トレジャーキッズ ~委ねしもの~

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ

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【2‐3】天秤

集いし者たち

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 レストの街。昨晩、雨が降ったおかげで、今朝の空気は澄んでいた。
 まだ目覚めるには少し早いうちに事件が起きた。

「きゃああああああああ!!」
 ミティアの、ただならぬ叫び声で目が覚めた。
 もちろん男性部屋でも耳にした。サキとジェフリーが飛び起きる。
「い、今のって、ミティアさん?」
 起きたものの、サキは状態だけ起こして目を擦っている。その前をジェフリーが駆けて行った。彼は、ミティアのことになると行動が早い。
 髪も乱れたまま、隣の女性部屋の扉をノックする。
「いやああああああああ!!」
 ノックに対する受け答えではない。今度は、部屋の中からキッドの悲鳴がした。
「おい、何があったんだ!? ここを開けろ!!」
 ジェフリーは扉を激しく叩く。だが、それどころではないらしく、中からバタバタと音がした。ドアを強引に押して突破した。
 次にジェフリーが見たものは窓から差し込んだ朝日だ。寝起きの目には眩しい。視界が一瞬白くなった。
 やっと視界が落ち着いた頃、スリッパが飛んで来た。その次は布が飛んで来て視界が遮られた。早朝だというのに、見事なコンボである。
 ジェフリーは頭を押さえ、前屈みになった。
「入って来んな、変態!!」
 朝からキレのあるキッドの声に、スリッパが直撃した頭が痛む。投げられた布は布団らしい。
「何があったんだ……」
 ジェフリーは布を剥ぎ取って頭を振る。足元を手の平ほどの大きさをした蜘蛛が華麗に走って行った。あまりに面妖だったため、ジェフリーですら驚倒しそうだった。
 悲鳴の原因はこれだと把握した。
 これが今朝の茶番の始まりであった。
 これだけで終わればよかった。だが、ジェフリーは女性部屋の中に目が行ってしまった。

 これは事故だ。
 着替え途中だったミティアの、綺麗な背中が目に入った。白くてきれいな肌、ピンクの下着が可愛らしい。だが、間違いなく、凝視するものではない。
 ミティアは顔だけジェフリーに向けている。その顔は今にも泣きそうだ。
 起き抜けで、スリッパと布団を投げたフォームのままのキッド。
 一応起きているが、すっぴんで誰なのかもわからないローズ。
 どんな寝相をしているのか計り知れない、下着だけで床に転がるコーディ。
 そう、これは事故だ。

 朝から食らう、キッドのゴミを見る目はたまらない。
「最ッ低!!」
 ジェフリーは気まずくなって無言でドアを閉める。すると、中からミティアの喚き声がした。
「み、見られた! 絶対見られた!! うわーん……」
 聞いて肩を落とすジェフリー。何事かと思って来てみれば、変態扱いだ。たまったものではない。抜けない疲労が追い打ちをかける。
 なぜ朝から、こんなに心身を疲弊させなくてはいけないのだろうか。ミティアが無事だったのだから、ここはよろこぶべきなのだろうが。
 廊下でぼんやりと自問自答していると、声をかけられた。声の主はサキだ。
「心中お察しします……」
 サキは帽子だけかぶっていない。一緒に起きたはずだが、彼は騒動の中でも身支度を整えていたようだ。身支度が整っているということは、使い魔も一緒だ。
「やーい、ラッキースケベ!」
「朝から賑やかですのぉん……」
 圭馬とショコラもちゃっかり同伴していた。
 騒々しかったのは間違いないが、ジェフリーは間違いなく、とばっちりを食らった被害者だ。気持ちが落ちていた。何があったのかを軽く説明する。
「向こうの部屋で、手の平くらいのでっかい蜘蛛が出たらしい」
「あぁ、ゴキブリハンターですねそれ。ゴキブリを見るよりはよかった気がします」
「その説明をキッドにしてやってくれ。あと、俺の名誉回復」
「僕が話してわかってもらえるのでしたら、ね」
 朝早くだというのに、サキは真面目に取り合ってくれている。さすが友だち。こういうときでもフォローしてくれるのはありがたい。
 そんな美しい友情の談笑しているときだった。
 ただならぬ殺気を感じ、二人は身震いを起こす。この殺気の正体は言わずともわかっているが、認めたくない。黙って相手にせず、逃げるべきか。
「私の眠りを妨げるのは誰でしょう?」
 低い声に二人が凍りつく。相談もまとまらないうちに、鬼の形相の竜次に背負い投げをされた。
 寝起きが悪い竜次は、たびたびこういったことを仕出かす。そして、あまり覚えていない。
 このキレのよさと、実はカバンで抑えられている俊敏さをもっと別のところでも生かしてもらいたい。
 ジェフリーは届かぬ思いを胸に、床に倒れた。。

 結局朝の誤解も解けず、投げられた影響で背中が痛い二人と皆で朝の食卓を囲った。
 今日は山菜の天ぷらが入ったうどんだ。洗濯乾燥機の貸し出しもそうだったが、何気にこのサービスがありがたい。
 このサービスで気をよくし、朝の茶番は薄れていた。予定は決まっているのだから、余計な心配はせず、純粋に朝食の時間を堪能した。

 一同は荷物をまとめてチェックアウトをし、フィラノスを目指す。

「いやぁ、いいですねぇ、ピクニックみたいです」
 いつだか聞いたセリフだ。竜次が気分よく先頭を歩いた。
 昨日、ここも大雨だったのだろう。草原地帯は潤っていた。気をつけないと、水たまりが跳ねる。
 道に慣れたせいもあり、川沿いを歩かなくてもフィラノスへ辿り着けるようになっていた。川沿いを歩かなければ、野鳥を眺めるのもできる、のどかな草原地帯だ。気持ちのいいピクニックだった。こんなに平和な道中は珍しい。

