激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

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第9部 倒錯のイグニス

#107 ブロンドの誘惑①

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 縁側から広い和室に上がる。
 真ん中に脚の低い長テーブルが出ていて、その周りに座布団が4つ、置いてある。
 古い農家を改造した点では、小田切と杏里が住む今の家に似ているのだが、家主が女性だけに、部屋の中は綺麗に片づき、柱の一本一本まで綺麗に磨き上げられている。
「目の調子はどう? もう、眼帯してなくても、大丈夫なの?」
 テーブルを挟んで正座すると、対面のルナの顔を覗き込むようにして、杏里はたずねた。
「ああ、もう大丈夫さ。きのうも言ったけど、あんなの、ひと晩寝れば治るから」
「よかった。その綺麗な眼が見えなくなったら、杏里、悲しいもの」
 何気なく口にしたひと言だったが、ルナの顔に驚きの色が浮かぶのがわかった。
「悲しい? どうして杏里が? これはわたしの眼なのにさ」
「うーん、わかんないけど。だって、とっても素敵だから」
 お世辞抜きで、ルナのアクアマリンの瞳は美しい。
 由羅の漆黒の瞳も好きだが、ことルナの瞳に関しては、こんなに綺麗な色、これまで一度も見たことがないと思うほどだ。
 もちろん、ルナの美しさは、瞳に限ったことではない。
 左右対称の、驚くほど整った顔立ちは、明らかに日本人のものではない。
 ルナは確か、ロシア人と日本人のハーフだったはずだ。
 そんな話を、いつか小田切から聞いた記憶がある。
 この通った鼻筋とシャープな頬の線、そして秀でた額は、たぶんそのロシア人の形質によるものなのだろう。
 落ち着いた静かな場所で、こんなに間近にルナを見るのも初めてだった。
 初対面の頃こそ、ルナの傍若無人な態度に面食らった杏里だったが、最近はそれにも慣れてきた。
 そもそもルナには、二面性とか悪気というものがないのだ。
 ただ、その時々で思ったことを、そのまま口に出しているだけなのである。
「重人は?」
 奇妙な胸騒ぎを覚え、杏里は急いで話題を変えた。
 むさくるしい男たちに囲まれ、オナニーまで強要された直後だからだろうか。
 その後、バスの中で集団に痴漢されたせいもあるだろう。
 目の前のルナが、リアルな天使のように思われてしかたがないのだ。
 杏里の理想の女性像は、もちろん、自分自身である。
 これは杏里が筋金入りのナルシストだからだ。
 だが、それとは別に理想的な女性像をひとつ挙げろと言われたら、おそらく杏里はルナを推すに違いなかった。
 まだ付き合いが浅いから、内面のことはわからない。
 けれど、外見的な魅力から言えば、ルナは間違いなく杏里のイチオシということになる。
 下着の奥で、リングのはまった陰核が熱を帯び始めているのがわかる。
 バカな。
 私、ルナに発情してるのだろうか?
 そう気づいて狼狽した時、ようやくルナが答えた。
「重人なら、寝てる。疲れたんだって」
「疲れた? また何かあったの?」
「ジェニーの意識にこっそりコネクトして、いずなたちの行方を探るんだって言ってた。成功したかどうかはわからない。そのまま、コロッと寝ちゃったから」
「サイコジェニーの意識に? それって、かなり危険な気がするけど…」
「うん。わたしもそう言って止めたんだけど、どうしてもやるって、聞かなくて」
 童顔の癖にプライドの高い重人のことだ。
 この前、ルナと杏里の両方に役立たず扱いされたことが、よほど気に食わなかったに違いない。
「そろそろ起きてくる頃だと思う。もう3時間以上寝てるから。起きてきたら、何かわかったか、訊いてみよう」
「そうだね。冬美さんたちはああ言ってるけど、私がジェニーに見せられた幻は、かなりひどいものだったし」
 いずなもヤチカも、杏里の知らない場所で、性的な虐待を受けている。
 それは間違いない。
 一般の女性に比べれば、ふたりともその道の”達人”には違いないが、それでも心配でたまらない。
 ”新種薔薇育成委員会”が外来種たちの組織であるならば、たとえば零のようなサディストの餌食にされるということも、十分ありえるのだ。
 そんなことに思いを巡らせていた杏里は、いつのまにかルナにじっと見つめられていることに気づいて、パッと頬を赤らめた。
「なあに? 私の顔に、何かついてる?」
 テレビドラマのヒロインがよく口にするステレオタイプの台詞、
 それを自分が使う日が来るとは思わなかった。
「あのさ、ちょっと言いにくいんだけど…」
 本当に言いにくそうに、ルナが言った。
「きょうの杏里、どっか変じゃない?」
「え?」
「なんていうか…すごく女っぽいっていうのか…わたし、ちょっと、ぞくぞくする…」
 今度は、ルナが頬を染める番だった。




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