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第9部 倒錯のイグニス
#158 偵察①
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翌水曜日は、休校になった。
クラスの連絡網の電話で、杏里ははそれを知らされた。
これもジェニーの言っていた後始末の一環だろう、と杏里は直感した。
委員会は、外来種が存在した形跡を、一切闇に葬るつもりに違いなかった。
美穂と唯佳の死をも合わせて、そのDNAの欠片すらも残さぬほどに。
が、杏里にとり、この突然の休校は、ある意味、願ったりかなったりだった。
やるべきことがいくつかあった。
まず、性露丸に代わる新たな媚薬を購入しなければならない。
シークレット・イベントに備え、より作用の強いものを。
それから、下着の類いも新調したかった。
小百合との特訓や部活の練習で、お気に入りの下着がいくつかダメになってしまっている。
これもイベント用に、なるべくセクシーなデザインのものを用意する必要があった。
ネット通販ではいざという時、間に合わないかもしれないので、自分で買いに行こうと思った。
駅裏のもっくんの店なら、媚薬も下着も両方手に入る。
明日、さっそく出かけようと決心した時、もう一件の用事を思い出した。
もっくんの店から、沼人形工房は近い。
徒歩で10分とかからないほどだ。
重人が以前、サイコジェニーの意識に潜入して”盗聴”したところによると、ヤチカといずなは、なぜかその沼人形工房にかくまわれているらしい。
ならば、買い物ついでに様子を見に行くというのも、悪くない。
思いつくとすぐ、別れたばかりのルナに電話した。
深夜零時を回っていたが、ルナはまだ起きていて、杏里の頼みを快く請けてくれた。
「おまえをひとりにはできないから。絶対に」
「別にひとりで行ってもいいんだけどね」
そう言いかけた杏里を、ルナは思いつめたような口調でそう遮ったものである。
重人は、曙中学がひと足早く定期試験週間に入るとかで、同行をしぶった。
どうせいつか転校するのだから、そんなもの適当にスルーしちゃえばいいのに、と勉強嫌いの杏里は思うのだが、そうした方面に関しては、重人は頑固だった。
その分、子どもっぽいというのか、成績が下がるのは絶対嫌だと言い張るのである。
「いずなと学年順位とどっちが大事なんだ。このバーカ」
電話口でルナに責められ、半べそをかく声が聞こえてきたほどだ。
「今回は、いいよ。ふたりで行こうよ」
苦笑して、杏里は言った。
いずなとヤチカが無事かどうか、様子を見に行くだけのつもりだから、別にテレパスがいなくても支障はない。
そう判断したからだった。
場所が場所だから、制服はやめて。できるだけ大人っぽい恰好をしてきてね。
そんな杏里の注文に応え、翌朝迎えに来たルナは、いつになく落ち着いた服装をしていた。
下半身にぴったりフィットしたブルーのスキニージーンズにワインレッドの薄手のセーター。
その上に、黒いブルゾンを羽織っている。
胸まで流れるブロンドの髪とアクアマリンの瞳も相まって、まるでどこかの大学の留学生のように見える。
杏里は白いブラウスに黒のタイトミニ。
その上に薄手のパーカーをひっかけている。
さすがに中学生とわかるとまずいと思い、うっすらと化粧をしてきていた。
ルナほどではないにしろ、少し遊び人の女子高生くらいには見えるだろうという自負がある。
行きのバスの中はそこそこ混み合っていたけれど、杏里を抱き抱えるようにして周囲を睥睨するルナに、あえて近づこうとする強者はいなかった。
終点のJR駅のバスターミナルでバスを降り、通行人の注目を一身に浴びながら、ふたりは駅裏へと急いだ。
シャッター商店街に足を踏み入れると、秋風に新聞紙が舞う中、唯一もっくんのアダルトショップだけ、シャッターが半分開いているのが見えた。
午前中は閉店の時間だが、ゆうべ遅く杏里が電話で無理を言い、朝早く開けておいてもらうよう、直談判したのである。
開店時間に行って、小娘の分際で、風俗に勤めるプロの女性たちに混じって買い物をする気には、さすがになれなかったからだった。
「ここか?」
店の前で立ちすくみ、派手な看板を見上げて、ルナが絶句した。
電飾こそ消えているものの、『ドリームハウス』という店名はいかにも怪しげである。
しかも、シャッターの隙間からのぞくショーウィンドウに飾られているのは、きわどい下着をつけたマネキンばかりなのだ。
「そうだよ」
杏里は逃げないようにルナの腕をぎゅっと引き寄せて、からかうようなまなざしでその引きつった横顔を見た。