 早朝に出発したわけでもないのに、昼前にはフィラノスへ到着した。この時間なら、いいランチでも食べられそうである。
 見慣れた街を目にすると安心する。外部との境目が設置され、街の中も少しずつ賑やかさを取り戻していた。
 一行を先導していた竜次は、街に到着しても上機嫌だ。
「繁華街、行ってみましょうか。この前とは違うお店が開いているかもしれません」
 コーディが気味悪がった。
「お兄ちゃん先生、今日はやけに元気だね。いいことでもあったの?」
 キッドに目を向ける。何か進展でもあったのかと疑ったが、彼女は首を傾げていた。判断材料がない。よって、竜次特有の空回りだと思われる。
 繁華街は賑わっていた。この前より開いているお店も多くなって迷うくらいだ。
 何を食べようかとお店を吟味していたところ、サキが小さく手を上げた。
「あ、よかったら、僕がリクエストしてもいいですか?」
 サキが食べたいものを発言するなど珍しい。皆、揃って驚いた。
 同意を得て、サキはお店へ案内した。華やかな看板とテラス席のある丼物屋さんかと思いきや、その脇の階段を上がって行く。
 看板もなく、鶏の絵が描いてあるだけの奇妙なお店だった。
 隠れ家のように、ひっそりとしたお店の暖簾をくぐる。中は小ぢんまりとしたオムライスの専門店だった。
 白髪交じりの金髪で、ソバージュのヘアスタイルに白いバンダナ、豪快なおばさんが出迎える。
「おや、いらっしゃい。久しぶりじゃないかい?」
 このおばさんは店主のようだ。サキを見ると、営業スマイルどころではない笑顔を浮かべていた。
「しばらく見ないうちに大人になっちゃったみたいだよぉ」
「こんにちはポーラさん。復帰したんですか?」
「仮復帰ってところかな。もう階段から落ちないようにするよ」
 サキははにかみながら挨拶を交わしている。顔馴染みのようだ。
 店主は一行の人数を確認し、奥まった一番大きな席に通してくれた。椅子に座ってサキは笑顔で言う。
「在校していた頃、お世話になっていたお店です。学校も家も落ち着かないので、よくここで勉強をさせてもらっていました」
 店主が人数分のお水と大きなピッチャーが運んで来た。一行の顔を眺め、にこやかに話す。
「お友だち連れて来るなんて、初めてじゃない?」
 サキは深く頷き、人差し指を立てる。
「えへへ、そうですね。ロシアン七人分ください」
「はいよ。覚悟しておきなさい」
 サキは何も見ず、仲間に確認も取らずに注文してしまった。だが、そもそも店内にメニューも張り出しがされていない。オムライス専門店とは書いてあったが、正直、店の名前もわからない。
 先に人数分のスープと取り分けの小皿が運ばれた。コンソメのいい香りが空腹を刺激する。
 キッドが待ち時間に質問をする。
「ここ、オムライスのお店よね?」
 サキはにっこりと笑いながらスプーンを配った。
「いつか友だちができたら食べに来たいと思っていました。ですが、ポーラさんが怪我をしてしまったので。でも、さっき見たら暖簾が見えたから」
 先ほどの会話から、お店はしばらく休業していたようだ。注視しないとわからないが、店主は左足を少し引きずっていた。
 焦げるバターのいい香りに、卵の焼ける音がする。濃厚な黄身と、蛋白な白身の混ざり合う優しい匂いが鼻を刺激する。
 コーディは待ちきれないらしく、厨房をチラチラと見ている。
「えー、絶対においしい匂いがする……」
「ほんと、お腹空いたわね」
 隣ではキッドもお腹を抱えていた。
 楽しみに待つと、両手でやっと持てるくらいの金属のお皿を持った店主が厨房から出て来た。お皿の上にものすごく大きなオムライスが乗っている。
「あい、お待たせしました。ロシアン七人分だよ」
 結婚式なんかで見るパーティケーキが乗りそうな大きさだが、この発想はなかなか思いつかない。
 大きなスプーンと、ソース皿が出された。ケチャップやマヨネーズ、タルタルソースやウスターソースなどが入っている。ただのオムライスではない様子がこれでわかる。
 食べ物のリアクションと言ったらミティアだ。小さいスプーンを握って、そのまま見とれている。あまりにもいい反応なので、写真に残したいくらいだ。
「こんな大きなオムライス、見たことない! すごいね……」
 目を輝かせ、感動している。
 サキが添えられていた大きなスプーンをオムライスに入れた。
「あ、僕のチャーハンですね」
 楽しそうに小皿に盛った。彼が食事に率先するのは、滅多に見られない。
「次、先生どうぞ」
 サキは大きなスプーンを竜次に渡す。
「あ、私の所は焼きそばみたいです。なるほど、ロシアンってそういうことですか」
 さまざまな味と具が入っている、見た目だけではなく、食べても楽しめるオムライスだった。こんなに楽しく話しながら食べる食事はなかなかない。キムチチャーハンや、真っ白なご飯、豆ご飯、中には唐揚げやエビフライも入っていた。
 取り分けて使い魔にも与える。
 サキは寂しそうな表情で言う。
「テスト終わりや、行事の打ち上げで、来る人が多かったみたいです。何人かで食べているのを見ていました。僕は友だちがいなかったので、それが羨ましかったです。でも、皆さんと食べられてよかった……」
 感傷に浸るも、いい雰囲気だ。だが、サキはこの空気である決断を下した。
「うん、僕……大魔導士昇格試験、やっぱり受けません」
 皆の手が止まり、静まった。時間が止まったように静止している。
 その静止から抜け出したのはミティアだった。
「あ、今日が期日だっけ? せっかくなのに、やらないの?」
 ミティアはサキの顔まで覗き込む。大袈裟なリアクションではないため、その話題が切り出しやすかった。
 竜次も説得を試みる。サキを気にかけていたからだ。
「せ、せっかくの機会ですよ? もしかして、不安材料はお金ですか?」
