激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

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第9部 倒錯のイグニス

#81 杏里鑑賞会②

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 大画面に、小柄な少女が現れた。
 黒いマスクで顔を覆い、スカートの下にジャージのズボンを穿いている。
 両手には透明なビニール手袋を装着し、足にはゴム製の長靴を履いていた。
 脱色したように、銀色の髪の毛をした少女だった。
 カメラの位置を知っているのか、こちらを見上げた眼は細く、典型的な三白眼をしていた。
「あの子が、ばあさんの養女だね? まるで今から蛙の解剖でもするみたいな格好だが」
 苦笑混じりに井沢が言った。
 これから何が起こるのかと、興味深げにシートから身を乗り出している。
「蛙の解剖かい? うまいこと言うねえ。さすが雑誌の編集者だ。まあ、似たようなものだろうねえ、あの璃子にとっては。あたしが教えてやったのさ。杏里を意のままにするには、防備を完璧にするようにってね」
「なるほど。タナトスの武器は、興奮した時にその肉体から分泌される体液と、その魅惑的な口から漂い出す甘い吐息だ。そいつに触れなければ、こっちの勝ちというわけですね」
「ああ。だが、普通の人間にはそれは至難の業なのさ。見てごらん。杏里のあのしどけない姿態。あれを目の当たりにして、正気を保っていられる人間がどれだけいると思う? 現に、あんたのお仲間でさえ、彼女の前では無力だっただろう?」
「おっしゃる通りです。それに比べるとあの璃子という少女は、人間にしてはまたずいぶんと意志が強いようだ」
「サイコパスだからね。性欲より破壊欲のほうが強いんだろうね」
「ほう…。似てますね。我らのクィーンと。まあ、人間と優勢種の違いはありますが」
「いや、それはどうかな。杏里個人に思い入れのない分、ある意味、璃子は零よりタフかもな。わたしが許せば、喜んでその場で杏里を切り刻みにかかると思うぞ」
「ふふ、そいつはたのもしい。おお、始まったみたいですね。第二の拷問が」
 井沢が更に上半身を前に乗り出した。
 画面では、璃子がビニール手袋をはめた手を、杏里の股間に突っ込んでいる。
 天井近くに取りつけられているにもかかわらず、防犯カメラはよほど性能がいいらしく、その手元の指の動きまでがつぶさに見えた。
 璃子はレオタードの裂け目からはみ出した杏里のクリトリスを、2本の指で執拗にこね回している。
 ビニール手袋をはめた手は膣口から噴き出る愛液でぐっしょり濡れ、璃子の指が豆を潰すように動くたびに、杏里が感電したみたいに太腿の内側の筋肉を引きつらせた。
「これはすごい…。タナトスがやられっ放しになっている。ふつうなら、杏里がああなる前に、相手のほうが絶頂に達してしまうはずなのに…」
「一度やられかけて、璃子も学習してるからね。あの子は、負けず嫌いでさ、勝つためなら何でもやるんだよ」
「ならば、あのまま、杏里を拉致させたらどうですか? そうすれば、我々の手間も省けます」
「馬鹿をお言いでないよ」
 真布が大きな鉤鼻を井沢に向けた。
「そんな味気ない誘拐は、こっちから願い下げだね。あんたは見たくないのかい? 600人の人間に凌辱されるあの子の姿を。拉致するのは、その楽しみが終わってからで十分だろう」
「相変わらず、お達者なことで」
 伊沢が声を立てて笑った。
「いいでしょう。やはり、予定通り、学園祭イベントに紛れて杏里を拉致することにします。考えてみれば、そのために、ヤチカを用意したのですからね。出番を与えてやらないと、いくらなんでも、彼女が可哀相だ」
「そうさ。その通りだよ」
 深々とうなずく真布。
「だいたいね、ここにいるあたしのお友だちは、みーんな、今度のイベントを今か今かと楽しみにしてるんだから。いずなから絞れるだけ絞ったラブジュースを、栄養剤代わりに飲みながらね。いくらあんたが優勢種だからといって、先の短い老人たちのの楽しみを、奪っちゃいけないよ。そうだろう? そうは思わないかい?」




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