トレジャーキッズ ~委ねしもの~

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ

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【2‐2】見えない壁

君だけの魔法

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 魔法都市フィラノス。暗がりの通りを抜け、開けた道に出た。水の音がする。噴水広場が近い。ローズとミティアは噴水広場の近くの宿へ向かっていた。
 ローズはともかくとして、ミティアはずいぶんとこの街に慣れたものだ。ミティアの方が道に詳しかった。
「待て!」
 男性の声に呼び止められた。吹き抜けるような風と黒い影、金属の音か、鈴だろうか。何となくの想像はついたが、二人は足を止めた。ミティアは柄に手をかけた。
「悪くない反応だが、貴女に勝機があるとは思えんな」
 二人の前に影が降り立つ。街灯が少ないせいで、把握に時間を要した。
 黒いマントに銀色の髪、右の腰には刀が二本、クディフだ。ミティアは警戒を解いた。
 少ない街灯で見えた範囲だが、怪我をしている。黒いマントも土埃が見受けられた。それでもクディフは涼しい顔をしていた。
「クディフさん?」
 クディフは右手に茶色い巾着を摘まんで差し出した。その人差し指に大きくぱっくりと深い切り傷が見える。何の怪我だろうか。
 戸惑いながらミティアは受け取って中を開けた。
 街灯の微かな明かりでもわかるほど、黄金にきらめく細かい粉が入っていた。
 ミティアはこの粉が何なのか、理解していた。クディフは驚くミティアを前に言う。
「あの魔導士が調べていた『腕輪』の材料だそうだ」
 船で詳しく聞いた覚えがある。サキがスプリングフォレストに挑んだ理由はこれを探すためだ。
 クディフはたった一人で沙蘭からスプリングフォレストを抜け、ここまで来たようだ。服装の汚れ、細かい怪我の理由がわかって、ミティアが目を潤ませる。
「あり……がとう……」
「一度は殺そうとした相手に向かって涙を流せるとは、よほど心が広いらしいな」
「そんなこと言うなら、クディフさんだってわたしを助けようとしています」
 クディフが皮肉を言う。だがミティアには真っすぐな言葉しか響かない。
 気が落ちるより前に、クディフが質問を投げた。
「その様子だと、ただごとではないようだな?」
「ぁ……」
 クディフは思い詰めたミティアの表情から、何かを察したようだ。うまく説明できない様子のミティアを尻目に、ローズに声をかけた。
「あの魔導士はどうした? 見れば別行動のようだが」
 何度も会っているのに、まともに話した記憶がない父親に、話しかけられる気持ちは複雑だった。だが、今は個人的な感傷に浸っている場合ではない。ローズは断片的だが説明をする。
「突然フィラノスの大図書館の床が崩れて、地下深くに落ちてしまったものかと……」
 それだけしか聞いていないのに、クディフは眉をひそめた。
「この地下には一番大きな種の研究所がある。知っているのかと思ったが、その顔は知らないらしいな?」
 話が通じた。ローズが渋りながら頷いて答える。
「お城にも通じているのではないかと、その……ジェフ君が……」
「遂に傲慢で欲深いフィラノス王がしていた悪行を暴いたと?」
「何でも知っているデスネ」
 多くは語れない。クディフとの会話にまだ抵抗も違和感もある。ましてや秘密主義のアリューン神族の血が濃いクディフなら、話さないというのも理解できる。ローズは実の父親との距離を感じていた。近くなることがないのはなぜだろうか。旅の目的と葛藤で板挟みになる。
 ミティアはポーチの中から可愛らしい柄の入った絆創膏を取り出した。クディフの人差し指に巻いている。
 クディフは向けられた優しさに思わず目を細めていた。
「きつかったらごめんなさい。本当は魔法で傷を浅くできたらよかったんだけど……」
「いや、礼を言う。懐かしいな。シャーリーによくこうされては叱られたものだ」
 クディフの口から亡くなっている母親の名前を聞き、ローズは耳を疑った。家族の話をしたい衝動を抑え込む。どうしても今は優先順位が違うからだ。
 そんなローズの気持ちをクディフは知らない。わざと避けているようにも思える。
 クディフはミティアに訊ねた。
「城と言ったな?」
「え、もしかして、手を貸してくれるんですか?」
 ミティアは目を見開いた。その拍子にほろりと涙が落ち、慌てて擦っている。
 クディフは鼻で笑った。
「あの男には、いくらでも恩を売りつけて損はない」
 嘲笑だろうか、うれしさを感じる微妙な笑み。どう解釈していいのかわからないが、悪い意味ではなさそうだ。しかも『あの男』、ジェフリーに対していい印象を抱いているようだ。
 クディフは見た覚えのない優しい笑みを浮かべながら、夜闇に消えて行った。
 ミティアとローズの頭上で風が走る。民家の屋根の瓦がカランと鳴った。人目を避けるように屋根に上がったようだ。
 茶色い巾着袋を握りながら、ミティアは去って行った方に目を向けた。
「クディフさん、本当はすごく優しくていい人なんですね……」
 ローズは複雑な表情を浮かべている。母親を看取りもしなかったのに、亡くなってから一度も会うことはなかったのに。なぜ、どうして、母親の話をあんなにうれしそうにしたのだろうか。クディフと話したいことがたくさんある。もっと話したい。また会ったときに進展するだろうか。少しだが、希望が持てた。

 
 立派な生け垣に囲まれた、レンガ造りのフィラノス城。植木は手入れがされ、花壇には何かの模様を描かせているように規則正しく花が植えられている。
 真面目に正面からとは思っていなかったが、こういったときはどうして正面が手薄なのだろうか。竜次と違って顔が広くはないが、捕まって時間を無駄にしたくはない。
 生け垣の影に身を潜めながら見張りの位置と様子をうかがう。ショコラは足元に寄ってすりすりと靴を擦った。
「ん、ばあさん、どうした?」
「お任せくださいのぉん……」
「任せるって、何を?」
 ショコラは答える前に、とことこと駆け出して行った。立派な甲冑を身に着けた見張りの者たちに見つかるように、わざと声を上げている。
「のぉん! のぉーーーーん!!」
 何も知らない人が見たら、鯖トラ柄の人懐っこい猫が相手をしてくれとちょこんと座っているのだ。尻尾をふわふわさせ、見張りの人を誘惑する。