 サキは首を横に振った。お金が問題ではないようだ。思い詰めた表情をしている。
「あと四年も待つのですか?」
 サキはこれにも首を振った。違うらしい。
「そんな特別なものにならなくても、僕は僕です……」
 サキの中にもポリシーがある。『特別』扱いをされたいわけではない。こうなると説得が難しいのも皆は知っている。
 意外にもジェフリーだけは理解を示していた。
「どうせ今日いっぱいまでだ。夜中も入学願書の受付してる魔法学校なんだから、気が変わったときでいいじゃないか」
 ジェフリーの言い方は手放しだ。近すぎる意見は意外と耳に入らない。その読みが当たってサキは頷いた。
「ただし、気が変わって受けるなら、実力保証人は俺だ」
 ジェフリーは悪巧みをするような笑みを浮かべる。サキは顔をしかめた。
「失敗したらジェフリーさん、借金まみれですよ?」
「金、ねぇ。兄貴に借りるか? 借金まみれなら、お前もそうだろ?」
 半分は冗談、半分は本気だ。このやり取りには呆れる。
 試験を受けるなら、実力保証人を立てるなどの条件はあった。ただ、この条件の立候補は、レストの街でミティアとの時間を作ってもらう交換条件として候補にはなっていたのだ。この二人だけが知っている、ちょっとした秘密にして約束である。
 食べ終わって追加で飲み物を頼んだ。おばさんは、ぽつぽつやって来る常連客の相手をしているので、気を遣わずに助かる。
 食事を終え、このあとの動き方を話し合う。流れを作ったのは竜次だった。
「さて、これからの計画を考えましょうか。これで素材は揃ったのでしょうけれど、問題はこれからですね」
 竜次がアイスコーヒーにミルクを投入し、ストローで混ぜながら話した。彼は甘党ではないため、基本的に糖類にはノータッチだが、隣のジェフリーはガムシロップを二つも開けている。兄弟の間でこの差を垣間見えて面白い。
 動き方を考えるのは賛成だが、個人的な用事がある者もいた。
 コーディは挙手し、時間を要すると前置きした。
「私、ギルドに用事があるの。個人的な依頼を出したいから、時間がかかるかも」
 話を聞き、ローズが小さく頷く。
「もしかして、原稿できたデス?」
「まぁね。チェックを含めて、取り合ってもらえる出版関係の人を探したいからさ」
 聞いて時間がかかりそうだと把握した。個人でギルドに依頼を出すのは、緊急時以外は時間がかかる。連絡先や、身分証の提示、報酬金額の相談もあるからだ。
 ギルドに赴く話が出て、竜次が乗ろうとしている。
「私も情勢のチェックがしたいので、ギルドは覗いておきたいですね」
 度々情勢のチェックと口にするので、ジェフリーが文句を言った。
「そんなに沙蘭が気になるなら、兄貴だけ帰ればいいだろ? 兄貴は過保護だし、心配しすぎなんだよ」
「ジェフは薄情ですねぇ。そんな気はありませんけれど、ジェフも本気で思っていないでしょう?」
 兄弟の差はここでも感じられた。竜次を心配性だと言っていたが、確かにジェフリーが薄情にも思える。これは、ジェフリーなりの考えはあるようだ。
「便りがないのは何とかって言うじゃないか」
 便りがなかったら、恋人を失って心身ともに堕ちてしまった竜次を支えようとは思わなかった。つまりはそういう意図だ。
 ジェフリーは無駄な心配はしない。これが薄情に捉えられたのだ。
 個人的な用事ならサキもある。これも自分から申し出た。
「僕はメルのお店に顔出しに行こうと思います。ちゃんと謝りたいので……」
「俺はあの子の親父さんに会いたいから一緒に行く」
 サキがメルシィのお店に行くと言うと、その話にジェフリーが乗った。さらにキッドも身を乗り出す。
「あたしも、そいつが無駄遣いしないようについて行くわ」
 キッドが言う『そいつ』とはジェフリーを指す。おそらくそれだけが理由ではない。キッドなりに考えがあるのだろう。
 竜次も買い物がしたいと言って行く約束をした。
「私もチェックが終わったらお店に行きますね。普通にお買い物もあるので……」
 この様子だと、最近は水に縁があったせいで、何かしら駄目にしてしまったのだろう。
 街中では効率化を重視して、できるだけ危険がないように分散している。これも上手く慣れたものだ。時間の短縮にもつながるし、持ち寄った情報を交換するなどのコミュニケーションが不足しない。
 徐々に動き方が決まっていくが、ミティアが思わぬ申し出をした。
「わたし、ちょっと休んでてもいいですか?」
 どう反応していいものか、皆は動揺したがローズがフォローする。
「お疲れでしたら、ワタシと宿でも取って先にチェックインをします? 最近タブレットの調子が悪くて、ワタシもメカを弄りたいですしネ」
 機械に関する理由を話されたが、おそらくミティアを気遣っている。
 キッドがミティアの顔を覗き込む。まじまじと見ながら確認をした。
「具合、悪いの?」
 顔色はいいし、ご飯は残さずに食べている。そういうわけではなさそうだ。
 もしかしたら、倒れないようにミティアは自衛をしているのかもしれない。
 コーディもミティアのフォローをした。
「たまにはお昼寝っていいかもしれないね。バタバタしてたから、あんまり縁がなかったけど。お昼寝って体にいいらしいし?」
 そのコーディは、一層表情を曇らせるサキを見ている。
 コーディと目が合い、サキは何もない振る舞いをした。
「昨日は疲れましたもんね。ローズさんがご一緒ですし」
 サキの読みだと、コーディとローズは把握している。昨日の温泉で見抜かれてしまったのかもしれない。水面下で心理戦を繰り広げるなど、誰かを疑っているようで気分が悪い。それでも、地雷を踏んで余計な手間と険悪な空気にはさせたくない思いから、どうも気を遣ってしまう。
 会計を済ませ、それぞれの行動を開始する。

