【完結】愛する人には裏の顔がありました

風子

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野心家

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私は公爵家に住まいを移すことになった。

「まずは、公爵と夫人にご挨拶しなければ」

そう言うと、

「ミリーは知らないだろうけど、君が修道院に行ってる間に父の不正が発覚してね。
今は二人とも牢の中だ。
弟は遠くの親戚に引き取られたよ」

「え⁈何ですって!!」

「シルヴィス家のマゼルダ嬢の告発でね。
裏付けのある確固たる証拠があったんだ。
罪状についてはミリーは知らなくていいことだよ」

「マゼルダ様が?ロベールトン家を告発?
そんな‥‥同じ公爵家ですのに」

「こちらとしてはお礼として、国政に関わる権利を女性で初めてマゼルダ嬢に与えることにしたんだ。
女性の目線も取り入れる新たな体制を整えるつもりだよ」

「ええ⁈」

「彼女は賢くて実行力もある。
地位だけの無能な男達よりもよほど国の為に動ける人だ。
私の右腕として、今後外交にも携わってもらうつもりだから頼りになる。
父親の宰相の座を狙ってるんじゃないかな?
女性初の宰相も遠くないかもしれない」

「お礼‥というのはどういう意味ですか?
ライド様のご両親を告発したのでしょう?」

「あー、それについては私の生い立ちが関わってくるのだけど、今夜にでもミリーに話してあげるよ。
愛する妻には隠し事はしたくないからね」

「ええ、聞かせてください。
ライド様のことなら何でも知っておきたいもの」

「また可愛いことを言ってくれるね!」

ライド様のスキンシップが過剰になりすぎていてすぐにキスをされる。

「だからね、これからは私が公爵、ミリーは公爵夫人というわけだよ」

「知らない間にそのようなことがあったなんて‥‥。
驚きすぎて今は心臓がドキドキして痛いです」

「はははっ、マゼルダ嬢と私は野心家という面では気が合う人だよ」

「野心家‥‥」

「心配しないでミリー。
マゼルダ嬢とは仕事の付き合いは増えるだろうけど、私が愛するのは君だけだよ。
知ってるだろう?
私の愛の深さを」

「‥‥ええ」




コンコンッ
「失礼致します」

ガチャ

「さぁさぁ、お茶をお持ちしました。
ミリディ様がロベールトン家に来てくださるのをどれほど皆が待っていたことか。
ライド様の奥様としてこの家に来てくださるのを一同夢にまで見て待ち望んでおりました」

「スーザンさん、トーマスさんも!」

「これからお仕えできることを嬉しく思っております。奥様。
どうかライド様をよろしくお願い致します」

使用人達は次々に部屋に集まり、何故か涙を流す者までいる。
こんなに歓迎されるなんて思ってもみなかった。
さらに驚いた私の心臓はうるさいままで痛みは続いていた。







夕方。
私は荷物の整理もひと通り片付き落ち着いた頃、

「ミリー?庭に出てみないか?」

そう誘ってくれたライド様と共に外に出た。
ライド様はとてもラフな服装で、外で見る姿とは違い家でくつろぐシンプルな装いにドキドキしてしまった。

公爵家は広大な敷地である為、庭の規模も違う。
我が子爵家がいくつ入るか‥‥。

「この庭で遊んでいた頃が懐かしいですね」

「ああ、そうだね。懐かしいよ」

私の手をギュッと握りながらゆっくりと広い庭を歩く。

「結婚式はシャルドール大聖堂で挙げよう。
盛大な結婚式にしなければね。
ミリーの可愛らしいウエディングドレス姿が楽しみだ。
君は昔から絵本の中のお姫様に憧れていたからね。
白いフリルがたくさんのものがいいと言っていたかな?」

