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第9部 倒錯のイグニス
#208 美里の影⑫
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気がつくと、手足を投げ出して、襤褸布のように倒れていた。
うめきながら、杏里は腹ばいになり、地面をつかもうと右手を伸ばした。
何人もの屈強な男たちに輪姦された直後のように、身体中が軋んでならなかった。
膣の内部と陰核が、燃えるように熱かった。
それだけでなく、両の乳首はまだ石のように硬く勃起していて、コンクリートの地面にこすれるだけで叫び出しそうになる始末だった。
テニスウェアは見るも無残に引き裂かれ、パンティもろくに原型をとどめていない。
太腿には生乾きの愛液がこびりつき、濃厚な雌の匂いを放っている。
杏里は敗北感に打ちのめされていた。
また、負けた。
その思いが、強い。
考えてみれば、以前美里を死に至らしめた時も、実力で杏里が彼女を上回っていたわけではなかったのだ。
スカルファックによる殺人という、トリッキーな策が当たったというだけのことだったのである。
その美里が生きていた。
しかも、以前より、数段進化して。
最悪の事態だった。
おそらく、誰か手助けをした者がいたのだろう。
あの状況で、自力で生き返ることができたとは、とても思えない。
美里に手を貸したのが誰なのか、それはわからない。
が、とにかく、第2の脳という特性を活かして、美里はしぶとく蘇生していたのだ。
そうして、たぶん、ルナを…。
右手を伸ばしたまま、杏里は倒れ伏した。
身体中が性感帯と化してしまったかのように、少し動くだけで快感がこみあげてきて、喘ぎそうになる。
少し、気を落ち着けないと…。
深呼吸して、ほかのことを、考えるの…。
冷たいコンクリートに頬を押しつけ、目を閉じた時だった。
杏里の脳内スクリーンに、だしぬけに金色の隻眼が開いた。
漆黒の闇に浮かぶ、長い睫毛に縁どられた、巨大なひとつ目…。
-やられたねー
笑いを含んだ思念が、さざ波のように頭の中に広がった。
ジェニー…?
杏里は息を呑んだ。
漆黒の部屋の中。
蜜色の液体で満たされたシリンダーの中を浮遊する、手足のない隻眼の少女…。
いつか見た奇怪なサイコジェニーの姿が、記憶巣の表面で点滅する。
あなた、知ってたのね? 美里先生が、生きてるってこと?
心の中で、杏里はなじった。
今では、何の前触れもなく突然出現するジェニーの”眼”に、恐怖を抱くこともない。
ただ、ずいぶん久しぶりのコンタクトだという気がした。
-もちろんさ。単に、おまえが訊かなかったから、教えなかったまでのことー
ジェニーは面白がっているようだ。
完膚なきまでに叩きのめされた杏里を見て、喜んでいるのかもしれなかった。
あなたも、委員会の一員なら、私たちの味方のはずでしょう? どうしていつも、そうなのよ?
予知能力者だと言いながら、これまで彼女は有益な情報を教えてくれた試しがない。
杏里の許を訪れて来たはいいものの、いつも謎のような暗示を残して去っていくだけなのである。
-私はね、運命を変えるつもりはないんだよ。すべて、なるようにしかならない。時の流れとは、そういうものなのさー
そんなんだったら、予知能力なんて、役に立たないじゃない!