 石畳の道を、ローズとミティアは並んで歩く。珍しい組み合わせだが、温泉のときに立ち眩みを起こし、湯船に沈みかけて大袈裟ではない程度に心配はしていた。
「いつまで隠せるかわからないデス。少しでも気分が悪くなったら言ってネ?」
「もちろん、そうならないために自分で休もうと思いました」
 最初はローズものぼせただけかと思っていたが、一緒にいたコーディにぼうっとしていると指摘され、ミティアはサキに言ったのと同様に白状したのだ。
 ミティアの一緒にいたいという気持ちを尊重した。
 ローズは、気持ちだけでも元気になってもらいたい思いで提案をする。
「おやつでも買って行きマス?」
 ミティアは答えずに立ち止まった。噴水広場を見て目を見開き、驚いている。ローズはその視線を追った。
「んン?」
 ミティアの視線の先に、白いワイシャツにネクタイ、金髪でウルフカットの男性を見つけた。ローズから先に名前を呼んだ。
「ケーシス!!」
「やっぱり、ケーシスさんっ!!」
 男性はビクッと反応し、周囲をキョロキョロと見て逃走を図った。
「ま、待つデス!!」
 二人は予約を取ろうとしていた宿を通り過ぎ、裏通りに差しかかったところで男性は立ち止まった。
 男性はケーシスで間違いなかった。用心深く周囲を気にしている。
 ミティアとローズ意外に誰もいないことを確認し、呆れながら言う。
「大都市のど真ん中で指名手配犯の名前を叫ぶな、馬鹿ども……」
 ケーシスが逃げた理由はこれだった。腕を組んで舌打ちをしている。
「あの場にギルドの賞金ハンターが居合わせたら、乱闘ものだぞ」
「む、むぅ……配慮が足りず、申し訳ないデス」
 ローズが呼吸をと整えながら項垂れる。その一方で、走りに慣れているミティアは、再会を感動していた。
「ケーシスさん、無事でよかった。お体は大丈夫ですか?」
「や、あんまよかぁないが、姉ちゃんこそ、よく生きてたな」
「いえ、その、多分死んじゃったんだと思います……」
 二人の経緯を知らないと成り立たない会話だが、ローズは黙って聞いていた。
 沙蘭でシフの襲撃からケーシスとサテラを逃がせた。そのあとに何があったのか、ケーシスは知らない。
 ケーシスがミティアの左腕を掴む。腕輪がなくなっているのを把握した。これがどれほど危険なのか、把握した上で質問をする。
「死んだ? マジか。いや、よく立っていられるな」
「えっ?」
 ケーシスに体調を見透かされた。ミティアは目を丸くして驚いた。
「サテラは、もうほとんど寝たきりだぞ。姉ちゃんだって、そんなに体調がよくないはずだ。よっぽど我慢しているか、生に執着しているとしか思えない」
 差し迫っている自覚はなく、むしろそんなに心配されるとは思っていなかった。だが、ミティアはそれでも違う心配をする。
「あの、サテラは?」
「この街の借家にいるが、今から会うか?」
「会えるんだ……」
 まだ何もしていないのに、感動して涙が零れてしまう。その様子に、ケーシスが顔をしかめ、鼻で笑った。
「相変わらず優しいな。けど、もっと自分も大切にしろ」
 まるで、自分の子に説教をしている言い方だ。置かれた境遇から、近いものがあるかもしれない。もちろん、そこに血縁関係はない。
 ローズもケーシスと意見が合った。
「同意したいですが、ミティアちゃんにそれを言っても難しいと思うデス」
 これでは二人して保護者だ。
 せっかくケーシスに会えたのだ。ローズは提案をする。
「ジェフ君たちを呼んで来ても……」
「超絶面倒だ。許可もなく、勝手にガキを迎え入れて、自分の子どもより世話を焼いてたんだ。あいつらだって、知っていい気はしないだろ」
 親として、子どもへの気遣いだ。だが、意地になっているようにも見える。きちんと説明すれば、理解を得られそうだが、それでもケーシスはしたくないらしい。打ち明けて、ジェフリーが意地を張ってややこしくならないかの心配なら同情する。ローズもミティアも何となくの想像はした。
 