 見張りの兵士たちは、興味を持ってくれているみたいだ。
「にゃあん!!」
 これでも屈しないため、ゴロ寝が開始された。ピンク色の肉球がチラリと見える。
「お、可愛いな」
「どこの子だろう?」
「おいで、おいで……」
 信じられないが、下手な女の色仕掛けよりも効果がある。次第に人が集まり、一気に見張りがいなくなった。
「ばあさん、マジかよ……すごいな」
 少なくともウサギにはできない。猫だからこそできた手だ。圭馬が言っていた、幻影魔術の話はどうでもよくなった。
 ジェフリーは細心の注意を払いながら、城内へ侵入した。楽に突破できてしまった時点で、すでに信じられない。
 眩しいシャンデリアはもちろんマイナス要素だが、天井は高くて障害物もなく、あまり身を潜める場所がない。
 スパイ映画やそういったゲームなら、何かに扮して誤魔化すのかもしれないが、そういった道具も技術もジェフリーにはなかった。沙蘭の『忍者』という古い武術を思い出したが、そんなに身軽ではないし、現実から逸脱した話は忘れよう。
 ないものをねだっても、先へ進むしかないのだ。
 ジェフリーが持っているのは、学校で習った隠密行動の基礎知識くらいだ。物陰に隠れる方法と、足音を立てない歩き方や走り方を生かすしかない。
 当然ながら、城に詳しい者など仲間内にいるはずもなかった。頑張って探せば、騎士団に剣術学校の顔見知りくらいはいるかもしれない。だが、城に配属された者は重装備で顔がわからない。立派な甲冑やマントを身につけているが、戦場に赴かない城で、本当にその格好は必要なのかと前々から疑問に思っている。
 たびたび思っているが、いくら知識や技術を身につけても、本当に生かせる者など一握りに過ぎない。いざというときに、甲冑や鎧が重くて動けないのが想像できる。
 城の中はまるで迷路だ。同じような廊下、階段、扉、むやみに走り回っても全然辿り着けそうにない。城内にいる人の動き方を頼りにする。
 見張りがいる場所はよくない場所だ。向かいたいのは地下。ならば、探すのは一階に絞られる。いっそ捕まる手もあった。だが、それでは城の中を探れないし、身動きが取れないまま何をされるかわからない。それにより、サキを探し出すのは無理に等しくなる。サキは地下に落ちた。城の者に捕まったわけではない。
 兵士の他に家政婦らしき者がバタバタと配膳の準備をしている。ジェフリーは注意を払わないといけない対象の多さにため息が出た。
 あまりにも神経を使い、壁に寄り掛かって天井を仰ぐ。
「きゃあ!!」
「くせものよっ!!」
 派手な化粧、胸の開いた丈の短いドレスを身に纏った女性二人に声を上げられた。誰かが呼んだ『遊女』だろう。品のなさが見受けられた。だが、問題はそこではない。
「マズったな……」
 まさか女性に見つかるとは思いもしなかった。あっという間に城中に声が走る。
 おそらくジェフリーが貴族のような格好もせず、人相も悪いことから『くせもの』と判断されたのだろう。
 いったんここを離れようとすると、頭上を影が走った。ジェフリーに目の前に、銀髪黒マントのクディフが着地する。
 あまりにも絶妙なタイミングなのだが、どういう意図かはクディフから語られた。
「この城は広い。騒がれない限りはわからなかったであろう」
 城の構造を知っている人はいないと思っていたが、クディフが該当する。ジェフリーが話す前に、クディフは振り返った。
「城の造りはそう簡単に変わるものではない。戻って突き当りを左に進め。変わっていなければ、階段の脇に不自然な扉があるはずだ。凍っているかもしれぬがな……」
「なっ……」
「無駄口を叩く元気は温存しておくがいい」
 クディフはそれだけ言うと、右手で黒いマントを翻した。人差し指に可愛らしい柄の入った絆創膏が見える。汚れていないところ、まだ真新しい。仲間の中で、そんな処置をしそうな人を考える。浮かんだのがミティアだ。ならば、彼は嘘を言っていない。
 ジェフリーはここで多くの言葉を交わす必要はないと感じた。
「恩に着る!!」
「あまり青臭いと余計なものを斬ってしまいかねない。さっさと行け」
 いちいち人を逆撫でするような物言いも、慣れてしまった。ジェフリーは言われたように道を戻るよう走り抜けた。
 顔を見られても痛くも痒くも思わないクディフは、涼しい顔で腕を組んでいる。彼の目の前には鎧を身に纏った兵士が、わらわらと集まってむさ苦しい状態になっている。
 誰もクディフの顔を知っている者はいない。彼は古の存在だ。
 兵長か隊長か、少しは威厳のありそうな兵がクディフに問う。
「城に忍び込むとは何奴だ!!」
 何奴と言われて、名乗る者など腕に自信のある怪盗か泥棒だろう。もしくは、勘違いをしている系統の勇者を気取った者か。クディフはその質問には答えない。
 答えずにいると、今度は武器を向けられた。剣、槍、さすがに屋内で弓を構える者はいなかったが、相手になるとは思えない。
「む、無駄な抵抗はやめろ」
 お決まりのセリフにクディフは呆れている。かつて、他の種族の小隊を一人で殲滅した経験があるが、それほどではないだろう。
「大人しく投降するんだ、さもないと……」
 投降を求められ、クディフの眉がぴくりと動いた。
「さもないと?」
「か、かかれーっ!!」
 まだ質問の段階だったが、総攻撃が開始された。押し寄せる兵の波、クディフは浅く息をついて左手で鈴のついた剣の柄に触れる。
「力なき者にふさわしい相手をしよう……」
 鈴の剣を鞘から引き抜くと、刃がない。クディフは数歩下がって構えた。
 刃のない剣を見て、兵士が嘲笑う。
「馬鹿め。トチ狂ったか!!」
 クディフはいつになく笑う。楽しそうだ。
「馬鹿には見えぬのだ。己の無力さを知れ」
 鈴がちりんちりんと心地良い音色を奏でる。

 いつになく大きなその音色は、遠くなったジェフリーの耳にも届いた。

 ジェフリーはクディフが言っていた階段と扉を見つけた。不自然な扉とは、ほぼ真四角の小さい扉だった。造りの込んだ家なら、物置や小さい倉庫にするのだろうが、城にこんな造りはいらないはずだ。
 扉の隙間から冷気を感じる。冷凍室かと疑う冷たい空気だ。
 クディフは『凍っているかもしれない』とは言っていた。だが、この様子は間違いなく凍っている。
 ジェフリーは扉を調べ、動かそうと試みる。力自慢ではないが、ジェフリーでも扉はびくともしない。手に困っていると、ショコラの声がした。
「ジェフリーさぁん……!! やっと見つけましたのぉん」