-まあ、そんなに怒らないでくれないか。いいかい? 杏里。今回の美里との遭遇、これもおまえの成長の糧なんだよ。この世のすべては、閉じた円環の中にある。何人もそこから逃れることはできないんだ。おまえと美里の運命も、そうだ。おまえは今、あれに負けたと思い込み、心が折れそうになっている。だが、あながちそうとも限らないのだよ。自分の能力を卑下することはない。今回の戦いで、おまえの側にも得たものはある。今は、それだけ、言っておこうー
「私が、得たもの?」
杏里が思わずそう口にした、その時である。
ジェニーの気配が消えるのと同時に、スクールバスの陰から、ふらりとまるっこい影が現れた。
「ふふふふふ…。美里先生、行っちゃったね」
現れたのは、丸々太った裸のあの男児だった。
幼女たちからリョウと呼ばれていた、例のモンスター・チャイルドである。
「あ、あなた、そんな所に隠れてたの…?」
杏里はあわてて横座りになり、スカートの裾を引っ張ると、乱れた胸元を両腕でガードした。
「だって、まだ終わってないんだもん。お姉ちゃんとの、エッチ」
リョウが、犬歯を剥き出して、まん丸の顔でにたりと笑った。
それは、薄い唇を三日月形に吊り上げる、悪魔のような笑みだった。
うめきながら、杏里は腹ばいになり、地面をつかもうと右手を伸ばした。
何人もの屈強な男たちに輪姦された直後のように、身体中が軋んでならなかった。
膣の内部と陰核が、燃えるように熱かった。
それだけでなく、両の乳首はまだ石のように硬く勃起していて、コンクリートの地面にこすれるだけで叫び出しそうになる始末だった。
テニスウェアは見るも無残に引き裂かれ、パンティもろくに原型をとどめていない。
太腿には生乾きの愛液がこびりつき、濃厚な雌の匂いを放っている。
杏里は敗北感に打ちのめされていた。
また、負けた。
その思いが、強い。
考えてみれば、以前美里を死に至らしめた時も、実力で杏里が彼女を上回っていたわけではなかったのだ。
スカルファックによる殺人という、トリッキーな策が当たったというだけのことだったのである。
その美里が生きていた。
しかも、以前より、数段進化して。
最悪の事態だった。
おそらく、誰か手助けをした者がいたのだろう。
あの状況で、自力で生き返ることができたとは、とても思えない。
美里に手を貸したのが誰なのか、それはわからない。
が、とにかく、第2の脳という特性を活かして、美里はしぶとく蘇生していたのだ。
そうして、たぶん、ルナを…。
右手を伸ばしたまま、杏里は倒れ伏した。
身体中が性感帯と化してしまったかのように、少し動くだけで快感がこみあげてきて、喘ぎそうになる。
少し、気を落ち着けないと…。
深呼吸して、ほかのことを、考えるの…。
冷たいコンクリートに頬を押しつけ、目を閉じた時だった。
杏里の脳内スクリーンに、だしぬけに金色の隻眼が開いた。
漆黒の闇に浮かぶ、長い睫毛に縁どられた、巨大なひとつ目…。
-やられたねー
笑いを含んだ思念が、さざ波のように頭の中に広がった。
ジェニー…?
杏里は息を呑んだ。
漆黒の部屋の中。
蜜色の液体で満たされたシリンダーの中を浮遊する、手足のない隻眼の少女…。
いつか見た奇怪なサイコジェニーの姿が、記憶巣の表面で点滅する。
あなた、知ってたのね? 美里先生が、生きてるってこと?
心の中で、杏里はなじった。
今では、何の前触れもなく突然出現するジェニーの”眼”に、恐怖を抱くこともない。
ただ、ずいぶん久しぶりのコンタクトだという気がした。
-もちろんさ。単に、おまえが訊かなかったから、教えなかったまでのことー
ジェニーは面白がっているようだ。
完膚なきまでに叩きのめされた杏里を見て、喜んでいるのかもしれなかった。
あなたも、委員会の一員なら、私たちの味方のはずでしょう? どうしていつも、そうなのよ?
予知能力者だと言いながら、これまで彼女は有益な情報を教えてくれた試しがない。
杏里の許を訪れて来たはいいものの、いつも謎のような暗示を残して去っていくだけなのである。
-私はね、運命を変えるつもりはないんだよ。すべて、なるようにしかならない。時の流れとは、そういうものなのさー
そんなんだったら、予知能力なんて、役に立たないじゃない!
-まあ、そんなに怒らないでくれないか。いいかい? 杏里。今回の美里との遭遇、これもおまえの成長の糧なんだよ。この世のすべては、閉じた円環の中にある。何人もそこから逃れることはできないんだ。おまえと美里の運命も、そうだ。おまえは今、あれに負けたと思い込み、心が折れそうになっている。だが、あながちそうとも限らないのだよ。自分の能力を卑下することはない。今回の戦いで、おまえの側にも得たものはある。今は、それだけ、言っておこうー
「私が、得たもの?」
杏里が思わずそう口にした、その時である。
ジェニーの気配が消えるのと同時に、スクールバスの陰から、ふらりとまるっこい影が現れた。
「ふふふふふ…。美里先生、行っちゃったね」
現れたのは、丸々太った裸のあの男児だった。
幼女たちからリョウと呼ばれていた、例のモンスター・チャイルドである。
「あ、あなた、そんな所に隠れてたの…?」
杏里はあわてて横座りになり、スカートの裾を引っ張ると、乱れた胸元を両腕でガードした。
「だって、まだ終わってないんだもん。お姉ちゃんとの、エッチ」
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それは、薄い唇を三日月形に吊り上げる、悪魔のような笑みだった。
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