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#86 天気輪の柱②
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ソロの”いい考え”というのは、とんでもなく乱暴なものだった。
「ちょっと待ってて」
そう言い残して立って行ったかと思うと、しばらくして大きな段ボール箱ふたつを台車に乗せて戻ってきた。
「見られるとまずい。作業はあの書架の奥で」
私を人目につかない場所に引っ張っていくと、段ボールの底と蓋をはがして2段重ねにし、中を空洞にした。
「さ、台車の上に座って、頭からこれをかぶるんだ」
「ちょ、ちょっと、何する気?」
「衛兵を出し抜きたいんだろ? つべこべ言わないの」
こうして私は台車に積まれた荷物になった。
台車にはむろんクッションなんてものはなく、図書館から舗道への階段を下りる時なんか、まさに地獄だった。
悲鳴をこらえていると、段ボールの外から声がした。
「おい、ソロ、それはなんだ? ダーク=トルストイはどうした?」
間違いない。
近衛兵の声である。
思った通り、私が不首尾をしでかさぬよう、図書館を見張っていたというわけだ。
「逃げられた。今、クリスが後を追っている。仕方ないから、とりあえず、資料だけ先に押収してきた。俺はこれからこいつを王宮に持ち帰って調べねばならない」
「そうか、ご苦労だった。ならば、馬車を貸そう。クリスというのは、あの娼婦のスパイのことだな。彼女、びっくりするほどのべっぴんだが、本当に信用できるのか?」
「さあ、どうかな。案外、敵の手に落ちて手籠めにされたりしてな」
「はは、もともと娼婦だからな。美人ほど信用できないだろうよ」
馬車に積まれる時が、また最悪だった。
私は荷台に逆さに放り出され、おでこに大きなたんこぶをこしらえる羽目に陥った。
「急ぎの用だ。俺に手綱を任せてくれ」
ソロが馭者と交渉する声が聞こえてくる。
「待っててもらった礼だ。チップをはずむから、君はそこらの酒場でちょいと一杯ひっかけてくるといい」
「いいんですか? いやあ、恩に着やすぜ、旦那さま」
さすが下級貴族の次男坊だけあって、ソロは人の扱いが上手い。
走り出してしばらくすると、ようやく荷台の私に声をかけてきた。
「どうやらうまくいったようだ。もう、出てきてもいいよ」
「あのさ、人をさんざん娼婦扱いして、いくらなんでもちょっとひどくない?」
「だってしょうがないだろ? その格好なんだから」
確かに私はダーク=トルストイ籠絡のため、セクシードレスに身を包んでいるわけだけどー。
「それより、なんだっけ? 天気がどうしたこうしたっての」
「天気輪の柱のこと?」
「そうそれ。ひとつ、心当たりがないこともない。王立アカデミーの元カノから聞いた話を思い出した」
「学生が元カノ? それってヤバいんじゃない? 児童福祉法違反だよ!」
「児童、なんだって? そんなの、しょうがないじゃないか。向こうから言い寄ってきたんだから」
まったく、どこの世界も風紀の乱れは共通してるみたい。
段ボール箱から這い出して、ほうほうのていで客席に収まると、馭者席に身を乗り出し、ソロの耳元で私は怒鳴った。
「人間性が不純なあんたなんか、絶対に銀河鉄道には乗れないよ!」
「ちょっと待ってて」
そう言い残して立って行ったかと思うと、しばらくして大きな段ボール箱ふたつを台車に乗せて戻ってきた。
「見られるとまずい。作業はあの書架の奥で」
私を人目につかない場所に引っ張っていくと、段ボールの底と蓋をはがして2段重ねにし、中を空洞にした。
「さ、台車の上に座って、頭からこれをかぶるんだ」
「ちょ、ちょっと、何する気?」
「衛兵を出し抜きたいんだろ? つべこべ言わないの」
こうして私は台車に積まれた荷物になった。
台車にはむろんクッションなんてものはなく、図書館から舗道への階段を下りる時なんか、まさに地獄だった。
悲鳴をこらえていると、段ボールの外から声がした。
「おい、ソロ、それはなんだ? ダーク=トルストイはどうした?」
間違いない。
近衛兵の声である。
思った通り、私が不首尾をしでかさぬよう、図書館を見張っていたというわけだ。
「逃げられた。今、クリスが後を追っている。仕方ないから、とりあえず、資料だけ先に押収してきた。俺はこれからこいつを王宮に持ち帰って調べねばならない」
「そうか、ご苦労だった。ならば、馬車を貸そう。クリスというのは、あの娼婦のスパイのことだな。彼女、びっくりするほどのべっぴんだが、本当に信用できるのか?」
「さあ、どうかな。案外、敵の手に落ちて手籠めにされたりしてな」
「はは、もともと娼婦だからな。美人ほど信用できないだろうよ」
馬車に積まれる時が、また最悪だった。
私は荷台に逆さに放り出され、おでこに大きなたんこぶをこしらえる羽目に陥った。
「急ぎの用だ。俺に手綱を任せてくれ」
ソロが馭者と交渉する声が聞こえてくる。
「待っててもらった礼だ。チップをはずむから、君はそこらの酒場でちょいと一杯ひっかけてくるといい」
「いいんですか? いやあ、恩に着やすぜ、旦那さま」
さすが下級貴族の次男坊だけあって、ソロは人の扱いが上手い。
走り出してしばらくすると、ようやく荷台の私に声をかけてきた。
「どうやらうまくいったようだ。もう、出てきてもいいよ」
「あのさ、人をさんざん娼婦扱いして、いくらなんでもちょっとひどくない?」
「だってしょうがないだろ? その格好なんだから」
確かに私はダーク=トルストイ籠絡のため、セクシードレスに身を包んでいるわけだけどー。
「それより、なんだっけ? 天気がどうしたこうしたっての」
「天気輪の柱のこと?」
「そうそれ。ひとつ、心当たりがないこともない。王立アカデミーの元カノから聞いた話を思い出した」
「学生が元カノ? それってヤバいんじゃない? 児童福祉法違反だよ!」
「児童、なんだって? そんなの、しょうがないじゃないか。向こうから言い寄ってきたんだから」
まったく、どこの世界も風紀の乱れは共通してるみたい。
段ボール箱から這い出して、ほうほうのていで客席に収まると、馭者席に身を乗り出し、ソロの耳元で私は怒鳴った。
「人間性が不純なあんたなんか、絶対に銀河鉄道には乗れないよ!」
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