 正面で見張りを誘惑していた鯖トラ猫のショコラがやっと駆けつけた。
「ばあさん、よく居場所がわかったな……」
「すりすりして、ニオイつけしましたのでぇ」
 聞いたジェフリーは呆れてしまった。猫ではなく犬ではないか。靴にすり寄っていたのはそのせいだったのかと納得した。実際には何か、特別な術を引っ付けた可能性もあるが。
「ここらしいんだが、押しても引いても開かないんだ。何とかならないか?」
 取っ手はあるが、ノブのように立派ではない。そんなに立派ではなく、あまり手入れもなっていないようだ。木製で厚手のようだが、凍るのだろうかと、ショコラは観察している。
 ジェフリーは蹴り飛ばしたり剣の鞘で扉の端を小突いたりと試す。それでも動く様子はない。
「いっそ魔法で……」
「ジェフリーさぁん、これ、横にスライドしませんのぉん?」
「えっ?」
 ショコラに言われ、ジェフリーは思わず腑抜けた声を出してしまった。スライドはまだ試していない。何を根拠に言うのかと思い、扉を調べ直した。
 立て付けが悪いがぐらついている。ガタガタと動きはする。扉自体は小さいが重たく作られている。確かに横になら動くかもしれない。
 ジェフリーは脇に足を引っ掛けて踏ん張りをつける。
「あぁーっ、くっそーっ!!」
 力いっぱいに引いたせいで、頭に血が上って変な汗をかいた。扉は重たい音を立て、かろうじて人が一人通れるくらいに開いた。ところが今度は、スライドドア特有の戻る力が働いて、腕や肩の関節が外れてしまいそうだ。
「くそっ、ばあさん先に入れ!!」
 合図でショコラが先に入った。それを確認し、ジェフリーも潜り込む形に入った。
 当然ながら中は真っ暗だ。何も持っていない。そしてすごく寒い。
 とりあえず何も襲ってこないうちに視界の確保を試みたい。ジェフリーはショコラを頼った。
「ばあさん、サキがよく使っている、くるくるした明かりの魔法を教えてくれないか?」
「フェアリーライトですのぉん? 持続魔法なので、ジリジリと魔力が削られて行きますよぉ?」
「はぁっ? あいつはそんな魔法を日常的に使っていたのか?」
 暗闇の中でつく溜め息は格別に虚しい。
「今は身動きも取れないんだ。頼む……」
 あまりの寒さに魔法どころではなくなる前に何とかしたい。せめて最低限でも。
 ショコラに続いて詠唱するも、一度目は失敗した。邪念が多い。サキはよくポンポンと魔法を連発できるものだ。一見簡単そうに見えるが、彼は覚えた魔法をほとんど何も見ないで唱えられる。これがどれだけすごいことか。ジェフリーは心からサキを尊敬した。
「こんなもんか?」
 ジェフリーがフェアリーライトに成功したのは三回目だった。
 集中力が切れそうになると、消えそうになる。持続させることが難しい。
「あいつの頭はどうなってるんだ……」
「主は特別だと思いますよぉ?」
 ショコラは言いながらジェフリーのジャケットに潜り込んだ。寒いのかもしれないが猫は暖かい。追い出そうとしたが、ここは寒いのだ。まぁいいだろうとジェフリーはこのままにした。吐く息が白かった。
 さっそく明かりを泳がせ、まず閉じてしまった扉を調べる。
 扉のこちら側には取っ手がない。扉を囲うように周りが隙間なく閉じ込んである。次いでスライドが戻る仕組みを見て絶句した。
 太いバネが見える。筋肉を鍛えるエキスパンダーなんてものの比じゃない。
「片道切符ってわけか。帰りはサキに頼るしかないな……」
「よろしくないモノをしまい込むのですよぉ? それは厳重ですかとぉ」
「逆に言うと、ここからは城の方へは変なものが出て行かないだろうな」
 再びライトを泳がせると、足元に白いものが見えた。ゆっくりと動かして行くと、白く細長いものが散らばっている。
「じ、ジェフリーさぁん……」
 ショコラが変な声を上げるのも無理はない。さらに先に顎の骨格と綺麗に並んだ歯が見えた。おそらく人骨だ。ここに閉じ込められた人の。
「誰も連れて来なくてよかった……」
「嫌な物見てしまいましたのぉん……」
 ジェフリーは懐のショコラを撫でて宥める。抱えながら、伸びている階段を下った。ここから冷気が上がって来ているようだ。それにしても、この冷気の正体は何だろうか。


 サキはうつ伏せで目が覚めた。帽子がずれ落ちる。起き上がろうと息を吸う。黴臭い空気で喉が詰まりそうになった。
 落ちた際、咄嗟に風の魔法を放った。少しだが、体を浮かせるフローで衝撃は軽減できたが思いっきりカバンを踏みつけてしまった。
 四肢は動くが腰が軽い。どうやら落ちたのはカバンが先で、あとから踏みつけてしまったのだった。
 いつもの心許ない光だが、フェアリーライトを放った。
 下は土だ。顔を擦ったら砂が落ちた。怪我はしていない。やけに空気は悪いが。
 そして一人らしい。やかましく喋る圭馬や、マイペースなショコラの姿もない。
 帽子を被り直し、近くに見えたカバンを拾い上げる。中を見るが、魔石がいくつか砕けてしまっている。最もショックだったのは、長い間お世話になった杖を閉じ込めた武器召喚のガラス玉が割れてしまったことだ。
「はー……そっか……」
 ここがどこなのかは定かではないが、もし出たいのであれば残った魔石と自分を媒体にして進まなくてはいけない。
 カバンを腰に下げ直し、座り込んで大きくため息をついた。
 身の周辺だけ確認して手を振ってフェアリーライトを消し、膝を抱え込んだ。サキは暗闇の中で状況を考え込んだ。
「僕はこのまま死んじゃうのかな……」
 押し寄せる孤独と恐怖。幸い、フィラノスの大図書館でいい情報が得られた。それは自分ではなく、ローズが持っている。最悪、自分がいなくてもこの先はいい方にしか転ばない。
 名前に縛られ、拾った親の暴力に怯えていた日々を抜け出していろんなことがあった。もともとは、ミティアと出合い頭にぶつかって懐中時計をなくし、ジェフリーが一緒になって探してくれたから親しくなった。
 最初は条件付き、期間限定の友だち。偽りの友人。無条件で大図書館に入れるから。
 でも、期間限定なんかじゃなかった。そんなものでは済まなかった。師匠で育ての親だったアイラの存在しか救いがなかったサキに、友だちも仲間もできた。
 仲間のキッドは、生き別れの姉だったと判明した。
 つまらない喧嘩も、言い合いも、一緒に食べた御飯も思い返したらいい思い出だ。つらくて負けたこともあった、せっかくまとまっていた仲間を引き裂かれもした。
 だけど、いつも助け合って……助け?