 二人は宿を取ることも休むこともせず、ケーシスの案内について行った。街外れを少し行くと大都市の闇、スラム街を目にする。路上にはゴミ、行く場所を失った人が座り込んでいる。溝にはヘドロが溜まって臭気もする。それでも比較的日の光が射し込む、ひどくない場所に一軒のアパートがあった。
 歩きながらミティアが質問をする。
「ところで、噴水広場で誰か待っていたのですか?」
 噴水広場なら、誰かを待っていたので間違いないだろう。フィラノスの目印なのだから。
「あぁ、壱子を待っていた。どうせギルドで、変なネタでも見つけて妄想でもしてんだろ。場所は知ってるんだから、別に放っておいても支障はない」
 借家と言っていたが、本当に借りているのかも怪しいと感じた。薄暗い階段を上がって、入室した。埃っぽい空気が玄関を抜ける。
 中は薄暗かったが電気を点けると、明るくなった。そんなに悪い部屋ではない。
 部屋は明るいし、壁も張替えがされて、床はフローリングだった。狭いが贅沢をしないで暮らすには支障がない。
 窓際にベッド。備えつけのものだろうが、ベッドの足は錆びている。
 近寄って見ると、やせ細った腕とぼさぼさの髪を結ったサテラを確認した。もうこれだけで、ミティアが咽び泣いている。
 ケーシスが枕の位置を変え、こちらを向けさせた。虚ろだが知っている顔に、微かに口元が動いた。うれしいようだ。
 ミティアは細く力のない手を握って話しかける。
「サテラ、久しぶりだね。お父さんと仲良くしてた?」
 サテラはほとんど動けないようだ。寝たきりだと言っていたが、体を起こしたいらしい。
「あぁ、お姉さん」
「会えてうれしい……」
「泣いているじゃないですか。おかしいですよ」
「これはうれし泣きだからいいの」
 他愛のない会話を耳に、ケーシスは別室でポットにお湯を沸かす。ローズと話し込んでいた。
「ケーシス、あの子は?」
 ケーシスは質問に鬱陶しく思いながら答える。
「旧・種の研究所の産業廃棄物みたいなモンだ。ハイブリッド人間の成れの果て。つまり、あの姉ちゃんと一緒」
 ストレートな返しに、ローズがため息をついた。ぼかされて説明されるよりはよかったが、これはこれで気が重い。
「人間兵器として色んな所いじられて、負荷も半端じゃねぇ。あまりに可哀そうに思って連れ出したが、ルーの野郎のお気に入りだったらしい」
「人間兵器……」
「他国を脅すためのだ。既存の魔法や大魔法が頭ン中にぶち込まれてる。こんなガキにそんなことをしたら、どうなるのかわかってなかったんだろうな。胸糞悪い……」
 ケーシスは説明して、使い込まれたステンレスのカップに水と沸かしたお湯を混ぜた。ポケットからいくつか錠剤を弾き出している。
「ケーシス、どこか、悪いの……?」
「頭も悪いし顔も悪い」
 冗談を交えながら薬を流し込んだ。ケーシスはこういう気質だった。自分に向けられた厚意は、素直に受け取ってはくれない。ローズの質問は続いた。
「あの子は助からないの?」
「人体を壊す薬でもありゃ、そいつをいじって良薬にできるかもしれねぇがな。研究所はほとんどぶっ壊しちまったしなぁ……」
 ローズが表情を曇らせた。その薬に覚えがあるからだ。
「ケーシス、その薬があったら助かる保証はあるの?」
 ローズの質問にケーシスが眉間にシワを作った。カップを置いて無精ひげをいじる。
「昔っから顔に出やすいよなお前……何か条件でもあるのか?」
「条件と言われても……」
「復縁でもするのか? それこそあいつらに怒られちまう。クズな親父ってな」
 昔、愛人関係にあった微妙な仲だ。研究所での過ちだった。お互い終わっているし、納得している。周りにも、仲間にも懺悔をしているのだ。
 少なくとも、復縁を迫る様子ではない。
 ローズはサキから預かっていた、巾着と黄ばんだ紙を差し出した。サキが種の研究所から持ち帰ったものだ。
「紙は抜けがあるので、全部ではないです。これは劇薬だと思うので半分預からせて」
 ローズは巾着の薬をガラスのシャーレに取って渡す。全部ではないのは一応『念のため』だ。ケーシスは受け取って呆れたため息を吐く。
「何、博士しちゃってるんだかな……」
 ケーシスは黄ばんだ紙に目をやった。
「一応聞いておくが、こいつは誰が持って来た?」
「サキ君。あの魔導士の……」
「あー……なるほど。こんな物、持ち帰る精神は、怖いもの知らずのリズに似てんな」
 ケーシスは紙を突き返した。一枚目しか見ていないが、見なくてもわかるようだ。
 ローズは受け取って一応確認をする。
「証拠隠滅、しなくていいの?」
「どうせ俺の字だってわかっていやがったんだろ?」
 ローズがまた顔に出ていたのかと、露骨に嫌がった。ローズは秘密主義とされるアリューン神族との混血だ。だが、その血が薄まっているせいか、隠しごとが顔に出やすい。本人も気にしているようだが、長生きという点以外は人間の考えに近い。
 ケーシスはシャーレをポケットにしまい込んで言う。
「創るのができるなら、壊すのもできるはずだ。サテラやあの姉ちゃんを助けられるかもしれねぇ」
 ケーシスはローズに古びた手帳を突き出した。革のカバーがかかっており、紐を絡めて閉じてある高そうな手帳だ。油で馴染み、よく使い込まれていそうな革だ。
「何デス?」
「その怖いもの知らずの魔導士に渡してやってくれ。あ、俺の名前は出さなくていい。正義の味方、隠れファンだとぼかして伝えてくれ」
 ローズは受け取るも、手帳なので中を見ないでポケットに入れた。
 ケーシスが壁際からベッドを覗き込んだ。あの不愛想なサテラが、ミティアと楽しそうに話をしている。
 ケーシスにとって、ミティアの存在は不思議なものだった。なぜここまで他人に優しく接せるのだろうか。どんな年齢だろうと、どんな種族であろうとも、壁を感じない。
「ケーシス?」
「馬鹿息子は見る目があるらしいな。こんなに心優しい奴はそういない。血眼になって助ける手段でも探してるんだろう?」
「よくご存じネ……」
 ケーシスが踏み出してミティアの肩を叩く。くりっとした緑色の瞳が見上げた。
「姉ちゃん、ちょっといいか」
 ケーシスがうしろ手で人差し指を動かし、ミティアを借家の外に招いた。
 ミティアは話し込んで楽しくなり、気分が上がっていた。そのせいもあって、外に出ると鼻を突くような臭気で現実に戻された。日が傾いて来たのか、茜色の空が見える。
 ケーシスは腕を組み、ミティアの顔をまじまじと見ている。
「ど、どうしました?」
「いや、姉ちゃん、どれくらい体調悪いんだ?」
「あ、えっと、立ち眩みみたいなのが起きるくらいです。ふわふわって地面に足がついてないみたいなの。本当に一瞬だけ……」
「…………」
 ケーシスの表情が険しくなった。この表情、ジェフリーに似ている。
 渋いものでも口にしたかのように、口を動かしている。言葉を選んでいるようだ。
「サテラは二日前に急に立てなくなった。姉ちゃんと別れてから、手立てを探すために貿易都市ノアに向かった。知っての通り、野生動物の狂暴化で騒動だ。そこでサテラに無理をさせちまった。それがいけないのかもしれない。急にガス欠をしたみたいに魔法も使えなくなった。立ち眩みを起こすようになって、今の状態だ」
 サテラも同じハイブリッド人間。だが、サテラの方が手を加えられた過程は多い。中には、何人詰め込まれているのかも定かではない。未熟な体ゆえに、体の負担は計り知れない。
 そして、症状が一緒だった。ミティアの表情が思わず曇った。
 このままでは、自分も同じ道を辿るだろう。
「すいません。サテラは、あとどれくらい生きられますか?」
「おい、自分の心配はしないのか?」
「わたしもそうなるかもしれないのはわかっています。だけど、わたしよりサテラに楽しい思い出を少しでもって思うと……」
 ミティアは自分以外の人のために泣ける心優しさを持っている。彼女の場合は度を越しているかもしれない。だから余計、周りは彼女を助けようと躍起になるのだろう。
 ケーシスだって、その思いは例外ではない。家の前の柵に寄りかかった。
「ラシューブライン博士、盗み聞きをしているくらいならこっちから聞くぞ。一行で、大きな案件を抱えてるのか聞いていいか」
「ぴっ!?」
 しっかり盗み聞きをしていたローズが、玄関のドアを弾いた。勢いで開いてしまう。
「あー……えーと……腕輪をもう一度作って、それから本来のミティアちゃんを取り戻すために、ルーに喧嘩を売りに行く空を飛ぶモノを作るくらい……カナ?」
 大雑把な説明だが、だいたい伝わった。ケーシスは深くため息をついた。
「天空の民補正もあって、衰退のスピードは多少抑えられるが、それも限界がある。そのシナリオはよくできているが、今から『放出』を止めても間に合わない。姉ちゃんは近いうちに、サテラみたいに動けなくなっちまうだろう」
 同じなら、そうなるはずだ。ミティアは俯いて考えていた。それでもサテラに何かしてあげたくて、泣きそうな顔を上げる。
「手は、あるんですよね? そうですよね、ケーシスさん……」
 寄りかかっていた柵が軋む。折れないか心配な古さだ。ケーシスは空を仰いだ。西日の中に太陽の行方を捜し見ながら呟く。
「太陽は沈むがまた昇る。人は太陽の力を借りるんだ。だけど、借りた分は返さなくちゃいけねぇ。理不尽な運命なんてものから逆らって生きるために。太陽の力を借りて、太陽を救う」
 意味深な言葉だった。ミティアにはわからなかった。
 ローズは頷きながら理解している。太陽はミティアを指しているのだ。
「ケーシス、あなた……!!」
「気が変わんねぇうちに竜次を呼んで来い。クソみたいな医者だろうが、サテラの看病くらいは任せていいだろうからな」
 聞いてローズは大きく頷いた。
「ただし、竜次だけにしとけ」
「む、難しいデス……」
「竜次はともかく、ジェフリーはメンタルがクソガキだからな。自分より可愛がられてる弟がいるって知ったら、人生無駄にする喧嘩を起こすだろうし面倒だ」
 ジェフリーはケーシスと会った際に、初対面だった。つまりケーシスは、ほとんどジェフリーと過ごした時間がない割に、ジェフリーの勝手も扱いもよく知っている。その点は不思議な反応だ。
 確かにジェフリーは嫉妬が心を抱きやすい。ローズもミティアもそう思った。
「ジェフリーはヤキモチ焼きさんかも……」
 ミティアは小さく笑ってケーシスを見上げた。
「先生が来るまで、サテラとお話しててもいいですか?」
「しゃーねぇなぁ……待ってる間、茶でも淹れてやんよ」
 がさつだが、思いやりのあるケーシス。この人は、どれだけの女性を泣かせたのだろうか。そんなつまらない考えをしながら、ローズは繁華街へ向かった。

