327 / 463
第9部 倒錯のイグニス
#327 ラストステージ②
しおりを挟む
聞こえてきたのが璃子の声だったことに、杏里はもっと警戒すべきだったのかもしれない。
両開きの扉を辛うじて通れるほど開き、中に滑り込んだ、その瞬間だった。
腹部に強烈な打撃を受けて、杏里は身体をくの字に折った。
「会いたかったよォ」
涙でにじむ眼で見上げると、目の前にふみの巨体が立ちはだかっていた。
レスリング部のビキニタイプのユニフォームを着込んだふみは、さながら直立した巨大なボンレスハムだった。
「ねえ、もっとお顔を見せてよう」
ふみが髪の毛をつかんで杏里をひきずり起こす。
よける暇もなく、いきなりキャッチャーミットのような分厚い手のひらが飛んできて、杏里の右頬を張り飛ばした。
更に鳩尾に蹴りを入れられ、ものすごい力で床に投げ飛ばされた。
大して衝撃を受けなかったのは、床がマットレスに覆い尽くされているからだった。
血反吐を吐きながら、身を起こす。
が、両手を突いて立ち上がりかけた時、その背中のくぼみを象のような脚でふみが踏みつけてきた。
あうっ。
背骨が軋み、身体が背中側に湾曲する。
上がった下顎を、ふみが蹴り上げる。
たまらず転がると、今度は脇腹に体育館シューズのつま先が突き刺さった。
「おお、あたしの杏里、可哀想に。でも、まず逃げられないようにしなきゃね。ちょっと痛いけど、ごめんね」
マットに右頬を埋めてうつぶせに倒れた杏里の腰に、ふみがまたがった。
蟹股のままジャンプすると、その大質量の重い尻で杏里を押し潰す。
まるでレスリング部の紅白戦の再現だった。
性的な悪戯を仕掛ける前に、ふみはどうやら杏里を戦闘不能の状態に追い込むつもりらしかった。
顎に両手をかけ、ふみの怪力が杏里の上半身を引き上げにかかった。
起重機並みの膂力を誇るふみのキャメル・クラッチに、杏里の背骨がぎしぎしと悲鳴を上げる。
限界まで折り曲げられ、杏里の口の端から鮮血の混じった白い泡が噴き出した。
ボンテージスーツの胸の穴から突き出した乳房の頂で、ピンクの乳首が震えている。
立て続けの暴力に、杏里の防御機能もまだ働き出していなかった。
痛みを快感に変える間も与えず、連続してふみが攻撃を加えてくるせいだ。
ふみの手が顎から首に移り、喉を潰さんばかりの勢いで締め上げてくる。
気管が塞がり、呼吸を遮断されて杏里は白目を剥いた。
苦しかった。
殺される、と思った。
不死身の生命体、タナトスの唯一の弱点は脳だ。
脳への酸素供給が途絶えれば、さすがのタナトスも脳死状態に陥ってしまうのだ。
意識が朦朧とし、閉じたまぶたの裏に白い光が広がっていく。
「気持ちいいかい?」
杏里の首に卍型に太い両腕をかけ、ふみが訊いた。
杏里の返事も待たず、無造作に左にひねった。
ぐきりと嫌な音がして、杏里の首が不自然な向きに曲がる。
「あら、ごめんなさい」
瞳孔の開き切った杏里の瞳を覗き込み、ふみが素っ頓狂な声を上げた。
「あたし、ちょっとやりすぎちゃったかな? なんか、杏里ちゃん、死んじゃったみたい」
両開きの扉を辛うじて通れるほど開き、中に滑り込んだ、その瞬間だった。
腹部に強烈な打撃を受けて、杏里は身体をくの字に折った。
「会いたかったよォ」
涙でにじむ眼で見上げると、目の前にふみの巨体が立ちはだかっていた。
レスリング部のビキニタイプのユニフォームを着込んだふみは、さながら直立した巨大なボンレスハムだった。
「ねえ、もっとお顔を見せてよう」
ふみが髪の毛をつかんで杏里をひきずり起こす。
よける暇もなく、いきなりキャッチャーミットのような分厚い手のひらが飛んできて、杏里の右頬を張り飛ばした。
更に鳩尾に蹴りを入れられ、ものすごい力で床に投げ飛ばされた。
大して衝撃を受けなかったのは、床がマットレスに覆い尽くされているからだった。
血反吐を吐きながら、身を起こす。
が、両手を突いて立ち上がりかけた時、その背中のくぼみを象のような脚でふみが踏みつけてきた。
あうっ。
背骨が軋み、身体が背中側に湾曲する。
上がった下顎を、ふみが蹴り上げる。
たまらず転がると、今度は脇腹に体育館シューズのつま先が突き刺さった。
「おお、あたしの杏里、可哀想に。でも、まず逃げられないようにしなきゃね。ちょっと痛いけど、ごめんね」
マットに右頬を埋めてうつぶせに倒れた杏里の腰に、ふみがまたがった。
蟹股のままジャンプすると、その大質量の重い尻で杏里を押し潰す。
まるでレスリング部の紅白戦の再現だった。
性的な悪戯を仕掛ける前に、ふみはどうやら杏里を戦闘不能の状態に追い込むつもりらしかった。
顎に両手をかけ、ふみの怪力が杏里の上半身を引き上げにかかった。
起重機並みの膂力を誇るふみのキャメル・クラッチに、杏里の背骨がぎしぎしと悲鳴を上げる。
限界まで折り曲げられ、杏里の口の端から鮮血の混じった白い泡が噴き出した。
ボンテージスーツの胸の穴から突き出した乳房の頂で、ピンクの乳首が震えている。
立て続けの暴力に、杏里の防御機能もまだ働き出していなかった。
痛みを快感に変える間も与えず、連続してふみが攻撃を加えてくるせいだ。
ふみの手が顎から首に移り、喉を潰さんばかりの勢いで締め上げてくる。
気管が塞がり、呼吸を遮断されて杏里は白目を剥いた。
苦しかった。
殺される、と思った。
不死身の生命体、タナトスの唯一の弱点は脳だ。
脳への酸素供給が途絶えれば、さすがのタナトスも脳死状態に陥ってしまうのだ。
意識が朦朧とし、閉じたまぶたの裏に白い光が広がっていく。
「気持ちいいかい?」
杏里の首に卍型に太い両腕をかけ、ふみが訊いた。
杏里の返事も待たず、無造作に左にひねった。
ぐきりと嫌な音がして、杏里の首が不自然な向きに曲がる。
「あら、ごめんなさい」
瞳孔の開き切った杏里の瞳を覗き込み、ふみが素っ頓狂な声を上げた。
「あたし、ちょっとやりすぎちゃったかな? なんか、杏里ちゃん、死んじゃったみたい」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる