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煎餅
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坂本 勲、軽度の脳血管性認知症、歩行と立位不可、車椅子にての移動をする、入所歴1年と半年
それは、簡単な条件で現れていた。だが、不思議なことに僕は気づかなかった
いや、私達では確信を持って気づけなかっただろう
「勲さんおはようございます!」
「おふぁほぉ」
「ちょっとしたおやつと飲み物をお持ちしました」
「おうぃふぃそふぁなほの?」
聴き逃したというか、分からないというか…
時々この人、何言ってるのかわからない
それでも、最近は言語聴覚士の発音のリハビリの効果によって聞き取りやすくはなっている
カルテにもリハビリの状況が記されており、向上の方向性を見せている
「すいません…ちょっと聞き取りにくかったです」
こうゆう時は素直に謝ってもう一度言ってもらうのが一番である
「おはふばふぁみ?」
「あー!今日は御家族の方が持ってきたプリンですよ~、今蓋開けます」
「はあくはあく!!」
「プリンって懐かしいですね~。給食に出たんですけど、休みの人とかいるとプリンじゃんけんというものがあって~」
「おえんほほはほんはんおはっはお」
うぉ、マジか…聞き取れてない
「そうだったんですか?僕、今は懐かしいなって思うんですよね~」
「ふはひはうぇはーどは、ははっはほ」
「へー、んじゃ僕は昔に生まれなくてよかった~」
「ひょくはんあ!」
「そうですか?だってプリン好きですもん!」
そう言って二人で笑った
勲さんの喋り方は口になにか入れてるように喋るがこれは脳梗塞の後遺症で発音に関する脳の中枢が障害を起こしていることによって起こるらしい
「勲さん終わったよ~」
えーっと今は午後15:15分か~
入った時間が15時前半だから結構話したんだな~
「和香さん!遅いっすよ~」
「ごめんね~結構話してたら時間忘れて」
「まぁ、いつもの事ですけどね」
「でも、ここだけの話…勲さんたまに何言ってるかわかんない時あるんですよね」
「ま、そんな時は無理して全部聞き取らなくていいよ~でも時々すごく面白いジョークも言う人だからそれは聞き逃さないようにしんとね」
「へー、」
そんな話をしている時フロアのインターホンがなった
「もしもし~坂本勲の…」
少々恥ずかし気に口籠らせるこのしゃべり方は一人しかいない…と思う
「奥さんですね。今開けます」
「こんにちわ~」
「どうも~お父さんはどこですか?」
「今はご自分の部屋にいますよ~」
「ありがとうございます」
奥さんの声は小さかった
奥さんは何かを思いついたかのように戻ってくる
「あ、そういえば…今日ってもうおやつ食べました?」
「この前持ってきたプリンを提供しました」
「だとしますと…煎餅は少し減らした方がいいですね。あの人、煎餅大好きですから」
独り言のように呟いた
「あ、山下さん椅子を…今こっちで手を離せないからお願いします」
「分かりました~」
やる気のない返事だったが彼らしいというか、なんというか…
今ちょうど空き時間だし、カルテや日報の記入にうってつけだ
そろそろに落ち着いて各業務を行ってるみたいだしね
1時間くらいの時が経った
「ありがとうござい…まし…た」
「また、お待ちしてますね~……あれ?」
ふと小さな違和感だった
言葉のが途切れている、さっきよりも下を俯いている
「……」
同時に小さく鼻水をすする音がする
「どうかしましたか?」
「お父さん…夕ご飯食べないかもしれません」
言葉は途切れ途切れになり少し咳き込んだ
「どうゆうことです?」
「お煎餅…全部食べてしまったんです」
「なんだ、そんなことですか」
そんなことで泣くのは少しおかしい
夕飯を残しても別に勲さんは自分で食べる量をわきまえている
それになんとなくはこれは悲しく泣いてる訳では無い……気がする
「……そうなんです。」
「なんか嬉しいことでもありました?」
言葉に驚きを隠せなかったらしく漫画みたいな反応をほんの少し見せた
「凄いですね、実はさっき……」
「お父さ~ん、おやつ持ってきたよ~」
「はっひはへはほ?」
「ま、そんなこと言わないで食べてよ!お父さんの大好きなお煎餅持ってきたんだから」
「せいへい?ほへはうはいはほふへ~」
「ほら、食べなって」
そう言って2人は煎餅を食べた
しばらく他愛ない会話が続く
そんなことを話していたら、ふと思った
あれ?これって…いつもと同じ?
