【完結】逃げ出した王女は隣国の王太子妃に熱望される

風子

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夢なら‥‥

「俺は人と会う用ができた。ヨハンも少し残ってくれ。ルリアは中庭の噴水を見てくるといい。夜の中庭は見応えがあるぞ」

「‥‥?」

突然上機嫌に言うと、私の周りにはあっという間に護衛騎士が集まった。
急かされるように食堂を後にする。

何なの?一体‥
何もかもが腑に落ちない。

仕方なく案内されるまま中庭に行くと、灯りで照らされた美しい噴水が目に入ってきた。

「まぁ、綺麗」

水の粒がキラキラと光り、中心に立つ彫刻の女神像はまるで動き出しそうな程によくできている。
何段にもなる噴水には天使もいて、遊んでいるような姿は見ているだけで癒される。

私の周りをぐるりと囲む四人の騎士は、中庭なのにぴったり張り付いている。

「あの‥少し一人になりたいのだけど‥」

「いかがなさいましたか?」

「あの‥あそこのベンチで少し休みたいの。一人の時間が欲しくて」

「分かりました。では、少し離れてお護りさせていただきます」

護らなくても大丈夫だと思うけど‥

「ええ、ありがとう」

水の音が心地良い。
灯りで照らされた光の粒が美しい。
幻想的な空間でこの噴水を見ていると、全てが夢なのではないかと思えてくる。
三ヶ月前のあの事故も、今日まで起きた事
全てが夢の中の出来事だったのではと‥

目が覚めたら、侍女のナターシャが笑って
「やっとお目覚めですか?」
と言ってくれるだろう。

庭に出ると、母が
「一緒にお茶をしましょう」
と、きっと誘いに来るはずだ。

そこには父も駆け付けて、護衛のボイドに焼き菓子を分けてあげると喜ぶだろう。

剣術の訓練では、オリバー先生が上達した姿を褒めてくれて、教育係のリズリー先生は読み終えた本に感心してくれる。

だから早く‥早くこの夢から覚めれたらいいのに。
いつ覚めるの?
覚めて欲しいのに状況は悪化するばかり‥

「あの‥王太子妃様?」



護衛が並んで立っている。

「私、王太子妃じゃないわ。ルリアよ」

「失礼しました。ルリア様、そろそろ中へ入られてはいかがですか?夜風が冷たくなってきましたので」

「もう、1時間近く外におられますので風邪でも引かれたら大変です」

「?そんなに経ったかしら」

「はい‥‥」

幻想的な空間で時を忘れてしまっていた。
夢か現実かも分からない程に頭は混乱する。
どちらが夢でどちらが現実か‥‥
自然と涙が溢れそうになる。

‥夢なら良かったのに‥‥

でもこんなところで泣いてる場合じゃない。
しっかりしなきゃ。
全ては自分が決めた事。

「温かいお茶を用意させましょうか?」

「?ええ、そうね。お願い」

「では、中へ」

再び食堂へ連れて行かれる。
誰もいない食堂は、先程よりも広く感じる。
椅子に腰掛けるとすぐに肩がフワッと温かくなる。

「冷えたのではないですか?」

振り返ると護衛が心配して肩にかけてくれた。

「ありがとう」
 
この人達は突然現れた私をどう思っているのだろう。
受け入れ難いと思うけど、とても親切ね。
メイドが淹れたお茶を飲み、ぼんやりしていると、バンッと勢いよく扉が開き、また王太子が現れた。

今度は後ろに銀色の髪の男性を連れている。
誰?
今度は何?

仕方なく立ち上がりカーテシーをする。

「ルリア、この男はウェルズス家のスタンリーだ」

銀色の髪をゆるく結い、透き通るような青い瞳の男性は何とも神秘的な美しさがある。
男性ではあるけれど、中性的な魅力がある人だ。

彼は何故かその瞳を大きく開いたまま私を見ている。
知り合いではないと思う。
初めて会ったはずだけど、何故驚いているのかしら‥
もしかしてアルンフォルトにいたことがあるのかしら?
ライナやメルディナと知り合いなら大変な事になる‥‥

スタンリーという男は、少し自分を落ち着かせるように深呼吸をし、私の元へ歩いて来た。

私は身構えたが突然目の前で跪いた。

「お目にかかれて光栄です。スタンリーと申します。何か困ることがありましたら、是非このスタンリーをお呼び下さい。」

私の指先を少し持ち上げ軽く口付けをする。

「ルリアです。お気遣いありがとうございます」

何だか皆が受け入れるのが早いと思うのだけど‥‥

この国は我がアルンフォルトよりも皆が親切でお人好しということだろうか?

「おい!スタンリー!俺の妃に気安く触るのはやめろ」

‥‥妃ではなく婚約者のふりなのだけど‥

勝手に妃だと言いふらされたら、出て行きにくい。
あくまで婚約者(のふり)二週間のね。

最終的には別の誰かを妃に選んで幸せになってもらいたい。

「失礼しました。ルリア様。また近いうちにお会い致しましょう」

「ルリア、遅くにすまなかった。明日侍女を付けるから心配しなくて良い。この王太子宮は、そなたの邸だと思って自由に使ってくれ」

‥心配は侍女が付くか付かないかではない。
この王太子に誰か説明してくれないだろうか‥‥































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