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#398話 旧トンネルの怪③
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せわしなく人が行き来する県警の廊下でも黒づくめの零は異様に目立った。
痩身に鴉みたいな真黒なコートを着ているだけだが、発散するオーラのせいかそのさまはまるで死神なのだ。
屈強な体格の刑事たちが突き進む零をあからさまに避けるのを見るのは、ある意味痛快でもあった。
その死神女が他には目もくれず向かったのは、地下駐車場の片隅に設けられた喫煙所である。
彼女の判断は実に的確だったというべきで、案の定、そこに目当ての韮崎一郎警部は居た。
今の時代、絶滅危惧種としか思えない紙煙草愛好者の元上司は、近づく私と零の姿を見るなり蒸気機関車よろしく紫煙を噴き上げ、露骨に嫌な顔をした。
「あ、ニラさん、おひさです。お、お元気そうで、何より」
しどろもどろになった私をひと睨みすると、その鋭い視線はすぐに傍らの零に向けられる。
「なんだよ、疫病神が雁首揃えてこんなとこに。おまえらにはもう、二度と会うことはねえと思ってたんだがな」
「会いたくないのはこっちも同じ。でもあんた自身、そろそろと思ってたとこだよね」
「そろそろって?」
零の言葉の意味が分からずちらっとその横顔に目をやると、零はニラさんを見据えたまま、
「そろそろうちらの助力を得なきゃって、おっさん自身、思い始めてたんじゃないかってこと」
「やれやれ、相変わらずだな。零、おまえさんのやけに当たる当て推量は」
ぼやきながら、でもニラさんは否定しなかった。
「もしかして、能勢山トンネルの事件ですか?」
先回りして訊くと、
「おまえらも、それで俺んとこにきたんだろ?」
「何があったの? 詳しく教えなさいよ」
「おいおい、それが3倍年上の年長者に向かって言う台詞か?」
「時間がないし、こっちは真昼間から外歩かされて機嫌悪いんだよ」
「別に俺が頼んだわけじゃねえ」
「今から杏里に電話しようとしてたくせに」
「え? そうなの?」
見れば確かにニラさんはスマホを握っている。
「けっ、うるせえな、この化け物女めが」
「その化け物女のおかげで、定年間近なのにおっさん、ここに栄転になったんだろ」
「はいはい、確かにそうですよ。その節はお世話になりました」
ニラさんはヘラヘラ笑いを途中でやめると、すぐ近くの車を顎で指し示し、急に真顔になってこう言った。
「まあいい。乗れ。これから面白えもん、見せてやる」
痩身に鴉みたいな真黒なコートを着ているだけだが、発散するオーラのせいかそのさまはまるで死神なのだ。
屈強な体格の刑事たちが突き進む零をあからさまに避けるのを見るのは、ある意味痛快でもあった。
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彼女の判断は実に的確だったというべきで、案の定、そこに目当ての韮崎一郎警部は居た。
今の時代、絶滅危惧種としか思えない紙煙草愛好者の元上司は、近づく私と零の姿を見るなり蒸気機関車よろしく紫煙を噴き上げ、露骨に嫌な顔をした。
「あ、ニラさん、おひさです。お、お元気そうで、何より」
しどろもどろになった私をひと睨みすると、その鋭い視線はすぐに傍らの零に向けられる。
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「会いたくないのはこっちも同じ。でもあんた自身、そろそろと思ってたとこだよね」
「そろそろって?」
零の言葉の意味が分からずちらっとその横顔に目をやると、零はニラさんを見据えたまま、
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ぼやきながら、でもニラさんは否定しなかった。
「もしかして、能勢山トンネルの事件ですか?」
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「おいおい、それが3倍年上の年長者に向かって言う台詞か?」
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見れば確かにニラさんはスマホを握っている。
「けっ、うるせえな、この化け物女めが」
「その化け物女のおかげで、定年間近なのにおっさん、ここに栄転になったんだろ」
「はいはい、確かにそうですよ。その節はお世話になりました」
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