネ」
ジェフリーは考え込んだ。この役割はいつもならサキがやってくれるはずだ。立ち回りが難しい。
「人じゃないもの……モンスター化した人工的な生き物が出て来たのなら……」
ミティアがジェフリーの袖を掴んだ。
「ねぇ、もしかして、つながっているんじゃないかな?」
「つながってるって何がだ?」
「わたし、シフって人にフィラノスの近くの種の研究所に連れて来られたの。確か、ケーシスさんが言ってた。簡単に出られる場所じゃないからって、風の魔法で外に出たから正確な位置はわからないけど」
嫌な憶測だが、その線は正解かもしれない。ジェフリーは情報の整理を進める。
「セティ王女は凍てつく地下牢で発見された。ミイラの状態で。なぜそこまで明白な情報が残っているか。わざわざミイラってわかる状態のよさだ。持ち出さずに、そこに研究所を作った方がいいだろう。外に持ち出すリスクも考えて。王女はそれほどの価値があったら、研究者ならどうする?」
ローズは身震いをした。学者の視点で考えると、発言が怖い。
「確かに……持ち出すと痛んでしまいますネ。研究所が赴く方がより質がいいデス」
ローズの考えが決め手になった。
大図書館と城はつながっている。さらに、種の研究所ともつながっている可能性がある。それだけ改造を繰り返していたら、多少の衝撃で崩落を招いてもおかしくはない。
むしろ、今までどこも崩れず、よく問題にならなかったものだ。
ミティアがまた嫌な予感を口にした。
「じゃあ、亡くなった王様の側近って、これももしかして……」
「始末された……そう考えていいかもしれないな」
ジェフリーも言っていてため息をついた。
「いくら外から防いでも、中から燻ぶっているのか。よく大図書館だけで済んだな」
可能性は見えた。城の地下か、種の研究所のどちらかにサキはまだいる。点と点をつなぎ、線にした推測だ。これがどこまで通用するだろうか。
ジェフリーは嫌な予感を胸に、とある決断をする。
「よし、俺が城に忍び込む。帰りは何とかする」
「わ、わたしも……」
「いや、誰もついて来なくていい」
ミティアとコーディが話に乗ろうとした。だが、ジェフリーはこれを拒否した。
「その代わり、ここをお願いしたい。ミティアと博士は兄貴たちに知らせて城や研究所とつながりがありそうな場所を埋めてほしい。この抜けた床も含めてだ。コーディは、揃うまでここから何か出て来ないか見張りを頼む」
ジェフリーは役割と指示を出した。だが、どうも納得がいかないようだ。特にミティアが。
「一人で行くなんて、無茶だよ」
「こういうのは大人数でやるものじゃない。万が一、兵士や使いの者に遭遇してまともにやり合えるのは俺か兄貴だが、兄貴はメンツがあるからな。俺なら都合がいい」
「で、でも……」
ミティアはしつこく心配をする。いくら仲間のためでも、危険な場所だと予想がされる。そんな場所に一人で行かせるのは気が進まない。
「のぉん、では、わしが一緒に行こうかのぉ?」
鯖トラのネコ、ショコラが名乗りを上げた。
圭馬はどうやら足手まといになる自覚があるようだ。
「確かにボクだと体が大きいし、白いウサギだから目立つんだよね。ババァは幻影魔術士だから、魔法で補助してくれるかもしれないよ。人間がついて行くよりは安全じゃないかな。つか、適任じゃない?」
筋の通ったきちんとした理由だ。
ローズはレポートの束を手に立ち上がった。動き出すつもりだ。
「確かに、繋がりがある可能性は高いデス。何とかして塞がないと、フィラノスにスライムどころではないモノがあらわれてしまうかもネ」
流れでジェフリーは別行動をすると決定してしまった。『行っちゃうの?』とでも言いたそうな目で訴えるミティア。離れるのがつらいが、こればかりは危険がつきまとう。
ジェフリーはミティアの頭を撫で、気持ちを落ち着かせるようになだめた。
「ミティアより先にくたばったりしない。サキを連れて帰るから、メシの心配でもしてろよ?」
もうここまでで新婚夫婦のようだ。ミティアはしぶしぶ納得し、身を引いた。
ジェフリーも出かける支度をする。コーディに魔石を分けてもらっていた。補充をし、整えたところでショコラに確認を取った。
「ばあさん、足を引っ張るなよ?」
「のぉん……?」
とぼけた返事に気が抜けてしまいそうだ。根はしっかりしているだろうし、導きも期待している。
出発しようとしているジェフリーを止める者がもう一人いた。サキの後輩であるメルシィだ。
「あ、あぁのぉ……ウチも、何か手伝わせてほしいです!!」
大図書館を開けてもらった、部外者や無関係では済まされないだろう。メルシィに危険な仕事をさせるのはどうだろうか。
ジェフリーはメルシィに危険ではない仕事を割り振った。
「なら、みんなにうまい飯屋を紹介してほしい。ここを『まずい場所』と遮断するために塞ぐ資材もきっと必要だ。雑貨屋には難しいかもしれないが……」