おかしいな?ここは家でもないのに…
お父さんが煎餅を食べている…何気ない顔をして………
まるで戻ってきたみたいだ
「ねぇ…お父さん、なんかこの煎餅…塩辛くない?」
「いほへい!」
少し突っ込むような当たりになった
だけど優しい手が私の方を撫でる
「まら、なひへいふぁ」
「勘違いじゃない?」
「バカ言うな」
!!今確かに…この言葉忘れていたこと思ってた
というかこんなにもしっかりと聞こえるなんて……凄く嬉しい!!
この言葉は忘れて欲しくなかったんだ
1日に1回は言われてたであろうこのセリフ
最初はもちろんなんだこの人って思った
だけど、暮らしていく中でその「バカ言うな」という言葉は色々な気持ちがこもっていたんだ
悲しい時、嬉しい時、恥ずかしい時……
そして、優しくなる時……
「……って言うことがあって、久々にこの言葉を聞いた時はすごく嬉しかったんです」
「あれ?僕にもそんな感じに見えましたよ」
「え?何言ってるんですか?」
「なんだか、不思議な感じでしたよ。勲さんと奥さん、そして2人の兄妹…なんだか煎餅を食べてる姿を見て、安心…いや違うかな?なにか温かい場所に包まれているような…」
「いつの時の我が家なんでしょう?今はもう居ないはずなんですがね…」
どうゆうことだろう?
「居ないんですよ」
奥さんは複雑な気持ちで語っているように見えた
「ただ、和香さんが見えたのはなんででしょう?」
「こ こではよくこうゆうことがあるんですよね」
「………和香さんって凄いですね」
奥さんはやわらかな顔で私に笑いかけた
「和香さん…ちょっと!いつまで話してるんですか~こっちも手伝ってください!」
「あ、ごめんね~今行くから!」
それは、簡単な条件で現れていた。だが、不思議なことに僕は気づかなかった
いや、私達では確信を持って気づけなかっただろう
「勲さんおはようございます!」
「おふぁほぉ」
「ちょっとしたおやつと飲み物をお持ちしました」
「おうぃふぃそふぁなほの?」
聴き逃したというか、分からないというか…
時々この人、何言ってるのかわからない
それでも、最近は言語聴覚士の発音のリハビリの効果によって聞き取りやすくはなっている
カルテにもリハビリの状況が記されており、向上の方向性を見せている
「すいません…ちょっと聞き取りにくかったです」
こうゆう時は素直に謝ってもう一度言ってもらうのが一番である
「おはふばふぁみ?」
「あー!今日は御家族の方が持ってきたプリンですよ~、今蓋開けます」
「はあくはあく!!」
「プリンって懐かしいですね~。給食に出たんですけど、休みの人とかいるとプリンじゃんけんというものがあって~」
「おえんほほはほんはんおはっはお」
うぉ、マジか…聞き取れてない
「そうだったんですか?僕、今は懐かしいなって思うんですよね~」
「ふはひはうぇはーどは、ははっはほ」
「へー、んじゃ僕は昔に生まれなくてよかった~」
「ひょくはんあ!」
「そうですか?だってプリン好きですもん!」
そう言って二人で笑った
勲さんの喋り方は口になにか入れてるように喋るがこれは脳梗塞の後遺症で発音に関する脳の中枢が障害を起こしていることによって起こるらしい
「勲さん終わったよ~」
えーっと今は午後15:15分か~
入った時間が15時前半だから結構話したんだな~
「和香さん!遅いっすよ~」
「ごめんね~結構話してたら時間忘れて」
「まぁ、いつもの事ですけどね」
「でも、ここだけの話…勲さんたまに何言ってるかわかんない時あるんですよね」
「ま、そんな時は無理して全部聞き取らなくていいよ~でも時々すごく面白いジョークも言う人だからそれは聞き逃さないようにしんとね」
「へー、」
そんな話をしている時フロアのインターホンがなった
「もしもし~坂本勲の…」
少々恥ずかし気に口籠らせるこのしゃべり方は一人しかいない…と思う