 自分はいつも誰かに助けられてばかりだった。悪く言えば、足を引っ張る存在。
「そっか。もう、僕はいいかな……」
 何があるのかもわからない天井に目を向ける。
 今だって、きっと心配をかけてしまっているはずだ。
 もうこれ以上、誰にも迷惑をかけなくていい。ここで死んだら。
 ……と、言うのは、前までの自分だ。

 マドンナ的な存在のミティアは、友だちや親友などと散々言って自分を牽引してくれたあのジェフリーとくっつこうとしている。
「なんか、イラっとして来たかも……」
 孤独ではなく、足手まといではなく、自分だけが周りの変化に取り残されている気がしてならない。気持ちが沈み切って諦めかけたが、よく考えたら自分自身の力で何かを成し遂げた経験が少ない。
 姉と判明したキッドだって、竜次と最近いい雰囲気になったりそうでなかったりと気になるし、コーディが書いた本が読みたい。ローズの違う知識だってゆっくりと話を聞いてみたいし、どうやって魔石ではない媒体を作るのかが知りたい。
 沈んで海底に足をついたと思ったら、そのまま浮き上がってしまった気分だ。
 サキは無性に悔しくなってしまった。
「こうなったら、とことんやってやる……」
 先ほどまで気落ちしていたのに、急に吹っ切れてしまった。
 少し休んだら、回復した気がする。実際は心の要素が大きかったのかもしれない。
 再びフェアリーライトを放って、今度はしっかりとカバンの中の魔石を数える。
 全色を合わせても、十個はいかない。思いの外、窮地に立たされていた。だが、不思議とこの窮地を楽しんでいた。吹っ切れたついでに、考えがおかしくなったのかもしれない。
 魔法を放って疲れても、少し休めばまた動ける。
 地面が剥き出しになっているが、不思議と風もなければネズミや虫も見当たらない。
 何も音がしないし気味が悪い場所だった。落ちたのだからここは地下、もしくは地底かもしれない。砕けた魔石を集め、歩いた印に少しずつ落とした。迷ったらこれを辿って戻ればいい。
 先で崩れた跡がある。ようやく見えたのが白っぽい壁だった。崩れているので正確には白ではないのかもしれない。
 壁の向こうの床に何か散らばっている。カプセルや錠剤らしきものだ。
 持ち帰った方がいいだろうか、魔石が入っていた巾着を広げて這わせる。念のため、直には触れない。帰ったら仲間に医者がいるのだから、見せてみよう。重要なものかどうかはさておいて。帰れたら……いや、帰ってみせる。サキは気持ちを強く持った。
 壁の上にパイプが見える。何かの施設だろうか。薬、黴臭さ、先ほどからいい予感がしない。
 ふとサキは足を止めた。お得意の思考整理。
 どうして大図書館から落ちたのに、こんなわけのわからない場所にいるのか。
 フェアリーライトを手繰り寄せ、周辺も確認する。
「うーん……もしかして僕はここから出るの、難しいのかもしれない?」
 まず構造、魔法学校の下に大図書館、今回は正面ではなく関係者が使う裏口から入る形になった。正確には裏口ではないかもしれないけれど、その場所はメルシィが言うには城の地下の連絡口になっていたと。
   城の地下、何か引っかかる。フィラノスで過ごした年月はあるが、城には入ったこともない。地下……聞き覚えがある気がする。
   さすがに今日は頭を使いすぎたかもしれない。
   こめかみをトントンと突きながら、首を傾げるも疲れているのか、その先の考えが出て来ない。
 サキは自身に小さく唸った。その背後で妙な音がした。
 ぐるるるる……
「うるさいなぁ、考えてるときに邪魔を……」
   やかましいと言いたかったが一人だったと思い出した。木霊し、響き渡る自分の声が虚しい。獣の臭いがする。他には血の臭いもした。
「ぁ…………」
   背後に明かりを動かすと、見えるだけで三匹。犬かオオカミか、いや、どちらでもない。ただ言えるのは、動物だった存在だ。
   片目が落ちたモノ、肋骨が剥き出しで中から内臓の一部がはみ出しているモノ、下顎が落ち、舌がだらしなく垂れて涎なのか体液なのか血液なのかが垂れ流しになっているモノ。命として存在しているとは思えないモノと睨み合う。
「こういうのはホラー映画の中だけにしてほしいんだけど」
   逃げても無駄だ。こんなものが出て来るなんて想像もしなかった。だが、おかげでここがどこなのかが見当がついた。
   今にも襲いかかって来そうな中で、武器のないサキが知恵を絞る。魔力を温存しながら、どうやったらここを離脱できるか。
   適度な魔法が思いつかない。テキストの魔法ではやっていけない。
   詠唱なんてものはない。自分で作りたいものを具現化した。実はサキなりのオリジナルの魔法はこれまでにいくつも使っている。
 光の障壁が代表例だ。
 伸ばした右手には光の剣が握られている。もちろん魔法だ。節約のためにフェアリーライトを払った。これだけで明るい。
「重さがないから勝手がわからないけど、これなら……」
   サキが身構えた途端に三匹まとまって飛びかかった。サキは剣の振り方を知らない。
「えいっ!」
   へっぴり腰で構えも友人の見様見真似、それでもひと振りで二匹の四肢を傷つけ、自由を奪う。腐敗した肉がびくびくと痙攣し、どこを向いているかわからない眼球が剥き出しになってぐるぐると動いているのが見えた。
   走り抜けた一匹が方向転換する前に、サキは斬りつけた。腐敗した肉が何かわからない液体とともに散る。
「はぁ……はぁっ」
   怪我はしていないが、緊張に息が詰まりそうになった。
「止まったらまたやられそうになる……早く何とかしないと」