 ギルドで壁とにらめっこをしている竜次。カウンターではコーディが、何枚も書類にサインをしては時間を待つというもどかしい手続きを繰り返していた。
 退屈していたコーディは竜次に話しかける。
「何かいい話あった?」
「んー、そうですね、各地の野生動物の対策を見ていると、何も沙蘭が正解ではないのですね。鈴や、音のする紐を張り巡らせている工夫もありますし、興味深いです」
「そういうチェックする人って、偉い人みたいだね」
 各国の情勢をチェックなど、偉い人かその筋の人がやるものだとコーディは思っていた。呆れていると、この間合いでまたコーディがカウンターに呼ばれた。
 対応してくれる若い女性が不慣れだが、頑張って対応してくれている。
「ここで引き受けてもいいのですが、あちらにプロがいますよ?」
 面倒になったのかと失望しかけたが、女性は手の平を向ける。その先には、待ち椅子の端で週刊誌を読みながらニヤニヤと下品に笑う燕尾服の女性の姿。
 コーディは名前を読んだ
「壱子さん!」
 確かにこの人はプロだ。腰から下がっている鋏が目立つ。
 竜次も声をかけた。そもそもここで何をしているのだろうか。
「壱子様、こちらで何を?」
 二人が声をかけても、壱子は雑誌を開いたまま、どこでもない空間にニヤニヤとしている。知らない人が見たら、気味が悪いと思うかもしれない。
 コーディは強引に現実世界に引き戻した。
「い・ち・こ・さ・ん!」
 妄想癖がなければ、ギルドの凄腕ハンターなのにこれはもったいない。
 壱子は雑誌をたたみ、立ち上がって礼をした。
「あぁぁ、こほん。これは失礼、コーデリア様と竜次お坊っちゃん、お久しゅうございます。いかがなされましたか?」
 本職はお付きやら執事などと言っていた気がするが、ギルドの情報通だ。竜次はともかくとして、コーディは用事があるらしく、交渉を開始した。
 コーディが書いた文章を本にしたいのだが、内容が難しく握り潰されてしまうか取り合ってもらえないという可能性を含めて説明した。
 すると、黙って聞いていた壱子は顎に手を添えながら考え込んだ。
「なるほど……候補はございます。ケーシス様ご愛用のプレス社もありますし、いっそ週刊誌に掲載という強硬手段もございますよ」
 悪巧みをするような不敵な笑いをしている。まさしくプロの顔だ。
「いかがいたしましょうか、わたくしが預かってもよいのですが、機密文書ですか?」
「そこまでではないけど、読んでもいいよ」
 コーディはトランクから原稿を取り出した。トランクの恵子に気付き、壱子はにっこりと挨拶をして撫でた。動物が好きらしい。
 原稿は冒頭の数枚を読んだだけ。それで壱子の目つきが変わった。
「ほほぅ、これは興味深いものですね。持ち込む会社が絞れましたが、交渉は難航するかもしれませんねぇ?」
「な、何とかなったりしないかな?」
 コーディが悲願する。その反応に、思わず竜次も強く推薦した。
「実際に知っている方々が絡んでいる話なのです。旅の合間に時間を作って、一生懸命まとめてらしたので、私からもお願いします」
 竜次にまで頼まれたら壱子も断れない。原稿を正式に受け取って、二人に頷き、笑みを浮かべる。この営業スマイルはなかなか憎めない。
「承知しました。やってみましょう。責任を持ってお預かりします」 
「ありがとう壱子さん! お金、必要だったら、私宛にギルドで連絡して」
 コーディが眩しい笑顔を見せた。この幼さが純粋に可愛らしい。
 竜次は壱子がなぜここにいるのかを疑問に思った。
「壱子様はこちらで何を?」
 ギルドの情報通ならいても疑問はないが、雑誌を広げたまま何かを待っていたのが気になった。
 壱子は怪しげな笑みを浮かべる。
「とある方の代理です」
 プロは安易に内容を口にしない。さらっと触りだけ口にした。
「わたくしは手続きがございますので」
 壱子はさらりと流し、燕尾服を整えながら再び座った。
 竜次は一行の用事を思い出した。
「あぁそうだ、私たちも合流しませんと!」
 いつまでもギルドにいても進まない。他の者は別行動している。
 二人は軽く手を振って、壱子と別れた。この街に限らないが、ギルドに関わるならいくらでも遭遇するだろう。繁華街を抜け、すずらん通りを目指した。
 歩きながら竜次がコーディと話をする。
「よかったですね、コーディちゃん」
「ん、いったんはね。あの文章自体には、修正がたくさん入るだろうけど」
 歩きながら会話を交わすも、下手をしたら親子のように見られるかもしれない。
「いったん……?」
 竜次は妙な引っかかりを感じ、質問をした。
「何か腑に落ちないお話だったとか?」
「あ、そうじゃないの。ただ、おじさんはまだ続きがあるって言ってたから、納得してないんだ」
 竜次はコーディの頑張りを目にしているが、そういう話なら気になる。
「でも、コーディちゃんが旅をする目的がこれで叶った。本を書くことが目的だったのでしょう?」
「ま、まだ終わらないなら、これからも同行していいでしょ?」
 コーディの夢でもある、本を出す話は旅の理由の一つである。もはや、それだけではない。もっと書きたいことはある。
 ここで別れなど、絶対にない。コーディは否定した。
 竜次はまだ旅に同行する理由の一つ、『おじさん』が気になっていた。
「しかしあの剣士さん、信じてもいいのでしょうか」
「お兄ちゃん先生が言うと、また意味が変わって聞こえるね。おじさんを説得したのは、お兄ちゃん先生だし?」
「うぐぐ……」
 変に気を遣わないが、コーディはしっかりと物申した。
 竜次は肩を落とし、激しく凹む。
「まぁ、招き入れる形にしたのは私ですからね。もう敵対しないだけ、いいのかもしれませんけれど」
「お兄ちゃん先生って、本当にどこか迂闊だよね」
「き、今日は手厳しいですね。コーディちゃん……」
 肝心なときではないが、迂闊と言えばそうなる。クディフがもう一度敵に回るなら、責任は竜次にあるだろう。
 街に賑わいが戻りつつあるが、すずらん通りは変わりなかった。繁華街に人が流れたのだろう。
 途中、竜次は小さい薬屋に寄って、道中でなかなか買えなかった強めの薬を買った。
 医薬品と同じくらいの成分の薬が買える街は限られる。手早く会計を済ませ、再び街中に出た。
 木箱の積まれたお店、キャラメルシィの前に来た。ガラスの扉の向こうでは、三人の姿が見えたがメルシィと談笑している。仲直りはできたようだ。
 コーディと竜次は覗き見をするようになり、入店の頃合いを見計らっている。その二人は背後から声をかけられた。
「ん? あれ? もしかして……あんたたち」
 振り返ると、すずらん通りを横切ろうとしているアイラの姿を見つける。
 いつものリボンに帽子、ストールが温かそうだ。
「あれ、マダム?」
「アイラさん、こんにちは……ってあれ?」
 打ち合わせなどしていないし、約束もしていない。絶妙なタイミングでの遭遇にお互い驚いている。
「ちょうどよかった。馬鹿弟子はどこだい? 何だか街中で妙な噂を耳にしたから、まさかと思って探していたのさ」
 アイラは歩み寄った。近寄られて気付いたのは、腰には立派なキセルがぶら下がっている。喫煙を解禁したらしい。
 竜次は眉をひそめる。アイラの言葉が気になった。
「噂、ですか?」
 悪い話なのかと警戒したが、アイラは上機嫌だ。
「街中でちょっとした期待が湧いているんだよ。史上最年少の大魔導士誕生なるか、ってねぇ」
 街で噂になるとは思っていなかった。思わず二人は顔を見合わせる。
「んー……サキ君は……そうですねぇ」
「あー……うん」
 竜次もコーディも渋い反応を示す。それもそのはず。サキは受けないと口にしていたのを聞いていたからだ。
 アイラは首を傾げた。
「どうしたんだい? もしかして、違うのかい?」
 このまま話し込みそうになった頃合いで、キャラメルシィの扉が開かれた。
 店の中から三人が出て来た。まずはジェフリーが挨拶する。
「あっ、久しぶりだな。おばさん、いい知らせか?」
 アイラの表情が明るい。ゆえに、ジェフリーはいい情報でも持って来たのかと期待していた。
 サキも不思議に思っていた。
 食い違いはすぐに険悪な空気を招いた。アイラは何も隠さず、堂々と言う。
「いい知らせって、サキの試験の話じゃなくてかい?」
「お、お師匠様?」
 話を蒸し返すようになり、サキは気を落とした。できれば触れないでもらいたいと思っていたが、そうもいかないようだ。
 このままではまずいと、竜次が思いっきり話題を遠ざけた。
「えっと、ジェフ、要件は無事に済みましたか?」
 不自然な振りにジェフリーが戸惑う。
「あ、いや、どちらかというと明日に持ち越しになった」
「えっ?」
 ジェフリーから返って来たのは進展のない答えだった。またも竜次の虚しい空回りだ。