「ええ。ふふっ、華やかで可愛らしくて、そんなドレスが好きです」

「うん、似合うよ。とっても。
もう邪魔する者はいないんだ。
いたら私が全員消すから大丈夫だよ。
絶対にミリーを悲しませたりしない」

「はい」

私はそっとライド様に寄りかかる。

「ねぇミリー?」

「何ですか?」

「ひとつ聞いていいかな?」

「もちろん。答えられることなら何でも」

「私達があの古い教会で愛を誓った時、シャルドールの司祭が見ていたと言ったよね?」

「ええ、そのおかげで結婚が成立したと」

「うん。
私は本当にアレは知らなかったんだ。
まさか司祭が見ていて証人として名乗り出てくれるなんて思わなかった。
だって君があの後修道院に行くなんて気付いていなかったからね。
それなのに偶然司祭があの奥に居て見ていたなんて‥‥」

「へぇ‥‥すごい偶然ですね?」

「偶然かな?」

「それ以外に何か?」
 
「シャルドール大聖堂には手紙が届いていたそうだ。
教会の在り方について不満を持っている者達が近々集まって、あの古い教会で暴動を起こす予定だと。
それでシャルドールの司祭や関係者が連日張り込んでいたらしい。
その者達との話し合いをしようと準備もしていたそうだ」

「そうだったんですか。
ふふっ、偶然ってすごいですね」

「‥‥ああ本当に、奇跡のようだね‥‥。
‥‥ミリー、私は君に惚れ込んでいる。
それを君はよく知っていたはずだ‥‥。
ねぇ、君の婚約が決まれば必ず私が阻止すると分かっていた?」

「まさか。
あれはライド様が?」

「はははっ、ミリー!
私は君に出会ってから今まで手のひらで転がされているようだよ」

「まぁ!天下のロベールトン家のライド様が何を仰いますか」

「でもね。
愛する人に転がされるのは悪くないよ」

私の頬を両手で包み、とても幸せそうな顔をする。

「私の幸せはミリーだ。
ミリーがいないと幸せになれない。
昔も今もこれからも、私は君に夢中だ」

この世で一番美しい貴公子が甘く蕩けるような台詞を言う。
そしてそのまま口付ける。
恥ずかしさも心地良さに変えるほど濃厚で漏れる息さえも甘い。

大好きな小説『田舎娘と王子様』のクライマックスはこんなキスシーンだった‥‥。

脈が早まり心臓がうるさいほどに音を立て、ライド様にも聞こえているかもしれない。

「はぁぁ愛しすぎて止められない」

ライド様の唇が離れると力が抜けて立っていられなくなるところを抱きしめられる。

「幸せだよミリー、ありがとう」

私は腕の中で頷くだけで言葉が出てこない程に幸せだった。



「お二人ともー!お食事の時間ですよー!
ご用意ができておりますよー!」
「お嬢様ー!」

スーザンさんの張り切る声とモニカの呼ぶ声が聞こえる。

「今行くよ!!」

振り返って大きな返事をすると、思いついたようにペリドットの瞳が私を見てキラキラと輝く。

「そうだ!
ミリーにプレゼントがあるんだよ。
先に席に着いていて。
今取ってくるからね」

嬉しそうに駆けていく後ろ姿を見て、ふと昔の姿がよぎる。

この庭で初めて彼を見た時のこと‥‥。




『あの人、絵本の中の王子様みたい!
かっこよくてきれいな服着てる!
私あの人のお姫様になりたい!』

『あなたどこの子?』

『ん?私?私はミリディ・エルグストというの』

『私はあの子の母親よ。あなた子爵家の子供だというのに随分と野心家ね』

『やしんか?』

『ええ、あなたみたいな人のことをいうのよ』

ライド様の母である公爵夫人に言われたことを思い出す。

「‥‥私が一番の野心家‥‥だったみたいね」

ポツリと呟いて懐かしい庭をぐるりと見回す。




「ミリー?まだそこに居たのかい?
早くおいで!」

「今行きます!私の王子様!」

彼に向かって駆け出した。




























































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