【完結】逃げ出した王女は隣国の王太子妃に熱望される

風子

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戴冠の間9

きっとバロンなら証拠を掴んでくれているはずだ。
彼らなら私の推測を真実にしてくれる。
私は信じる。

「ライーズ・ブロイド。
言いたいことは終わりましたか?
いくらあなたが私を悪者にして自分が王位に就こうとしても無理よ。
あなたの行いは全て分かってる。
マルクスと頻繁に会っていた理由も分かってるわ。
彼に会った時、とても顔色が悪いことが気になっていたの。
マルクス?
あなた体調が悪いのではないの?」

「?‥あぁ。最近は体の怠さとめまいがあるが」

「やはりね。ライーズ・ブロイドから何か口に入れる物をもらってない?」

「公爵から?‥‥他国から取り寄せた高価な茶葉を貰って飲んでいるが。
体にも良いと聞いたものだ‥」

「やはりね。その茶葉には毒が混ぜられているはずよ。
きっとリベール様に盛った毒の成分と同じ物でしょう」

「毒⁈何だって!!」

マルクスは青ざめる‥‥

「どういうことなのライーズ!!
あなたマルクスにまで毒を盛ったの⁈
私の息子になんてことをするのよ!!」

「うるさい!!
全て勝手な憶測だ、余計なことを言うな!」

私はメイドを見ると手を出し、証拠を待った。
ここは私の賭けだ。
用意してくれていると信じるしかない‥‥



一人のメイドが私の所へくると、茶葉を入れてある容器とガラスの小瓶を手渡してくれた。

「それは‥‥俺が飲んでいる茶葉だ‥‥」

‥よかった‥やはりバロンとはすごい!

「これはマルクスが飲んでいる物。
そしてこの小瓶にはブロイド家の紋章が付いている。
あなたの物で間違いないわね?」

「‥‥」

ライーズは黙り込んだ。

「そちらの小瓶は公爵様の部屋の戸棚の奥にしまわれていた物です」

丁寧に頭を下げるメイドに対して、

「何だこの女は!いい加減なことを言うな!貴様何者だ」

「彼女達は私の影よ。
王族である私には、あなたの力も及ばない影が付いているわ。
あなた達の悪行などいくらでも証明できる証拠を掴んでいるのよ。
この小瓶の中身は毒。
そしてこの茶葉にそれを少量ずつ染み込ませ、それをマルクスに飲ませていたのね?
私の言うことが嘘だと言うのなら、今すぐこの小瓶を飲み干しなさい」

「ははっ。何を言うかと思えば、呆れた話だ。
それは私の薬です。
最近胃の調子が悪いので医師に処方してもらった物。
ただの薬ですよ」 

「そう、ならば飲めるわね?
一口でいいわ。
皆の見てる前で飲んでみなさい。
さぁ、今すぐ!」

「‥‥」

「一口も飲めないのなら毒と認めるということね?」

「はっ、何を。今は薬を必要としていないのに、飲めるわけがないでしょう」

「では、ここで、私よりもあなたを支持する者にでも飲んでもらいましょう。
スプーン一杯でも構わないわ。
胃薬なのでしょう?
舐めるくらいなんてことないはずです。
誰か胃の調子の悪い者はいない?
公爵家の薬ですもの。さぞ良質な物でしょうから心配はいりません」

ぐるりと見回した私と目が合わないように
皆は視線を逸らす。

「私が飲みます!」

会場後方から出てきたのは息子のカイトだった。

「カイト‥‥」

「父さんがそのようなことを考えるわけがないですよね?
私とルリアの結婚を台無しにした憎むべき相手が実の父親ということはありませんよね?
ヴィルドルフ国王が生きておられれば、私は今頃一番愛する女性を妻にできていたはずです。
その為に長い間、あなたの理不尽な要求にも全て耐えてきた。
それなのに結婚式目前でその望みが断たれたあの事故が、人の手によって引き起こされたものだったとは信じたくありません」

カイトは父親を真っ直ぐに見ながら歩いてくる。

「しかもその黒幕が父親だったなんて、それは馬鹿げた話ですよね?
私がその胃薬を全て飲んで証明してみせますよ。
父さんは無関係であったと。
我が公爵家の医師の処方ならば安心です。
ちょうど最近胃が痛くて、夜も眠れない日が続いていましたので‥‥」

私の前までくると、

「女王陛下‥‥その薬をぜひ私に‥‥お渡しください」

琥珀色の瞳。
由緒あるブロイド家の長男として誰からも好かれ、何不自由のない暮らしをしてきたはずの貴公子‥‥。

けれど今目の前に立つ彼は、この世の不幸を一身に背負ったように見えた。
やつれたその表情は苦しそうに歪んでいる。

一段一段、噛み締めるように上がってくる。

「私がすべてを証明します」

手に握っていた小瓶を私の手から奪うと、ギュッと握りしめた。

「ルリアと一緒になれると信じて生きてきた。
その為なら何だって耐えられた。
君を失うのなら‥‥私が生きてる理由もない」

私の髪をすくうと口付けをした‥‥

カイトのこんな姿は一度も見たことがない。
私の髪に触れたことも初めてだった‥‥。
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