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第293話 凶器の行方
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「最近ぶっそうな事件が多いわね」
キッチンに立っていた妻が言った。
僕が見ているテレビのニュースの音声が聴こえたのだろう。
画面には、近所の商業施設が映っていた。
きょうの午後。
そこで、買い物客の女性が、見ず知らずの男に突然刃物で刺されたのだという。
「少し前にも、似たような事件があったよな」
ふと思い出して、僕はつぶやいた。
あれは一週間ほど前だっただろうか。
これまた近くのコンビニで、若い女性が面識のない男に刃物で切りつけられたのである。
「何の恨みもない他人を襲うなんて、どういうことなんだろう。わけがわからないよ」
「暑くなってきたから、おかしくなる人が出ても不思議じゃない気がするけど…」
テレビでは、ニュースキャスターが事件の概要を説明している。
犯人は、現場から少し離れた公園内をさまよっていたところを、警官に捕まったらしい。
ただ不思議なのは、凶器を持っていなかったことだ。
被害者の傷からして犯行に使われたのは包丁と考えられるが、犯人と思しき男は全くの手ぶらだったのだという。
「そういえば、前の事件の犯人も、凶器、持ってなかったんだよな」
更に思い出して、僕は言った。
その他の物的証拠から、犯人は捕まった男に間違いないのだが、凶器の包丁だけはまだ見つかっていないと聞いた覚えがある。
「もしかして、凶器のほうに問題があるんじゃないかしら」
調理の手を休めず、妻が言い出した。
「どういうこと?」
意味が分からず訊き返すと、
「人を殺したかったのは、犯人じゃなくって、凶器のほうだったってこと」
包丁を持ったまま、振り向いた。
「なんだよそれ?」
頬がひきつるのがわかった。
様子がおかしい。
なんだか、僕を見る目が据わっている。
「この包丁、さっき郵便受けに入ってたの。血まみれのまま」
「え?」
「で、手に取ってみてわかったの。この子、もっと、人間の血を吸いたがってるって」
「ちょ、ちょっと、待て」
僕はあわててソファから立ち上がろうとした。
でも、もう遅かった。
次の瞬間、よける暇もなく妻の右手が突き出され、僕の左胸に深々と包丁を突き立てていたのである。
キッチンに立っていた妻が言った。
僕が見ているテレビのニュースの音声が聴こえたのだろう。
画面には、近所の商業施設が映っていた。
きょうの午後。
そこで、買い物客の女性が、見ず知らずの男に突然刃物で刺されたのだという。
「少し前にも、似たような事件があったよな」
ふと思い出して、僕はつぶやいた。
あれは一週間ほど前だっただろうか。
これまた近くのコンビニで、若い女性が面識のない男に刃物で切りつけられたのである。
「何の恨みもない他人を襲うなんて、どういうことなんだろう。わけがわからないよ」
「暑くなってきたから、おかしくなる人が出ても不思議じゃない気がするけど…」
テレビでは、ニュースキャスターが事件の概要を説明している。
犯人は、現場から少し離れた公園内をさまよっていたところを、警官に捕まったらしい。
ただ不思議なのは、凶器を持っていなかったことだ。
被害者の傷からして犯行に使われたのは包丁と考えられるが、犯人と思しき男は全くの手ぶらだったのだという。
「そういえば、前の事件の犯人も、凶器、持ってなかったんだよな」
更に思い出して、僕は言った。
その他の物的証拠から、犯人は捕まった男に間違いないのだが、凶器の包丁だけはまだ見つかっていないと聞いた覚えがある。
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調理の手を休めず、妻が言い出した。
「どういうこと?」
意味が分からず訊き返すと、
「人を殺したかったのは、犯人じゃなくって、凶器のほうだったってこと」
包丁を持ったまま、振り向いた。
「なんだよそれ?」
頬がひきつるのがわかった。
様子がおかしい。
なんだか、僕を見る目が据わっている。
「この包丁、さっき郵便受けに入ってたの。血まみれのまま」
「え?」
「で、手に取ってみてわかったの。この子、もっと、人間の血を吸いたがってるって」
「ちょ、ちょっと、待て」
僕はあわててソファから立ち上がろうとした。
でも、もう遅かった。
次の瞬間、よける暇もなく妻の右手が突き出され、僕の左胸に深々と包丁を突き立てていたのである。
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