超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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第173話 クローズドサークルの殺人【問題編】

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 残ったのは僕ひとりだった。
 ヤスオも真由美も三郎もヒトミもみんな殺された。
 自分の部屋の中で、朝になると冷たくなっていたのだ。
 外は豪雪に閉ざされている。
 僕らがこの山荘に到着してからというもの、ずっと。
 だから、外部からの侵入者の犯行とは思えない。
 犯人は必ずこの山荘の中に潜んでいるはずだ。
 そして、今も、最後のひとりである、僕の命を狙っている…。
 この大雪の中、脱出するのは不可能だ。
 警察に連絡しようにも手段がない。
 基地局が雪にやられたのか、携帯もつながらなくなっているし、固定電話もダメだった。
 まあ、仮に連絡が取れたとしても、この雪の積もり具合では、到着するまでに何日もかかるだろう。
 ならば、生き延びる方法はただひとつ。
 僕自身で、犯人を暴き出し、殺人を阻止すること。
 それしかない。
 考えろ。
 四人の死には何か共通点があるはずだ。
 全員、自室で死んでいたこと。
 まずはこれだろう。
 部屋には鍵がかかっていなかった。
 だから、誰でも出入り可能だったのだが、四人全員が殺されてしまったとなると、おかしなことになる。
 外部からの侵入者説を否定するとなると、可能性はふたつに絞られるからだ。
 ひとつは、僕ら五人の中に犯人がいる、という可能性。
 もうひとつは、僕らがここに到着する前から、この山荘に犯人が潜んでいたという可能性。
 しかし、後者については、残念ながら、否定するしかない。
 ヤスオと真由美が殺された時点で、僕は残った三郎とヒトミと三人で、徹底的に山荘内を調べたのである。
 その結果わかったことは、この建物の中には誰も隠れていないし、隠し部屋や抜け穴もないということだった。
 ならば残された可能性は前者ー。
 僕ら5人の中に犯人がいる、ということになるのだが、すでに生き残っているのは僕一人。
 4人の死体は居間に並べてあって、全員死んでいることは確認済みだ。
 僕が連続殺人犯でないことは、僕自身が一番よく知っている。
 当たり前のことだが、僕は二重人格でもないし、悪魔にとりつかれているわけでもない。
 であるならば、これは…?
 今のところ、毎日ひとりずつ、死んでいる。
 今朝が4人目のヒトミだったから、このままでいくと、今日明日中に僕も殺されることになる。
 くそ、どうしたらいい?
 僕は血走った目で部屋の中を見渡した。
 いったい犯人は、誰なんだ?
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