 その空回りをフォローするようにキッドは言う。
「でも、この子が仲直りしたらから、来てよかったわ」
 竜次にとって、キッドは救いの女神。空回りの虚しさは遠ざかった。
 いったん試験から話題が離れた。サキははにかみながら照れくさそうに頷く。
「メルにひどいことを言ったのを謝りました。それと、職人のお父さんに会えないかも聞いたのです。明日帰って来るみたいでしたので、お約束をしました」
 話が離れたまま、一行の要件ばかりが進んだ。だが、それも一瞬だけ。
 アイラの出方に注目するも、圭白が気を利かせて話を回していた。
「あ、圭白お兄様……そうでしたね」
 コーディのトランクの巾着から恵子が顔を覗かせた。
 アイラは圭白から話を伺っている。
「ん、なるほどね……」
 読心術とは便利なものだ。数多くの言葉を交わさなくとも、大体の事情は飲めてしまう。習得は難しいものかもしれないが、圭白との契約はこれが売りなのかもしれない。
 アイラも事情がわかって、別の話をする。
「あの学者さんは? アリューン界での土産があるんだけど……」
 人情カバンから大きめの封筒を出して尋ねる。残念ながらローズはここにいない。
 おそらく封筒の中身はアリューン神族の技術だろう。コーディは思い出して目を輝かせる。
「あ、空を飛ぶ技術だ!」
 アイラはここで表情を曇らせた。
「その代わり、知恵を借りようと思っていたんだがねぇ」
 アイラにも事情があるようだ。話すにしてもここは街中、もう少し場所を考えたい。竜次が情報の交換も含めた意味で、提案を持ちかけた。
「どこかで話の場でも設けた方がいいかもしれませんね」
 しかし洒落たカフェでする話でもない気がする。
「どこかって?」
「そ、そこまでは特に……うーん?」
「お兄ちゃん先生って無責任だね」
「き、気にしてるのに、うぐぐ……」
 竜次はまたもコーディに呆れられた。コーディは竜次の扱い方がわかったのか、手厳しい対応だ。
 しかし話し込むにも、どうしたものか。今度はアイラから提案をした。
「あぁ、ウチに来るかい?」
 アイラは不敵な笑みを浮かべている。以前、沙蘭でフィラノスに家を買うとは言っていたが、もう手をつけたようだ。サキもこれには驚いている。
「えっ、お師匠様、それってもしかして……」
「あぁ、そうだよ。家、買ったのさ」
 アイラはさらっと自慢した。家を買うなど、そう簡単にできることではない。しかも、ブランド力のあるフィラノスだ。絶対に高い。
 せっかくだが、見たい気持ちもある。和やかな空気の中、サキの心境は複雑だった。帰る場所ができてしまったのだ。静かに暮らせる選択肢が生まれた。
「今日引き渡しって言われたから、荷物整理がてら、行こうと思っていたのさ。自慢したいから来なさい」
 自慢したいから来なさいという、今までにない誘いだ。
 一行の予定が明日以降の持ち越しになり、空白が出た。これ以外に何をするか、あの宿で時間を潰す選択もある。昨日は激しい探索だった。だが、きちんと対策をしたおかげで買い物をするほど消費はしていないし、体力の温存を重視したい。
 ギルドの依頼や、探索もないのだからアイラの話に乗るのは悪くない。
 アイラが案内したのは、魔法学校の裏通りだった。フィラノスという街では、どうしても魔法学校の存在が大きい。周りに住宅があったと把握していなかった。
 竜次が住宅街を見渡しながら意外に思った。
「こんな場所に住宅街なんてあったのですね」
 どうしても目立つ建物があると、他の建物や環境に気がつけない。
 キッドが通りの変化に敏感な反応を示す。
「これ、もう少し行ったら高級住宅街ですよ。懐かしい……」
 キッドはこの街で暮らしていた過去があるのだから、詳しいのも納得する。馴染みがあるのか、明るい表情だ。
 とある一軒の家の前でアイラが足を止めた。キッドが目を丸くする。
「えっ、もしかして……」
 キッドが息を飲んだ。だが、サキも違和感を抱く。
「僕、この家……知ってる……かも?」
 サキは幼い頃の記憶が、魔導士狩りのせいで飛んでいる。覚えていないはずなのに、感じた『何となく』で茫然としていた。
 アイラは一同に振り返り鍵を見せた。この家の鍵のようだ。
「前の持ち主が、最近騒がれていた野生動物の狂暴化で引き払ったから、そのタイミングで押さえたのさ。別の人の手が入っているから、今入っても、面影くらいしかないだろうけどね」
 二人の様子がおかしいのはこれだけでわかった。
 特に反応が大きかったのはサキだ。額に手をつき、表情を歪ませている。
「ちょっとだけ、思い出した、かも……」
 抉られるような頭痛を堪え、何度か深呼吸をしている。
 竜次がサキの背中をさすった。気分が悪いはずだ。
「一度にたくさん思い出そうとしないで。体の負担になりますから」
 サキは頷く。多分言うだけ無駄だろう。彼は知らないままを好まない。
 ジェフリーは複雑な表情しながら訊ねる。隣で俯くキッドを気にしていた。
「おばさん、これっていいことなのか? この反応だと、キッドとサキが住んでた家だろ?」
「一般的にはナシだろうね。忘れたいだろうさ、あんな忌まわしい事件。あんたたちの父親の命を奪ったのは、あたしの姉さんなんだ。こんなの、あたしがしたところで何の罪滅ぼしにもなりゃしない。でもね、気持ちだけでも償いはしたいのさ……」
 アイラは小さく首を振り、自分にできることでこの姉弟への償いを示した。
 キッドは家を見上げている。
「でも、うれしいです。しようと思ってもできないと思います。家の中が見たいです。何も思い出が残っていないかもしれませんが」
 キッドは中を見たいと申し出た。もちろん、アイラが嫌な顔をするはずがない。
 アイラは鍵穴に鍵を通している。
 コーディは質問をした。よくある質問だ。
「アイラさん、家を買うって高いんでしょ?」
「少し前の騒動で価格が大幅に下がっていたからねぇ。予定よりおつりが来たくらいだよ」
 鼻で笑って余裕の答えだ。
 犬猿の仲であるこの場にいないクディフが『銭ゲバ王女』と言っていたが、溜め込むばかりではなく、きちんと使っている。
 開錠して中へ入ったが、まだ電気は通っていないみたいだ。
「暗くてすまないね」
 カーテンなどはまだかかっておらず、この平屋の窓に日の光が差し込んでいる。もうすぐ西日だ。アイラは皆を中に通し、扉を閉めた。代わりに換気のために僅かに窓を開ける。
 前の持ち主は大きな家具はそのままで、出払ったようだ。布団がないベッドが二つ、天井には照明がぶら下がっているが埃まみれだ。掃除するか、買い替えるかだろう。
 高めの天井まで届くほど、大きな本棚がある。手が届く範囲だけが空で、上段は本が残っていた。特に天井に近い所は何年も手をつけていないのか、埃が綿のようになっているのが見える。梯子か脚立が必要になるだろう。
 当然ながら、サキとキッドは残っている本を気にしていた。
「取ろうか?」
 飛べるコーディが二人の顔色を伺うが、サキは首を振った。
「遠慮します。何か落ちてきそうなので……」
 読みたいが、長い年月、手つかずであったのが怖い。虫や生き物の死骸が落ちてきそうだ。鈍い頭痛も治らず、これ以上気分が悪くなるのはどうだろうか。サキは冷静になった。ここへ足を運んだ目的は、アイラと情報交換をするためだ。
 部屋の中には大きなダイニングテーブルがある。入口に合わないゆえに、むしろどうやって入れたのかと、疑問に感じるし運び出しは難しそうなものだった。
 キッドはサキに笑みかけ、言う。
「二人で住むには大丈夫そうじゃない。よかったわね」
 キッドはサキに変える場所ができたことを手放しでよろこんだ。
 アイラはしっかりとその言葉を拾った。
「別にいいじゃないか。お姉ちゃんなんだから、一緒に帰って来ていいんだよ」
「えっ?」
 アイラはキッドに向き直る。キッドはサキの顔をチラチラと見ながら反応を待った。
「ははっ。僕、あんまり不在が多いかもしれませんけどね……」
 アイラはキッドを家族として迎え入れるつもりのようだ。
「今から本当の家族にはなれないかもしれないけど、ユッカちゃんの友だちとして、これくらいはさせてもらってもいいかい?」
 キッドは感極まって、目に涙を浮かべている。アイラはそれを見て両腕を広げ、ニッコリと笑う。
「遅いかい?」
 キッドはかぶりを振ってアイラに抱きついた。
「アイラさん、ありがとう……」
 一度はアイラが昔の話を打ち明け、サキを遠ざけさせようとしたせいで険悪になった。だが、今は違う。
 ジェフリーと竜次はこの場にいるのが申し訳なく思った。この三人だけで、静かな時間を設けたいと思ったくらいだ。
「おばさん、カッコよすぎないか?」
「羨ましいですね。こういうの……」
 傍から見ても、アイラのしたことは大きい。

