告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

文字の大きさ
26 / 70

運命の番専用抑制剤

しおりを挟む
 父親の研究室で伊月さんに再会したと思ったら、あれよあれよという間に車に乗せられ会見場のホテルに連れ込まれた俺。
 待機部屋と言うには些か……かなり豪華な一室にて父親と伊月さんが1人の男性と共に打ち合わせをしている周りでバタバタとスタッフが動いている。
 そこにお茶を出されポツンと俺1人。

 場違いじゃね?

 ふっかふかのソファーに座らされ、あまりにも手持ち無沙汰なので何か手伝おうとすると「お願いだから座ってて」と青い顔で懇願されてしまう。まあ、何も分からない俺が手伝っても邪魔になるだけかと大人しくしておくがヒマである。

 会見開始10分前になり、3人が部屋を出るのを見送ろうとしたら俺も部屋を追い出されてしまった。どうやらついて行かなければいけないようでついて行くが、クエスチョンだ。聞きたくても聞ける状況じゃないし、高級スーツに身を包んでいる3人に比べ伊月さんから貰った服とはいえTシャツとスキニーにジャケットを羽織っている俺はどう見ても浮いている。

 会見場に着くと、既に席は記者や関係者で埋まっていて壁側には何台もカメラが設置されている。袖口にいてもざわめきが聞こえ、関心の高さが伺える。

『本日はお忙しい中お越し頂きありがとうございます。時間になりましたのでこれから祐善製薬株式会社並びに花ノ宮ホールディングスが共同開発した新しい抑制剤の記者会見を始めたいと思います』

 進行役の一言で会場が静まり3人が出ていくとカメラの音どフラッシュの光が激しくその場を波打たせる。1段高くなっている所に用意された机には豪華な花が活けてあり、記者側から見て真ん中に男性、右に伊月さん、左に父親が座る。

『まずは壇上の方の紹介をします。祐善製薬株式会社専務祐善寺新羅しんら、花ノ宮ホールディングス常任理事花ノ宮伊月、薬学研究所マスター研究員で大学教授三波宇佐です』

『本日は我々の開発した新薬の発表にお越し頂きありがとうございます。今回開発した薬は抑制剤、「運命の番専用抑制剤」です』

 軽く会釈をし話し始めた男性は神楽の兄だったようだ。俺名前しか知らなかったから全然気づかなかった。穏やかな神楽より厳しい空気を纏っている気がする。「運命の番専用抑制剤」と発表した途端、ざわつく会場も何のその、淡々と話すあたりこういう場面に慣れているとみた。

『この抑制剤は恋人や家族を持つ人が本能ではなく心から愛する人を選ぶ事ができるようにするものです。愛する人がいるのに運命の番と出会う絶望、本能は運命に惹かれるのに心は違う相手を求める……それで体調や精神を崩す人もいるのです』

 伊月さんも体調を崩したりしたのだろうか。無表情で話す伊月さんからは何も読み取れない。

 その後、αとΩの器官の説明や抑制剤の効能・効力・持続時間などの説明が続く。

 質問時間になると「本当に運命の番に効くのか」「ずっと飲み続けなければいけないのか」などポンポンと質問が出て壇上の3人が答えていく。その中「抑制剤を作ろうと思ったきっかけは」という質問に2人が伊月さんを見る。

『それは私が5年前、運命の番と出会ったからです』

 はい、今日イチのざわめきが起こりました。もうこの時点で伊月さんが運命を拒否したのが分かったのだろう、大きくざわりとした会場が次の言葉を聞き逃さないように静かになる。

『プライベートの事なので詳しくは話せませんが、その時私には愛する人がいたので拒否しました。しかし相手はいまだ私を望んでいます。いくら接近禁止の契約を交わしていたとしてもそれを破り近づかれたら本能が認識してしまう。Ωが別のαと番になれば互いに運命からのがれられますがそうでない場合、αは物理的に逃げる事しかできない。それにいつまでも愛する人を不安にさせてしまう。だからこの抑制剤を作ろうと思ったのです』

 うん、さっき父親の研究室で聞いたな。で、記者からの質問だったのに何故袖口にいる俺を見ながら話した?記者達もあれっ?ってざわつき始めてるぞ。

「あの、もしかして袖口に……」

『はい、会見を見守ってくれています(にっこり)』

 はいーーー⁉俺意味も分からず連れて来られただけなんですけど⁉記者の人も「おおっ」「姿を見せてもらう事はできますか?」とか言ってるし。やめてくれ!

 ぶんぶんと首を振りながら足を踏ん張って拒否するが、スタッフに後ろから押されてずるずると袖口から出てしまった。スタッフ力強いな!

「瀬名」

 伊月さんが椅子から立ち上がり、俺の所まで来て腰に腕を回し逃げないように密着する。カメラを向けられ物凄い勢いで写真を撮られテンパって目線をさ迷わせ父親に目だけでタスケテと見るが、机の下でサムズアップして助ける気はないようだ。
 てか、新羅さんも真面目な顔してサムズアップしないでくれ!

 そんな中でも伊月さんはご機嫌な様子で腹立たしい。

「ご機嫌ですね」

「ああ、みんなに瀬名は僕のものだって公表できるからね。これで変なαは寄って来ないでしょ。それにね」

『私には彼がいるし抑制剤もある。運命に振り向く事は無い』

「だから諦めろ」

 マイクでは拾わない小さな声。一点を見つめる伊月さん。記者達は興奮して壇上しか見ていないので気づかれていない小さなシルエット。そのシルエットは口と両脇を抑えられそのまま会場から出て行った。あれは、

「伊月さんの」

 そのあとの言葉は何故か言いたくなかった。言うと認める事になるから。

「僕は瀬名しかいらない。7年前からね」

 騒がしい会場の中でその囁く声だけがやけに耳に響いた。






 そしてハッ、と我に返り気づく。







 俺、もう世間的に伊月さんから逃げられなくね?
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~

水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。 「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。 しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった! 「お前こそ俺の運命の番だ」 βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!? 勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

処理中です...