   ここはきっと種の研究所だった場所だ。崩れているし、明かりもない。変な薬は散らばっていたし、誰かが壊した残党がまだ燻っていると判断していいだろう。問題は、なぜ城や大図書館とつながりがあるのか。これは深く考えると気分が悪い。
   光の剣を解いて再びフェアリーライトを放った。
   意識していないと、いくらでも使ってしまいそうだ。大図書館で情報を集めていた時間でも、先ほど休んだときも少しは回復したかもしれないが、万全とは言えない。
   壁を伝いながら、どちらかわからない方向へ進む。止まっていれば、腐敗した血肉の臭いでまた追撃が来るかもしれない。
   サキは疑問を抱いた。こんなに広い場所、どうやって地下に作ったのだろうかと。
 何か特別な理由があった。それこそ、どうしても隠しておきたかったこと。生活の身近に潜め、気づかれにくいようにわざと。
 大図書館だけではなく、ここにも何かあるかもしれない。
 壁が途切れた。分かれ道になったが戻る選択肢はないとサキは思っている。
 左右どちらに進もうか迷っていて、左から強烈な冷気を感じた。明かりに照らされた白い床は霜が張っている。これだけの冷気だと、変なモノが追って来ないかもしれないが、リスクも感じる。
 右の道は吹き溜まりになっていて行き止まりだ。白い壁に切れ目が見える。多分扉、何かの部屋、その先の壁は崩れて土砂が見えたが流れて来た冷気によって凍っている。
「みんながいたら、どっちって言うかな……」
 サキは寒さに身を震わせながら、背後も気にする。白い息を数回吐いて意を決した。
 
 きっと、あの友だちは僕に考えを聞くだろう。そんなとき、僕はどう答える?

 サキが進んだのは、行き止まりだった右の通路。
 身を縮め、扉に向かって体当たりをする。ガランガランとぶち抜かれた扉の上に突っ伏した。また帽子が零れ落ちた。
「うぅっ、壊したの失敗だったかな……」
 背中に感じる風、すぐに体を起こすも帽子を拾うより前に両腕を抱え込んだ。薬品の臭いも微かにする。寒さで感覚がおかしくなっているだけかもしれないが、鼻の奥が痛む。ゆっくり目を開けると、四角く黄ばんだ物が見えた。一つではない、入り込む風に応えるように床を這っている。
 帽子の存在を思い出し、見渡すと同じく黄ばんだ物がカサカサと音を立てていた。
「紙……?」
 帽子を拾って被り直した。一度背後を気にしてから紙を一枚拾い上げた。紙は黄ばんでいるが、化学式のようなものが書かれている。さすがにサキの専門ではない。
 持ち帰ったらローズか、もしかしたら竜次がわかるかもしれない。見える範囲で拾って這ったままカバンに詰め込んだ。この紙自体はかなり古そうだ。文字も見えたが、サキが見れば、蛇が走っているようにしか思えない。文字かもしれないが、これも解読できなかった。
 カバンに収めた状態から立ち上がって、思いっきり頭をぶつけた。幾分か帽子で防がれたが、痛いことには変わりない。
「ったた……何ですかこ……」
 言葉が途切れ、息を吸ったまま吐くのを忘れた。
 大きな硝子棚だ。崩れている現状から傾いたと見て間違いない。問題はその棚の中身だ。いくつもの円柱の入れ物には液体が入っており、人体らしき物の一部が見える。
 数はたくさんあり、数えられない。そして、どれも小さい。
 具体的には、目玉や臓器、髪の毛がぐるりと舞っている生首もあった。
 目に入ったガラスの容器に日付があった。その日付は、魔導士狩りがあった数日後だった。
 サキは吐くものがないのに、嗚咽を抑え込んだ。靴が砕けたガラスの破片を引き摺る。
 足元に明かりを寄せて、棚の向こうに大きなガラスケースを発見する。散った細かい硝子とカラカラに乾ききっているへその緒がついたままの……。
「うわぁーーーっ!!」
 信じられない大声が脳天を突き抜ける。そのまま頭を抱え込んだ。無意識にほろほろと涙が零れる。

 自分は拾った親が嫌いだった。理不尽な暴力、束縛、自由はなかったに等しい。
 だがあのとき、もし『拾った親』がいなかったら、自分だってこうなっていたのかもしれない。
 縁を切ると言ってこの街を飛び出した。友だちや仲間と呼べる人たちと。よくない親だったかもしれない。虐待は心に大きな傷を残した。
 それでも、生きていた。
 ここにいるのは、生きたくても生きられなかった子どもだ。

「ごめん……なさい……ラーニャ母さん……」
 処刑されて当然、いなくなって気にしなくて済む。今の今までそう思っていた『拾った親』に初めて感謝をした。生きているだけで恵まれていると思い知った。
 もう、言いたくても生きていない親に向かっての罪悪感が押し寄せる。
 サキは蹲って呻くように泣いた。何が襲って来ても、今は何も抵抗できないほど、打ちひしがれている。
 自分はとんでもないものを見てしまった。とんでもないことに気付いてしまった。
 どんなにひどい人生だったとしても、生きることができなかった人がいる。
 一度、いや、何度生きることを諦めただろうか。落ちた直後だってそうだ。今までだって、何度挫けそうになっただろう。
 虚ろな目で散った硝子に目を向ける。背後に冷気と足音が近づいて来た。
 あれだけの声を出してしまったのだ。また実験動物の成れの果てが襲って来るに違いない。ここで力尽きるわけにはいかないのだと、奮い立たせた。
 大きく息を吸ってフェアリーライトを振り払いながら立ち上がる。
 目の前で両手に拳を作り、右手だけを引いた。少しずつ開かれる左手から剣の光が伸びる。部屋の向こう側、通路にずんぐりとした生き物が見えた。
 大きめのネズミか、タヌキか。きっとどちらでもない。無残に肋骨が見えている。