「や、やります!! ウチ、何とかしますんで!!」
「いい返事だな。仕事が早い店は繁盛するぞ?」
ジェフリーは一度振り返り、手を振った。そして走って行く。
あとを追うようにミティアとローズ、そしてメルシィが離脱した。
トランクからろうそくを追加で出し、コーディは大図書館で待機を引き受けた。いまだにおとなしく、ぬいぐるみのふりをしている恵子と一緒に。
街中は街灯がまばらで規制区間もある。大きなところは閉鎖されているが、外は囲ったのでこれから徐々に落ち着きを取り戻すとは思っていた。すぐには難しいだろうが、魔導士狩りという惨劇を越えてここまで整ったのだ。
この都市はまた蘇るはず。きっと、そうだと信じたい。
魔法都市という名前にふさわしく、知識はあっても魔法を使う者がほとんどで大人でも体力がない者も多い。騎士団こそ残っているが、街の治安を守る役人がほとんど逃げてしまっている。よく考えなくとも、この街は瀕死だ。
最低でも、野生動物が防げる程度にはなってもらいたい。今までよく大丈夫だったものだ。
魔法都市というブランドと、美しい景観ばかりで慢心だったフィラノス王のせいなのだろう。きちんとした整備をしていなかったのがいけない。
作業がひと段落し、竜次が取りまとめてその場にいたギルドハンターの人たちに通達をする。
「北と西はこんなものでしょう。人数を配備して徐々に壁の補強に着手すれば、守りやすくなると思います。友人にそういった専門家がいますので後で防衛策をお願いしておきますね」
専門ではないが、沙蘭がその方針で参考にはした。あとはローズにも案をお願いしてみよう。彼女は戦術アドバイザーなのだから専門である。
一行がギルドのハンターとしての働きは知れ渡っていた。皆、よく信頼してくれるものだ。聞いて質問はあったが、納得する説明が返せたため反発はなかった。
キッドとミティアは、少し離れた場所で話がまとまるのを待っていた。彼女たちは見張りと資材の運び、誘導などを行っていた。力仕事ではなくても、こういった細かい作業は手伝える。
「キッド、手は大丈夫?」
ミティアはキッドの右手を指している。腕の方ではない。手汗で少し傷口が開いたのか、包帯に血が滲んでいる。
「あぁ、これくらい平気よ。それより、ミティアは疲れてない?」
「わたしは大丈夫。たくさん動いたから、ご飯がおいしく食べられるかもしれないね」
ミティアは、えへへと可愛らしく笑っている。昼を前にしてご飯の話をしていた。キッドが呆れていると、竜次が二人のところへ戻った。
「さて、南は別の方々が行っているので、東に向かいましょうか。まだ手つかずと言っていましたが……」
「ジェフリーとマナカさんが先に行っている場所ですよね」
ミティアが確認をすると、竜次が頷いて先導する。キッドも続いた。
フィラノスの街中はゴーストタウン状態だ。空いているお店も少なく、活気もない。
竜次は街の地図を持っていた。先ほどの人たちからどこが通行規制をされているのかを教えてもらったらしく、赤ペンで印が付いている。
自分がミティアとキッドを連れている。そして、戦うのとは別に作業などをした。竜次は日が高いことにも気が付き、二人に言う。
「お二人とも、お腹は空いていませんか? 言っても、あまりアテがないのでこちらをどうぞ」
竜次は歩きながらカバンを探り、二人に手の平サイズの大判なクッキーを渡した。
「えっ、先生どうしたんですか?」
こんなに気が利く竜次がおかしいと、キッドが少し怪訝な顔をする。ビニールを開封していただこうとしている横で、ミティアはすでにごちそうさまでしたと両頬を手で覆っていた。
しゃれた紅茶のクッキーだ。急にどうしたのだろう。
ビニールのシールを見ると、『雑貨・キャラメルシィ』と判子が押されてあった。朝方に訪れた雑貨屋で買っておいたようだ。悪くない。
街外れに足を運んだ。人も少なく、もともと空き家が多かったが、墓地や崩れた家屋も視界に入って来るものだから、警戒してしまう。
「船着き場がこの先です。なので、範囲は狭いです。隙間を埋めるくらいしか私たちにはできませんけどね……」
視界に崩れた孤児院の跡が入った。
ミティアが立ち止まって茫然としてしまう。ケーシスはサテラとどうしているのだろうか。深く考え込む前に、かぶりを振った。今はやることがある。
竜次が言っていた隙間とは孤児院のあった場所よりも奥だった。街との境目が何となくしかない。地面は乾燥していたら土埃の立ちそうな場所だ。長らく手入れがされていない。そんな場所に、柵を立てようとしているのだ。
ガラガラと荷車を引く音がした。ジェフリーとマナカが汗だくになりながら到着した。
「馬が使えないとしんどいものだな……」
「馬の気持ちがわかりましたね、ジェフ兄さん……」
