【完結】愛する人には裏の顔がありました

風子

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父の告白

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数日かけ王都に戻ると、まずはエルグスト家に帰ることにした。
ライド様はすぐにでも公爵家に連れて行きたいと言い張っていたけれど、母が戻ってきていないことを聞き、父と兄と話し合う時間が欲しかった。
それに、私自身も今後を考える時間が欲しかった。


もう二度とこの家に戻ることはないだろうと覚悟していたはずなのに、屋敷が見えてホッとしてしまうのは虫が良すぎる話だろうか‥‥。

家に入ると飛びつくようにモニカがやってきて、その目からは涙がとめどなく流れ落ちている。

「孤児院から戻ってきていたのね、モニカ」

「お嬢様の計画を台無しにしてしまって申し訳ありませんでした」

モニカは崩れ落ち床に頭をつける。

「モニカ‥‥あなたを巻き込んでしまってごめんなさい。
もういいのよ。
私が向き合ってこなかったことが悪かったの。
いつも逃げ道ばかり作って正直に話すことができずに、結局は父も兄もあなたのことも傷つけてしまった‥‥
どうか許して‥モニカ」

「お嬢様、一番お辛かったのはお嬢様です」

「いいえ、あなたに秘密を共有させずっと橋渡しをさせてきたのは私。
モニカに長く苦労かけてきたこと本当にごめんなさい」

「何を!孤児院で寂しい思いをしていた私を救ってくださり、侍女として側に置いてくださったことは感謝しかありません。
苦労などと思ったことはありません」

「うっ‥モニカ‥‥ごめ‥なさ‥‥」

モニカに謝りたいことがたくさんあった。
私の我儘に付き合わせてきたことをきちんと謝らなければいけないと思っていた。
でも自分のことで手一杯で、振り回してばかりだった。
言葉もまとまらないまま、モニカと抱き合って泣いた。
そんな私達を覆うように父は抱きしめ、

「お前達を長い間苦しめていたのは私だ。
許してくれ」

心の中で黒く濁ってしまった何かが洗い流されていくように感じていた。





夕食を済ませ、父と兄に何から話せばいいのかと迷い言葉に詰まっていると、先に口を開いたのは父だった。

「妻とは離婚が成立した。
エディーがこの家に戻ってくることはもうない」

「何故ですか⁈」

順を追って話そうと思っていた頭の中の考えは吹き飛んでしまった。
あまりの衝撃に気付けば立ち上がっていた。

「まぁ座りなさい。
驚くのも無理もない話だが落ち着いて聞いてほしい。
離婚はお前のせいじゃない。
はっきりと言っておく。
これは夫婦の問題なんだ。
エディーとはお互いに思いやることができなかった。
何度話し合っても理解し合うことができなかった」

「私のせいでしょう?私がこの家に居たからでしょう?」

「違う!お前のせいじゃない」

私は立ったまま震える声で言った。

「いいえ、私のせいです。
私がいなければお母様はこの家でお父様とヘンリー兄様と幸せに暮らせたはずなんです」

気持ちが抑えられずに涙をこぼした。

「だって私が修道院に行ったのは、この家でお父様とヘンリー兄様に幸せに暮らしてもらいたかったからです。
ずっとお父様とヘンリー兄様の幸せを願っていました。
お母様と三人で、これからは本当の家族で過ごしてほしいと思ったからです。
それなのにどうして」

ヘンリー兄様は隣にきて私の涙をハンカチでそっと拭いてくれる。
父も私を座らせる為に隣にやってきた。
ソファーの真ん中に私を座らせ挟む形で父と兄が座る。

小さい頃、この三人掛けのソファーで父と兄の真ん中でおしゃべりするのが好きだった。
父も兄も笑ったり呆れたりしながら私の話しを楽しそうに聞いてくれていた。
ゆとりのあったソファーが今ではぴったりになるほど私は大人になってしまった。
それでもこうして三人寄り添って座ると安心するものだ‥‥。

「ミリディ‥‥。
お前に全て話すよ。
もっと早くに話すことができていればお前を苦しめることも修道院に行かせることもなかったのかもしれない。
すまない‥‥私の弱さゆえだ。
聞いたお前が私から離れてしまうのではないかと恐れるばかりに言えなかった‥‥」

「お父様‥‥」

父は組んだ手に力を込め、ためらっている心が伝わる。
兄はじっと何も言わずに父が話し出すことを待っているようだった。

「私には‥‥幼い頃から想いを寄せる幼馴染がいた。
リンディ・フローレンス。お前の実の母だ」

父はゆっくりと話し出し、少し遠くを見た。
昔を懐かしむようだった。



「幼馴染のリンディは、明るく社交的な女性で誰からも好かれる人だった。
見た目も可愛らしかったが、内面がもっと素敵な人だった。
優しくて思いやりがあって前向きで‥‥

姉のエディーは対照的に人付き合いが苦手なタイプでよく引き籠もっていた。
私は顔が怖いせいか女性からは敬遠されがちで、女性と話すのは苦手だったが、リンディだけはいつも笑顔で話しかけてくれていた。