「一番セクシーな下着を、ルナに選んでもらおうと思って。ね、いいでしょう?」
クラスの連絡網の電話で、杏里ははそれを知らされた。
これもジェニーの言っていた後始末の一環だろう、と杏里は直感した。
委員会は、外来種が存在した形跡を、一切闇に葬るつもりに違いなかった。
美穂と唯佳の死をも合わせて、そのDNAの欠片すらも残さぬほどに。
が、杏里にとり、この突然の休校は、ある意味、願ったりかなったりだった。
やるべきことがいくつかあった。
まず、性露丸に代わる新たな媚薬を購入しなければならない。
シークレット・イベントに備え、より作用の強いものを。
それから、下着の類いも新調したかった。
小百合との特訓や部活の練習で、お気に入りの下着がいくつかダメになってしまっている。
これもイベント用に、なるべくセクシーなデザインのものを用意する必要があった。
ネット通販ではいざという時、間に合わないかもしれないので、自分で買いに行こうと思った。
駅裏のもっくんの店なら、媚薬も下着も両方手に入る。
明日、さっそく出かけようと決心した時、もう一件の用事を思い出した。
もっくんの店から、沼人形工房は近い。
徒歩で10分とかからないほどだ。
重人が以前、サイコジェニーの意識に潜入して”盗聴”したところによると、ヤチカといずなは、なぜかその沼人形工房にかくまわれているらしい。
ならば、買い物ついでに様子を見に行くというのも、悪くない。
思いつくとすぐ、別れたばかりのルナに電話した。
深夜零時を回っていたが、ルナはまだ起きていて、杏里の頼みを快く請けてくれた。
「おまえをひとりにはできないから。絶対に」
「別にひとりで行ってもいいんだけどね」
そう言いかけた杏里を、ルナは思いつめたような口調でそう遮ったものである。
重人は、曙中学がひと足早く定期試験週間に入るとかで、同行をしぶった。
どうせいつか転校するのだから、そんなもの適当にスルーしちゃえばいいのに、と勉強嫌いの杏里は思うのだが、そうした方面に関しては、重人は頑固だった。
その分、子どもっぽいというのか、成績が下がるのは絶対嫌だと言い張るのである。
「いずなと学年順位とどっちが大事なんだ。このバーカ」
電話口でルナに責められ、半べそをかく声が聞こえてきたほどだ。
「今回は、いいよ。ふたりで行こうよ」
苦笑して、杏里は言った。
いずなとヤチカが無事かどうか、様子を見に行くだけのつもりだから、別にテレパスがいなくても支障はない。
そう判断したからだった。
場所が場所だから、制服はやめて。できるだけ大人っぽい恰好をしてきてね。
そんな杏里の注文に応え、翌朝迎えに来たルナは、いつになく落ち着いた服装をしていた。
下半身にぴったりフィットしたブルーのスキニージーンズにワインレッドの薄手のセーター。
その上に、黒いブルゾンを羽織っている。
胸まで流れるブロンドの髪とアクアマリンの瞳も相まって、まるでどこかの大学の留学生のように見える。
杏里は白いブラウスに黒のタイトミニ。
その上に薄手のパーカーをひっかけている。
さすがに中学生とわかるとまずいと思い、うっすらと化粧をしてきていた。
ルナほどではないにしろ、少し遊び人の女子高生くらいには見えるだろうという自負がある。
行きのバスの中はそこそこ混み合っていたけれど、杏里を抱き抱えるようにして周囲を睥睨するルナに、あえて近づこうとする強者はいなかった。
終点のJR駅のバスターミナルでバスを降り、通行人の注目を一身に浴びながら、ふたりは駅裏へと急いだ。
シャッター商店街に足を踏み入れると、秋風に新聞紙が舞う中、唯一もっくんのアダルトショップだけ、シャッターが半分開いているのが見えた。
午前中は閉店の時間だが、ゆうべ遅く杏里が電話で無理を言い、朝早く開けておいてもらうよう、直談判したのである。
開店時間に行って、小娘の分際で、風俗に勤めるプロの女性たちに混じって買い物をする気には、さすがになれなかったからだった。
「ここか?」
店の前で立ちすくみ、派手な看板を見上げて、ルナが絶句した。
電飾こそ消えているものの、『ドリームハウス』という店名はいかにも怪しげである。
しかも、シャッターの隙間からのぞくショーウィンドウに飾られているのは、きわどい下着をつけたマネキンばかりなのだ。
「そうだよ」
杏里は逃げないようにルナの腕をぎゅっと引き寄せて、からかうようなまなざしでその引きつった横顔を見た。
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