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第9部 倒錯のイグニス
#54 不完全変態
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「ひどい…」
ベッドの上のいずなの姿に、杏里は身震いを禁じえなかった。
パジャマは黄色い膿で変色し、ぐっしょりと濡れている。
外に出ている部分は、瘡蓋とその隙間からにじみ出る粘液に覆われ、まるで樹液にまみれた松の枝のようだ。
頭部では髪の毛がごっそりと抜け、その場で散髪したかのように枕元に散らばっている。
杏里は無言でいずなのパジャマに手をかけると、粘りつく布をべりべりと引き剥がし始めた。
「痛い、…痛い」
パジャマと一緒に皮膚もはがれてくるのか、瘡蓋だらけの顔をしかめていずながうめいた。
それでも無理やり布をはいでいくと、その下から現れたのは、見るも無残に変わり果てた肉体だった。
いずなの肌には所かまわず一面に吹き出物ができていた。
その藤壺のような吹き出物が、噴火口状の口からじくじくと臭い膿を吐き出しているのだ。
「待ってて。すぐになんとかするから」
タンクトップとショートパンツを脱ぎ捨てると、杏里は全裸になった。
身体の芯ではまだローターが作動しているので、防護液の量は十分だ。
ベッドに上がり、いずなの身体に腕を回し、しっかりと抱き締めた。
「ううう…」
いずなは震えるばかりで何も言わない。
よほど苦しいのか、大きく見開いた眼の中で眼球がぐるりと裏返ると、やがて完全な白目になった。
「いずなちゃん!」
これは何?
どうすれば、こんなことになるの?
さすがの杏里も、焦り始めている。
直感でわかる。
このままでは、危ない。
信じがたいことだが、いずなは死にかけている…。
「しっかりして! どうしたの? どこが痛いの?」
皮膚からにじみ出るローション状防護液を手のひらですくい、必死でいずなの肌になすりつける。
その間にも身体を上下に動かし、乳房と大陰唇をいずなの身体にすりつけた。
杏里がいずなのひび割れた唇を、自分の唇でふさごうとした時だった。
「ああああっ!」
だしぬけに大声を上げ、いずなが反り返った。
丸く開いたその口から、どぼりと血の塊が噴き出した。
「いずなちゃん!」
弾かれたように、杏里は身を起こした。
大変!
救急車!
もう、私の手には負えない!
ルナを呼ぼうとした時である。
突然、
べりっ。
布が裂けるような音がして、いずなの胸に亀裂が走った。
どろりと赤黒い血潮があふれ出る。
「やだ、何なの? いずなちゃん、どうしたの?」
パニックに陥る杏里。
傷口の奥で何かが動いている。
裂けたいずなの身体の中から、鮮血にまみれて何かが現れ出ようとしているのだ。
やがて胸に開いた穴から目のない丸い頭部が突き出し、杏里に顔を向けて、
ギイ。
とひと声、歯車が軋むように、鳴いた。
「そんな…」
そう呻いた時には、続いて飛び出してきた6本の脚に、杏里はすでにしっかりと抱え込まれてしまっていた。
ベッドの上のいずなの姿に、杏里は身震いを禁じえなかった。
パジャマは黄色い膿で変色し、ぐっしょりと濡れている。
外に出ている部分は、瘡蓋とその隙間からにじみ出る粘液に覆われ、まるで樹液にまみれた松の枝のようだ。
頭部では髪の毛がごっそりと抜け、その場で散髪したかのように枕元に散らばっている。
杏里は無言でいずなのパジャマに手をかけると、粘りつく布をべりべりと引き剥がし始めた。
「痛い、…痛い」
パジャマと一緒に皮膚もはがれてくるのか、瘡蓋だらけの顔をしかめていずながうめいた。
それでも無理やり布をはいでいくと、その下から現れたのは、見るも無残に変わり果てた肉体だった。
いずなの肌には所かまわず一面に吹き出物ができていた。
その藤壺のような吹き出物が、噴火口状の口からじくじくと臭い膿を吐き出しているのだ。
「待ってて。すぐになんとかするから」
タンクトップとショートパンツを脱ぎ捨てると、杏里は全裸になった。
身体の芯ではまだローターが作動しているので、防護液の量は十分だ。
ベッドに上がり、いずなの身体に腕を回し、しっかりと抱き締めた。
「ううう…」
いずなは震えるばかりで何も言わない。
よほど苦しいのか、大きく見開いた眼の中で眼球がぐるりと裏返ると、やがて完全な白目になった。
「いずなちゃん!」
これは何?
どうすれば、こんなことになるの?
さすがの杏里も、焦り始めている。
直感でわかる。
このままでは、危ない。
信じがたいことだが、いずなは死にかけている…。
「しっかりして! どうしたの? どこが痛いの?」
皮膚からにじみ出るローション状防護液を手のひらですくい、必死でいずなの肌になすりつける。
その間にも身体を上下に動かし、乳房と大陰唇をいずなの身体にすりつけた。
杏里がいずなのひび割れた唇を、自分の唇でふさごうとした時だった。
「ああああっ!」
だしぬけに大声を上げ、いずなが反り返った。
丸く開いたその口から、どぼりと血の塊が噴き出した。
「いずなちゃん!」
弾かれたように、杏里は身を起こした。
大変!
救急車!
もう、私の手には負えない!
ルナを呼ぼうとした時である。
突然、
べりっ。
布が裂けるような音がして、いずなの胸に亀裂が走った。
どろりと赤黒い血潮があふれ出る。
「やだ、何なの? いずなちゃん、どうしたの?」
パニックに陥る杏里。
傷口の奥で何かが動いている。
裂けたいずなの身体の中から、鮮血にまみれて何かが現れ出ようとしているのだ。
やがて胸に開いた穴から目のない丸い頭部が突き出し、杏里に顔を向けて、
ギイ。
とひと声、歯車が軋むように、鳴いた。
「そんな…」
そう呻いた時には、続いて飛び出してきた6本の脚に、杏里はすでにしっかりと抱え込まれてしまっていた。
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