『ジルはとても優しい人なのに皆勘違いしてるわ』
『顔が怖いから仕方ない』
『そんなことないわよ!ジルももっと笑えばいいのよ!私ジルの笑った顔がとても好きよ』

そう言ってくれていた。
気さくで優しい彼女には縁談話がよくあった。
けれど彼女はそのどれも断っていて、理由を尋ねると、

『好きな人がいるの‥‥。でも一緒にはなれない人だから。
だから私は一生結婚しない』

そう答えたんだ。
リンディは伯爵家の娘なのに結婚できないと悩むのなら貴族ではないとすぐにわかった。
きっと身分が違う平民の男だろうと。

『君が誰を好きでもいい。
そいつと結婚できないのなら俺と結婚してくれ。
君の両親だって娘が一生結婚しないと言えば悲しむだろう?』

何度断られても諦めずにしつこく言い続けた。
親の為にもと卑怯な言い方でね。
彼女は、私のずるい言い方に折れた。
それほど私はリンディに惚れていた」

父は横を向いて私の顔を見ると恥ずかしそうに笑った。
きっとリンディもこんな父の笑顔を素敵だと思ってくれたのだと思う。
父の優しい性格は私がよく知っている。
誰より優しい笑顔をする人だから。

「リンディにとっては私は友人だった。
それ以上の感情がないことを知っていたし、それでも一緒に居てくれるのなら十分だった。
だが結婚式を三ヶ月後に控えたある日、泣き腫らした顔でやってきたリンディは、理由も言わずに何度も謝り続け、その翌日姿を消した。

結婚式の日取りも決まっていて招待客にもすでに招待状を送り終えていた。
リンディの親は、姉のエディーと一緒になってくれと頼んできたんだ。
もちろん断った。
だがエディーはなぜか乗り気でドレスをすぐに手配してしまったんだ‥‥。

今度は私が折れるしかなかった‥‥。

子爵家の我が家は、伯爵家であるフローレンス家には強く言えなかった」

父は後悔しているのか少し黙り込んだ。



その後、父とエディーは結婚したが、もともと人付き合いがないエディーは、父が仕事で遅くなったり友人と食事に出掛けるとすぐに浮気を疑い、誰と何をしていたか全部説明しなければ納得しなかったという。
どんな些細なことでも毎日何をしていたか問い詰められ、息苦しさと嫌気がさしていたという。
離婚が頭をかすめたが、そんな時息子のヘンリーが生まれ、子供のかわいさにその時は離婚を思いとどまったそうだ。
夫婦を繋ぎとめていたのはヘンリー兄様の存在だった。
エディーと会話することに疲れていた父の態度を彼女も感じていて焦ったのか、二人目を望んできたというが、父にはもう気持ちがなかった。

離婚秒読みの二人に突然の訃報が届く。
駆け落ちしたリンディが馬車事故に巻き込まれて亡くなったというのだ。
息子は一緒に亡くなったが、一歳の娘は母親に庇われて一命を取り留めた。
靴職人の男は右半身に大怪我を負い、とても子育てできる状態ではなかったという。

フローレンス家に娘を育ててほしいと懇願されたが、フローレンス家は駆け落ちした者とはもう関係ないと孤児院に入れるよう言ったそうだ。
その話しを聞いたエディーは、何故か自分の娘として育てたいと連れ帰ってきたという。
父は反対したそうだが、きっとエディーは父を繋ぎとめようと思ったのだろう。
子煩悩な父なら、子供が増えれば離婚を言い出さないだろうと‥‥。

けれど父が私を可愛がる姿を見ているうちに耐えられなくなったようだ。
自分とはまともに会話もしない夫が、妹の娘を目に入れても痛くないほどに可愛がっている。
もともと妹の婚約者であった夫は今でも妹を愛しているのではないかと。
だからその娘を自分よりも大切にしているのだと腹を立て、今度は家から追い出せと言うようになった。
自分で連れてきておきながら、早く孤児院に入れてほしいと毎日言うようになったそうだ。

父は半年も私と暮らすうちに、本当の自分の子供のような気持ちになり、手放せなくなってしまった。
そのことでエディーとは喧嘩が増え、ついにはエディーが家を出た。

世間では人付き合いをしないエディーだった為、領地の別邸に住まいを移しても、子供を産んで療養しているという噂が自然と広まっただけだった。
幸か不幸か、世間では私は本当の娘だと疑われないまま育つことができたのだ‥‥。




「もともと無理な結婚だったんだ。
私が愛したのはリンディでエディーではない。
エディーとは初めから合わなかったんだ。」

「お父様」

「お前が我が家にこなければ、とっくの昔にこうなっていたさ。
私はミリディを本当の娘だと思っているし、ヘンリーとミリディは私の命より大切な宝物だ。
エディーに何と言われようとミリディと離れて暮らすことなど考えられなかった。
ただエディーが、二人の母親として四人で暮らしたいと言ってくれれば、私はもう一度やり直す努力をしようと思っていた。
ヘンリーを生んでくれたのはエディーで、ミリディを我が家に連れてきてくれたのもエディーだ。
だから私も彼女に感謝するべきだと‥‥
そう思っていた」
 



結局エディー・エルグストは私を受け入れなかった。
顔を見にくることも手紙を書いてくれることもなかった。
エディー・エルグストにとって私は、夫と息子を奪った憎むべき相手だろう。
父に愛された憎むべき妹の娘。

けれど私は感謝しなければいけない。
私に父と兄を与えてくれたのは他でもないエディー・エルグストなのだから。
愛情深い父と兄の側にいれたのは彼女ではなく私だ。


「ヘンリー兄様、ごめんなさい」

「何を今更謝る?」

「ヘンリー兄様から母親を奪ったのは私ですもの」

「私の後ろを付いてきて離れない手のかかる妹を突き放すことなんてできるわけがないだろう。
お前は妹なんだから。
血の繋がりなど関係ないことだ」

血の繋がり‥‥
それを超えた本物の家族が私にはいるのだと改めて知るとまた熱いものが込み上げる。

子爵夫人が帰ってこられなかったのに、私を責める者などいない。
心苦しくもあり、同時に父と兄が私を選んでくれたことがとても嬉しく思えた。
二人の愛に心が満たされていくのを感じた‥‥。
















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