息を切らせ、座り込む二人。木材と鉄材が混ざっている点から、本当に間に合わせな感じがするが、やらないよりはずっといい。
合流を果たしたが、作業をするのが自分たちしかいないことに気が付いた。気を遣う必要がないのなら、早めに終わらせてしまいたい。
竜次が積み荷からハンマーを引っ張り出した。
「よっと、働きますよ。二人はもう少し休んでていいですからね」
休みもしないで働くと言う。ジェフリーは慌てて止めに入った。
「待て待て、兄貴は怪我をしてるだろ」
「えっ、竜兄さん、怪我をしてるのですか?」
ジェフリーが余計なことを口走ったばかりに、マナカが心配の声を上げた。
「竜兄さん、せめて軽い作業にするべきですよ」
心配はミティアにも伝染した。
「わたしがいない間に怪我をしていたなんて」
竜次は空回りの元気に拍車がかかり、ハンマーを振り回している。元気だと主張しているようだ。
怪我の話になり、キッドは俯き、視線を落とした。
「あ、あの、あたしが、えっと……」
「最近、櫛を通すとかさぶたが落ちるんです。そろそろローズさんに抜糸してもらわないといけませんね!!」
キッドはもごもごと何かを言いかけている。
竜次はわざとらしく大きな声で遮った。やることを見失わないようにしている必死さが、本当にわざとらしい。そそくさと数本の資材とハンマーを持って予定地に赴く。
ミティアが慌てながら追い駆けた。
「せ、先生、わたしも手伝います!!」
休み切れていないジェフリーも重たい腰を上げた。
「……ったく、見ちゃいられない」
疲労の色が出ている。それでも怪我をしている竜次やミティアに重い仕事をさせたくはなかった。一行の様子にマナカが疑問を抱く。
「兄さんたちは、どれだけ危険な旅をしているのですか?」
「さぁな……」
大きく深呼吸をして、ジェフリーが背筋を伸ばす。おとなしくしていてほしい人ほど、動きたがるとは困ったものだ。
ジェフリーはマナカに何と戦っているのかを話しても、信じてはくれないだろうと思っていた。あまりにも現実的ではない。
「俺たちは非現実な旅をしている。少なくとも、遊んでいるわけじゃない。でなかったら、とっくに沙蘭にでも腰を下ろしているさ」
マナカが兄二人の背中を見て、複雑と化した人間関係にため息をついた。ジェフリーだけではない、竜次にも変化を感じていた。適当なことを言っているが、沙蘭に腰を下ろして落ち着こうと言う気配はない。あくまでも、たまに『帰って来る』程度なのだろう。前々から何となくはわかっていたが、マナカの中に野心が芽生えた。
ならば、落ち着いた頃にここで暮らすと言わせるほど、沙蘭をいい国にしようと。
「他国につき合っている場合ではありませんね。さっさと片づけなくては」
フィラノスが壊滅寸前であるが、頑張っている人たちがいる。
まだ、こうした人たちがいる限り、この世界は捨てたものじゃない。とマナカも腰を上げた。
作業は夕暮れを過ぎ、夜にまで及んだ。そう、夜まで作業をしていてすっかり忘れていた。
実は宿を取っていない。
「わたくしは夜行便で沙蘭へ帰って報告なので、これで失礼いたします」
忙しいはずのマナカですら、きちんと予定を立てて行動していたというのに。
資材は間に合わせだったが、立派な柵が組み上がり、街と外との境界線がはっきりとわかるようになった。飛び地が多いのが難点だったが、埋め合わせもしたのでここは完了だ。動物に荒らされることも減るだろう。もしかしたら、人が住みやすくなるかもしれない。
マナカは船着き場に軽くなった荷車を返却し、そのまま乗船すると告げた。別れになり、四人は見送った。マナカにはたびたび会うが、ゆっくりお茶の席を設けたこともない。
よく働いた。ミティアとキッドはきつめに柵を結び繋いでいたので、手が痛そうだ。
ジェフリーが次なる選択肢を用意する。
「さて、先に宿の確保か、サキたちを迎えに行くか」
気持ち的には少し休みたいところだが、ゆっくりしている時間も惜しい。
「兄貴は外面がいいから、交渉しやすいだろう? 宿を頼む。俺はサキたちを迎えに行くから……」
説明するのも面倒なのか、ジェフリーは一方的に言う。竜次の返事も待たずに、魔法学校の方角へ歩き出した。竜次はあまりにも突然なので、呆気に取られていた。
残されるのが嫌なのか、あるいは竜次とキッドに気を遣ったのだろうか。ミティアはジェフリーを追い駆けて腕に飛びついた。彼女は、ただジェフリーと一緒にいたいだけのようだ。
この街はもう外部からの侵入は少ないはず。安全だろうし、まぁいいだろう。竜次はそう思いながら街の方へ向き直る。二人の背中をじっと見ているキッドの顔を覗き込んだ。
「まねをして、腕……組みます?」
「は、はぁっ!?」
「それとも、ジェフと一緒がよかった、とか?」
「そ、それは絶対にないです!!」
漫才のようなやりとりだ。キレのある反応を見て、キッドが元気だと証明された。竜次は笑いながら言う。