 サキを見つけ、襲いかかって来る。サキは光の剣を構えた。
 臨戦状態の中、サキの目の前を稲光が走った。得体の知れない動物は砕けるように、何かを飛び散らせて動かなくなった。
「えっ……?」
 光の剣を手にしたまま、目の前で何が起きたのか瞬時に判断できず、思考も体も停止した。サキはぱちぱちと何度か瞬いて、聞き覚えのある声を耳にした。
「ふざけやがって、あの変な薬でも拾い食いしたんだろうな」
「のぉん、あんなになってまで生きたいとは思いませんねぇ?」
 声が近くなり、姿が見えた。瞬時に目が合う。
 金髪で青い目、青いジャケットで、腰には剣を下げたジェフリーだ。走って来たのか、息が白く大きな雲を描く様に伸びている。
「やっと見付けた……」
「あっ……」
 サキは感極まって、声が出ない。意識していないのに、また涙が零れる。
「いっちょ前に剣なんて持ちやがって……」
「のぉん!! 主ぃっ!!」
 サキは緊張が解け、魔法を解いてぺたりと床に座り込んだ。
 ジェフリーが放つ乏しくも優しいフェアリーライトが照らす。
「うっ……僕っ……」
 サキは下を向いて泣きじゃくる。鯖トラの猫、ショコラが寄り添った。
 次いでジェフリーも肩を叩く。
「怪我はしていないよな?」
 やはりジェフリーは怒らない。サキは頷きながら少しずつ顔を上げた。
「ど……して、ジェフリーさんが?」
「どうしてって、友だちだろ? あっ、親友だったっけ? 声を忘れはしないさ」
 サキは鼻をグズらせ、精いっぱいの笑顔を見せた。
「頑張ってよかったです……」
「まずい場所だっていうのは理解した。さっそくここを出よう、と言いたいところなんだが、出口がない」
「えっ!?」
 そんな気はしていたが、やはりそうか。サキは肩を落とした。
「ジェフリーさんはどこからここへ? どうしてここがわかったんですか?」
 サキはジェフリーに質問攻めをする。
「どうしてフェアリーライトとか、雷の魔法とかをそんなに使い熟しているんですか?」
「ちょ、ちょっと待てよ……」
 ジェフリーからしたら、デートの約束の時間に遅れて、質問攻めにされる気持ちだろう。ため息をつきながら、ジャケットのポケットを探った。そこから差し出された手には、何色もの砕けた魔石が見えた。
「大図書館は城の地下に通じているって聞いてな。城に忍び込んだがあの剣士、入ったら出るのが難しいって言わないでいやがった……」
 ジェフリーが指す『あの剣士』はクディフだ。教えてもらったのかもしれないと、サキは勝手に解釈した。そして、ジェフリーは、サキが通って来た印にしていた魔石の欠片を見て追って来た。
 ジェフリーは愚痴を零す。
「魔法は何度も失敗するし、いくつか魔石も無駄にしてる。このばあさんがスパルタで困ったさ」
「補助がないとまだまだですが、中級魔法までなら問題なくできますねぇ?」
 道中の補助はショコラがやったという意味だ。ノックスでも思ったのだが、ジェフリーは素質があるのではないだろうか。サキはぼんやりと思っていた。
「それよりサキ、見ておいた方がいいものがあるんだ」
   休む間もなく、ジェフリーはサキの手を引く。
「あっ……ジェフリーさん、これ……」
   サキは立ち上がるまでするも、うしろを振り返った。ジェフリーの放つ、乏しいフェアリーライトでは何を訴えたいのかまるでわからない。
「ホーリーライト」
   サキは魔石を使わずに大きな光を放った。部屋全体が明るくなる。ジェフリーは息を詰まらせた。
「ここは……地獄、だな」
「僕も、拾われてなかったら、こうなっていたかもしれません」
   感傷に浸りそうなサキの手を、ジェフリーは一層強く引いた。
「なら、二度と死にたいなんて思うな。世の中には明日を生きたくても、どんなにもがいても生きられない奴がいる。そいつの分まで、足掻いて生きろ」
「…………」
「この世に生きてちゃいけない人間なんていない。いるとしたら……命を弄ぶ狂った野郎だ!」
「そう、ですね。こんなの、終わらせないといけない」
   ホーリーライトを手繰り寄せた。そのまま消そうとする。だが、ジェフリーに止められた。
「すぐそこだ、そのまま持ってろ」
「えっ、はい……」
   うしろ髪を引かれるような気分だったが、部屋を出た。
 ジェフリーは冷気に突っ込もうとする。ショコラはちゃっかりとサキの腰のカバンに潜り込んだ。
 ジェフリーが行こうとしているのは、強烈な冷気を感じた方角だ。サキは軽く抵抗をする。
「そ、そっちは……」
「いいから!」
   吐く息が白いのはもちろんだが、顔に刺すような冷たさを感じる。深呼吸なんてしたら、肺が凍るかもしれない。
   大きな光を持ったまま、開けた場所に出た。ジェフリーが、何を見せたかったのかが明らかになった。
 サキは寒さとは違う身震いを起こした。
「こ、これは、どうして……」
   あまりの大きさに首が追い付かず、仰け反って倒れそうになった。見上げるほど大きい氷柱だ。中には黒い龍、邪神龍が封じられている。こんな大きなもの、これまでに見たことがない。
   さらに、封じているのは凍てつく氷だが、こんな魔法は知らない。
   見とれているに近い感覚だった。圧倒されたが正しいかもしれない。そんなサキの手を、ジェフリーはさらに引いた。何か見せたいらしく、氷柱の近くを探している。
 サキは気を利かせて明かりを移動させる。氷柱の中に人影を見つけた。
   眠る様に身を沈める女の子だ。見覚えのある顔立ちをしている。
「まさか、セティ王女……?」
「似ているが、ちょっと幼いな」
「じゃあ……世界の生贄?」
「呼べばわかるんじゃないか?」