「奥さんですね。今開けます」
「こんにちわ~」
「どうも~お父さんはどこですか?」
「今はご自分の部屋にいますよ~」
「ありがとうございます」
奥さんの声は小さかった
奥さんは何かを思いついたかのように戻ってくる
「あ、そういえば…今日ってもうおやつ食べました?」
「この前持ってきたプリンを提供しました」
「だとしますと…煎餅は少し減らした方がいいですね。あの人、煎餅大好きですから」
独り言のように呟いた
「あ、山下さん椅子を…今こっちで手を離せないからお願いします」
「分かりました~」
やる気のない返事だったが彼らしいというか、なんというか…
今ちょうど空き時間だし、カルテや日報の記入にうってつけだ
そろそろに落ち着いて各業務を行ってるみたいだしね
1時間くらいの時が経った
「ありがとうござい…まし…た」
「また、お待ちしてますね~……あれ?」
ふと小さな違和感だった
言葉のが途切れている、さっきよりも下を俯いている
「……」
同時に小さく鼻水をすする音がする
「どうかしましたか?」
「お父さん…夕ご飯食べないかもしれません」
言葉は途切れ途切れになり少し咳き込んだ
「どうゆうことです?」
「お煎餅…全部食べてしまったんです」
「なんだ、そんなことですか」
そんなことで泣くのは少しおかしい
夕飯を残しても別に勲さんは自分で食べる量をわきまえている
それになんとなくはこれは悲しく泣いてる訳では無い……気がする
「……そうなんです。」
「なんか嬉しいことでもありました?」
言葉に驚きを隠せなかったらしく漫画みたいな反応をほんの少し見せた
「凄いですね、実はさっき……」
「お父さ~ん、おやつ持ってきたよ~」
「はっひはへはほ?」
「ま、そんなこと言わないで食べてよ!お父さんの大好きなお煎餅持ってきたんだから」
「せいへい?ほへはうはいはほふへ~」
「ほら、食べなって」
そう言って2人は煎餅を食べた
しばらく他愛ない会話が続く
そんなことを話していたら、ふと思った
あれ?これって…いつもと同じ?
おかしいな?ここは家でもないのに…
お父さんが煎餅を食べている…何気ない顔をして………
まるで戻ってきたみたいだ
「ねぇ…お父さん、なんかこの煎餅…塩辛くない?」
「いほへい!」
少し突っ込むような当たりになった
だけど優しい手が私の方を撫でる
「まら、なひへいふぁ」
「勘違いじゃない?」
「バカ言うな」
!!今確かに…この言葉忘れていたこと思ってた
というかこんなにもしっかりと聞こえるなんて……凄く嬉しい!!
この言葉は忘れて欲しくなかったんだ
1日に1回は言われてたであろうこのセリフ
最初はもちろんなんだこの人って思った
だけど、暮らしていく中でその「バカ言うな」という言葉は色々な気持ちがこもっていたんだ
悲しい時、嬉しい時、恥ずかしい時……
そして、優しくなる時……
「……って言うことがあって、久々にこの言葉を聞いた時はすごく嬉しかったんです」
「あれ?僕にもそんな感じに見えましたよ」
「え?何言ってるんですか?」
「なんだか、不思議な感じでしたよ。勲さんと奥さん、そして2人の兄妹…なんだか煎餅を食べてる姿を見て、安心…いや違うかな?なにか温かい場所に包まれているような…」
「いつの時の我が家なんでしょう?今はもう居ないはずなんですがね…」
どうゆうことだろう?
「居ないんですよ」
奥さんは複雑な気持ちで語っているように見えた
「ただ、和香さんが見えたのはなんででしょう?」
「こ こではよくこうゆうことがあるんですよね」
「………和香さんって凄いですね」
奥さんはやわらかな顔で私に笑いかけた
「和香さん…ちょっと!いつまで話してるんですか~こっちも手伝ってください!」
「あ、ごめんね~今行くから!」
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