【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子

文字の大きさ
81 / 97

白い空間では

しおりを挟む
「またここへ来てしまったのね」

私は見覚えのある空間を漂っていた

「ここは‥‥前に」

「ええ。前にもここへ来た事を思い出した?」

「あなたは、聖女様?天使様?ですよね‥」

「ええ。戻ってきたのね‥アリアン。前に全てを話したけれど、あなたは目覚めるとその全てを忘れてしまったわね‥‥
やっぱり人の意識を取り戻すと、ここでの事は何も覚えていられないのね‥‥」

聖女は、残念そうに笑った

「すみません私‥‥聖女様の願いを忘れてしまって」

「仕方がないことよ。気にしないで」

「結婚するつもりでおりました」

「‥‥愛しているのね、ヴィルを‥」

私は頷いた
彼の嬉しそうな顔を思い出すと、胸が痛くなった
ヴィル様は、今どうしているかしら‥‥

「あなたは、どうしてここへ来たか、理解しているのかしら?」


「はい。実は‥‥見たことの無い女性に刺されてしまい、そこから意識を失ってしまったようです」

「かわいそうにね‥痛かったでしょう?前にここへ来た時も、酷い暴行を受けていたわね」

「私が何か悪い事をしているということでしょうか?教えていただけますか?」

「ええ。ゆっくり話しましょう。お茶でも飲みましょうよ!あなたの好きな甘い物も用意するわね」

楽しそうに手を叩いた聖女様は、真っ白い空間に大きく手を広げてクルクルと回すと、突然可愛らしいテーブルと椅子が現れ浮かんでいる

「さぁ、座って座って!お茶なんて久しぶり!あなたの母であるマリアとお茶を飲んだのが最後だわ」

「母が?ここでお茶を飲んだのですか?」

「ええ。毒を盛られたから、飲みたくないと言っていたけど、もう気にしなくていいじゃないって言ったら笑っていたわ。二人で長い時間話をしたわ」

「それで‥‥母は‥‥何処へ」

「私の中へ戻っただけよ」

「えっ?」

「前に話したけれど、忘れてしまったかしら?
私の血を継ぐ者は、私の魂を分けたもう一人の私ということなの。だから、あなたも私と一体よ。
人の世界で私の血を継ぐ者が生まれれば、私はその魂が私の元へ戻ってくるまで天へ帰れない。
あなたは今、ここへ戻って来た。
このまま、私の魂とひとつに戻れば、ようやく百人目のあなたで私は天に帰ることが出来るの!

四人の騎士と皇帝との縁も切ることが出来るのよ。

皆自由に解放されるわ。どうかしら?神の元へ一緒に帰らない?」

「‥‥‥」

「ごめんなさい。今あなたは辛い思いをしたばかりだものね。考える時間が必要よね?お茶を飲みましょう!」

目の前にはパッとティーカップが置かれ、パッと甘いお菓子が並ぶ

「さぁ、食べて!」

「‥‥体が無くても食べれるのですか?」

「ええ!大丈夫。マリアと同じ事を聞くのね。フフフッ面白いわね」

私は紅茶をひと口飲んだ

「美味しいです」

「そうでしょう?天の者は、皆体が無くても、食べたい物を思えば何でも食べれるわよ」

「そうなのですね!」

「フフフフッ、あなたはとても素直で優しいわ。それなのに、辛い思いばかりでかわいそう。あなたには、人の世界は合わないわ」

「聖女様‥‥。教えていただけますか?」

「ええ。あなたを刺した女性は、ルドルフの婚約者だった人よ」

「え?婚約者?」

「婚約は破棄していたけれど、その理由はルドルフがあなたを愛したせいだったの」

私は言葉を失った

「愛されるあなたに嫉妬して、彼女は罪を犯してしまったわ。
彼女だけじゃない。
ローズやエリナも、あなたがヴィルの妃になる事に嫉妬して殺そうとした。

あなたが何もしていなくても、ヴィルとルドルフに愛されるだけで、彼女達に恨まれたのよ」

「何もしていなくても‥ですか」

「あなたには辛い事を言うわ。今までの九十九人、私を含めた全員があなたと同じ思いをしたわ。
私を愛する四人の騎士と皇帝を愛した女性達に恨まれ、嫉妬され、殺されてきた。
百人目のあなたも同じ様に殺されかけている。
だからね、これで終わりにしないかしら?
あなたが頷いてくれたら、私とひとつになり、あそこの扉を開いて天に帰るわ」

「聖女様‥‥」

「あなたの気持ちも解るわ。私も五人を愛しているから。離れるのは寂しいわ。けれど、もう血を継ぐ者達が苦しむ姿を見たくないの。あなたも、自分の子が同じ運命を辿ると思うなら辛いでしょう?」

「‥‥そうですね‥」

「理解してくれたかしら?」

「ええ‥‥聖女様は、百人も見続けてきたのなら、さぞお辛かったでしょうから」

「良かった!納得してくれて嬉しいわ」

「ですが、私の心はまだ想う方がたくさん居て‥‥整理できておりません」

「解ってるわ。ゆっくりでいいのよ。さぁお茶を飲んで!たくさん話しましょう」

聖女様は嬉しそうに、テーブルの上に山のようにお菓子を並べた‥‥








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】 幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。 そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。 クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~

Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。 だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと── 公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、 幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。 二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。 しかし、リリーベル十歳の誕生日。 嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、 リリーベルを取り巻く環境は一変する。 リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。 そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。 唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。 そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう…… そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は─── ※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』 こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。 めちゃくちゃチートを発揮しています……

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています 

さら
恋愛
――契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています。 侯爵家から追放され、居場所をなくした令嬢エリナに突きつけられたのは「契約結婚」という逃げ場だった。 お相手は国境を守る無骨な英雄、公爵レオンハルト。 形式だけの結婚のはずが、彼は不器用なほど誠実で、どこまでもエリナを大切にしてくれる。 やがて二人は戦場へ赴き、国を揺るがす陰謀と政争に巻き込まれていく。 剣と血の中で、そして言葉の刃が飛び交う王宮で―― 互いに背を預け合い、守り、支え、愛を育んでいく二人。 「俺はお前を愛している」 「私もです、閣下。死が二人を分かつその時まで」 契約から始まった関係は、やがて国を救う真実の愛へ。 ――公爵に甘やかされすぎて、幸せすぎる新婚生活の物語。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

処理中です...