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第10部 姦禁のリリス
#31 重人と由羅①
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由羅の漕ぐ自転車の後部座席は、まったくもって地獄だった。
テーマパークのアトラクションもかくやと思えるほどのスリルなのだ。
由羅が漕いでいるのは、ゴミ捨て場から拾ってきたような中古のママチャリである。
なのに、750CCのモーターサイクルなみに速い。
重人の尻の下でバウンドする荷台は、今にも車体から外れて跳んでいきそうなほど振動が激しい。
自転車全体が空中分解を起こしそうな勢いで、由羅は後ろに重人を乗せて国道を疾走していく。
混み合う自動車の列の間を縫うように走り抜け、一瞬も足を止めることなく突っ走る。
由羅の走りを挑発と受け取ったドライバーたちが、あるいは4トントラックで、あるいは外車のスポーツカーで煽ってきたが、由羅の無茶な走りに意外にあっさり引き離されてしまう始末だった。
そんなわけで、ヤチカの屋敷に続く森の入口に着いた時には、ママチャリはタイヤから煙を上げ、修理不可能なまでに壊れ切っていた。
「だからバスで来ようって言ったのに」
酷い自転車酔いに見舞われ、下草の間で嘔吐した重人は、青ざめた顔で抗議した。
「いいっていいって。どうせ廃工場で拾ったチャリだから」
由羅は笑って取り合わない。
「そういう問題じゃなくって」
ぷんぷんむくれながら、改めて重人は思う。
いくら肉体が武器の武闘派パトスだとはいえ、今の由羅のパワーは同類のそれをはるかにしのぐ。
零にやられて死にかけて、その後何があったか知らないが、正直、以前よりパワーアップしているようだ。
性格も、一時かなり大人びて落ち着いてきていたのに、初期の頃に戻ったみたいにやんちゃになっている。
まあ、変に哲学的で優しい由羅よりも、こっちの方がつき合いやすいのは確かなんだけど…。
でも、果たして杏里がなんて思うのかー。
「おい、なんだあれ?」
由羅が足を止めたのは、屋敷の門扉が見える曲がり角に差し掛かった時だった。
物思いにふけっていた重人は、突然立ち止まった由羅の背中に思いっきりぶつかった。
「いて。なんだよ」
丈の短い胴着しか着ていないのに、筋肉質の由羅はやたら硬い。
まるで電柱にでも頭をぶつけたような感じだった。
「見てみろ。門の中に変なものがある」
額に右手をかざし、木漏れ日を遮って由羅が言った。
「変なものって…ただの幼稚園バスじゃないか」
そう。
ガレージから、大きなバスが半分身を乗り出しているのだ。
横腹には、『光が丘幼稚園』の文字。
「だからさ、なんでヤチカの家に、幼稚園のバスがあるのかって聞いてるんだよ」
以前の短気な性格に戻った由羅が、苛立った口調で訊いてきた。
テーマパークのアトラクションもかくやと思えるほどのスリルなのだ。
由羅が漕いでいるのは、ゴミ捨て場から拾ってきたような中古のママチャリである。
なのに、750CCのモーターサイクルなみに速い。
重人の尻の下でバウンドする荷台は、今にも車体から外れて跳んでいきそうなほど振動が激しい。
自転車全体が空中分解を起こしそうな勢いで、由羅は後ろに重人を乗せて国道を疾走していく。
混み合う自動車の列の間を縫うように走り抜け、一瞬も足を止めることなく突っ走る。
由羅の走りを挑発と受け取ったドライバーたちが、あるいは4トントラックで、あるいは外車のスポーツカーで煽ってきたが、由羅の無茶な走りに意外にあっさり引き離されてしまう始末だった。
そんなわけで、ヤチカの屋敷に続く森の入口に着いた時には、ママチャリはタイヤから煙を上げ、修理不可能なまでに壊れ切っていた。
「だからバスで来ようって言ったのに」
酷い自転車酔いに見舞われ、下草の間で嘔吐した重人は、青ざめた顔で抗議した。
「いいっていいって。どうせ廃工場で拾ったチャリだから」
由羅は笑って取り合わない。
「そういう問題じゃなくって」
ぷんぷんむくれながら、改めて重人は思う。
いくら肉体が武器の武闘派パトスだとはいえ、今の由羅のパワーは同類のそれをはるかにしのぐ。
零にやられて死にかけて、その後何があったか知らないが、正直、以前よりパワーアップしているようだ。
性格も、一時かなり大人びて落ち着いてきていたのに、初期の頃に戻ったみたいにやんちゃになっている。
まあ、変に哲学的で優しい由羅よりも、こっちの方がつき合いやすいのは確かなんだけど…。
でも、果たして杏里がなんて思うのかー。
「おい、なんだあれ?」
由羅が足を止めたのは、屋敷の門扉が見える曲がり角に差し掛かった時だった。
物思いにふけっていた重人は、突然立ち止まった由羅の背中に思いっきりぶつかった。
「いて。なんだよ」
丈の短い胴着しか着ていないのに、筋肉質の由羅はやたら硬い。
まるで電柱にでも頭をぶつけたような感じだった。
「見てみろ。門の中に変なものがある」
額に右手をかざし、木漏れ日を遮って由羅が言った。
「変なものって…ただの幼稚園バスじゃないか」
そう。
ガレージから、大きなバスが半分身を乗り出しているのだ。
横腹には、『光が丘幼稚園』の文字。
「だからさ、なんでヤチカの家に、幼稚園のバスがあるのかって聞いてるんだよ」
以前の短気な性格に戻った由羅が、苛立った口調で訊いてきた。
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