「クレアにその気がないのなら安心しました。最近、ジェフとよく話をしているようでしたので、ね」
腹の内を探るような発言だ。キッドは怪訝な表情を浮かべながらため息をついた。
「先生、なんか気味が悪いですね」
竜次は顔を覗かせたまま不満を言った。
「先生って呼ばれたくないなぁ?」
「な、何ですか!? 急に……」
歩み寄ったら離れていく気持ち。難しすぎて、竜次のが距離を置いた。
「さっき、気にしていましたよね? 私が怪我をしたのはあなたのせいじゃないです。それは前にも言いましたよね? もうその件は気にしないで」
キッドは気にしないでくれと言われても、ずっと気になって仕方がなかった。いまだに自分のせいだと責任を感じている。きっと、これはずっと気にし続ける。
「気づいてしまいました。私が笑うと、あなたはなぜか悲しい顔をする。どうしてですか? 一緒に笑ってほしいのに」
「そんなのできません。あたしなんて、本当は隣に立つ資格すらなのに……」
どうもキッドの気持ちが落ちている。竜次は手を握って引いた。
「宿探し、少し遠回りもしましょうか」
手をつなぐのは抵抗しなかった。それでもキッドの表情は変わらない。少し歩いて、規制区域の手前で一件目。この宿は開いていない。
竜次は手をつないだまま、ポケットからフィラノスの地図を取り出した。
「あ、あの、先生?」
キッドの態度がよそよそしい。竜次は子どものようにむくれている。
「あぁもぉっ……寂しい呼び方をしないで!!」
明らかにむきになっている。竜次はキッドの手を引き、歩いた。三軒隣も宿らしいが、明かりはついていない。
繁華街への道が封鎖されているせいもあってあまり街灯も点いていない。道はどんどん暗くなる。
三軒目も開いていない。この先は封鎖区間のため、来た道を戻ることになった。そのときだった。暗い裏路地から「ゴトッ!!」と音がした。
「わわっ」
暗がりでの音に驚き、キッドは竜次の腕どころか、体にしがみついた。
二人の足元を黒い動物が駆け抜けた。危険に満ちた街の外なら常に警戒をしているため、こんなに驚くことはない。
キッドは涙目になりながら気を落ち着かせようとしている。実際は、簡単に落ち着きを取り戻せなかった。
「ねねね……ネズミかな? だ、大丈夫ですよ、ね?」
「ライトライト……電池が切れてるんだった。え、えっと」
竜次はカバンの中を探ろうとして身動きが取れないのに気が付いた。キッドにしがみつかれている。
「あの……」
「あぁーっ!! ご、ごめんなさい!!」
ラッキーだったのかもしれない。暗がりのラブコメ。少し乗ってみようかと悪い心が、いつも引け腰な竜次の背中を押した。
「わわわわわ……先生、離してぇ」
「先生って言うから離しません」
抱き着いて来たのだから、抱き着き返しても問題ないという解釈だ。
キッドは軽く抵抗していた。やがておとなしくなり、すすり泣いている。
さすがに泣かれるとは思わず、竜次はキッドを解放した。
「えっ、そ、そんなつもりは……」
キッドはすすり泣いたまま震えている。しかしその表情は怒っていた。
「そ、そんなつもりもない人にこういう破廉恥なことをするんですか?」
「ち、違いますって、泣かれちゃうとは思わなかったので。その、ごめんなさい」
いつもの解釈違いが始まる。どうしてこうも噛み合わないのか、勘違いの漫才みたいになってしまっている。
あまりにキッドが取り乱すため、竜次も勢いで言ってしまった。
「す、好きじゃない人に、こんなことしませんっ!!」
聞いたキッドは、大きく息を吸って泣くのをやめた。
竜次にいつもの余裕がない。ついに吐いてしまったからだ。
「ごめんなさい、忘れて……」
カバンの中から買ってあった電池を入れ替え、ペンライトを捻って明かりを点けた。本当に申し訳ないと、物悲しい表情が見える。
キッドは真面目に返事をした。
「あたし、どうやって答えたらいいのかわかんないです。頭、悪くて馬鹿なんで……」
「教養があるかないかなんて、関係ない。そこに気持ちがあるかの問題だと思います。ですが、私が行き過ぎたことをしてしまったのは謝ります。嫌でしたよね」
軽くカバンを整理し、すっかり暗くなってしまった街中をペンライトで照らす。まだ何か動物でも出て来るのかと思ったら、軒先に出て行った飼い主を待つように猫が丸くなって寝ている程度だった。
「さて、あとは噴水広場の近く、お世話になった宿くらいしかアテがないですね。繁華街は封鎖されていますし」
道を戻ろうとすると、キッドが小走りになって手をつないだ。
「どうして言ったことに責任を持てないんですか?」
「?」
「一度口から出てしまったことですよ?」
キッドは頬を赤らめながら声を震わせる。
「あ、あたしの気持ち、全然わかってくれないんですね。さっきはうれしかったです。でも、まだ『友人』でいいですか?」
悲しそうな声だ。そう簡単に気持ちを切り替えることはできない。
一般的には『残念』な返事だ。キッドの中にまだ自分はいないらしい。だが、気持ちを聞いても嫌がらなかった。それだけが救いだった。関係がこれ以上崩れない。逆に考えれば、進展するのも難しいのかもしれない。竜次は今は納得することにした。
しつこく気持ちの押しつけはしたくない。
「友人……そうですね。よき友人です」
竜次は笑って凌いだ。だが、『責任』とは何だろうかと考え込んでいた。キッドが出す宿題はいつも難しい。いつまでも先回りができない。『二回目の恋愛』の難しさを身に染みている。
ジェフリーとミティアは、フィラノスの大図書館へ向かっていた。
本来なら、街中でも警戒するべきだろう。だが、今のジェフリーには警戒するよりも気になっていることがあった。
「ねぇ、ジェフリー? わざと、だよね?」
左腕にしっとりと暖かい肌と体温、ほんのりと柔らかい胸を受けて、返事が上の空になってしまう。
ジェフリーはミティアに密着されていた。これではまるで、『本当の恋人』のようだ。
「聞いてる?」
ミティアにグイッと腕を引っ張られ、ようやくジェフリーは視線を向ける。
「ん? どうかしたのか?」
ジェフリーの反応を見て、ミティアは脱力した。話を聞いていなかったのかと頬を膨らませている。
「わたし、朝通ったときにやっていたの、見てたよ。二人にわざと遠いお使いさせたんでしょって話してるのに!」
「あぁ、宿の話か。よくわかったな?」
やっと話が通じ、ミティアの反応はうれしそうだ。
普通の若者のデートのようだ。ミティアとなら、さぞ楽しいだろう。だがそれは、何も縛られるものがなかったらの話だ。ジェフリーはぼんやりと『普通』とは何かを考えていた。きっとこれは考え込むと、哲学的なものになるからだ。
ミティアは世間話をするように自然に話す。
「キッドは先生が嫌いなのかな?」
しっかり親友の心配をしている。ミティアも二人が気になるようだ。その点ならジェフリーも気になっていた。
「嫌い……までは行かないだろうけど、キッドはまだミティアの兄貴が好きなんじゃないか?」
ジェフリーは沙蘭での出来事を思い出す。一緒に話をしてわかったのは、必死で振り切ろうとしていた。前を向こうと、嫌なことは忘れようとしていた。キッドらしくないほど、過去を引きずっている。竜次の相談だってされた。
ミティアは自分のことのようにキッドの心配をしていた。
「兄さん……そうだよね。すごく仲がよかったもん」
「どれくらいだったんだ?」
「んー……お泊りするくらい、かな?」
何の抵抗もなく、ミティアの口から『お泊り』と吐かれた。ジェフリーは察した。これは、思っていたより厄介だ。
「あー…………」
簡単に忘れ、断ち切れるはずがない。つまりは『男女の仲』だ。
ミティアはその意味を理解しているのだろうか。今度はジェフリーの心配をする。
「どうしたの? どこか痛い?」
ジェフリーは意識しないうちに、つながれていない手で顔を覆っていた。これでは本当にどこか具合が悪い人だ。
「いや、どこか痛いわけじゃない。何と言うか、男女関係のこじれって面倒だと思った……」
聞いてミティアがぴたりと足を止めた。何も言わず、訴える目を向ける。
殺気にも似たその気配、ジェフリーは激しく首を振った。
「違う、ミティアが面倒ってわけじゃない!!」
このしょげた子犬のような可愛らしさは、どうやったらできるのか。世の中の女性には悪いが、今のジェフリーにはミティアが世界一、可愛く見えて仕方がない。
「だから、そういう顔をしないでくれ」
「むーっ……」
魔法学校の方角へ歩みを再開する。
歩けば話題も変わる。ジェフリーはそう思っていた。だが、そんな考えはミティアには通用しなかった。
「ジェフリーもわたしと『お泊り』する?」
予想しなかったミティアの言葉に、ジェフリーは手をつないだままずっこけそうになった。
天然なのか、狙っているのか、本当にこういうところが読めない。誰もがミティアの発言に翻弄されるだろう。
「あのなぁ……」
「一緒のお布団で一晩中お話してみたいね!」
本当に無邪気なものだ。そんなことをしたら、間違いなく理性が崩壊する。ジェフリーは想像しただけで顔が真っ赤になった。大袈裟なほど首を横に振る。話は完全にミティアのペースだ。
「一晩中話すのは賛成だが、別に布団でする必要はないだろ」
「寒くない? 温め合おうとか、抱きたいとか思わない?」
ミティアの身体的な負担を考えたら、望ましくはない。迂闊に変なことはしたくない。少しでも、一日でも長く彼女が生きていられるなら、そんな行為は望まない。
「いつか、俺がちゃんとした『大人』になれたら、だな……」
口約束だ。旅の道中ではしない。保証はないが。
意味深な発言に、ミティアは再び足を止めた。
「おと、な……? 今は子どもって言いたいの? わ、わたしは大人だよ!」
言葉だけではなく、目でも訴えている。
いくら言い寄られても、これだけは譲れない正義だ。ジェフリーは真剣なまなざしを向ける。
「前にも言ったが、今の俺に将来性はない。将来、自分のやりたいことも定まっていない。そんな俺が、無責任なことをしてもミティアが悲しむ。死ぬかもしれないって命のやり取りが多くなったせいか、焦っているのか?」
「わたしは、自分に魅力がないのかと思った」
恋人同士らしいぶつかり合いだ。こういった問題を解決し、乗り越えて関係を築く。面倒な行いだ。お互いを想い合っているからこその問題。お互いの譲れないものだ。人によってはこの関係を築くのを嫌になるかもしれない。
自分の利点を考える思想だったジェフリーは、半分だけの事実を言った。もう半分は、その思想に沿う形で、自分で稼ぎがなくては社会的に困るからという理由だ。心苦しいが、それだけ真剣に考えている。その時間がミティアに不安を与えてしまった。
「ミティアは魅力的だと思う。あんまり言わせないでくれ。俺も恥ずかしい……」
ジェフリーは顔から火が出そうになった。気持ちを言葉にあらわすのは簡単なようで難しい。
ミティアは違う不安も抱えているようだ。どうせなら勢いついでに解決させてしまいたい。
「まだ何かあるのか?」
「……」
ミティアは俯き、腕を抱え込んだ。言えない悩みでもあるのだろうか。ジェフリーは話してくれない理由が、社会的に地盤の整わない自分にあると思った。
「すまないと思ってる」
「ど、どうして?」
「俺がしっかりした人間じゃないから、こうやって不安にさせるんだろうな」
「ち、違うよ!!」
ミティアはむきになり否定した。声に力が入り、明らかに様子がおかしい。話したいことがある。だが勇気がないといったところか。ジェフリーはもどかしい気持ちを抑え、今は落ち着かせようと手を握った。
その頃合いで揺れを感じた。
ドスンと大きな音がした。そのあと、地鳴りに似た不気味な音がする。地下で何かが動いたような不自然な音だ。二人が立っている足元でも感じた。
ミティアは地面を見て、この道がフィラノスの魔法学校に続いているのを確認した。
「もしかして、学校かな?」
「まさか……」
二人は小走りになりながら周囲を気にしていた。妙な音がしたのだから、街に変化があってもおかしくはない。しかし、あたりは暗い。魔法学校も大図書館も閉鎖されている話は聞いていた。街灯を期待していたのにまばらだった。
魔法学校に到着した。立派な地下への階段も見えるが明かりはない。
封鎖されているはずの大図書館からかすかに明かりが漏れている。ベロア調の分厚いカーテンからふわふわと揺れていた。
硝子扉に耳を当て、ミティアは言う。
「誰かいるみたいだね?」
「あぁ、サキたちだろうけど……」
まだ中で探索中だろうか。もしくは出られなくなっている可能性もある。
ミティアが馬鹿正直にノックをした。だがこれが正解だったようだ。
分厚いカーテンが大きく揺れ、メルシィが顔を見せた。バンバンとガラス扉を叩く。慌てているようだ。激しく首を横に振って、完全に取り乱している。
「まずい状況らしいな」
大図書館は大きな硝子扉だ。しかも硝子は分厚い。剣や体当たりなどでは壊せないだろう。ならばと、ジェフリーは扉から離れ、ポーチから本と黄色い魔石を取り出した。
「こういう手荒なことはしたくないけどな……」
「えっ、何するの?」
「ミティアは下がってないと、硝子で怪我をするぞ」
硝子越しのメルシィにも下がれとサインをする。ミティアも下がってジェフリーの動向をうかがった。
ジェフリーは懐から簡易魔導書を取り出し、ぱらぱらと本を適当にめくって指を挟んだ。入り口の光で何となくの文字は読める。
ここが真っ暗ではなくてよかった。本を見ながら詠唱し、精神を集中させる。
「走り抜ける稲妻の如く……ライトニングキャノンッ!!」
ジェフリーは黄色い魔石を前に弾いた。
走る稲妻、大砲から放たれたように強く勢いのある魔法だ。分厚い硝子の扉を数枚ぶち破った。破片が大きく散り、向こう側へ抜けられるようになった。
ミティアは足元に黒く焦げた金属を確認した。扉の枠か、カーテンレールの一部だろう。ものすごい破壊力に息を飲んだ。
「わっ、ジェフリーすごいね……」
そのすごさは、砕けた硝子の量でわかる。三センチから五センチくらいだろうか、強化硝子らしく、粉々にはなっていないが、ブロック状の破片が散っている。
これは修理が大変だろうが、今は緊急事態だ。仕方ないと、都合よく解釈する。
ジェフリーたちが駆けつけたことにより、メルシィは緊急性を訴える。
「あ、あの、たす、けて……先輩が、先輩が大変なんです!!」
ジェフリーは残って引っかけそうな硝子を剣で押し抜けた。大図書館の中に入る。メルシィが慌てているがどうしたのだろうか。
さらに中に入ると、ローズとコーディが茫然と立ち尽くしている。
「どうした?」
ジェフリーは先に確認した。床に大穴が開いている。床が抜けたと考えていいのかもしれない。
ミティアも駆けつけて口を覆った。
「な、何が……まさか、さっきの大きな地鳴りみたいなのって、もしかして!」
ジェフリーがコーディのろうそくを頼りに周囲を見渡す。わざわざランタンを持っていないところを見ると、いろいろとあったのだろう。ローズもコーディも服が汚れている。そしてサキの姿がない。
「サキはどうした? 一緒じゃないのか?!」
ジェフリーは説明を求めた。だが、コーディもローズもアイサインをおくりながら、どう説明したものかと困っている様子だ。
代わりに説明をしようと飛び出したのは使い魔たちだ。圭馬の訴えが具体的だった。
「ジェフリーお兄ちゃん!! 大変だ、あの子が突然開いた大穴に落っこちたんだよ!!」
「大穴って、まさか、これじゃないだろうな」
「そのまさかだよ。突然だったんだ。ホントにもう帰ろうってときだったんだ!!」
聞いたジェフリーは、茫然としているローズとコーディに理解を示した。自分が地鳴りを聞いてからさほど時間は経っていない。本当に何が起こったのかわからないのだろう。そこへ乱暴な形でジェフリーたちが駆けつけた。突然の出来事を目の前にし、急に説明を求められても無理な話だ。
ショコラもジェフリーに助けを求めた。
「お願いですのぉ、主を助けてくださいぃ!!」
ローズがレポート用紙の束を持ったまま、床にぺたりと座り込んだ。ショックのようだ。
コーディも表情を強張らせている。
「サキお兄ちゃんが、せっかく……たくさんの情報を探してくれたのに」
ジェフリーがこの場の誰かが答えないかと問う。
「何かに襲われたのか? 何が起きたのかさっぱりなんだが?!」
メルシィが言葉を詰まらせながら説明し出した。
「その……入ってから変なのに遭遇して。でもそれは、それは皆さんが撃破しました。奥の貴重な書物のあるフロアで情報収集をしたんです。情報の収集自体は問題ありませんでした。でも、ここまで戻ってきたときに、急に激しい揺れが起こって。先輩の明かりがいきなり消えたと思ったら……」
部屋が荒れていると思ったが、何かと戦ったようだ。鉄の扉が曲がっている。正面からは入れなかった。と、すれば裏口から出るつもりだったのだろう。ジェフリーはメルシィの説明と部屋を見て状況を把握した。
ぽっかりと空いた穴に向かって呼びかける。
「サキッ!!」
予想はしていたが返事はない。完全に落ちてしまったのだろう。穴の形状は不規則ではあるが大柄の人でもすっぽり入ってしまう大きさだ。何らかのキッカケで床が抜けてしまったと見ていいだろう。本棚があるわけでもなく、むしろ何もない空間だった。カーペットが破れ、床板もコンクリも巻き込んで抜けている。
かなり深そうだが、絶対的に明かりが足りていない。
ミティアが嫌な予感を口にした。
「サキ、大丈夫かな? 大怪我をしていたら……」
圭馬がその予感の先を説明した。
「死んでないよ。死んでたらボクたちの契約は強制解除される。ババァはまだしも、ボクは魔界強制送還か、幻獣の森から出られないほど、弱っちゃうと思う」
とりあえずそれを聞いて安心した。問題はこれからだ。
ジェフリーは、この中でもっとも詳しそうなメルシィに向けて質問をする。
「床が抜けたなら、この下には何があるんだ? 魔法学校の地下じゃないだろう?」
「わ、わかりません。ただ、大図書館はフィラノス城の地下に通じているって聞いたことがあります。でも、一般の人はお城に入れないし、本当かどうか、わからないです」
ジェフリーの中で、ある疑惑が持ち上がった。マナカから亡くなった王の側近が地下牢に監禁されたと聞いたのを思い出したからだ。
もう少し推理が必要だ。ジェフリーは別の質問をする。
「その、変なのが出たって、何が出たんだ?」
この質問にはローズが答えた。
「変異した人食いスライムデス。普通ならありえない大きさでしたネ」
ジェフリーは考え込んだ。この役割はいつもならサキがやってくれるはずだ。立ち回りが難しい。
「人じゃないもの……モンスター化した人工的な生き物が出て来たのなら……」
ミティアがジェフリーの袖を掴んだ。
「ねぇ、もしかして、つながっているんじゃないかな?」
「つながってるって何がだ?」
「わたし、シフって人にフィラノスの近くの種の研究所に連れて来られたの。確か、ケーシスさんが言ってた。簡単に出られる場所じゃないからって、風の魔法で外に出たから正確な位置はわからないけど」
嫌な憶測だが、その線は正解かもしれない。ジェフリーは情報の整理を進める。
「セティ王女は凍てつく地下牢で発見された。ミイラの状態で。なぜそこまで明白な情報が残っているか。わざわざミイラってわかる状態のよさだ。持ち出さずに、そこに研究所を作った方がいいだろう。外に持ち出すリスクも考えて。王女はそれほどの価値があったら、研究者ならどうする?」
ローズは身震いをした。学者の視点で考えると、発言が怖い。
「確かに……持ち出すと痛んでしまいますネ。研究所が赴く方がより質がいいデス」
ローズの考えが決め手になった。
大図書館と城はつながっている。さらに、種の研究所ともつながっている可能性がある。それだけ改造を繰り返していたら、多少の衝撃で崩落を招いてもおかしくはない。
むしろ、今までどこも崩れず、よく問題にならなかったものだ。
ミティアがまた嫌な予感を口にした。
「じゃあ、亡くなった王様の側近って、これももしかして……」
「始末された……そう考えていいかもしれないな」
ジェフリーも言っていてため息をついた。
「いくら外から防いでも、中から燻ぶっているのか。よく大図書館だけで済んだな」
可能性は見えた。城の地下か、種の研究所のどちらかにサキはまだいる。点と点をつなぎ、線にした推測だ。これがどこまで通用するだろうか。
ジェフリーは嫌な予感を胸に、とある決断をする。
「よし、俺が城に忍び込む。帰りは何とかする」
「わ、わたしも……」
「いや、誰もついて来なくていい」
ミティアとコーディが話に乗ろうとした。だが、ジェフリーはこれを拒否した。
「その代わり、ここをお願いしたい。ミティアと博士は兄貴たちに知らせて城や研究所とつながりがありそうな場所を埋めてほしい。この抜けた床も含めてだ。コーディは、揃うまでここから何か出て来ないか見張りを頼む」
ジェフリーは役割と指示を出した。だが、どうも納得がいかないようだ。特にミティアが。
「一人で行くなんて、無茶だよ」
「こういうのは大人数でやるものじゃない。万が一、兵士や使いの者に遭遇してまともにやり合えるのは俺か兄貴だが、兄貴はメンツがあるからな。俺なら都合がいい」
「で、でも……」
ミティアはしつこく心配をする。いくら仲間のためでも、危険な場所だと予想がされる。そんな場所に一人で行かせるのは気が進まない。
「のぉん、では、わしが一緒に行こうかのぉ?」
鯖トラのネコ、ショコラが名乗りを上げた。
圭馬はどうやら足手まといになる自覚があるようだ。
「確かにボクだと体が大きいし、白いウサギだから目立つんだよね。ババァは幻影魔術士だから、魔法で補助してくれるかもしれないよ。人間がついて行くよりは安全じゃないかな。つか、適任じゃない?」
筋の通ったきちんとした理由だ。
ローズはレポートの束を手に立ち上がった。動き出すつもりだ。
「確かに、繋がりがある可能性は高いデス。何とかして塞がないと、フィラノスにスライムどころではないモノがあらわれてしまうかもネ」
流れでジェフリーは別行動をすると決定してしまった。『行っちゃうの?』とでも言いたそうな目で訴えるミティア。離れるのがつらいが、こればかりは危険がつきまとう。
ジェフリーはミティアの頭を撫で、気持ちを落ち着かせるようになだめた。
「ミティアより先にくたばったりしない。サキを連れて帰るから、メシの心配でもしてろよ?」
もうここまでで新婚夫婦のようだ。ミティアはしぶしぶ納得し、身を引いた。
ジェフリーも出かける支度をする。コーディに魔石を分けてもらっていた。補充をし、整えたところでショコラに確認を取った。
「ばあさん、足を引っ張るなよ?」
「のぉん……?」
とぼけた返事に気が抜けてしまいそうだ。根はしっかりしているだろうし、導きも期待している。
出発しようとしているジェフリーを止める者がもう一人いた。サキの後輩であるメルシィだ。
「あ、あぁのぉ……ウチも、何か手伝わせてほしいです!!」
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ジェフリーはメルシィに危険ではない仕事を割り振った。
「なら、みんなにうまい飯屋を紹介してほしい。ここを『まずい場所』と遮断するために塞ぐ資材もきっと必要だ。雑貨屋には難しいかもしれないが……」
「や、やります!! ウチ、何とかしますんで!!」
「いい返事だな。仕事が早い店は繁盛するぞ?」
ジェフリーは一度振り返り、手を振った。そして走って行く。
あとを追うようにミティアとローズ、そしてメルシィが離脱した。
トランクからろうそくを追加で出し、コーディは大図書館で待機を引き受けた。いまだにおとなしく、ぬいぐるみのふりをしている恵子と一緒に。
街中は街灯がまばらで規制区間もある。大きなところは閉鎖されているが、外は囲ったのでこれから徐々に落ち着きを取り戻すとは思っていた。すぐには難しいだろうが、魔導士狩りという惨劇を越えてここまで整ったのだ。
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