   ジェフリーはやけに冷静だ。
 サキは胸もとのユリのブローチに目を向けた。セティ王女を呼ぶ。つまりは魔力解放だ。魔力解放をすれば、サキは瀕死に等しくなる。おそらくここから出られなくなるだろう。そう考えると、安易に魔力解放はしたくなかった。
「魔力解放ができるなら、魔力制御もできるはずですよね、主ぃ?」
   カバンから聞こえた助言にサキは気付かされた。ショコラはいつも全力なサキに、抑えることも大切だと指摘を入れたのだ。
「そっか……」
 サキは小さく頷き、納得をしている。どうして今まで気が付かなかったのか。いつも全力で挑んでいたせいで気が付かなかった。
 ジェフリーは小馬鹿にするように笑う。
「また難しいことばっかり考えてるから、簡単なことに気がつかないのか?」
「そ、そういう言い方はやめてください!」
   くだらない口喧嘩に妙な安心感を覚えた。ジェフリーは口元を緩ませる。
「お前は賢いからな。帰ることも考えた体力配分をするはずだ。俺は絶大な信頼を寄せているんだからな?」
「言ってくれますね。僕を信頼したこと、絶対に後悔させませんからねっ!」
   少し懐かしいやり取りだ。こんな会話、二人は出会ってさほど経たないうちにした。あの頃を思うと、遠くまで来たものだ。
「魔力解放……」
   呼吸を忘れそうになる緊張感。今まで制御することはしなかった。制御を覚えたら、今まで以上に立ち回りしやすくなるかもしれない。
   いつも全力で魔法に打ち込むしか頭になかった。サキは加減の難しさを知った。
「こんな、感じ……なのかな……」
 ブローチを軽く撫でる。指先からほのかな光が弾ける。極寒を忘れるくらい、暖かい光、神々しい女性セティが姿を現した。
 魔界で見たときは気にならなかったが、小さなティアラが見えた。忘れがちだが、この人は王女だった。
 セティはジェフリーとサキに一礼をする。
「主の道中、これまで黙って見ておりました。何度か力をお貸ししようかと思いましたが、その必要はなかったようですね。本当にお強い方とともに在れることを誇りに思います」
 意外と王女は淡々としていた。勝手に手を貸すのも考えていたようだ。だが、それはまだ契約期間が短いゆえに、サキの力量を知らないからだった。
 サキはセティに場所を譲った。
「セティさんに似た人が……」
「そのようですね」
 セティには圭馬やショコラと違って実体はないらしい。幽霊のように漂う。セティは氷柱の中で眠る少女を見つめる。その目は憐れんでいるようにも思えた。
「お気づきかと思いますが、これはわたくしの妹です」
 やけに言葉が重い。セティは小さく首を振った。それは諦めるようでもあり、長寿のせいで色褪せてしまった感情だった。同じ血を通わせた妹と、このような形で再会するとは誰が想像しただろうか。
 ジェフリーは多くを言わず、セティの動向をうかがう。
「そんな気はした。このデカいのはそのときの邪神龍、だよな?」
 セティは深めに頷いた。
「この龍は、種族戦争で生まれた憎悪です。初代の邪神龍。おそらく歴代で一番大きいはず。誰も倒せなかった、負の遺産です」
 サキも魔力を押さえながら、セティに質問をした。
「これは封印されているのですか?」
 セティは中で眠る少女を憐れむ様に手を伸ばした。触れるも、彼女自身ではどうすることもできない。
「種族による領土争いや差別、戦争もなく、世界が平和なままでしたら、生贄にならなかったでしょうに……」
 氷に共鳴するように、セティの悲しい声が響く。
「誰が封じたのかは、『埋もれてしまった歴史』から得られるかもしれません。どんな形であれ、妹と再会できました。主に感謝しなくてはいけませんね」
 セティは物悲しい表情を浮かべながら氷柱を見上げた。
「かの男は、ずっとこの封印を解きたかったのでしょう。そのために『ノイズ』を求めたのではないのでしょうか。世界の神になりたいのであれば、おそらくこの『力』を欲するでしょう」
 複雑に散らばった話がまた一つ、つながろうとしている。ノイズはキッドを指している。だから『かの男』、ルッシェナはキッドを最後まで殺そうとはしなかった。
 魔法無効能力者、キッドは特別な力を持っている。代替えの利かない力。そして再生の力、ミティアまで欲していた。完全に復活させるために。
 ジェフリーは話を整理する。自分たちが持っている情報と、この状況をつなげると話が読めて来たようだ。
「ようやくイカレ野郎の目的が見えて来たな。こいつの封印を解いて、中の奴を完全に復活させ、手中に収めようとしていた。これだけ強大な力を持てば、神にも等しく世界の支配が望めるだろうな。ただ、これはどちらかというと、支配よりは『破壊』の力じゃないのか?」
「ジェフリーさぁん、今日は冴えておりますねぇ?」
 ショコラはジェフリーをおだてる。だが、その誉め言葉は、どうも素直には喜べない。もしその予想が当たっていたら、この旅の最後がここにある。
「俺はこの規模の邪神龍を思うように操れるとは思えない。世界の生贄にされたこの子だって、邪神龍を満足に操れなかったんじゃないのか? それに、その王女様が言うには初代の邪神龍らしいじゃないか。この大きさだし、どう考えても勝機がない」
 ジェフリーは険しい表情で首を振った。彼が勝てないと判断するのは珍しい。
 サキは思い出したようにカバンの中を探った。急な彼の行動に、ジェフリーも驚く。
「何をしているんだ?」
「僕、試してみてもいいですか?」
「はぁっ? 仮にここで、強引にこいつをぶち壊したところで、どう考えてもお前と二人で倒せるわけがないだろ!!」