 アイラはキッドを解放し、落ち着かせる。
「今だからは話せるけど、姉さんはフィラノスの王に従うしかなかったんだよ」
 明るい話題から一転し、アイラは懺悔をするように告げた。
「国が暗殺者を抱えるのはよくある話だけど、姉さんと王様はそれ以上の関係だったんだ。妾……って言うのかね。王妃様は病死、王子様は魔導士狩りで亡くなってしまった。察しがよけりゃ気が付くだろうけど、姉さんの組織は王子様も殺めてしまった。組織が衰退したのは、見限られたからなんだよ」
 衝撃的な話だ。アイラの姉、ラーニャは長年サキを虐待していた。それが何のつながりがあるのだろうか。
 サキは震えずに聞いていた。最大のトラウマに向き合う。
「姉さんは魔導士狩りを起こす前に王様との子どもを流産してね、荒れていた時期もあった。姉さんがサキを殺すこともできたはずなのにそうしなかったのは、それもあったのかもしれない」
 アイラは俯き、首を振った。自信を憐れむような顔をしている。
「姉さんは子どもの愛し方がわからなかった。あたしはこれでも何度も反抗したんだよ。サキは自分が引き取ると本気で喧嘩をしたこともある。だけど、子どもを宿したこともない、お腹を痛めたことがないと言われたら、あたしには何もできなかった」
 アイラがこの家を手にした理由は、サキとキッドに少しでも償いがしたかったからだ。もうフィラノス王もラーニャもこの世にはいない。話しても支障はないだろうと、判断したようだ。アイラなりに板挟みにも苦しんだ。そのしがらみももうない。
 話したところで、サキの心の傷は癒えることはない。消えることもない。
 サキは思い詰めた表情をしていた。思うところがあるだろう。目尻には涙が浮かんでいる。
「あの、お師匠様……お願いがあります」
 サキは一度、大きく息を吸い、ゆっくりと吐いた。もう何を言うのかは決まっている。
「試験、受けたいです」
 遂に言ってしまったと目を瞑って身震いをしている。誰とも目を合わせないのは、反応が怖いからだ。
「いろんなことがあったけど、それでもお師匠様は僕のお母さんとして頑張ってくれた。だから、その恩返しがしたいです」
 アイラがしてくれたことに感銘を受けた。言ってしまえば、その影響である。
「サキ……」
「あぁっ、で、でもやっぱり怖いかも」
 サキにしては珍しく自信がないらしく、尻込みしている。気持ちは傾いた。覚悟が足りないだけだ。
「いいに決まっているじゃないかい。お金の心配はしなくていいから、願書を書きに行きなさい」
 アイラは満面の笑みでサキの頭を撫でた。サキがおそるおそる目を見開く。仲間の誰も嫌な顔をしていない。
 このあどけなさが残る魔導士にとって、これまでにはない大きな挑戦だった。
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