女神に頼まれて村作りをしてみた

ひいらぎ

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女神に頼まれて村作りをしてみた

氷と逆光

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「ほぉぉ……これが噂の氷天祭……すごいです」
「へぇ、思ったよりちゃんとしてるじゃん。そう言えば昔、北海道に見に行ったっけ」
四人は今、この世界における冬の風物詩の一つ、氷天祭に来ている。勿論国によって呼び名や細かい箇所は違うがこの世界では冬や雪等を尊む傾向にあり、このような祭が世界各国で行われる。
「そのホッカイドウはようわからんが、大したもんだろ?この辺の氷細工職人がこの日の為にここに集まるんだ。気合いが違う」
どこか得意気にバンは解説を入れる。一方アールは熱心に写真を撮っていた。
「アールは写真に入らないのか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。私は人間が努力をして造り上げた物を記録に残しておきたいだけなので」
にっこりと微笑みながら放たれたその言葉に一翔は言い知れぬ違和感を覚えたが、それを外に出すことは無かった。というよりも、出す間もなく二人がこちらを呼ぶ声が聞こえたのだ。初めて来たリカは大はしゃぎなようでバンはリカを見失わないようについていってたようだ。
「ハハハ、元気な事は良いことですね。あの方も元気に……は無理ですね。さ、一翔さん行きましょう」
気の抜けた返事が飛び出す。先程からアールの言い回しがよくわからない事になっている。そう言えばアールだけは昔何をしていたか一度も語った事がない。あるとしたら釣り人であると告げた程度か。
  「二人とも遅いですよ!」
「どう考えても二人が速いんだって…」
こんな二人を見てアールとバンは大笑いをしている。
  ようやく会場を一周し終わったら頃には既に日は暮れていた。しかしこの時間からが氷天祭の最大のポイントとなる。展示されている氷像がライトアップされ、辺りの景色は一瞬にして一変された。
「お、おおお……生で見れたぁぁ!」
リカは相変わらずのテンションなようで目を輝かせていた。
「さ、お楽しみはここからだぞ?空見てみろ」
「星空でも眺めろってか?」
一翔が丁度言い切ったすぐ後、バァンッと大きな音が響いた。 花火だ。
「あそこの上が以外と穴場でな。二人で行ってこい」
「あ、あそこですね。一翔さん、行きましょう。速くしないと取られるかもですっ」
「ちょ、あんま走ると危ないって……」
何度か危うく転びそうになりながらも二人は目的の場所を目指した。天上に咲き誇る花は動く二人の口実でもあり、止まる二人の口実でもあった。が、それを二人が知ることは永遠に訪れないであろう。あるとしたらどちらかが語る時だ。
  「ついたーっ」
「はぁ、はぁ……くそ、氷の上で走るのって難しい…」
「見てください!見てください!花火!本当に良い眺めですよ」
一翔が上を見上げた時その目に映ったのはライトアップされた氷像の間から顔を覗く花火とぴょんぴょんと跳ねながら満面の笑みを見せるリカの姿だった。 
「あぁ、なるほどな」
そう呟くとリカの横へ移動しながら自嘲気味に笑う。
  氷でできた塔の上で丁度二人分の影が氷像の放つ光と天上からの逆光に浮かび上がっていた。
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