 ジェフリーはサキの手を掴み、怒鳴りつけた。サキは静かに首を振る。
「僕にこの封印は解けません」
「なら、何を……」
「封印というのはいつか解かれてしまいます。誰がこんな強力な魔法をかけたのかは知りません。そもそも、こんな強力な魔法、僕は知らないです」
 サキはカバンの中の魔石をありったけ手に取った。魔石は五個、あとは欠片が数粒しかない。あまりに心許ない。サキは握りしめて顔を上げる。
「ジェフリーさん、魔石、持っていませんか?」
 あまりに真剣な眼差しだ。ジェフリーはポーチを開けて見せた。
「ごめんなさい。全部もらってもいいですか?」
「これ以外なら……」
 ジェフリーは渋りながら、大きくて純度の高そうな白の魔石を摘み出す。やけに綺麗なので、普通に使うのも抵抗がある魔石だ。
「材料……なるほど。そうですね」
「つか、コーディからいくつかも分けてもらった。それとは別に、俺の持っている魔石、結構綺麗なんだけど、お前が持っているのとは違うよな?」
「そうですね。これ、どこで買ったんですか?」
 ジェフリーが疑問に思っているのは、魔石の『質』だった。魔法による高い効果はこのせいかもしれない。
「手をつけはじめた頃、フィリップスで買った。高い気がしたけど……」
「天然の魔石ですね。高くて当然です。なるほど……」
 サキの『なるほど』は、やけに高火力な魔法だったのは才能のせいかと抱いていた疑念だった。この要素がすべてではないだろう。ジェフリーが『やればできる』のは知っている。
 サキはジェフリーのポーチに手を入れて魔石を摘まんでいく。緑色の少し大きな魔石があった。これを見つけた瞬間、安堵の息が白く吐かれた。
 手に持った魔石は全部で十と少しだ。少し足りないと計算したのか、再度ジェフリーを頼ろうとする。顔を上げた途端に、ジェフリーの方から声がかかった。
「俺は何をしたらいい?」
 サキは魔石を両手に持ったまま、目を見開いた。なぜわかったのかと。
「足りないんだろ? 帰れなくなるくらいなら、俺も一緒に唱えて負担を軽減すればいい。って、もしかして違うか?」
 ジェフリーは予想を述べたが、おおむね正解だ。あまりのシンクロに、サキは眉をひそめながら首を傾げた。こんなに気が合うのは珍しい。
「た、確かに、手を添えてもらいながら、僕と一緒に詠唱してくれればいいんですが、どうしてわかったんですか?」
「いや、どう考えても大きな魔法をやろうとしているだろ?」
 この友だちは、あまりに気が利き過ぎて気味が悪い。いつもそうだが、異性だったらうまくやっていける自信がある。この状況下で何を考えているのかと、サキは何度か頷き凍てつく空気をゆっくりと吸った。一気に目が覚めた。
「セティさんも、ショコラさんも、僕に力を貸してください」
   両手に持った魔石の中から、緑色の少し大きな魔石だけをカバンに落とし入れた。
   ジェフリーが蓋をするように両手を添えた。その上をぼんやりと光るセティの手、サキの足元にはショコラが寄り添った。
   これからサキが試みようとしているのは一人では難しい魔法だ。
「世の中の理不尽に何度も屈しました。自分の生い立ちを何度も呪った。だけど、それがなかったら今の僕はここに存在していない。僕はもっと理不尽を味わった魂を救いたい。まだこの施設に朽ちることが許されない生き物や、全ての憎悪を飲み込んだ龍、この女の子の魂も……」
   緊張から、サキの吐く息の白さが小さくなる。詰まるような息遣いは、きっと寒さのせいじゃない。ぽつり、ぽつりとゆっくり詠唱が始まり、ジェフリーは追った。
   何を想像しているのかはわからないが、詠唱しながらサキの頬を涙が伝う。手の中に、優しい光が満ちる。
「生きる喜びを、死せる安らぎを……リンカネーション!」
   手から光が零れ、暗く冷たい足元から、眩い世界が広がった。もしかしたら、ここは天国かもしれない。別世界ではないかと疑うくらいだ。
   サキが手にした光を頭上に掲げた。癒し、再生、回帰、何だろうか、邪なものを浄化する究極かもしれない光だ。暖かくて、儚くて、見ているだけでなぜ生きているのかを考えさせられる。
 ジェフリーには、他人事とは思えなかった。ただ、心地よい光のはずなのに、なぜか気分が悪いのが気がかりだった。まるで自分が死んでしまったのではないかと疑いを持ちたくなる。これは気のせいだと違和感を抑え込んだ。
 セティの姿が音もなく消えた。それが合図だったかのように、サキが膝から崩れる。熱を帯びたサキの体、額からは集中力によって大粒の汗をかいている。こんなに冷えきった空間に身を置いているのに。
 サキは自身に満ちた表情で言う。
「これで、もうこの場所から邪なものは生まれません。龍も女の子も、目覚めた頃にはきっと安らぎを求めるはずです……」
「先手を打った。そうだな?」
   白い息を切らせるサキに手を貸しながら、ジェフリーが称賛する。
「ただ者じゃないと思っていたが、お前は本当に凄いな。大図書館から落ちたのだって、もしかしたら運命だったのかもしれない。コイツは、気付いてほしかったのかもしれないな……」
「ジェフリーさん、来てくれたのがあなたじゃなかったらできなかった」
   生まれては消える浄化の光に、生きている意味を問われている気分だった。
   お互いがお互いを尊敬する流れに、二人してこそばゆい含み笑いをする。
 ジェフリーはわかりきった質問をする。
「こういうときは何て言うんだっけか?」
 サキがはにかんだ。
  
「もっと褒めてもいいんですよ!!」
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